2021秋冬スタイリング Vol.68

皆様、おはようございます。

習い事をしている4歳の息子。付き添うのはいつも妻なのですが、たまたまその日は私が付き添う事になった前日に、「パパは何をすればいいの？」と息子に聞いてみると、「パパはすわってみてなさい！」と言われてしまったドレス担当、川口でございます。

今回は、アメとムチのスーツスタイルです。

〈Brilla per il gusto（ブリッラペルイルグスト）〉のグレンチェックスーツです。過去に何度も書いてきましたので、既に説明不要の〈Brilla per il gusto〉のスーツ。世界にその名を轟かせるメイドインジャパンのトップファクトリーRING JACKET（リングヂャケット）社製に拘り続け、既製品としてはなかなかお目にかかれないイタリアを中心とした世界トップクラスの生地を惜しげなもなく使い、一見すればとてもお高く感じますが、他社様ではここまでの事をしていないので比較する事もできず、しかし、どう見ても正当な金額、むしろ少しお安く感じるほど…そんなスーツです。

〈BEAMS F（ビームスF）〉と〈Brilla per il gusto〉のオリジナルスーツにおいて、仕様や生地の違いはあれど、数年前までそのシルエットに大きな差を感じなかった私。一時期のスリムシルエットから脱却し、レギュラーシルエットへと進化した〈BEAMS F〉とは明らかにその違いが見て取れる昨今の〈Brilla per il gusto〉は、さすがにあの頃のスリムシルエットではないものの、ここ数シーズンは大きな変更なし。スマートに最高品質を熟（こな）す大人の男性へ向けたエレガンテスタイルは健在です。

ホワイト×ブラックで構成されるグレンチェックとは違い、一歩下がって相手を重んじ、とても謙虚で控えめなグレイのグレンチェック。自分を殺すのではなく相手を生かす、そんな心意気がこの背中からひしひしと感じます。「この生地いいだろ〜？」という自慢はややお下品。わかる人は向こうから近づいてきます。「素敵な生地ですね？」「いえいえ、そんな…。」「どちらのものですか？」「えぇ、実は…。」くらいの会話が素敵ですね。それが女性なら尚良いです。

イタリアはLORO PIANA（ロロピアーナ）社のCASHMERE WISH®︎（カシミヤウィッシュ）の生地です。ご覧の通り、Super170’SウールコレクションであるWISH®︎に、カシミアを5％ブレンドした日常着としてはあまりに贅沢なCASHMERE WISH®︎。繊維の太さを表すSuper表記は、170’Sで直径15ミクロンと言われ、LORO PIANAのカシミヤもまた15〜15.5ミクロンとされています。という事は、滑らかさや柔らかさ、軽さなどの生地体感は、ほぼカシミヤ100％と言っても過言ではありません。と考えれば、なかなかのお値打ち品ではないでしょうか。更には、ソフトフランネルの手に染みる起毛感にただただ言葉を失います。どうぞ、失神覚悟で触れて、お召しになって、鏡をご覧下さいませ。

Brilla per il gusto / LORO PIANA グレンチェックスーツ
カラー：ライトグレイ
サイズ：42〜52
価格：￥165,000（税込）
商品番号：24-17-0801-015

CROCKETT＆JONES / KENT ストレートチップシューズ
カラー：ブラック
サイズ：5〜9H
価格：￥83,600（税込）
商品番号：21-32-0122-502

2メートルも離れれば、ほぼソリッドのグレイスーツにしか見えない今回のスーツ。多少のガチャガチャしたVゾーンも許容します。柄の組み合わせは“大中小”が基本ですが、全てが“中”に収まったスーツとシャツとネクタイ。仲を取り持つのは、やはりクレリックシャツである白い襟が、一拍を置く役目を果たしてくれています。

見た目も触れてもウールに感じる〈Holliday ＆ Brown（ホリデーアンドブラウン）〉のシルク100％小紋柄プリントネクタイは、滑らかな起毛がスーツの生地とマッチ。愛情を持って部下を叱ったものの、少し言い過ぎたと反省する主人公。伏せて落ち込む部下のデスクに、無言でソッと缶コーヒーを置く主人公。目を潤ませながら、缶コーヒーを一気に飲み干す部下。その姿を見て微笑む主人公。…そんな厳しさと優しさが両立するコーディネートです。つまらない脚本ですみません。