クリス・ジェンティール-02

TAKA 2020.04.13

「ホテル・デルマーノ」で飲んだ次の日だったか数日後、ノース・サードストリートとワイスアヴェニューのコーナーにあるクリスのお店を初めて訪れた。

その当時ピルグリム サーフ+サプライには独自のコレクションは存在していなかった。しかしショップはクリスの審美眼に基づいたセレクトと、今でもベストセラーアイテムの一つであるTEAM TEEやTEAM HOODIEが丁寧にそしてユニークにVMDされていてクリスの人柄を感じた。整然と陳列されたサーフボードは一定の色相・彩度で統一され、サーフボード自体がモノとして美しく、多くの手作業を経て出来上がっていることは手に取るようにわかった。サーフボードを見て美しいと思ったのはこの時が初めてかもしれない。BGMにはジャズ、ソウル、ファンク、ブラジリアン、スカ、ロック、ニューウェイブ、シティポップなどクリスが好きで集めたレコードがヴィンテージのマランツのアンプを通して流れていた。その頃レコードでBGMをかけているお店はまだまだ少なくて、お店で流れるアナログ感に何か温かみを感じたのを覚えている。店内にはアートやサーフカルチャーに関する書籍もたくさん陳列されていた、デイビッド・ホックニーアレックス・カッツなどクリスが尊敬しているアーティスト、ジオ・ジグラージョン・コープランドなどクリスがサポートしている現代のアーティストの画集や、サーフカルチャー書籍など。取り扱っているアパレルもそうだが、お店全体のセレクトを通してクリスのキャラクターが透けて見える、ということが何か新鮮に感じた。それは僕たちがクリス・ジェンティールがクリエイトするピルグリム サーフ+サプライに魅力を感じた大きな理由の一つだと思う。

今では観光地化してしまったたウィリアムズバーグだが、当時はまだ観光客も少なくファッション業界の人間が足を伸ばしてくる程度だった。ピルグリム サーフ+サプライは常に地元の人やクリスの友人が集まり活気に溢れていた、そこに観光客だろうと一見さんだろうとスッとそのコミュニティに入れてしまう感じも素敵だった。地元の人たちの関わりが深く見えたし、街にパワーがある魅力的な街だった。今もまだまだパワーもある魅力的な街だけれど、地価が上がり、大手企業が参入し様変わりしてしまった今の街は、地元コミュニティの温かさみたいな空気感は薄くなってしまったと感じる。住人でもない僕がそんなこというと怒られてしまうかもしれないけれど、そこは本当に残念だし悲しい。

話が逸れてしまったが、盛り上がり始めていたウィリアムズバーグのコミュニティの中心にピルグリム サーフ+サプライ、つまりクリス・ジェンティールがいた。