天国の涙

SHUN 新井 2022.04.03

ご機嫌いかがでしょうか、立川店の新井です





JOHN SMEDLEY/ISIS コットンニットポロ
カラー:グレー、ブラックブラウン、ブルー、ネイビー
サイズ:XS,S,M
価格:¥30,800(税込)
商品番号:21-02-0151-337

ようやくこのブランドが長袖、半袖共に揃って参りました。


春夏もやっぱりこのドレスフロアでの風物詩の様になくてはならないブランドと言えばこのブランドではないでしょうか。

世界最高峰と言って過言ではないシーアイランドコットンニット。昔からあってこれだけ身近に感じられながらも、綿ながらもこの柔らかさ、軽さ、滑らかさとどれをとっても一級品。そしてこのブランドならではの技術と言うべき編み立ての仕上がりの妙と言いますか、ワンアンドオンリーと表現すべきでしょうか。


私としてはこのブランドの真骨頂のひとつは、ポロタイプの衿の形成力だと思うんですよね。常套手段としてニットの衿はマルロン糸の所謂伸縮のある糸を使ってやや硬めに形成するのですが、とにかくこのブランドの仕上げが他のブランドとは段違いで上手いんですよね。

しっかりと首に沿う様にしながらも衿羽根の開き具合や左右対照的にする抜群の編み立て。短い衿羽根先であればそこそこのニットブランドでも可能ですが、このブランド独特のレギュラーカラーに近い長い衿先の仕上げには何処ぞの舶来ニットブランドも敵わないのではないかと。

何よりこの長めの衿先がエレガントなムードやらクラシックな佇まいを演出する上で非常に大切な役割を果たしているんです。


実際に香港や上海、そして日本のニット工場でサンプル見本を交えながらこの長い衿先を再現しようと躍起になりましたが、どんなに試行錯誤しようともこれだけ綺麗に衿の表情を出すのは全くと言って良い程に失敗に終わりました。優秀な日本のニット工場でさえもです。

衿のゴムを硬く強くしたり、糸を太くしたりすればカチッと綺麗には編み立てられます。でもそれではこのブランドの様な柔らかいふんわりした風合いには程遠く、上品かつ優雅な雰囲気は出せない訳なんです。



そしてこの30ゲージというスーパーハイゲージの糸による大人の男性をエレガントな紳士に演出する裾周りの優雅なブラウジングがまたスメドレー師匠の真骨頂ではないかと勝手に確信してる訳なんです。このブランドの着丈いつも長くないか?とか思ってた自分はまだまだ弱輩でした。ハイゲージだからこそこの優雅な佇まいを醸し出す少し長めの着丈設定。少しくらいおじさま方のお腹が出てても安心ですし。

このブランドだからこそのこのブラウジングの雰囲気は最早勝手に世界遺産レベルに認定です。スイスはサンモリッツの優雅な雪の山脈の様に美しいブラウジングの曲線なんです。

私が持つ20年前の同ブランドのシーアイランドコットンニットはまだまだ現役。繊細な生地故に大切にケアして着るというのも長く愛用出来る由縁。驚くべきは綿素材なら人の皮脂等で酸化を起こし、経年により黄色変化を起こしてしまうのが通例なんですが、こういった高級糸は不思議と黄ばみ汚れも殆ど出てないのに驚かされます。やっぱりより良いモノの方がコスパは高いと思うんですよね。また数年後に着たくなるし。



このウィルスによる災禍をきっかけに私の洋服への価値観、考え方は以前と以後では大きく変わりました。20年愛する事が出来る服。LONG LIFE DESIGN PRODUCT。

ちょっとトレンドを意識したデザイン変化やシルエット変化なんてもう気にしません。

90年代に買い漁った洋服達を20年後の今にまた巡って着たくて探すのが正に良い例です。

このブランドのこのニットポロシャツなんて50年前の映画なんかで英国の爵位を貰った名俳優が、スパイ任務の傍らにビーチでエレガントに着てた当時から殆ど変わってない訳ですから。はっきり言ってこのニットポロなんてその頃に既に完成された名品だったって事ですよね。

変わらないもの。変わる必要が無いもの。

その時の流れの洗礼を受けても残っていく普遍性に、私は強烈に惹かれてしまう訳なんです。歳をとった証でもあるんですかね。



表題は世界三大ギタリストと言われて、ブルースを皮切りに名声を欲しいままに生きる伝説となった天才ギタリストEの92年発表の映画の主題歌として歌われた傑作曲。

亡き息子への想いを綴ったこの名曲の背景を知れば知る程に気が狂いそうになる程に優しくも美しいアコースティックな弾き語りの調べ。

はっきり言って気楽に、ながら聴きでかけられる曲では決して無い。深い悲しみと対面し、そこから逃れる為なのか、抗う為になのか、はたまた真正面から受け入れる為に書かれた曲なのだとは思います。ただこれ程までに胸の奥の方に深く深く優しくゆっくりと突き刺さっていく歌でこの曲以上のものなんて私は知りません。

この大名曲からのその繊細で優しく感じる感情みたいなものは、至極の名品と呼ばれるこのニットポロの様に儚くも美しい普遍性を感じますね。



それでは立川で会える日を願って


新井