こんにちは。
早いものでもう9月に入り、少しずつ過ごしやすい気候の日が続いていますね。昨年にも同じようなことを言っていますが、この時期は、風景や気候の変わりようなどから、どこか寂しさや物悲しい気持ちを覚えるというようなイメージがあります。そんな気持ちの時に聴くとより味わい深く感じられる音楽を、BEAMS RECORDSのPICK UPページにて『哀愁漂う秋を彩るエモーショナルな音楽』と題して厳選しました。今回は、この中からいくつかご紹介したいと思います。
その前に余談なのですが先日、早稲田松竹でロードムービーの巨匠、Wim Wendersの特集上映が行われていて、最終日に駆け込みで"都会のアリス"を鑑賞しました。
ここからネタバレになるのですが、"都会のアリス"は、旅行記の執筆のためにアメリカを放浪していたドイツ人作家 フィリップが、空港で少女 アリスとその母に出会い、ひょんなことからアリスをアムステルダムに引き連れていくことになり、その道中を描くロードムービー。というよりかは迷子になっているようなストーリー。久しぶりに鑑賞しましたが、やはり、あのWendersならではの目的があるようでないような、不器用な温かさに包まれた空気感が心地良く、朗らかな気持ちになりました。特に序盤は台詞が少ないのですが、その少ない台詞のなかでも異様に共感できる台詞が連発され、どんどん惹き込まれてしまいます。
そういえば本作の音楽は、ジャーマン・プログレの金字塔ともいえるバンド CANの中心メンバーでギタリストのIrmin Schmidtが手掛けているのも音楽好きでは有名ですね。CANの「Vitamin C」をはじめ、The Rolling Stonesの「Under The Boardwalk」「Angie」、そして劇中にフィリップがChuck Berryのライブを見ているシーンが挟まれていたりと、音楽好きには堪らない要素がたっぷりです。他の作品でもさまざまなバンドを起用していて、Wendersの古さと新しさをいい塩梅で織り交ぜるセンスや器量が素晴らしいな~とつくづく感じました。
そんなWim Wendersをはじめ、Jim Jarmuschの映画などのサウンドトラックを彷彿とさせる作品が入荷しています!
兄弟ユニットinc. no worldの弟の方で、最近ではSam GendelとSam Wilkesの作品でベースを披露し、Frank Oceanをはじめ、KelelaにFKA Twigs、Zselaなどの楽曲のプロデュースも行ってきたプロデューサー/ベーシスト、Daniel Aged(ダニエル・エイジド)が2021年にリリースしたアルバムです。
個人的によく動向をチェックしている好きなアーティストなのですが、スティールギターの音色が優しく広がる1曲目「Whole Heart」から、まさに彼にやって欲しかった緩やかなサウンドが流れ、アンビエント・ジャズ〜フォーク、バレアリックの系譜を感じる展開に酔いしれてしまいます。 ラストソング「Not a Dream」は、鳥のさえずりをサウンドエフェクトに使った、エンディングにふさわしい壮麗な音空間。秋のなんともいえない鬱々とした気分に聴いても、すんなり耳に馴染むソフトな質感も堪りません。マスタリングは、Michael JacksonやSteely Dan等数々の名盤に貢献したBernie Grundmanで納得の高音質で楽しむことが出来るのもポイントです。
続いてご紹介するのは、前述に挙げたバンド CANと並んで同時代にNYで活動していたバンド、The Velvet Underground(略してVU)のドキュメンタリー映画のサウンドトラック盤です。

Apple TV+限定で配信されているVU初のドキュメンタリー映画で、アーカイブ資料やインタビュー、当時の録音、Andy Warholの映像などを交えながら、VUがNYでカルト的な人気を得るまでの過程と、その後のロックやパンクシーンに影響を与えたことを紹介しています。私もたまたまApple TV+に入っていたので鑑賞したのですが、バンドメンバーJohn CaleやMaureen Tucker、Doug Yuleが当時のことを振り返っているシーンに胸が熱くなりました。映像も60年代のニューヨークを分割させてコラージュのように見せたりと細かいところまで拘り抜かれた洒脱な表現が印象的で、ドキュメンタリー映画にありがちな飽きっぽい演出でなかったのがVUらしいなと思いました。
その作中に流れている音楽などを監督のTodd Haynesと映画の音楽監修を担当したRandal Posterがピックアップして制作した本作は、VUやLou Reedの代表曲をはじめ、当時バンドに影響を与えたハイテナーボーカルが印象的なNolan Strong率いるThe Diablosや、ブルースとロックンロールの掛け橋となり、Chuck Berry、Little Richardらとともにロックンロールの生みの親のひとりとして知られるBo Diddleyの楽曲までを収録しています。やはり秋といえば、芸術の秋といわれているように、この機会にアートと音楽と映画が掛け合わさった芸術要素溢れる作品を楽しんでみるのも趣がありそうです。
続いてご紹介するのは、ロンドンを拠点に活動するPuma Blue(プーマ・ブルー)によるデビューアルバムのライヴ音源に未発表音源を加えた限定盤LPです。
【クリア・ヴァイナル仕様限定LP】Puma Blue / In Praise of Shadows (B-Sides & Live Versions) <Blue Flowers>
価格:¥3,630(税込)
商品番号:29-67-0404-512
同名のデビュー・アルバムに収録されている楽曲のライブ音源と、本人が影響を受けていたRadioheadの楽曲「All I Need」をよりミニマルに削ぎ落としたカバーや未発表曲を収録した1枚です。
日本に古くから存在する生活様式などにフォーカスを当て、そこにある「影や暗がり」から生まれる美しさが論じられている、谷崎潤一郎の随筆『陰翳礼讃』を英訳したアルバム・タイトルからも窺えるように、本作は『陰翳礼讃』から受けたインスピレーションをもとに制作。ライブ・ヴァージョンでは、より余白と深みが感じられるサウンドと本人の甘美さを帯びた歌声が際立っていて、深く実感を伴ってその影響を感じ取れます。
本人が「暗闇の中で光を見つけることについての作品」だと述べているように、挫折や苦悩、不安といったものを暗がりに例えて、その中でしか見いだせない美しさが感じられる本作。私も非常に共感を覚え、リリース当時からずっと愛聴しています。秋の夜長のなか暗がりの部屋で、じっと耳を澄ましながら聴くアルバムとしてとてもオススメです。
そして最後にご紹介するのはロンドン発の気鋭デュオ、Jockstrap(ジョックストラップ)による最新アルバム。

【LP】Jockstrap / I Love You Jennifer B <Beat Records/Rough Trade>
価格:¥3,190(税込)
商品番号:29-67-0415-813
以前ブログで紹介したBC, NRのヴァイオリニスト Georgia Elleryと、Guildhall School of Music and Drama(Mica Leviなどが卒業生)で同級生だったTaylor Skyeから成るデュオです。前作は<Warp>からリリースしていましたが、今作は<Rough Trade>に移籍後の初のリリース。(この時点でJockstrapが只者ではない事は十分感じますよね。)
オルタナ、インディー、フォーク、アンビエント、エレクトロまでを網羅した抜群のポップセンス。全編を通して現代的なエレクトロニクスで歪めた、どこか懐かしさを感じるサウンド。何度聴いても咀嚼できないその新しさに、一瞬で魅了されてしまいます。
全曲素晴らしいのですが、個人的に「Glasgow」の歌詞と曲構成には圧巻。
“Every time I see”
いつでも意識している
“What's missing from my life”
私の人生から何が失われたか
という冒頭の歌詞とその後の壮麗なヴァイオリンの音色が心に刺さり、とても感動的な曲です。また、Georgiaの自分の気持ちやインスピレーションを反映させた詩的な歌詞のアプローチ、滑らかに耳に入ってくる歌声も◎。
Neol Magazineのインタビューでは、「最悪な気分の時にその気持ちを表現するのに、シュールレアリズム的なイメージを使うのが好き」と言っていて、なぜこんなに魅了されているのかその理由が一つまた分かったような気がしました。
以上、今回は個人的な好みも含めた4タイトルをご紹介させていただきました。秋はやはり豊富にリリースが続いていて、多数新譜が入荷しています。
また現在9/25(日)までダブルポイントキャンペーンも行っていますので、是非気軽にお立ち寄りください!ご来店お待ちしています。
近日中の出勤日↓
【9/19,20,22,24,26,27,30】
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