こんにちは、藤本です。
皆さんは、ロンドンを拠点とする音楽レーベル/イベントプロダクション〈33-33〉の主宰する実験音楽にフォーカスを当てたイベントシリーズ「MODE」が、現在東京の様々なイベントスペースで開催されているのはご存知でしょうか。
私は「MODE」が2023年に日本に初上陸したタイミングから公演に行っているファンの一人なのですが、今回は、先日3日に草月ホールで行われたChristian Marclay、Steve Beresford、Phil Mintonらとコラボレーションを果たしてきたチェロ奏者/作曲家、Okkyung Leeと、日本人サウンドアーティストのFUJI|||||||||||TAによるパフォーマンスを見に行ってきました。
FUJI|||||||||||TAは、今回パイプオルガンとは思えない重厚な低音が効いたインダストリアルな質感のパフォーマンスで新たな試みを感じられ、Okkyung Leeは、一体どうやって演奏しているのか、アナログの楽器からデジタルの音を抽出しているかのような宇宙的なチェロの奏法を披露。
両者とも即興演奏だからこそ表現できるのであろう、音の機敏な変化を体全身で感じられた凄まじいパフォーマンスで素晴らしかったです。
またOkkyung Leeは、私がBEAMS RECORDSのSpotifyアカウントでキュレーションしたプレイリスト『Nostalgic Drive』でも選曲しているように、愛聴していたアーティストの一人であったので、今回生で見ることができてとても光栄でした。
余談ですが、前述にあるようにOkkyung LeeがChristian Marclayとコラボを果たしたきっかけの一つである、彫刻家・Alexander Calderの吊り下げ式モビール「Small Sphere and Heavy Sphere, 1932/33」を作動させた美術館でのインスタレーションも興味深く、モビールの予測不可能な動き、ぶつかり合うことで生じる音や視覚的な要素に、音楽的にチェロで呼応しているOkkyung Leeに釘付けになります。(youtubeで見れるので興味ある方はぜひお調べください)
加えてコラボレーターのChristian Marcalyは、音または音楽に関わる要素をモチーフにした作品で知られていますが、自身の音、音楽に対する考えについて、美術手帖でのインタビューでこのように述べています。
"私としては、音や音楽には『聞くこと』だけが存在しているのではなく、そこに紐づいている文化や視覚的な表現が、切っても切り離せない状態で存在していると考えています。なので『音を聴く』ということは、耳で何かを聴くだけで音を理解しているのではなく、聞こえてきた音に付随する知識や、音や音楽に限らないあらゆる歴史、そして生活の手触りや日々の習慣が合わさって理解しているものだと思います。ーーー略
私としては、音とイメージは切り離せるものではないし、それらを翻訳するというよりも、それぞれ対等の状態で人間生活のなかに存在している表現方法として扱っています。"
これを踏まえて考えてみると、「MODE」は、こういった音、音楽に対して、聞くことだけではない濃厚な体験、価値、人間にこんな表現方法があり得るのかという刺激、発見を感じさせてくれる場を提供してくれている素晴らしいイベントだなと改めて感じさせられました。
ところで2018年にロンドンで行われた「MODE」第一回目は坂本龍一氏がキュレーションを担当していましたが、そんな坂本氏へのトリビュート・アルバムの第一弾がLPで到着しております。
第一回目にロンドンで行われた「MODE」で、坂本氏はBrian Enoらと並んでアンビエント・ミュージックの礎を築いてきたDavid Toopとともにロンドンの荒廃とした廃墟のようなスペース「シルヴァー・ビルディング」を舞台に即興パフォーマンスを披露しています。(その音源は〈33-33〉からリリースされた『Garden of Shadows and Light』でも聴くことができ、Youtubeでも見ることが出来ます。)
そういった前述作も含めた、坂本氏の晩年の傾向である特殊な奏法を用いたアプローチ、あるいは楽器の普通ではない非器楽的な採用であったり、坂本氏によるインプロヴィゼーションに対する考えや思いに共鳴や影響を受けたアーティストによる追悼曲が並びます。
嬉しい特典のオリジナル・ステッカー付きです。
また少し毛色は異なるかもしれませんが、根源の部分“即興的”なアプローチという面で共通点を思わせる一枚がこちら、Brian Enoが、CANのメンバーであるHolger Czukay、J. Peter Schwalmとともに、1998年に繰り広げたインプロヴィゼーション・ライヴの音源。
Enoが1998年に行ったマルチメディア・インスタレーション"Future Light-Lounge Proposal"展のオープニング・パーティーにて、料理のパフォーマンスに付随するBGMとして構想された3時間のパフォーマンスから5曲を収録しています。
タイトルは和訳すると「寿司、パン、ポテト・パンケーキ」となるように、3者の個性がひしひしとぶつかり合い、序盤は乖離しているように良い意味で荒く聴こえる演奏も終盤には見事に融合した状態へと登り詰めているように感じられます。何度聴いてもその時の自分のコンディションや環境で聴こえ方が変わってくるのも即興演奏の醍醐味だなと今作を聴いて改めて実感したり。
それでいてZ世代へと目を向けると、DOMi&JD BECKを筆頭に即興的なパフォーマンス、インプロヴィゼーション・ジャズの新しいムーブメントを作り出しており、若干22歳のAnatole Musterもその一派で見逃せない一人です。

【国内盤CD】Anatole Muster / Wonderful now〈P-VINE〉
価格:¥2,750(税込)
商品番号:29-68-0406-538
珍しくアコーディオン奏者として活動する彼のデビュー作である今作は、影響元でもあるLouis Coleを筆頭に、Telemakus、Juliana Chahayed、M Fieldといった多彩なゲストを招いており、エレクトリック・ジャズからフュージョン、ダンス・ビート、さらにはハイパー・ポップへのアプローチなど、ジャズを軸にしながら多様なジャンルへとシームレスに拡張していく未来的なサウンドに仕上がっています。
上述アーティストがお好きなら刺さるポイントがあるであろう一枚。店頭のみの取り扱いとなりますので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。
続いて最後にご紹介するのは、従来のエクスペリメンタル・ミュージックやアンビエント・ミュージックの既成概念を覆す“エモ・アンビエント”というスタイルを初めて提唱した作曲家/シンガーソングライター claire rousay(クレア・ラウジー)による新作アルバム。claireもまた実験性に溢れるアーティストで、私も個人的にファンの一人です。
【LP】claire rousay / sentiment〈Thrill Jockey〉
価格:¥5,060(税込)
商品番号:29-67-1044-488
冒頭を飾る、本人が綴ったテキストを仲間のTheodore Cale Schaferが朗読した映画のワンシーンのような「4pm」、ヒップホップやハイパーポップで用いられるようなヴォーカル・エフェクトが施された歌声が絶妙な心地良さを纏う「head」など全10曲を披露。
極めて印象に残るフィールドレコーディング、効果的に配置されたドローンやミニマル・サウンドが素晴らしく、聴いていると心にじんわりと染み渡り、感傷的でありながらそっと寄り添ってくれるようなその音世界にずっと浸っていたくなります。
claire自身が今作を発表したシカゴのレーベル〈Thrill Jockey〉を"世界一の実験音楽のレーベルだ"と述べているように、今作が同レーベルからリリースされているという点も特筆すべきポイントかもしれません。
こちらも店頭のみの取り扱いで、すでにラスト一枚となっていますのでお見逃しなく…!
さて話は戻り、もし「MODE」にご興味を持たれた方は今後も日本でイベントが行われるかと思いますので、ぜひチェックしてみてください!
最後にご案内です。現在BEAMS RECORDSでは店頭、ONLINE SHOPにてデンマークのヘッドフォン・ブランド〈AIAIAI〉のMORE VARIATIONを開催しています。ぜひこちらも併せてチェックをお願いいたします◎
それでは最後までご覧いただき、ありがとうございます。
近日中の出勤日は、7日、8日、10日、11日です。
それでは店頭でお待ちしております!
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