こんにちは。
今まで見た中で一番心に刺さった展示って思い浮かびますか?私もたくさんありますが、今思うのはプラハで見たJafa展。Arthur Jafaという映画監督兼写真家の展示。
英語とチェコ語しかない展示は、内容の理解する事よりも強い印象を感じ、”感じて考えろ”という展示。とても心に残っています。
展示会場の一つに黒幕の中でKanye Westの”Ultralight Beam”の音楽と共に流れる写真の映像作品。今、よくこのアルバムを聴くのですが真剣に世界の祈りについて考える音楽です。
さて!今回は過去の展示のアーカイブのご紹介。
タイトルにもある美術家・森村泰昌さんは私の第二故郷・大阪で住んでいた街に美術館があります。そんな森村さんに勝手に親近感を感じながら、森村さんのこと、作品集のこと福永一夫さんのことを紹介します!
◾︎森村泰昌さんとは?
1951年生まれ、大阪生まれ、大坂育ち。世界的有名な美術家です。彼の表現方法はセルフポートレート。西洋絵画や人物に成り切って作品を作る芸術家です。
絵の構成や背景のものなど細部までリサーチを重ね、ライティングやメイク、光の位置など細部まで表現しています。
人によって美術作品との出会い方は様々です。
鑑賞、制作、研究などありますが、モリムラさんは自分自身がその人物に”なること”で美術作品と出会います。
出会った後の向き合い方も様々。
完全に再現する場合もあれば、自分の解釈を取り入れ構成を変えることも。
リサーチを重ねるにつれ画家の文化的背景や、扮する人物を解釈し、モリムラさんは”日本人でアジア人の男性”という立場からまったく違うものを作品で表現することも。
販売価格:¥2,200– / 商品番号:74-82-0001-067
こちらの書籍は <なにものかへのレクイエム>シリーズ。
レクイエム:ラテン語「彼らに安息を」の意。死者の魂が天国に迎え入れられるように神に祈るもの。
B GALLERYでは2012年に展示を行いました。
20世紀の出来事で日本を(世界を)大きく動かした人たちに”成る”シリーズ。
三島由紀夫やマッカーサー、昭和天皇やチャップリン、ガンジーなどに扮する前の姿が。
メイク中や表情の確認をしている姿、撮影スタッフと出来上がりの写真を見ている姿など、すべて完成した作品ではなくモリムラさんの素の姿。

販売価格:¥4,400– / 商品番号:74-82-0006-067
こちらは2018年に展示を行った1989-2018年にわたる森村泰昌の中心的作品<西洋美術史になった私>が多く記載されている写真集。
一度は目にしたことのある西洋の絵画に扮するシリーズで、再現された作品は「流石!」の一言。
カラヴァッジョの「メデゥーサ」の表情の練習をしている姿や、べラスケスの「ラス・メニーナス」の幼女のメイクをしている姿だったり、ゴッホの「自画像」のポージングのチェック中の写真。
この西洋画なんだっけと考えながら見るのもおもしろく、また西洋画の作品の人物に成り切る森村さんの制作に対しての集中している姿は見ているだけでもドキドキします。
◾︎福永一夫さんとは?

1959年京都市生まれ。1986年、京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。商業写真家助手を経て1989年、独立。
美術館、画廊での作品撮影、展覧会やパフォーマンスなどの記録写真を中心に活動。その他、建築写真、美術誌の取材など。
福永さんは京都市立芸術大学在学中の1980年に、同大学教授のアーネスト・サトウが指導する映像教室の講義を受けるようになりました。
そこで非常勤講師をしていた森村さんと出会い、同大学大学院を卒業後、商業写真家の助手を経て独立してから、モリムラさんのセルフポートレート作品の制作に深く関わるようになります。
福永さんと森村さんは、写真作品の根幹となる画面構成のあり方について、アーネスト・サトウの教えを共有しており、そのことが互いに信頼感を持つこととなりました。
そして福永さんはその”森村泰昌のセルフポートレート作品”の写真という形で完成させる役割を持ち、またその舞台裏を小型カメラでスナップし続けてきました。
(2018年の展示会場にて)
作品を制作する段階の写真は森村泰昌のドキュメンタリーとしての役割を持っていると思います。
また作品の表情とは違う姿を収められたのは森村さんとの信頼関係にある福永さんだからこそ撮れる写真ではないでしょうか?
◾︎現在展覧会を行っている美術館のこと。
現在、原美術館では森村泰昌の展覧会をおこなっています。
「森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020−さまよえるニッポンの私」
2020年1月25日(土)~7月12日(日)※予約制、詳しくは原美術館のHPをご覧ください。
タイトルは「エゴオブスクラ」=闇に包まれた曖昧な自我
個人的な感想ですが、とてもいい展示でした。
戦後1951年生まれの森村さんが受けた(西洋の)教育を個人的経験から導き出された発想。
衣服を着替え、その人物に”成り切る”手法で、美術と出会う森村泰昌の考察は現代日本史と文化史において疑問を観者に投げかけてくるようで、自分自身も自分と社会に対しての疑問を家に持ち帰り、自問し続ける余韻の長い展示でした。
内側の空虚と外側の真理。女の衣装と男の衣装、父と母。
一貫して「私とは何か」と問い続ける森村泰昌さんの展覧会、気になる方は是非足を運んでみてはいかがでしょうか?
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