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【おすすめ写真集】あれから–ルワンダ ジェノサイドから生まれて

こんにちは。

今回は少し、いつもより真剣にお伝えしたいと思っています。

今年の2月に一気に読み耽った書籍のお話の続き。

タイトルにもあるように、今回ご紹介したい本は、

「あれから–ルワンダ ジェノサイドから生まれて」です。

 

世界中の人間の問題は昔より良くなっているという本を最近読みました。

労働の環境は良くなっていて、子供たちの学習の機会も増えている、貧困は昔より減り、戦争、内戦は少なくなっている。

ですが、絶望を知っている人たちの心はよくなることはあるのか。と戦争の話を聞いたり、強制収容所に入った人の伝記を読むといつも疑問に感じていました。

両親の虐殺を目の当たりに経験し、レイプされて妊娠し、出産をした女性の心は良くなることはあるのでしょうか?

また自分の父親が虐殺を行って、女性を犯し、周りから「人殺しの子」と言われて成長した子供たちの心は良くなることはあるのでしょうか?

 

自分がもしそんな経験したらどうするのか?

生きる事を否定してしまうのではないのか?

生きることは辛いことの連続だと、ふと考えてしまいます。

 

前に、竹内万里子 <沈黙とイメージ をご紹介させて頂きました。

竹内万里子さんはこの書籍でルワンダノートという、ルワンダの大量虐殺の際に武器としての性暴力(レイプ)された女性のインタビューと母子の写真の書籍を発行するにあたって、日々の自問や苦悩を描き綴られています。

 

その書籍をアメリカの本屋で見つけた時に、「自分が訳さないと」という使命に駆られ写真家・ジョナサントーゴヴニクに連絡を取り、日本語で発行されています。


こちらの書籍には、母親たちが語るインタビューがあります。

自身を生きる死体と述べる程、心が生きることを拒むほど想像を絶する経験の翻訳。

竹内さんの心中はわからないですが、かなりの苦痛であっただろうと予想できます。

文字にするのは多くのイメージを抱いて言葉を探し、心情や背景を考察しながら、一番適性の言葉を選ぶ作業。

  

生きているのが辛い、あの時殺してくれればよかったと語る母親のインタビューには、読むのが辛く目を背けたくなるほど。


そんな書籍が発行されてから10年経った今。


2020年に写真家のジョナサン・トーゴヴニクが母子を撮り、母と子にインタビューをした書籍を発行されました。

今回は母親と成人した子供にインタビューされていて、10年前と今の母親の心情の変化や状況の変化や子供に真実を語った時のことを話されています。

  

「あれからー」と題するこの本の中には、人間の真意の力を感じる一冊ではないかと感じます。

想像を絶する過酷な状況で産まれた子供を育て上げた母たちの思いは決して嘘は何一つなく。

子供も差別の目をもたれ、それに臆せず成長し、述べる言葉は真実と母への尊敬と感謝の言葉が多く語られていました。

この本を読んで、10年前と比べ、ほんの少し母と子たちの心は救われたように感じています。

どんなひどい状況に陥っても、人の心も良くなる。

決して生を諦めなかった、諦めきれなかった、あるいは生き続けてしまった母と子が語る静かに紡がれた言葉は読み手に自問と余韻を残します。



「完璧な文章なんて存在しない。完璧な絶望がないようにね。」

好きな作家の言葉の一つですが、完璧な絶望は存在しないというのもこのインタビューを読み、納得ができました。

人間の心は光を見つけようと常に探しているのではないかと。

 

自分ができることは、歴史の過ちを勉強し、偏見に対して正しく恐れ、人の痛みを知り、美徳に沿って生きたいと願う事。

周りのひとに対して、ポジティブな影響力を与えるような人間になりたいと誓う事。

不思議な力がある本だと感じるのは、

写真家、母子、翻訳家、様々な人たちが勇気を出して、歩み寄り、使命に駆られて紡ぎ続かれた一冊だからではないでしょうか。

 

自分も不思議な力を頂いたひとり。

多くの方に届いて欲しいと願う一冊。

 

B GALLERY、トーキョー カルチャート by ビームス(BEAMS JAPAN4階)、BEAMSのオンラインで販売しております。

 

是非手にとってご覧頂きたいです。

 

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