
プライドとリスペクトでつながった世界初のトリプルコラボレーション
イギリス王室からカントリージェントルマン、気鋭のミュージシャンにまで愛され、今年125周年の<Barbour(バブアー )>。対して、パリジャンをはじめ、北極探検隊やフランス海軍にも選ばれ、昨年110周年の<Paraboot(パラブーツ)>。そんな長く輝かしい歴史をもつ英仏の名門ブランドを迎え、<International Gallery BEAMS>が架け橋となって実現した世界初のトリプルコラボレーション。意外性がありながら、決して奇をてらったものとも違う、新鮮にして芯の通ったプロダクト。主導した3人のキーマンに、その思いや制作秘話を伺います。(text _ Naoyuki Ikura)

ともに人気ブランドなだけでなく、多くのシンパシーを感じられます
「<International Gallery BEAMS>ではモードやストリートを中心に、国内外のカッティングエッジなデザイナーや旬のアイテムをピックアップしています。他方、そうした最新トレンドばかりでなく、時代を超えてワードローブの要となる逸品も豊富にセレクトしています。シーズンごとに様変わりするラインナップとは異なり、長年にわたって取り扱いを続けているブランドたち。いわば、ショップの核でもあるそれらに改めてスポットライトを当て、私たちにしかできない新鮮な提案、スペシャルな試みをと今回のプロジェクトがスタートしました」
「そこで白羽の矢を立てたのが、長く絶大な人気を誇り、確固たる存在となっている<Barbour>と<Paraboot>です。片やイギリスのアウター、片やフランスのシューズと、何ら関連のない間柄にも思えます。確かに国や商品こそ違いますが、ブランドのもつ世界観、男好みする質実剛健なプロダクト、徹底的にクオリティを追求する職人気質なスタンス、また頑固でトラディショナルでありながら、新しいことを受け入れる柔軟性も併せ持っているなど、実のところ親和性は高い」
「さらに、ヘリテージなモノに惹かれ、本物を求めるといった点で、双方のファンの嗜好には通じるものを感じます。実際、店頭や街角で<Barbour>の愛用者を見かけると、足元は<Paraboot>という方も少なくない。逆もしかり、<Paraboot>のトランクショーにご来店いただくお客様のなかには、<Barbour>を着ている姿も散見されます。つまり、純粋に相性もいいんです」
それぞれのシンボリックな名作に、互いの看板素材を落とし込んだ
「これまでは両ブランドに対して個別に別注を依頼してきましたが、三者でのコラボレーションは世界でも例がありません。構想から約2年、長い時間を費やしてようやく完成まで漕ぎ着けました。我々がプロデューサーとなり、各ブランドのノウハウを集結&ブラッシュアップさせ、それぞれのシグネチャー的なアイテムをカスタマイズした自信の逸品です」


「まず<Barbour>では、一番人気の『ビデイル SL』を基にしています。そのアイコニックなディテールであるマチ付きのフラップポケットに、<Paraboot>の看板素材といえるリスレザーを合わせました。また<Barbour>愛好者は襟を立てて着用される方も多いので、アクセントになるようスロートラッチにも共革を使用。いわゆるオイルドカーフであるリスレザーのなかでもキメの細かい、オイル含有量の少ないタイプを選定していますが、そもそも靴のマテリアルなので撥水性に富み、雨を弾くワックスドジャケット本来の機能も損なわれていません。さらに、ポケット脇にあしらった<Paraboot>のピスネームが、さり気なくも特別感をアピールします」


「一方の<Paraboot>は、ブランドを象徴するチロリアンシューズである『ミカエル』の木型やデザインはそのままに、履き口に沿ってファブリックが切り替えられた兄弟モデルの『ミラボー』がベース。わずか2シーズンで生産終了となった幻の一足で、今でも探しているファンは少なくありません。これを今回のために復刻し、履き口を<Barbour>伝統のワックスドコットンへと変更。またシューレースホールにはジャケットのメタルパーツと共鳴するゴールドカラーのハトメを加えています」
「ともに単品でも十二分に格好いいのですが、マッチングを意識した仕様になっているので、セットで取り入れていただくと一段と完成度の高いコーディネイトへと仕上がります。もちろん定番モデルとの相性も申し分なく、お手持ちの<Barbour>や<Paraboot>に合わせるのもオススメです」

面白いチャレンジであると同時に、素晴らしい一着になると確信した
「最初にオファーを聞いたときは、正直ビックリしたよ。これまで<Barbour>では様々なブランドと取り組みを行ってきたけど、“ え! <Paraboot>? シューズ!? ” ってね(笑)。我々は依頼を受けて生産するだけのファクトリーではないので、互いにリスペクトできる相手でないとコラボレーションはしません。その点で今回は、ともに長い歴史があり、質実剛健なモノ作りを続けてきたブランド同士なのでシンパシーも感じました。私たちにとっても貴重な機会でしたし、チャレンジングで面白い経験になりましたね」

自慢の縫製技術を駆使したレザーポケットを見てください
「いくら初めての試みとはいえ、お客様に届ける以上は<Barbour>としてのクオリティを落とすことは許されない。我々もプライドをかけたトライでした。なかでも苦労したのは革の厚みです。『ビデイル SL』のポケットなどに<Paraboot>のリスレザーをに合わせていますが、シューズに使う革は厚すぎるため、私たちが扱う服地用のミシンでは縫うことができない。そこで<Paraboot>と共同でマテリアルを調整し、何度も何度も試作を重ね、ようやく適正な薄さに辿り着いた。レザーでマチを設けたうえに滑らかなカーブを描くステッチは、ブランドの腕の見せどころでした」

斬新に思えたけど仕上がりは自然。正直この相性の良さは想像以上だ
「豊かな発想力、先見の明、想像を超える情熱など、<International Gallery BEAMS>は実に強力なチームだと思います。ただ、可能と不可能のギリギリを突く難しいオーダーばかりで、いつも涙が出そうになる。しかし我々としても、それが素晴らしいプロダクトになると疑わないので、威信にかけてカタチにしているよ、泣きながらね(笑)。今回のアイデアも当初は斬新に思えたけど、仕上がりは極めて自然。<Barbour>の代表的なファブリックやパーツを取り入れつつも、その相性の良さに満足しています」

タフ&撥水のワックス素材はシューズにおいても機能的です
「歩くたびに負荷が掛かり、繰り返し屈曲、砂やホコリ、雨にさらされるなど、シューズは非常に酷使されます。そのため耐久性や経年変化といった問題から、本来であれば服地を転用するのは難しい。しかし<Barbour>のワックスドコットンは、タフなうえに雨も弾き、靴にも申し分ない素材でした。既に廃盤となっており、今回のために特別復刻した『ミラボー』は、『ミカエル』の履き口にファブリックを切り替えたモデルです。布地はレザーより柔らかいので馴染みが良く、理に適っています。メタルのハトメも相まって、よりジャケットとリンクする男らしい一足に仕上がりました」