
世界中のセンチメンタルなマインドを救い続ける偉大なるバンド、Radiohead。あらゆるジャンルを飲み込んで独自のサウンドに仕上げていくのは、歴代のロックバンド達も模索してきたところですが、消化、統合させる威力が違うといえば良いのか、とにかく独特の美しさが彼らの作品にはあると個人的には思います。そして、ギタリストのJonny Greenwoodのソロ作品を聴けば、彼がいかにその要となっているかに気づくことができます。
同バンドが駆け出しの頃も、彼のエモーショナルであまりに独特なギタープレイが注目されたことで一気に知名度を上げたり、初期代表曲『Creep』も元となったデモ音源の内容にうんざりした彼が、あのノイジーなギターを入れたという噂もあったりと、バンド内での貢献度は数知れず。ロックギタリストとして賞賛されることに戸惑っている旨をインタビューで語っている通り、クラシックをバックグラウンドに持つ彼は、ソロではサウンドトラックを多数手掛けたり、ミニマルミュージックなどの現代音楽への敬愛を見せています。
さて、そんな彼が2015年にリリースしたアルバムがリプレスされました。イスラエル人アーティストShye Ben Tzurと、インドのアンサンブルThe Rajasthan Expressとによるコラボレーションアルバムです。Shyeによる楽曲を基に、Jonnyはギター、ベース、キーボード、希少電子楽器オンド・マルトノ、プログラミングでアレンジを加えて、北インドのラーガに通じる音楽性を模索したという興味深い一枚です。文化の違いから民族音楽は聴きづらいことが多いと思いますが、シンセの分厚いキックがさり気なく入っていたり、Radioheadでも聴いたことのあるギターの音色が入ったりしているので、意外にも馴染みやすく、原曲の美学も邪魔していない絶妙な折衷具合を見せています。また、2008年リリースのRadioheadのアルバム『King Of Limbs』や、Thom Yorke、Tom Skinnerとの新バンドThe Smileの楽曲を聴いても、民族音楽との融合を感じることが出来るので、私としてはあまり変わらない温度感で聴くことができます。
古くは1889年のパリ万博によってヨーロッパにジャポニズムが浸透し、音楽家ドビュッシーもその1人であったように、またはポップスの世界でもヒッピームーブメントとともに、ビートルズらがインド音楽へと接近したりなど、西洋と東洋の文化の混淆の歴史の続きに、本作があると思います。2023年にも今度はイスラエル人であるDudu Tassaと、アラブ圏の伝統的なラブソングをベースに創り上げたアルバム『Jarak Qaribak』をリリースするなど、Jonnyの音楽への探求心は尽きませんね。いつもご馳走様です。