ご機嫌いかがでしょうか、銀座店の新井です。
暑くなってきたので基本に戻って偽マリンブレザースタイル。ブレザーにホワイトパンツってなんて素晴らしい合わせなんでしょう。そしてバンドカラーシャツって台襟があるからジャケットの襟周りをちゃんと守ってくれるのでクルーネックよりもジャケットに優しいって最近痛感してます。おじさんになってくると皮脂の分泌って増えてくるもんなんですね。
毎日お店に遊びに来てる感覚なんですが、流石に着てく服を新調するとメチャクチャ楽しくなるのは老若男女関係なく理解できる人ばかりでしょう。やっぱり気持ちよくてテンション上がってスキップ気分になっちゃいます。
とは言ってもこの二十数年の服飾の仕事人生で、アホかっていうくらい何十着も背広を作ったり毎年何百品番も企画生産してたりとすると、新しくヤバい位に欲求にかられるビビッとくる服には出会えないものです。

正直昨年から始まったこの堀切氏による<TOO SOON TO KNOW>もウチの若い子達を中心とした歓喜の声に少しだけしらけた感情を持っちゃってる大人気ない僕でした。

春の新作も揃い始め、少しずつ接客する機会も出てきましたが、意外や意外、この服目的のお客様が試着して買う確率が異様に高め。多分僕は100%です。特にパンツが大好評。もう少しプライスが抑えめのカノニコのスーパー120位の生地でやったらもっともっと売れたんじゃないかなーって。
この間もどう見ても同業者の服作りの方がサンプルで抜くんだろうなーって感じでパンツ買われていきましたし。お会計で領収書くださいって間違い無いでしょう笑。
ブランド名も何だか長いから90年代に一時期流行ったやたらと長い題名の邦楽ポップ達を思い出してニヤニヤしてましたが、知るには早すぎるってニュアンスも考えれば考える程に僕のハートにズキズキと矢が刺さり出してくるんですよね。
その文面や題名だけで心の何処かに響くってフレーズが昔から大好きで、多感な10代の頃なんてその自分の混沌とした揺らぐ感情を表現するフレーズがこの世には絶対に有るんじゃないかって年間で300冊は本を読み漁ったり、3000枚はCD買って歌詞カードを破れる位に読み込んだり。なので必ず洋楽は国内盤の歌詞カードと解説付を買う派でした。星々の悲しみとかわらの犬とか生きてこそとかそのワンフレーズだけで涙腺が少し緩みそうになる瞬間を求めて生きてるのかも知れません。

TOO SOON TO KNOW/スキンズスーツ
カラー:ブラウン、グレーチェック
サイズ:44〜48
価格:¥132,000(税込)
商品番号:23-17-0004-693

TOO SOON TO KNOW/ミニマルスーツ
カラー:グレー、ネイビーストライプ
サイズ:44〜48
価格:¥127,050(税込)
商品番号:23-17-0003-693
そりゃー僕みたいな捻くれた服作りをかじってたオッサンからするとヘンテコなデザインとか縫製の若干の甘さとかモノを言うのはナンセンスの極みってもんでしょう。でも考えれば考える程にこんなドレスアイテム企画は他じゃ出会えないって思うんですよね。最近は海外コレクションブランドがヤバいくらいに気が付いたら値上げの一途でもう買える訳が無くて、国内のデザインブランドを目にする機会も増えてきましたが、堀切氏の服はその中でも抜きん出た神格的な存在って事を再認識させられてる気がするんです。毎日この<TOO SOON TO KNOW>の服を目にしてますと。
半年に2回ぐらい休日に仕事なんだか趣味の一貫なんだかで、東京中の洋服屋さんを片っ端から巡る誰にも頼まれてない恒例行事パトロールが有るんですが、やっぱりこの絶妙なさじ加減のドレステーラードアイテムを置いてるセレクトショップもブランドも見かける事は出来なかったです。もっともっと浮世離れのアバンギャルドは勿論有りましたが、この適当に合わせても様になるイイ塩梅加減といいますか、凡庸な僕でも気負わずに着れる適度なファッション感といいますか。
女性が着たルックスを見ちゃったらもうダメでした。完全に僕はときめいちゃいました。流石に全部は買えないので渾身の1着を選ぼうと思いますが、
何だかのっぺらぼうスーツも
目が一杯の妖怪みたいなスーツも
デビッドさんみたいなバーンとロボットダンスしたくなるジャケットも
どれもこれもちゃんと大人のおっさんが着ても大丈夫な高級感もあるし、ちゃんとドレスアップしてもダルダルにパジャマみたいに着てもカッコよくなるしで、もう僕には選べません。ここ毎日暇があればどれにしようか悩む時間が最高の至福の時なんですがね。
でも20年くらい前の大先輩のおじさん方がよう言ってたなぁー
「外しとか着崩すって何なんだよ、そもそも正しく着る事をまず完成させなさいよ」
僕がこのブランドのコレクションを見た時に真っ先に思い浮かんだのは自由奔放なドレステーラードって表現でした。若い子達は素直に着崩して思い思いのモードスタイルに上手にはめていってるのがホントに素晴らしい。スーツをファッション的な解釈でスタイリングすると言うその服に対して素直に向き合うのっておじさんからするととても気持ち良くて。凡庸な僕はやっぱり天邪鬼になってこのブランドを反対にちゃんとドレスアップして着ちゃうんでしょう。

こんな感じが素敵です。
合わせは正統なのによく見るとスーツの形がヘンテコとかの雰囲気って面白い。
それにしても服のデザインの前段階でブランド名だけで脳に訴えかけてオーバーに言えば欲しくなっちゃう気持ちになる服って流石に今まで無かったと思います。
言葉によってその服を着る動機を作るってまず無いでしょう。
僕はもう着たくて仕方がありません。
表題はクイーンの出世作とも言える狂詩曲。
Bohemian Rhapsody。
rockarchive/QUEEN
価格:¥86,900(税込)
商品番号:23-83-0126-950
彼らもデビュー当初はイギリスでは泣かず飛ばずで、少女漫画的なエレガントな容姿と分かりやすい音楽性とで日本で最初に人気が出たのは有名なお話し。そんな彼らが次なるステージへと打ち出したプログレッシブなこの曲は全世界で熱狂的に迎えられました。
自由に生きていれば
少しの良いことや嫌なこともあるよ
大したことじゃ無い
いずれにせよ風は吹くのさ
ママ、いずれにせよ風は吹くのさ
終えたくないよ
時々はいっそ生まれてこなければって思うんだ
フレディのよるこの歌詞は、彼が本当の自分を取り戻し、風の様に自由に生きていきたいという願望の様。
<TOO SOON TO KNOW>
従来のテーラードスーツに囚われてしまった僕の概念を吹き飛ばし、新しく生まれ変われると思わせてくれるドレススーツなんでしょう。
全部分かるのはまだ早い。
僕にとっては自由の風を感じるとともに謙虚さを忘れずに背筋を伸ばしてくれるスーツかも知れません。
銀座でお会いしましょう
新井