Ellis Ericson Edge Board

Ryoichi Igarashi 2021.04.16

前回からの続きです。


こちらのボードを心待ちにしていた方も少なくないのではないでしょうか。今回は巷で話題の、Ellis Ericson Edge Boardのご紹介です。こちらもPilgrim Surf+Supply Kyotoでのお取扱いになります(渋谷店では、昨年の入荷から瞬く間に完売。今月末に追加入荷が控えておりますので、そちらもぜひ楽しみにしていてください)。さて何からお話をするべきか、正直このBLOGで全て完結させることは、恐らく無理であろうこのエッジボード。お伝えしたいことが多過ぎるので、掻い摘んで分かり易くお届けできればと思います。


まずはじめに、エッジボードとは何なのか?1960年代後半から1970年代初頭に、鬼才George Greenoughが開発したと言われている、元々は長い歴史を持つデザインの一つ。現代サーフにおいて、Georgeさんが成し得た功績は、皆様もご存知の通り、ここでは言い切れ無いほどに多大な影響を世界中に及ぼしてきました。昨今では、AndreiniやAndrew Kidman、そしてEllis Ericsonが当時のEdge Boardのデザインにフューチャーし、新たな開発に取り組んだことで、一躍Edge Boardというデザインが再び世に知れ渡ることになりました。


Ellis Ericson Edge Board 7'0" x 21 3/8" x 3

鬼才George Greenoughが元々持っていたテンプレート(パターンと言えば分かりやすい)を使用し、エリスとジョージさんが共作で製作をはじめたのが、こちらのEllis Edge 1st model。Edge Boardの魅力はなんといってもテイクオフの速さ、そしてライディング時のスピード。自らシェイプしているエリス本人でさえも、そのスピードに驚いてしまうほど、その圧倒的な速さは折り紙付きです。そこにこれまでのEdge Boardには無かった、高い操作性能(よく動きます)が加わるのですから、サーフボードもどんどん進化が進んでいる事が伺えます。


デッキ面はこのようにWHITEで統一。エッジがあるボトム面にカラーを入れているのもポイントです。ちなみにPilgrim Surf+Supplyで展開しているカラーは限定カラーなので、他では展開していないカラーになる。いわばスペシャルカラーでのご提供です。では7'0"のEdge Boardがもたらす魅力とは何なのか。通常7'0"のミッドレングスボードで大半の方が想像するのは、「ショートボードだとやや物足りないスモールコンディション用」という風に捉えている方も少なくないはずです。ではこのEdge Boardはどうなのか?それは波のサイズが大きければ大きいほど本領を発揮するボード。それに加えてパワーの無い小波でもグングン走っていく。というなんとも信じがたいフレーズが出てきます。「あらゆる波に対応するマジックボード」みたいなフレーズはよく耳にしますが、このボードを既に持っていて実際に乗っている方の話を聞いてみると、「もうこのEdge Boardはもはやそんな次元のレベルではない」というような、かなり興奮した感じで皆口を揃えて同じような事を言っています。7'0"のEdge Boardは、ミッドレングスが得意な方、またはトライしたい方にお勧めできます。私自身は元々ショートボードからツインフィッシュ、ミッドへと移行したタイプなので、そんな方にもぜひお勧めしたいと思います。


Ellis Ericson Edge Board 5'8" x 20 3/4" x 2 3/4

サイズレンジから見ても、こちらはよりショートボードに近い感覚でサーフィンが出来るEdge Board。今までのEdge Boardで、ここまでレングスの短いEdge Boardは個人的に初めて見ました。


それにも実はちゃんとした理由があって、これまでのEdge Boardはどちらかと言えば、「Edgeを活かしたスピード重視のサーフボード」というのが主流でした(これはこれで私は好きなんですけど)。何故今EllisがEdge Boardを作って、これだけの脚光を浴びているのか、それはこれまでに不可能だったバーティカルな動き(縦の動き)にも対応出来るように改良をした、というのも大きな理由です。分かり易く言えば、今まではスピード特化型しかなかったボードに、コントロール性能を加えた、という事です。簡単そうに聞こえるかもしれませんが、EllisはこのEdge Boardを製作するにあたり、5年間研究を重ね、その完成系としてこのEdge Boardを満を持して世に送り出しました。言わば、今まで誰も成し遂げる事が出来なかった事を、Ellisがやってのけた。それが時代の風雲児として一躍脚光を浴びている要因の一つなのです。そしてこの5'8"のEdge Boardは、サイズからも読み取れるように、いわゆるショートボードが得意な方にお勧めしたいです。ただし、厚みが2 3/4と通常のショートボードに比べると厚いので、浮力は十分にあります。体重80kgの男性でも難無く乗りこなせるボードという事も追記しておきます。


もちろん全てにおいて、ハンドシェイプ。Edge Boardは、その特異な形状から通常のデザインのサーフボードと比べて、シェイプするのに何倍もの時間がかかります。そしてラミネートに関しても、通常のサーフボードの2倍から3倍の時間を要し、さらにはかなり難易度の高い技術が必要なので、シェイプもラミネートも簡単に出来るファクトリーも実は世界基準で見ても、非常に少ないのです。こちらのラミネートは日本で行われており、Ellis自身も実際に日本のラミネートファクトリーを訪れ、そのクオリティの高さに驚いたそう。なので日本に入ってくるEllisのEdge Board(年間40本までしか入ってきません)は、Ellisがオーストラリアでシェイプを終えた後に空輸で日本へ、着後日本のラミネートファクトリーにて完成させる。そういう流れになります。


そしてもう一つ。Ellis Edge Boardはこのパワーブレイドフィン無しでは完成とは言えません。TRUE AMESに特別に製作してもらったBarry McGeeのアート入りフレックスフィンが必要不可欠となります(※単品での販売はしておりませんので、ご注意ください)。サイズは7'0"も5'8"も全て共通の7.8です。

Ellis Edge Boardのパワーブレイドフィンの付ける位置は、フィンボックスの一番後ろに装着します。ここ、とても重要です。以前に、フィンは前方に付けると回転性が増し、後方に付けると直進性が増す、という話をしました。ということは、このEdge Boardはフィンを一番後方に付けているから、直進性に特化したボードになるのか?という疑問が出てきます。しかし、答えはNo。このEllis Edgeに関してだけ言えば、フィンは最後尾に設置し、パワーブレイドフィンのフレックス性能の高さを活かし、操作性を高めているのです。通常サーフボードを操作するポイントは、フィンの真上に後ろ足を置いて、ターンをするのが基本です。例えばフィンの上では無く、フィンの付けた位置よりも前方に後ろ足を置いてターンをしようとすると、全くボードが動いてくれないのです。多くのサーファーは、この内容はすぐに理解できると思います。しかしこのEllis Edgeに関して言えば、フィンを付けた真上に足を置くのではなく、フィンの付けた位置よりも、前方に後ろ足を置いてターンをします。そんなことはこれまでの常識から言えば、到底あり得ない話なのですが、その基本的な理念が良い意味で一切通用しない、全く新しいサーフボードということになります。それでいてこのEdge Boardの特徴でもある操作性能の高さ(リッピングも可能です)を考えると、もはや異次元としか言い様がありません。これまでの常識を大きく覆したシェイパー、その張本人がEllis Ericsonなのです。そしてこのBLOGでは正直お伝えできない部分(実際のライディングレポート等)に関しましては、Ellis EdgeマスターでもあるRIDE SURF+SPORT代表、柴田さんのBLOGもぜひチェックしてみてください。


簡単ではありますが、以上でPilgrim Surf+Supply Kyotoにあるサーフボードのご紹介を終わります。手前味噌ではありますが、とても面白いボードが揃っていると思います。Joe FalconeとEllis Ericson、実はニューヨークとオーストラリアの距離感がありながらも、JoeとEllisは良き友人同士でもあります(確か歳も近かったような)。新進気鋭のシェイパーとして世に名を馳せるEllisと、今ではMade in New YorkのローカルヒーローJoe。2人が織り成す見応えあるラインナップを是非お見逃しなく。




それではまた次回