6'2" ELLIS ERICSON EDGE HOTWIRE RED

Ryoichi Igarashi 2021.07.13

前回からの続きです。


久しぶりのニューボードのご紹介です。

一昨年のEDGE OF A DREAMの発表から、瞬く間に一躍「Edge Board」を再び世界中に広げた立役者となったEllis Ericson。そのEllisのEdge Boardが今回3本Pilgrim Surf+Supplyに入荷いたしました。渋谷店での前回入荷分は早々にSOLD OUT。そこからオーダーをしていた分がようやく店頭に到着いたしました。もちろんシェイプはEllisのオールハンド、ラミネートは日本のファクトリーで行われています。


そして今回、Pilgrimでは初のお披露目となる「HOTWIRE RED」というニューモデルのご紹介です。RIDE SURF+SPORTに足繁く通っていらっしゃる方や、RIDEの柴田さんのBLOGを熟読している方はもう既にご存知かと思いますが、こちらでも改めてご紹介させていただきます。


SIZE : 6’2” x 21 3/8 x 2 7/8

まずはこのHOTWIRE REDが、1stモデルのEdge Boardと比べてどのように変わったのか、今回はその辺りをメインに個人的な主観を含めてお届けさせていただきます。HOTWIRE REDのアウトラインについて、1stモデルとの大きな違いは大きく分けて3つあります。

1. ノーズが丸い 

2. ワイドポイントがやや後方にズレている 

3. テール幅が広い

上記した3つのポイントが、1stモデルとの大きな違いと言えるでしょう。ではこの3つの特徴がどのような性能を発揮しているのか、考えてみます。まずこのHOTWIRE REDを一言で表現するのならば、「パフォーマンス重視のEdge Board」。この言葉がしっくりくると思います。このワードを頭の片隅に置いていただくと、これからの説明が理解し易いはずです。1. のノーズが丸くなっている意図は、スピードが持ち味のEdge Boardにおいて(一般的なサーフボードよりも遥かに速いスピードを持っています)、「風の影響を受けにくくする為のデザイン」と「スピーディーなライディング時でも安定したターンを可能にしている」という点です。前述したパフォーマンス重視のEdge Boardとは、言い換えれば1stモデルと比較して「ターンがし易くなった」ということになります。そのターンをより快適に操作する為の効果的なディティールがこの丸みを帯びたノーズなのです(ノーズが尖っていない分、風の影響を受けにくいという原理です)。2. のワイドポイントが後方にズレたということは、ボードを回す(ターンをする)際のウエイト(重さ)が後方に下がり、ノーズ(前方)が軽くなったことによって、よりアグレッシブなターンを可能にしてくれているのです。3. の幅が広くなったテールにおいては、もう少し後に出てくるテールの画像のところで改めてご説明いたします。


厚みが2 7/8という事もあり、けっこうしっかりとした厚さが感じられると思います。そしてこの厚みこそがスピードを出す為の水面に接する部分であり、浮力があればその反発でグングン進んで行くという仕組み。Edge Boardはロッカーを強めに入れるというよりかは、ボトムの真ん中あたりから、ノーズとテールに向かって薄くシェイプしている。というような印象です。この辺も比較的厚みのあるボードならではのディティールかと思います。


1stモデルと比べると、HOTWIRE REDのテール幅はやや広く、テール幅が広い分(テイクオフの時に幅があるとテールを波が押してくれる)、波をキャッチする事に優れています。かと言って小波用に特化したボードという訳ではありません。EllisのEdge Boardは、「波のサイズが上がれば上がるほど機能する」という事を念を押してお伝えしておきます。それでいて小波でも普通のショートボードでは抜けられないようなセクションも抜けられるのですから、大抵のサーファーなら誰しもがそんな夢のようなサーフボードに、いつか乗ってみたいと考えていると思います。


そしてテール部分、ボトム側のエッジが終わる位置にご注目ください。


※画像手前がHOTWIRE RED、奥2本が1stモデル

HOTWIRE REDは、1stモデルよりも高い位置でエッジを終わらせている事がこの画像から見てとれます。ここが重要なポイントです。

前述した「パフォーマンス重視のEdge Board」を分かり易く言い換えると、「1stモデルよりも遥かに動かし易い」または「ターンがし易くなった」という事になります。では何故このエッジが高い位置で終わってる方が動きがいいのか考えてみます。それはターンをする時の水の抵抗(引っ掛かり)によるところが大きいです。基本的にターンをする時は、テール部分に後ろ足を置いて、テール(後ろ)を軸にノーズ(前)を動かしてサーフボードを回転させます。1stモデルのようにエッジをテールエンド(一番下の最後)まで入れた時にターンをすると、エッジがあるとどうしても少し引っ掛かりのようなものが感じられます。それはそうです、エッジは簡単に言うと「段差」みたいなものですから、シンプルにその段差で水の抵抗を受けてしまう事は避けられません。では逆にHOTWIRE REDのテールエンドならどうなるか、答えは簡単です。エッジを高い位置で終わらせているので、1stモデルに見られた“引っ掛かり”のようなものが無くなり、シンプルにエッジが無い分、スムーズにテールが滑り易くなり、ターンのレスポンスが非常に良くなる仕組みに変貌を遂げているのです。EllisのinstagramのHOTWIRE REDに乗っている動画をよく見ると、このEdge Boardをスラスター並みに動かしながら乗っている動画もあったりするので、気になる方はぜひチェックしてみてください。ただでさえ1stモデルの発表から、「こんなに速くて動くエッジボードは過去に見た事が無い」と世間を賑わせたにも関わらず、それに満足せず、さらなる操作性能の向上に努めたEllis。この男のサーフボードへの飽く無き探求心は、何処まで行けば辿り着くのか、とどまるところを知りません。


この部分がエッジです。まるでレイル(側面)とボトムの間にもう一つのレイルがあるかのようなデザインが大きな特徴とも言えます。では何故エッジボードがスピードに特化したデザインなのか?この辺りにも少し触れておこうかと思います。一般的にスピードが速いサーフボードってどんなデザイン?と聞かれたら、私なら「ガン」とか「グライダー」などの「細くて長いサーフボード」を頭に浮かべます(日本では海外ほど、殺人級のサーフィン可能なビッグウェーブはそうそうお目にかかれないので、「ガン」は特に日本人サーファーの所持率は極端に低いでしょう。「グライダー」も長さが11ft以上あるので、小さい家が多く、道路も狭くて車も小さければ、日本だと持ち運びや収納場所に困るので、これも所持している人はほとんどいないと思います)。では何故「細くて長いサーフボード」が速いのか、それはサーフボードが水面に接する面積によるところが大きいです。このエッジボードで考えるならば、波の上を滑走している時にボードと水面が接しているのは、エッジとエッジとの間(カラーが入っているボトム部分)になります。このHOTWIRE REDの幅は21 3/8ですから、滑走中の水面に接している部分がエッジとエッジの間となると、21 3/8の幅よりも細い面積で滑走している事になります。分かり易いかどうかは分かりませんが、船で例えて考えてみます。めちゃくちゃデカイ豪華客船と1人乗りのジェットスキーでは、どちらの方がスタートのスピードが速いか?恐らく大体の方がジェットスキーと答えると思います。この原理でサーフボードに置き換えると、幅広のロングボードは小波にこそ安定感あるテイクオフと安定したライディングを楽しめる一方で、サイズが上がってグリグリに掘れた波ではテイクオフですら危ういです。その一方で幅が細く厚みの少ないトライフィンは、サイズとパワーのある波でこそ機能しますが、ヒザモモ程度の小波では浮力が少ない分テイクオフですら危ういです。話が少し逸れてしまいましたが、エッジボードのスピードをもたらしているのは、あのエッジとエッジとの間が、波の上を走っている時の水面に接している部分であるからこそであり、それこそがスピードに特化したEdge Boardの大きな特徴と言えるのです。


そしてEllis Edge Boardはこちらのパワーブレイドフィン無しでは完成ではありません。このフィンあってこそ、今までにあり得なかったEdge Boardでのアクションが可能になります。※こちらのフィンは別売ですが、単品での販売は致しかねます。ボードとセットという認識でお考えください。


このボードのレングス(ボードの長さ)を選ぶポイントは、だいたいフィッシュボードを選ぶ感覚で長さを選ぶと入り易いそうです。Pilgrim Surf+Supplyでは、最近6ft台のフィッシュボードだったり、ミッドレングスの問合せをよく受ける関係で、6'2"ftのレングスをチョイスしました。短過ぎず長過ぎず、それでいて安定感もあってターンも容易。通常HOTWIRE REDは6'0"以下でのオーダーしか受けていませんが、今回はあえてより様々な波とあらゆるレベルのサーファーに楽しんでもらいたいという願いから、このサイズでご提供させていただきます。

どちらかと言えば、ロングボードやミッドレングスメインで普段サーフィンをしている方には1stモデル、ショートボードやフィッシュボードメインの方にはHOTWIRE REDモデルをオススメいたします。


6'2" ELLIS ERICSON EDGE HOTWIRE RED


気になる方は店頭スタッフまでお気軽にお問合せください。




それではまた次回