Thom Yorkeをただ褒める回

yutaka yanagi 2024.07.23


11月には単独での来日公演が決定しているThom Yorke(トム・ヨーク)。最近ではバンドThe Smileでの活動が注目されていますが、ソロとしてはおよそ5年ぶりとなるアルバムが発売されました。今回はDaniele Luchetti監督による映画『Confidenza』 のサウンドトラック。上述バンドの最新作でもプロデューサーを務めたSam Petts-Daviesと、ロンドン・コンテンポラリー管弦楽団、またバンドメンバーでもあるトム・スキナーを含むジャズ・アンサンブルとも協働して制作されました。その影響か、前回のサントラ作品『Susperia』以上に音の厚みや深み、バリエーションにも富んだ内容になっており、影のある美しい音世界を聴かせてくれます。先行リリースされていたボーカルトラックからは特に、彼のソングライティングやボーカリストとしての素晴らしさを再確認させられました。

さて、メラメラとThom Yorkeの魅力を力説したくなってきました。どうかご容赦頂けますと幸いです。

特に尊敬してしまう点はまず、音楽に対する柔軟性と意欲、そしてソングライティングのセンスです。Radioheadとしてはアルバム毎に、抒情的なロックからフォーク、プログレ、ソウル、IDMやテクノ、ジャズ、クラウトロック、ダブステップ、ミニマル、アフリカ音楽、インド音楽、ポストクラシカル等々、大きく作風を変えてきたことは周知の事実だと思います(歴代の作品毎にジャンルをきちんと並べる自分の恐ろしさに震えます)。そして、それらのジャンルを全て彼ら自身の味に昇華しているところが秀逸です。むしろどの曲も強い独自性を持っているので、もはや実験途中で終わらせたかのような印象を私としては受けます。それが故に聴いた瞬間には評価が難しく、ライブで披露されて初めてその良さがわかる面白さと、いつ聴いても新鮮さを保っているように感じます。バンドメンバーと共に作り上げているので、彼だけでの功績でないことは当然ですが、ソロでも、Red Hot Chilli PeppersのFleaらと結成したAtoms For Peaceでも、現在のThe Smileでもそれは共通しています。そして、殆ど全てが歌モノとして完結しており、キャッチーなメロディを乗せて、聴き馴染みの良い楽曲に仕上げているところも素晴らしいと思います。私としては彼らのお陰で、これらのジャンルを聴くきっかけを頂きました。

次に、社会問題に積極的に関ろうとする姿勢について。例えばアルバム『OK Computer』では資本主義とグローバリズムについて、『KID A』では環境問題、食品問題についてなどをテーマに制作していました。EMIから独立後の2007年には、アルバム『In Rainbows』を突如自社HPからデジタルで発売し、価格をネット上でリスナーに委ねました。この出来事は当時の音楽の分野だけでなく、マーケティングやITの分野としても画期的で、多くのメディアでも取り上げられ、今でもその影響下にあるものは多く浮かんできます。また、YouTubeやSpotifyが台頭してきたときには、Thom Yorkeは異議を唱え、特に次世代のアーティストへの影響について強く主張していました。エネルギー問題、環境問題についても今から20年以上前から発言を続け、それだけでなく、Radioheadのライブ時にはソーラー発電での電力を使用していました。多くの人が移動することによって生じる環境への影響を配慮して、単独ツアーをやらずにフェスのみで出演したりと、ミュージシャンとしての立場から実際に行動を起こしているところも素晴らしいと思いました。(つい最近までThe Smileでは単独ツアーを行っていたので、また違う最適解を見つけているのかもしれません。)

さらに、後進への影響も計り知れません。Robert GlasperやChristian Scott、Brad Mehldauらジャズ系から、Christopher O'Rileyらクラシック系と、同じロックだけでなく幅広いジャンルの方々がファンを公言若しくは、カバーを披露。近年でもLianne La Havas、Kelly Lee Owens、Puma Blue、Jordan Rakeiらによるカバーも話題になりました。かつてRadioheadのサポートアクトを務めたこともあるFlying Lotusもその一人ですが、反対に彼のパフォーマンスをThom Yorkeが影響を受けて、2011年のアルバム『The King Of Limbs』の収録曲が生まれたというエピソードもあります。一方的なリスペクトだけでなく、互いに影響を与え合っているのも良いですよね。

と、まだまだ序の口ですが、これ以上熱く語るとエアコンが壊れるのでこの辺りで一旦終わりにしておきます。