ご機嫌いかがでしょうか、銀座店の新井です。

ブレザーにスウェットパンツ。
このスタイリングが好き過ぎてここ数年は全然進歩がないなと反省してます。今期はちゃんとタイドアップしていこうとは考えてます。

BEAMS F/ハンドラインシングルブレザー
カラー:ネイビー
サイズ:42〜52
価格:¥105,600(税込)
商品番号:21-16-0310-015
今年も安心のクオリティで入荷が始まりました、ハンドラインブレザーモデル。前シーズンモデルとか生地替えのオーダーモデルとか持ってるのに毎年新作を見ると愛おしくなって買いたい衝動に駆られちゃうからホントに不思議な魅力です。今年のは去年のよりもなんだかふんわりソフトなフランネル生地の仕上がりの様でコレはコレでまた良いなって。
今や何処のメンズブランドもレディースブランドも大体展開してるんじゃないかって位にメタルボタンのブレザーを店頭で目につく様になりました。自分がBEAMSに何とか潜り込めた20年前にはシルバーメタルのブレザー位しかやってなくて、銀座店のオーダーの主みたいに長身細身のオールバックでメチャクチャに怖い大先輩のキクチ先生だけがビスポークであつらえたフロント8個の金ボタンのダブル着てた記憶です。経歴はあるブランドの靴の企画デザイナーとか渋谷のキャンプスってセレクトショップの店長やってた人なんですが、その時は無藤さんと一緒に<Brilla per il gusto>レーベルを立ち上げて店頭に立ちながら商品作りに携わってた人でした。結局あるあるで慣れてくればとってもイイ人でした。
落合先生の著書で世界共通でビジネストリップに万能で荷物が少なくて済む必須のジャケットは濃紺の上質なブレザー一択だと言う名言に感化されてましたが、リアルにブレザーをその都度ガラッと違う合わせ方で見とれてしまう位に格好良く着てたのはその銀座店のその人でした。
その当時バカ売れし出した大人のイタオヤ必読のファッション雑誌の表紙撮影に彼のそのダブルブレザーが使われてたのは勝手に誇らしげに色んな人に自慢してましたし。
ある日はそのブレザーにホワイトウールトラウザースで太幅のストライプタイでドレッシーに着こなせば、またある日は真っ赤なコットンパンツにベルベットのライオン金刺繍がはいったルームシューズを合わせてたり。流石にその当時にイギリス製の誂えたブレザーをイタリアンだかフレンチだかアメリカンだかをクロスオーバーさせて颯爽と着こなすスタッフは群を抜いてその人でした。
数年後にはその人と一緒にBEAMSを飛び出して銀座の8丁目で路面のセレクトショップを立ち上げるのですが。そしてその店でもアイコンとして男性も女性もスタッフ全員が毎日ブレザーを着るって次第で。
ヴィンテージの時計とかイギリスのシェービンググッズとか硬派な芸術系の本とかジャズの名盤レコードも展開してたりBelvestのジャケットは肩にレザーのガンパッチが付いたハンティング仕様にしてたりアイリッシュリネンの10ボタンのダブルブレザーセットアップやったり真っ赤なパイピングスクールジャケットやったり紳士用のマントを沢山仕入れてたりと本当にヤバいショップだったなー。
死ぬほど入りにくい外装と重い扉なんですが、トラッドが好きなお客様が入っちゃうと数時間近く楽しめちゃう小さい博物館みたいな笑。
その時にはスタッフ半分が女性だったので、一緒にブレザースタイルを考えてあげるのも楽しくて仕方が有りませんでしたし。だって女性の服のが男よりも何倍も着方のバリエーションがあって自由度も高くて華やかさがあって。
その時もその長身の大先輩は連日群を抜いて格好いいブレザースタイルでしたね。勿論その次の日には必ずといっていいほど僕がそのスタイリングをパクる日々。真似をするのが1番成長の近道ですよ。後にも先にもそれ程に感化されて刺激を受けたスタイリングをする身近な人は彼だけかも知れません。いや、あと2人はいるかなー。
結局その大先輩と一緒に働けたのは1年間だけでしたがお店が暇な分1日中テーラードの世界とか映画とか音楽とかスタイリングのロジックとかお話が出来たのは自分にとっての宝物みたいな時間だったと思います。
あとはその人を訪ねて日本の紳士ファッション業界の重鎮達がひっきりなしで来店されて色んなお話を横で聞いたのもめちゃくちゃに面白かった。
結局その店もブランド自体も2年で終了してしまいましたが、ホントに僕の人生に彩りと豊かな経験を与えてくれた時間だったと思います。

みんなブレザーの合わせをしてるのを拝見するとアメリカントラッドを軸にしたスタイリングが多いなーいう印象ですが、やっぱり往年のVAN世代に近いおじ様達はアイビーを意識したそれこそ流行に殆ど左右されない着方がホントにブレなくて素敵だといつも思います。なんだかんだ言って自分の生きてきたストーリーを大切にパーソナルなスタイルを確立してるのがカッコいいんですよね。
そんなおじ様方が昔みたいにアイビースタイルをまたするのは懐古主義みたいで変かなー?と聞かれる事も有りますが、全くの逆でそのブレない昔から板に付いた着こなしがホントにかっこ良すぎて羨ましい位です。だからアイビーをリアルに体験していたキクチ師匠が痺れる位にカッコよかった筈ですし。あの当時の日々のスタイリングを写真に残しておけばよかったとマジで後悔してます。

まあそれだけブレザーというひとつのアイテムだけで世代も性別も飛び越えて人それぞれ千差万別の着方になるという最早時間を超越して残り続ける素晴らしい服となっていると思うんです。
コレばっかりは何故かみんな着て欲しいって思うし、みんなブレザー被りしても着方が様々なので全然に恥ずかしいとか思う事は無いんですよね。
いつも出勤の時にすれ違うよく紺ブレを着てる女性がいるんですが、お互いブレザー着てるもんだから勝手に僕は親近感抱いちゃってるのは流石にヤバいよなーって笑
ブレザー着てればそれだけでみんな仲良しになれる様な何だか不思議な服の魅力がある気がしてたまりません。
僕はバカだから相変わらず半年に1着、年に2着を毎年ブレザー買い足してますしね。
僕と一緒にこのブログを読んでいる皆様も是非ブレザーをめぐる冒険に発つ事を願って。
表題はフランクシナトラ御大の唄う哀愁のストリングスが胸に響く、
strangers in the night
rockarchive/FRANK SINATRA
価格:¥66,000(税込)
商品番号:23-83-0087-950
曲中では見知らぬ者達が視線を交わし、出会ったその夜に恋に落ちていくロマンスを歌われていますが、僕はもっと男女の恋愛に留まらない解釈で最近は聞く様になった気がします。
3年間の顔が分からないマスク同士でとてもじゃないけど顔が覚えられない日々。ようやくマスクを外して色んな人たちの顔がちゃんと見えて通り過ぎる事でさえも幸せを感じるんです。
見知らぬ同士がちゃんとお互い顔が見えて出会う事が、それだけで人生を楽しく豊かにしてくれるってこの半年は毎日の様に感じてます。
見知らぬブレザーを着た者同士がその夜に。
そんな夜の出会いがあってもいいですよね。
それでは夜の銀座でお会いしましょう。
新井