ご機嫌いかがでしょうか、銀座店の新井です。

最近は皆さんニットカーディガンをお探しの方が増えてきました。
入り口棚コーナーではここ5年で瞬く間に各セレクトショップを座席してしまった国産ニットブランドのスローンさんが大分品揃えが揃ってきましたね。

ジョンスメドレーばっかり絶賛してましたが、日本パンツブランドのタンジェントさんよりも早くに頑張ってるブランドがいました。このスローンさんです。企画を長年やってましたので女性ファッション雑誌なんかもほとんど目を通すのですが、ここ数年で色んな女性ファッション誌で特集されてるのがこのニットブランドですね。気が付いたらウチもかなり展開広がってました。びっくりです。
店頭でも必ず上品な佇まいの男性なんかはこのブランドをリピート買い目的で来店されるケースが多い印象です。
でも考えて見ると、私の人生のニットブランド着用変遷を振り返ってみても、日本国内ブランドで着てるニットはあるブランドを除いて皆無な事に気が付きました。
高校生の頃はまだ宇都宮で、お洒落ピープルを気取ってオリオン通りという商店街でしこたま時間を潰してたのですが、その時に毎日通ってたGIOTTOって名前のインポートセレクトショップで購入してたイタリアニットがデビュー戦でしたね。16歳でいきなりイタリアモードブランドのニットでデビューなんて、今思えばかなり早熟。
そのお店のオーナーのおしゃれおじ様は学生の頃にビームスでバイトもしてたらしく、その縁でプロフェッサー栗野氏とも仲良しで相当早いブランドチョイスでした。その当時はアントワープ勢等を筆頭にモードトレンド真っ盛りでしたが、宇都宮の県庁通りという少し閑静な通りで何故かリノレオネッリ、ジャンコロナ、ポール&ジョー、キャロルクリスチャンポエル、マックイーン、コレクションプリベェ、コスチュームオム、ケビン、マリオマッテオ等今考えればかなり尖ってましたね。
そしてデビューニットはリノレオネッリのオレンジのローゲージリブタートル。テレビでジャニアイドルも着てたのでドヤ顔でオリオン通りをチャリ乗ってぶらついてました。思い出すと恥ずかしくも微笑ましい。
とりあえず全身ジャンコロナとかポエルで武装しても、宇都宮ではオシャレ自慢で遊ぶとこなんて皆無だったので、週末に3時間近く電車を乗り継ぎ六本木まで遠征してました。
早めに着いたら原宿のビームス2階に寄って今のレジェンドスタッフの方にガキなので相手にされず、先のオーナーさん達大人グループと合流して、キャンティでイタ飯食べてからレキシントンクイーンって外国のモデルさんとかアーティストが集まってる中規模のハコに行ってました。あの頃はスーパーモデルブームもあったので必ず海外モデルのグループが来てまして、必死に海外交流を勤しんでました。
楽しく一緒に踊って時間を過ごすのは良いんですが、なんせ高校生なのでその後は引き出しがほぼ無い。。結局毎回明け方に男数人で赤坂ラーメン食べて始発で宇都宮への3時間の帰路につくというコース。でもお昼前に宇都宮駅を出る時は都会で遊んできたぜーってまたドヤ顔で。笑 話が思い出にそれてすみません。
そのジオットのオーナーさんはメチャクチャ洋服好きでほとんど高級インポート物しか着てませんでしたが、唯一認めて着てたのはギャルソンのプリュスのニットでした。勿論私も追随して買って着てました。人生初の国産ニットカーディガンが五万円ってなかなかですよね。流石に小さくて着られなくなりましたが、今見てもシンプルながら良いニットだなあ〜と。
ボディも袖もバイアス取りなのに全くヨレずに接合部のリンキングも完璧。散々気倒したのに毛玉も目立たない。サイズが合いませんが今でも全然着られます。改めて見返すと国内ニットも凄いんだなぁと。
大学を出て2000年代中盤にビームスに入ってからはロベルトコリーナ、クルチアーニ、ザノーネ、ジョンスメドレーと今とほぼ変わらないラインナップが中心のニットブランドが続いてましたね。でもやっぱり日本のニットブランドが今のスローンみたいに大幅に展開する事は無かったと思います。他にはバトナーさんとか。あとはトゥモローさんのオリジナル企画のニットはいつも感服しますね。あれは企画も縫製力も全部が敵わない気がします。可能なら弟子入りして勉強したい位です。
スローンさんのラインナップを見ても、それ程インパクトのあるキラーアイテムがある訳ではない。でもニットって大体がスタイリングの主役というよりは脇役ではあるんですよね。特に男のドレススタイルでは。ハイゲージのタートルとかクルーは良い例です。
国内縫製で地に足のついたしっかりとした品質、スケジューリング、そしてなにより丁度良いプライス感。納得してそこまで気張らずに買える二万円台中心のプライスは意外とインポートブランドでは無くなってしまいましたからね。
同じようなブランドだとロベルトコリーナさんは重宝されていますよね、どこのセレクトショップでも。実際にミラノで展示会にお邪魔した時もすごく親切に小さいロットでも柔軟に対応をしてくれる感じでしたし。流石にその時企画で交渉した際は価格で開きが大きくダブルネーム企画は実現出来ませんでしたけど。
そこにきてのこの国内ブランドでスローンさん。元々インポーターさん、ブランドニットデザイナーさんがやってるので市場の色々を分かった上で非常に良いとこ突いてます。痒い所にしっかりと届いてます。
まず特筆なのはユニセックスデザイン。サイズ展開が4サイズ以上と豊富でそのジェンダーレス感が今の雰囲気にピッタリ。ブランドさんによってはメンズ商品の半分の売上が女性購買でしたって話が有る位に今は男女のボーダーが無いんですよ。5年前からの早い段階からその着眼点には脱帽しか無いです。
そしてデザイン、縫製は言わずもがな何より着てみて納得なのは非常に計算されているであろうシルエット美。袖等の接合部のリンキングの仕方だったりパターンであったりで良く工夫されてると感心しきりです。大人の男性が着た時にスタイルが良く見えるんですよね。サイジング自体は細過ぎず、大人が着られる程良いリラックスしたトレンドも加味したシルエットだと思います。でも一過性では無くずっと着る事が出来るベーシック感もちゃんと有る。
企画デザインをした人達がお世辞にもスタイルは良くなく普通体型。そしてその自分達が着たいニットを具現化する事が直結して大衆性とマッチする好例とも言えますよね。やっぱり大人の男性でやたらスタイルの良い人はひと握りですから。
そしてクオリティとプライスのバランスが絶妙です。ほとんどセールに掛からず、ずっと売る事が出来るホントあると助かるブランドだと思います。
特に日本らしい技術が素晴らしいと思うのは混紡の糸の企画。ウールシルクの超ハイゲージのタイプとウールポリエステルのハイブリッドなダブルフェイスタイプは日本ならではのハイテク技術ではないかと。この2品番は他のインポートブランドではなかなかお目にかかれないニットクオリティなので特にオススメですね。
表題は70年代にニューヨークパンクシーンから生み落とされた女神Pの最大のヒット曲。ブルース親父との共作なので彼女の文学的な側面やパンクスタイルに熱いパッションが加わったキャッチーさは何度聴いても胸が高まります。彼女は性の分類を拒みを2つの性を生きようとする詩人。そもそも彼女のジャケ写のビジュアルがメチャクチャカッコイイ。30年前の彼女の写真からは今の時代に正にと言えるジェンダーレス感を感じるのは私だけでしょうか。
スローンのニットが持つ性差を越えた可能性は、きっとパンクディーバの魂の雄叫びと共に皆さんの心に響けばいいかなと。
脇役かも知れませんがずっとクローゼットにいて、毎週手に取ってしまうであろうバイプレーヤーニット。たまには主役も出来そうですし。私もそんな風にお店とお客様のお役に立てる欠かせない脇役の存在でいたいと思いますね。
それでは銀座でお会いしましょう。
新井
定期投稿は水曜日、土曜日の朝となります。