素敵じゃないか

SHUN 新井 2021.10.16

ご機嫌いかがでしょうか、銀座店の新井です






最近の事ですが、ある関西のお客様から銀座店にお電話を頂き、前にブログに載せていた新井ラスト企画のツイードジャケットを3色大人買いのご連絡と喜びのお声を頂きました。流石にこれには涙腺が緩みましたね。本当に感謝の気持ちしか無いです。何らかの形でそのお気持ちに恩返しが出来るよう精進して参ります。勿論私もそのジャケットは2色記念に購入しました。大人買い出来ちゃうプライスが我ながら凄い笑

今回はそんなジャケット等を企画デザイン、製品化するお話。

テーラードジャケットやスーツの形自体は100年前位に現在の形が既に完成をされていて、時代の流れに沿ってシルエットや細かいデザインが変化しているのは皆様もご存知と思います。

ただ、その仕様やシルエット、ディテールデザイン、生地により印象や着る場面がガラリと変わってしまうという非常に微差が大差となる世界だと毎シーズン作る度に痛感して、死ぬ迄終わらない旅だとも感じてました。それだからこそ面白いし、一生携わりたいと思えるのですが。




企画のスタートはとにかく膨大な生地探しの苦行。生地屋さんを10社位は見て回り、各社とも毎回数百種類の生地を見て触ってました。そこで売れると思える生地から着想を得てジャケットのスタイリングを作り上げていく場合もあれば、良い生地が無い時は何社もの生地屋さんにテキスタイルからサンプル依頼をかけて、更にその生地のテイストに1番マッチするパタンナーさんや縫製工場さんを探してマッチングさせていくという作業を1つの生地企画でも何通りもしてました。

更にコストを考慮して発注数量やスケジューリングも見越して理想の仕上がりに仕上げる為に無限の様なシミュレーションをしていくんです。

これ正に苦行なんですが同時に最高に面白い。




クロージングはドレスコードという縛りの中、限られたデザイン性の中での表現となるので縫製の仕方や生地だけで商品の方向性を左右します。それこそ生地の良し悪しだけでも知識や経験が非常に重要とも言えますしね。生地一つをアジア諸国のどこで作るかだけでも技術力はもちろん原料調達や運搬も踏まえるとネットワークや経験、世界情勢などなど運命の選択。毎シーズン同じパターンでは通用もしない事も多々。

もっと効率的にするのであればそんな事は商社様方にお任せで展示会サンプルを元に自分のブランドのテイストの生地やデザイン変更を少しだけする方が良いのかも知れません。私は自分で売り場に立って、実際のお客様方の雰囲気やニーズを元にビームスらしくもオリジナリティ溢れる新しい企画商品を作る事を念頭にしてましたので、どうしても手間が掛かってもそれだけは出来ませんでしたね。


はっきり言って作る洋服は売れて沢山のお客様に喜ばれなきゃダメだと。自己満足で値下げしなきゃ売れない赤字の洋服を作ってはいけないんです。カッコよければ売れなくて良い洋服なんてあってはいけないんです。カッコよくて売れる商品こそが本当にイイ洋服なんだと思ってます。

そう思っていてもお客様10人中1人に響く商品よりも5人に響く商品って本当に難しい。9人に響く商品はすぐに廃れますし。他社には無いトレンド性と大衆性の奇跡の共存。その道は至難の道ですが。でもやっぱり最高に面白い。



自分で着たいって思えて、お客様が喜んで沢山買ってもらえる。そして更に沢山仕入れする事が出来て工場の人達や関わる全ての人達が潤いハッピーになれる。

そう、洋服を通じて周りの人達や沢山のお客様を幸せにする事が出来る事、そしてその幸せな顔を見る事が私自身最高に心が満たされたんだと思います。服にはそれだけのパワーが有るんですよね。



ジャケット製作にまつわる話をしようと思ってたのですが、ここから更にその話をすると長過ぎて疲れてしまうので次の回に。


表題は60年代を代表するカリフォルニア生まれのビーチが似合うサーフミュージック第一人者と言えるBの稀代の叙情交響実験ポップ大作の生えある一曲目。出だしから心を持っていかれる多彩であり哀愁もあり清涼な歓喜が入り混じる表現は正に傑作かつ無二。

でもそこには単純な明るさでは無いんですよね。裏返した虚無感も内包した陰影ある美しい旋律であったり愛情表現であったり。でも底抜けに人々を陽気に高揚させるポップな音楽性は傑作の何物でも無く。こんな音楽のように私の創り上げる洋服で関わる全ての人たちをハッピーにできる事を願ってます。

まずは家族と私の店の仲間たち、そしてお客様をハッピーに出来る様に明日も笑顔を絶やさずにいますね。




それでは銀座で笑顔でお会いしましょう


新井



定期投稿は水曜土曜朝予定です。