ご機嫌いかがでしょうか、銀座店の新井です。

10年前のドレススナップを発見しました。多分32歳?なのでまだフレッシュさも微かに残ってますかね。自分で言うなって感じですが10年前の割に普遍的な合わせで古くさく感じない気がするので少し安心しました。
丁度この時は震災の直後で私の身の回りも大変になり、人生を見つめ直してビームスに舞い戻った直後だったと記憶しています。
この時も銀座店では歳下のスタッフは2人位で、やっぱり丁稚奉公の様に裏方業務も全部やってたのでほぼ毎日パンツはデニムでした。とにかく店では毎日走り回って肉体労働が多かったのでトラウザースを穿いてたら直ぐに破けちゃう位でしたから。
ジャケットはオーダーばかりでしたね。この時のジャケットはスーパーお洒落なバンチ目白押しのアリストン社のモノだったと。今はこのマーチャントの展開は無いので寂しい限りです。そして今では全くしなくなった素足にローファー履き。
この頃からドレスシューズの扱いは紐無しのローファー等のスポーティなモノが中心になっていったと思います。今では考えられないですが最初にビームス クロージングの門を叩いた2004年当初は扱うドレスシューズはほとんどレースアップのタイプ。
ヘンリーマックスウェル、ジョージクレバリー、オールデン、サントーニ、エンツォ ボナフェ、等のブランドが中心でしたが紐なしのローファーはクレバリーの名作クラシックローファー位。

この靴は好き過ぎてブラックカーフ、ブラウンカーフ、このコンビカーフ、ダーブラのスエードと全色買いしましたね。履き過ぎて1番出番の少なかったこのコンビしか今は生き残っておりませんが。
あの当時はクラシコ全盛で売り場の半分以上がテーラードのスーツとジャケットの袖物コーナーで占めるという時代。なので必然としてレースアップの重厚なドレスシューズがラインナップされてました。
内羽根のストレートチップやパンチドキャップトウ、ホールカットや外羽根のキャップトウ、フルブローグにセミブローグ、ブラインドブローグなんてのも有りました。サイドゴアよりもチャッカタイプのブーツが多かったのも印象的です。
スーツの合わせにマンネリを感じて、若かりし日にクラシックローファーをチョークストライプの三つボタンスーツに勇気を出して合わせて出勤しましたが、先輩に一瞥されてハズレだねって言われてしまったのは良い思い出です。居ても立っても居られずにその場でジョージクレバリーのカーフブラインドブローグを買って履き替えたのもちょっぴり苦い良い思い出。その頃ではスーツにスポーティな紐なしのスリッポンを合わせるのはそれ位セオリーとは言えないモノだったんですよね。
20年位経った今ではレースアップの靴のラインナップはかなり減ってしまい、接客する機会も本当に減りました。その代わりに時代の寵児となった靴は皆さんも記憶に新しいこれだと思います。

CROCKETT&JONES/キャベンディッシュ3タッセルローファー
カラー:ブラック、ブラウン、ネイビー
サイズ:5.0〜9.5
価格:¥86,900(税込)
商品番号:21-32-0096-502
スーティングからスポーティなジャケット&パンツスタイル、なんならショートパンツのカジュアルスタイルまでカバーしちゃうドレスシューズの救世主的な登場で数年は予約完売で店頭に出ない程だったのですから凄いものです。シニアシューズの代名詞みたいなタッセルぼんぼりが2枚目な面に生まれ変わり、永年定番と言っても過言では無い程のポジションを得てしまいましたから分からない物ですよね。
ウチの新人スタッフはとりあえずで入社したらこのモデルを履いているのが風物詩みたいになりましたね。面識なくても都内の通勤電車で少し派手目のスーツやチェックのジャケットを着て、ペイズリーのネクタイなんかで素足ばきで髪型は少し長めで何ならウェーブのかかったパーマヘアでこのタッセルシューズを履いてる若い子がいたら大体はウチの若手ドレススタッフか他社のセレクトショップスタッフですよね笑
スタイリングに合わせてシューズをそれぞれ買うのは金銭的に大変なので、その意味でもこのタッセルシューズの存在は画期的展開であり、意味のある普及と言えますよね。功績が偉大過ぎてもはや個性が無くなってしまった感も否めませんが。
そしてそう思うウェルドレッサー達は勿論レースアップシューズに舞い戻るのは必然の理。私もレースアップシューズが履きたくて仕方が無くなってきたんですよね。
ここで今の時代の逆風は若者達に立ちはだかる。そう、今のドレスシューズは20年前のプライスの倍近い値上がりとなってるんですよ。殆どの名だたるインポートドレスシューズは10万円前後の昨今。売れる見込みがまだ見えないから仕入れもまだ少量をお試しの様相を呈してますね。
でも探してみたらウチでも素晴らしいコスパのドレスレースアップタイプが有りました。




BEAMS F/クォーターブローグ
カラー:ブラック、ブラウン
サイズ:5.0〜9.0
価格:¥50,600(税込)
商品番号:21-32-0085-302
このウチのオリジナルシューズは改めて素晴らしい出来とコストパフォーマンスですよね。アッパーのクオリティも抜かりなく形や縫製も秀逸。詳しい説明は長くなるので割愛します。オンラインの解説を読むか、実際に店頭でスタッフに聞きにいらして下さいね。
それにしてもオリジナルの企画はスーツ、ジャケットもそうですが他社には敵なしと言える程のクオリティやセンス。この秋のラグランコートでも力説しましたがこういった国内生産でしっかりと安定仕入れが出来る値下げの必要の無い商品は、今後の生き残りを左右する重要なピースである筈なんです。
痛恨なのが在庫がブラックカーフは残りわずか、ブラウンカーフは取り寄せで何とか、ブラウンスエードは無いに等しい。
いやいや、こういったモデルこそ色素材のバリエーションを揃えてスタッフも着用して、しっかりとドレススタイリングの基本としてコーディネート提案出来る様に常にお店に置いておかないとダメだと思うんです。
単体で見ると抜群にカッコイイかも知れないけど、ドレススタイリングを紙一重で壊してしまいかねない個性の強いシューズの単品売りも良いですが、脇役になりますがドレススタイルの調和を取り、その着る人の個性を引き立たせるシューズってこの様なモデルだと思うんです。
お値段も五万円程となり何とか手が届きやすい設定。実際に物を見ると絶対にお値段以上の面構えだと実感出来る筈です。そしてこれからはドレススタイリングには絶対にレースアップが復権していく気がしますし、させていきたいと思う今日この頃です。
余談ですがクレバリーのローファーを引っ張り出す過程でこんな逸品も顔を出しました。

レースアップどころか脱ぎ履きを従者にやってもらわないとままならない8年位前のエンツォボナフェのオーダー会で作ったボタンブーツ。それでも当時オーダー価格は14万円位。今じゃ既製品でもその位の価格ですから作っておいて良かったですね。今までボタンブーツを履いていたのを見たのは菊池さんと伊藤さんだけでした。この男爵みたいなスーパードレスボタンナップシューズをカッコ良く履けるスーツスタイリングを模索して早10年。
夏ならホワイトカラーのアイリッシュリネン3ピース?冬ならヘビードネガルツイードスーツ?スパッツにフロックコートでアルチュールばりに詩人貴族を気取る?
「見つけたよ、永遠を。それは太陽に融ける海だ」
なんて気取りたいのですが、まだまだ全然見つからない笑
表題は18世紀中盤にフランスに生まれた早熟の詩人による後期の代表作。19世紀に活躍したヌーヴェルヴァーグの巨匠監督の一幕でも用いられた余りにも有名な詩。こんなにも心を揺さぶられる言葉ってなかなか出会えないと思います。
その時代の紳士達の装いに想いを馳せて。
その頃には紐無しのローファーはまず無かったはずですから。
それでは銀座でお会いしましょう。
新井
定期投稿は土曜を予定しています。