タグ「ambient」の記事

こんにちは。BEAMS RECORDSスタッフの和田です。

気が付いたら夏が終わって一気に肌寒くなりましたね。秋のほどよく冷たい空気の匂いがふわっと感じられた時、自分は本当に幸せな気持ちになります。それだけで色々な曲のことやライブのことまで思い出して、なんだかいつもより音楽が自分に染み渡る感覚になります。

そんな気分の最近は、先日当店にも入荷したSam Wilkes, Craig Weinrib, and Dylan Dayのトリオ作品などをよく聴いてしまいます。入荷はしていませんが、このトリオに加えてChris FishmanとThom Gillの二人が参加したライブの音源をまとめたアルバム「iiyo iiyo iiyo」も素晴らしかったです!

Sam Wilkesは現在来日中でSam Gendelとの全国ツアーもやっていますので、気になる方は是非調べてみてください!自分も静岡で行われるフェスfrueで見に行く予定です♬

また、Sam Wilkesと並んでついついよく聴いてしまう作品がこちらです。

【LP】Jonah Yano / Jonah Yano & The Heavy Loopo〈Innovative Leisure〉

¥4,730 (税込)
【CD】Jonah Yano / Jonah Yano & The Heavy Loopo〈Innovative Leisure〉
¥2,860 (税込)


広島県出身でモントリオールを拠点に活動するシンガー・ソングライター Jonah Yano(ジョナ・ヤノ)が、彼のアンサンブル・バンドとともに収録した最新アルバム。


前作に引き続き、今作も素晴らしいですね..!ジャズのような雰囲気もありつつ、独特のローファイさを追求したようなサウンドが心地よいです。フォークやR&Bを想わせる独特のヴォーカルもまた心に染み入るような優しさを感じます。


今作のタイトルでもある「The Heavy Loop」も30分のインプロヴィゼーション・トラックになっており、ノイズやエクスペリメンタルなどの影響も感じ取れる、これまで以上に自由な演奏を披露しています。

次にご紹介するのはまた違ったフィーリングを感じることができるニューエイジ作品。

【CASSETTE】織川一 Hajime Orikawa / 穂遊 Suiyu〈造園計画〉

¥1,999 (税込)



メンバーが入れ替わる不定形のセッション集団、野流の創設メンバーでもあり、千葉県鎌取出身の音楽家、織川一による第一音源集。


ニューエイジの伝説的人物であるLaraajiのライブに衝撃を受け、オートハープを始めたという彼。今作では、オートハープ、エレピ、ムーグシンセ、オルガン、テナーサックスなどの楽器と環境音を宅録で重ね合わせています。


郊外都市のためのニューエイジとも評される独特の空気感が心地よい一枚。やはり日本から生まれた音楽は、どこか日本の土地から感じられるフィーリングの音になっているような気がします。

次にご紹介するのも日本の音楽にフォーカスしたコンピレーションです。


【LP】V.A. / Virtual Dreams II - Ambient Explorations In The House & Techno Age, Japan 1993-1999〈Music From Memory〉

¥6,160 (税込)

【CD】V.A. / Virtual Dreams II - Ambient Explorations In The House & Techno Age, Japan 1993-1999〈Music From Memory〉

¥3,740 (税込)


アンビエント/ニューエイジ最重要レーベル〈Music From Memory〉が手掛けたアンビエントテクノのコンピレーションとして話題となった『Virtual Dreams』の続編。90年代前半のIDM、ベッドルームテクノの影響を受けながらも、独自の発展を続けていた日本国内のシーンから生まれたアンビエント・テクノに焦点を当てて選曲されています。


同レーベルの名コンピ「HEISEI NO OTO」でも選曲を行っていた大阪のレコードショップ REVELATION TIMEの店主、Eiji Taniguchiと、〈Music From Memory〉の創始者であり、2023年末に急逝した稀代の音楽探求家であるJamie Tiller がセレクト。


ほとんどの楽曲がCDでしか聴けなかった希少な音源。個人的には各トラックのサウンドから日本の電子音楽らしさを感じることができて興味深かったです。また当時を知らない自分からすると、このコンピレーションを通じてこういったシーンやアーティストがいたことを知れたということもあり、そういう意味でもおすすめしたい一枚です。

最後にご紹介するのは秋の夜長にぴったりの作品です。


【CASSETTE】Diana Chiaki / Under Control〈Nocturnal Technology〉

¥2,860 (税込)

東京を代表するDJ/プロデューサーのMars89によるレーベル〈Nocturnal Technology〉からのニューリリース。BOLER ROOM、FUJI ROCK等への出演から、CMの楽曲制作まで活躍の幅を広げる、DJ/プロデューサーのDiana Chiakiによるアルバム。


ミニマルでありながら、パワフルなベースラインとビートが効いたスローテクノ。1曲目の「0:00」から最後の「6:00」までで夜明けを表現しているとのことで、どこか夜中から明け方の非現実的な雰囲気も感じます。カセットで聴くのもよさそうです。


ということで、新入荷の商品から4点ご紹介させていただきました!

オンラインショップに載らない店頭のみの商品もありますので、是非ご来店お待ちしております!店頭でレコードなどの試聴もしていただけます。


また、店頭のみの商品もinstagramのDMやお電話でお問い合わせいただければ、通販可能ですので是非お気軽にご連絡くださいませ。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

空気が鳴る

こんにちは。BEAMS RECORDSスタッフの和田です。


先日、当店でも販売中の『マジエルのまどろみ』を制作した作曲家の磯田健一郎さんのインタビューを最近読んだのですが、その内容がとても興味深かったです。90年代にアンビエント/ニューエイジ・ミュージックを発表し、吉村弘や芦川聡と近いフィールドで活躍した彼によって、過去の作品の再録音やその手法、アンビエントや音楽制作に関することが語られています。


こちらは店頭のみのお取り扱い。\2,750(税込)


その中で印象的だったのが、今のアンビエントと言われる音楽には「ソフトウェアからはみ出していない」「空気が鳴っていない」ものがあるという指摘でした。彼らはパソコンとヘッドホンを使って製作していて、スピーカーを使っていないため、和音が響いていないことが分からないからとのことです。


確かに、そもそも音とは空気の振動であり、その場で楽器から鳴っている音を録音していたのが音楽制作の始まりだったはず。ですが、いつからかパソコン一台あればその中で音を作り、その中で録音ができるようになりました。それ自体は便利で、音楽の発展に繋がったと思いますが、スタジオのマイクで録音された音に含まれるその場の響き(空気感)はそこにはないのかもしれません。



以前にアーティストの小袋成彬氏が、スタジオでレコーディングをしている場合も、楽器の音以外の余計な音の響きを減らすのが日本では主流であるのに対して、ロンドンのスタジオは(その場で)出て来たものを良しとする多様性や偶然を許容する懐の深さがある、と語っていました。


それで思い出すのは、かつてドイツのロックバンドCANは、「Future Days」をレコーディングする際に、自分たちのスタジオのドアを暑さを理由に開けっ放しにして録っていたため、独特の音の響きを生んだという話。またボーカルのダモ鈴木が座っていた椅子のクッションのカサカサとした音もマイクに入っていて、それも楽曲の一部になったというエピソードもあります。


話がだいぶ逸れてしまいましたが、音楽を聴くときにメロディやリズムだけでなく、そういった録音環境から生まれる音の響きや空気感の事も考えながら聴くと面白いかもしれません。



ということで話が長くなってしまいましたが、最近入荷した作品をご紹介します。


まずはCANのメンバーであるHolger Czukayのソロ作品から。




【帯付き初回生産限定盤LP】Holger Czukay / On The Way To The Peak Of Normal〈P-VINE〉
   ¥4,400 (税込)                商品番号:29-67-1168-538


クラウトロック・バンドCANでベースを務めていたHolger Czukay(ホルガー・シューカイ)による1981年発表のソロ・アルバム。同じくCANのドラマーJaki Liebezeitのミニマムなドラムに合わせて、ギター、ラジオ音声のコラージュ、オルガンなどが変幻自在に繰り広げられていきます。

KraftwerkやNeu!などのバンドの録音に関わり、多大な影響を与えたドイツの重要エンジニア/プロデューサーのConny Plankや、P.I.L.のベーシストJah Wobbleなど個性豊かなミュージシャンがゲスト参加。演奏の録音後に実験的な編集とエフェクトが施されており、演奏時の空気感を強調したり再構築しているような印象を受けます。エクスペリメンタルな作品がお好きな方はこの機会に是非どうぞ!


次にご紹介するのは、スタジオのセッションの空気感が楽しめる作品。




【LP】Qwalia / Abbreviations〈Albert's Favourites〉
¥5,720 (税込)  商品番号:29-67-1146-526



こちらは、ロンドンを拠点に活動するジャム・バンドQwalia(クワリア)の2nd アルバムです。ドラマーのYusuf Ahmedを中心に、ベーシストのBen ReedやギタリストのTal Janes、キーボード/シンセ奏者のJoseph Costiなど、Frank Oceanなど数々のアーティストの楽曲にも参加する実力派のミュージシャンが参加。

ジャンルにとらわれない即興演奏が特徴で、今作も1stアルバム同様、2021年4月にロンドンのフィッシュ・ファクトリー・スタジオで行われた13時間のセッションから抜粋されたものになります。即興演奏ならではの生々しさがありながらも、技術に裏打ちされたクオリティに驚かされる一作。



最後にご紹介するのは、楽器や声の重なりが美しい、話題のコラボレーション作品です。




Milton Nascimento & Esperanza Spalding / Milton + esperanza〈Concord〉
CD ¥3,300 (税込) LP ¥6,270 (税込)


「ブラジルの声」とも称されるほどブラジルを代表するミュージシャンのMilton Nascimento(ミルトン・ナシメント)。本作では、グラミー賞を通算5度も受賞してきた実力派ジャズ・ベーシスト/シンガーのEsperanza Spalding(エスペランサ・スポルディング)とコラボを果たしました!

Milton自身の楽曲や愛聴してきたブラジル音楽、The Beatles、Michael Jacksonのカバーに加え、Esperanzaが2曲を新たに作曲。UKジャズを牽引するShabaka Hutchings、坂本慎太郎ともコラボするブラジルのロックトリオO Ternoの中心人物Tim Bernardes、ロンドンのSSWのLianne La Havasなど豪華なゲストが参加している点も見逃せないポイントです。

ブラジル音楽の自由さやジャズらしい演奏が合わさりながらも、どこかポップな仕上がりになっている印象です。ブラジル音楽を聴き始めるきっかけにもなりそうな一作。

こちらは音源ももちろん良いのですが、アメリカのラジオ局であるNPRの人気企画「Tiny Desk Concert」でのライブ映像(こちら)も素晴らしかったです。ライブ音源だとそれぞれの楽器の鳴りがはっきりしていてそれも良いですね。Mlitonが座りながら歌っているのも渋いです。


以上、新入荷の中からご紹介させていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!

薪風呂から考えるアナログの良さ

こんにちは。BEAMS RECORDSスタッフの和田です!

突然ですが、皆さんは銭湯はお好きでしょうか。私は家から歩いて5分ほどのところに銭湯があるのですが、めんどくさくてあまり行きません。たまに行くと気持ちいいのですが、お湯に浸かったりサウナに入っている時間が退屈に感じてしまう時があり、家のシャワーで済ませてしまうことが多いです。(最寄りの銭湯はサウナに入りながら、イヤホンをしていたり本を読んでいる人が多く、最初は驚きました。)それから、熱すぎるお湯も苦手で、場所によっては一瞬しか入っていられない時もあります。そんな銭湯が得意とはいえない自分が、先日友人の家に遊びに行った際に立ち寄った銭湯が素晴らしく感動しました。


そこは繁華街のはずれでひっそりと営業されている、昔ながらの銭湯。体を洗ってお湯に浸かってみると何かがいつもと違うことに気づきました。普段だったら入ってしばらくは熱くて、慣れるまで時間がかかるのですが、その日は入った瞬間から優しい気持ちよさがありました。なぜかいつもよりお湯が柔らかい感じがすることに気づき、その銭湯に通っている友人にそのことを伝えると、薪でお風呂を沸かしているから、お湯が柔らかくて気持ちいいのだと教えてくれました。

 

一体それが科学的に証明できる事なのかは自分にはわかりませんが、同じ水道水を使っていても沸かし方の違いで、感じ方がここまで変わるのかと驚きました。さて、銭湯の話が長くなってしまいましたが、これは音楽にも通じる話だと思い、書いてみました。同じ音源を聴いているのにデジタルデータとレコードで音の違いを感じるというのはまさにそうで、アナログなものにはどこか不思議な魅力があり、人はそこに惹かれるのではないのでしょうか。利便性やコスト面でいえばデジタルの方が優れているのに、いまだにフィルムの写真や映像にこだわる作家や、アナログ・シンセサイザーを愛用する音楽家がたくさんいます。

また、当店でお取り扱いさせていただいている〈TAGUCHI〉のスピーカーにも同じような魅力を感じます。元々はコンサートホールや映画館などのために、オーダーメイドのスピーカーを作られていたブランドということもあり、注文が入ってから一つ一つ手作りで作られるスピーカーの音には、どこか暖かみや柔らかさを感じます。高い技術力によって生まれるハイクオリティな音はもちろんのこと、職人の方の手作業によって特別な魅力が宿っているのも、沢山の人々に愛されている理由の一つなのかもしれません。

画像左が〈TAGUCHI〉の スピーカーCANARIO、右がLITTLE BELというモデル。どちらも木目を生かしたデザインが素敵です。

店頭でご視聴もしていただけますので気になる方は是非お越しくださいませ!



話が逸れてしまいましたが、最近はそういったアナログ、オーガニックなものを少しずつ生活の中で増やしていけたら幸せだなと思っています。レコードやカセットテープもその一部ですが、料理を作ったり、コーヒーを淹れたり、植物を育てたりすることにもハマっています。また、最近は生楽器やパーカッションなどが入っていたり、人間らしいグルーヴがあったりと、どこか有機的なエレクトロニックに惹かれることが多いです。


ということで話が長くなってしまいましたが、新入荷のタイトルから個人的にそんな雰囲気を感じるものをご紹介します。




【LP】Contours / Elevations〈Music From Memory〉

¥4,950 (税込)


まず一つ目は、マンチェスターを拠点にドラマーとしても活動するTom BurfordによるプロジェクトContours(コントゥアーズ)の新作。ニューエイジ/アンビエント系の最重要レーベルでお馴染みの〈Music From Memory〉からリリースされました。マリの木琴のような打楽器であるバラフォンの探求から始まったというこのプロジェクトは、広大な自然の中で自分を忘れたいという彼自身の願望が反映されているそうです。アコースティックとエレクトロニクスそれぞれが調和しており、オーガニックなアンビエント・サウンドを創り上げています。パンデミック期に同世代の音楽家たちと自宅でレコーディングされたということもあり、親密で繊細な印象も感じます。Nala Sinephloなどのアンビエント・ジャズ好きな方に是非聴いていただきたい作品です。




【LP】Mixmaster Morris, Jonah Sharp, Haruomi Hosono / Quiet Logic〈WRWTFWW〉

¥6,600 (税込)


続いてご紹介するのは、細野晴臣、Mixmaster Morris(ミックスマスター・モリス)、Jonah Sharp(ヨナ・シャープ)の三者によるアンビエント・テクノの名盤。1997年に細野晴臣のスタジオで制作されCDとカセットでのみリリースされたものが、良質な再発を続けるスイスのレーベル〈WRWTFWWR〉から初めてヴァイナル化されました!有機的に変化し続けるドラムパターンと洗練されたシンセサイザーが絡み合うトラックは、今聴いても全く色褪せないサウンドです。この機会に是非LPでどうぞ!



そして、最後に紹介するのはDIY感溢れるデザインのミックスCDになります。




悪魔の沼 with MOOD魔N / 沼探り〈ALLIGATER〉

¥1,760 (税込)

 

Compuma、Dr.Nishimura、AwanoからなるDJユニット、悪魔の沼。彼らが”FESTIVAL de FRUE 2022”で、MOODMANを迎えた4人の特別編成で行ったプレイを記録したものがCD化。「沼探り」というタイトル通り、4人が様々なジャンルを横断しながら、ディープな世界観でスローなテクノを展開していく様はまさに抜けられない沼のようです。カオスでスリリングなミックスでありながら、経験に裏打ちされた安定感がやはり素晴らしいです!前半78分間がCDには収録されていて、DLコードから3時間のフルバージョン(MP3)がダウンロード可能となっています。盤に押されたハンドスタンプ、ペーパー・スリーブもDIY感がありかっこいいです!



以上、新入荷の中から3点ご紹介させていただきました!

店頭でしか販売していないアイテムもありますので、是非お近くの際はご来店いただけると幸いです♪♪


最後まで読んでいただきありがとうございました。




一小節から再生される記憶


初めましてBEAMS 新宿の矢藤 ジョーと申します。


この度貴重な機会を頂きBEAMS RECORDSの発信のお手伝い役として今後サポートとさせて頂きます


僭越ながら音楽との関わり方の自己紹介をさせて頂きます。


好きな音楽は?と聞かれて本来なら誰かを刺激するような固有名詞を述べたいところなんですが、やはり一口にも偏にも述べることが難しいので、


音楽との接点を自覚的に持ったのは小学生低学年の頃、不思議な塾での授業の中で取り扱っていた谷川俊太郎さんの「ことばあそびうた」です。

 

谷川俊太郎さんが"言葉の持つ音楽性"を実験というコンセプトで作られた歌達は幼いながらも理解のできるコンセプトと言葉が持っている素朴なリズムを楽しむことができ、中でも押韻の応酬が暗唱していて心地よかったのが印象的です。


その頃から自覚的に音楽に身体性を求め始めたんだと思います。


身体性をより密なものにするべく、小学生中学年からはドラムを習い始めました。

そこで楽曲の構成やダイナミックスを知りました。


高校生からはモテたくて軽音楽部に入部しギターに転向しました。


バンドでは部活の方針で3年間オリジナル曲をやってました。


ジャンルは広義的に言うとパンクロックです。

やっぱり身体性の快楽の沼から抜け出すことが出来ませんでした。


扱っていたジャンルがジャンルだったので、あまりギターは上達しませんでした。笑


卒業後は生活の嗜みでバンドをする程度で、基本的には趣味の良いリスナーを目指して様々な音楽を探して、聴いて、考えて、日常を送っています。



では早速商品説明に入ります!

 

<LuckyMe>所属のプロデューサー、Jacques Greene (ジャック・グリーン)によるEP。 



【フォレスト・グリーン・ヴァイナル仕様12"】Jacques Greene / Fantasy <LuckyMe>
価格:¥2,707 (税込)(税込)
商品番号:29-67-0146-813


ウルっと感情的にさせる楽曲群。

アンビエントな下地で静謐な印象もありながらも、クラブビーツ感もあって世界観に陶酔しながら踊ることが出来ます。もしくはドリームポップをややマイナーにした雰囲気も感じます。



個人的に印象的なのはA-2の「Memory Screen+Fantasy」


イントロの一小節のウワモノを聴くと筆舌に尽くしがたいヴェイパーウェイブ的ノスタルジーを感じました。


そのことが気になり色々探ってみると昔に父がよくやっていたゲーム「グランツーリスモ3」通称GT3の冒頭のOSTをサンプリングしている事が判明することで腑に落ちました。


当時の私(幼少期)は音楽の知的自意識が芽生える前だったので 、PS1の起動音やPS2の大人向けのゲーム「ICO」や「GT3」のOSTのようなリバーブが掛かっていて空間表現が強すぎるサウンドに対しては効果音としての恐怖感を抱いていたのをよく覚えています。


それ故に恐怖という感情により顕在的、かつ潜在的に記憶されていたんだと思います。


そして数十年もの間眠り続けてきた潜在的記憶(恐怖)がこの楽曲を交通して顕在的記憶(快楽)へと再び立ち上がるのは何ともSF作品が取り扱う題材「時空を超えた絆」による構造にも似た近い感動を感じます。


ゲーム音楽のサンプリングは2000年代からヒップホップの中では慣れ親しんでいたり(アフロフューチャーリズム文脈も含まれる)、Playboy Curti(プレイボーイ カルティ)のRAGEビートやSOPHIE(ソフィー)のHyperpopのようなビートにもゲーム音楽の文脈を感じますが、今作はBurial(ブリアル)に近い文脈が個人的に好みです。


アンビエント、ドリームポップ、クラブミュージックが好きな方はきっと響くはずです。


是非聴いてみてください!

テクノロジーと音楽

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の解除により、ライブハウスやクラブの営業を再開することが出来るようになってきていますが、まだまだ気の抜けない状況が続いていますね。音楽に限らず、生で体感するエンタテインメントが苦しい状況にある一方で、「VARP」のようにアバターを介して仮想空間の中で体験を共有出来るシステムを提供するといった動きも注目されていて、それが社会において今後どのような影響を与えていくのかは私にはわかりかねますが、時代の変化というものを感じずにはいられません。

そして、それが音楽においてどのような変化を与えていくのかということを最近よく考えています。音楽はテクノロジーの進化や社会情勢など時代の変化に伴って、生まれ変わり続けていると思うからです。また、たとえば古くはエリック・サティによる「家具としての音楽」という概念や、ジョン・ケージの無音もしくは自然発生音を音楽として捉えるという発想、ブライアン・イーノによる「アンビエント」の提唱など、新たな哲学の発見のように、斬新な視点が生まれることでも変化していくところが音楽の面白さのひとつですね。



直接関係はないのですが、Sean McCannによるこちらは、ブライアン・イーノやハロルド・バッド、フィリップ・グラスらに続く次世代の才能としてアンビエントや現代音楽好きの方にオススメです!


テクノロジーの話でいえば、シンセサイザーは19世紀半ばに登場した発電機や電話を応用した機械「ミュージック・テレグラフ」から発展し、電気信号として楽器音を出力出来るようにした「テルハーモニウム」というものがルーツと言われており、このことはまるで科学、機械文明そのものを語っているようです。それはテクノというジャンルの歴史とも直結していますが、実際にはテクノだけでなくポップス、ロック、ハウス、ヒップホップなど様々なジャンルに深い影響を与えています。

また、かつて音楽は音楽家たちが演奏する場でしか聴く事が出来なかったのが、録音技術の発達により家庭でも自由に楽しめるようになりました。一方の音楽家側も、たとえばグレン・グールドのように、録音テープから必要な部分をつなぎ合わせ、実際の演奏と組み合わせることで、生演奏だけでは表現しきれなかった音楽を実現しようとしました。1970年代終わりには<TASCAM>がカセットテープMTR「144」を発表し、それまでプロのミュージシャンしか扱うことの出来なかったマルチトラック・レコーダーがアマチュアのミュージシャンでも安価に手に入れられるようになったことも大きな変化でした。ロックの世界ではピクシーズのブラック・フランシスがこれを巧みに利用し、それによって同バンド特有のブリッジ→バース間でのダイナミックな展開が生まれ、さらにニルバーナのカート・コバーンがこれを真似したことで、このスタイルは90年代のロックシーンでの主流になっていきました

90年代終わりから2000年代に入ると、コンピューターの発達に伴って登場したDTMによって、音楽制作における可能性がこれまでにないレベルに高まり、エレクトロニカが台頭。2010年代にはインターネットの発達により情報過多となった現代社会さながら、ジャンルがぐちゃぐちゃに混ぜ合わされ、それを塊のように吐き出した音像を創り上げたダニエル・ロバティンによるOneohtrix Point Neverが現れたり。


こちらは初の本人名義ダニエル・ロパティンとしてリリースした一枚。アダム・サンドラー主演、サフディ兄弟監督の話題作 『UNCUT GEMS』のサウンドトラックとして制作されましたが、ここでも彼の才能が爆発しています!



と、ざっと変遷を述べてきたのですが、エレクトロニカといえばAlva Noto(アルヴァ・ノト)ことカールステン・ニコライが新作アルバム『Xerrox Vol.4』をリリースしました。


カールステン・ニコライは池田亮司とともに語られることが多く、前述した00年代のエレクトロニカのムーブメントの中で現れた存在です。両名とも、PCなどの電子機器から鳴る起動音や接触不良で起こるノイズなどを緻密に繋ぎ合わせたスタイル「グリッチ」の中心的人物として知られているわけですが、彼らは音を流しているというよりも、美意識のもとに音を配置し、彫刻のように空間を演出しているようカールステン・ニコライは元々ランドスケープ・デザインを専攻していたのですが、そんな新たな視点(分野)から音楽を創造しているように感じられます。また、ライブではカールステンは映像作品も流し、池田はインスタレーションの形式をとるなど、聴覚以外からの表現も同期して行なっていて、ドナルド・ジャッドのようなミニマルアートとも比較して考えることが出来ます。こうした特質は、彼の新作を聴いても深く頷けるものがあるのではないでしょうか。本作ではSF映画のサウンドトラックのような壮大なサウンドスケープを描いているのですが、彼ならではの美意識が随所に感じられます。



音源ソフトのアートワークも毎度細部まで徹底しており秀逸!

テクノロジーや時代背景が新たな音楽(=芸術)を創る契機になり、また発想次第で面白い音楽が生まれるという事実。そんなことから、音楽は時代を映す鏡とも称され、時には時代への強烈なアンチテーゼとして、心をえぐるような表現が生まれて私たちに様々なメッセージを訴えかけてきます。と、このように考えれば考えるほど、つくづく音楽は面白いなという結論にたどり着く今日この頃です。

美しい静寂と深淵なダイナミクス。

こんにちは。

BEAMS RECORDSスタッフの柳と申します。

大変な状況が続いておりますが、皆様どうかご自愛下さい。当店も只今休業中ではございますが、弊社オンラインショップは随時更新しておりますので、宜ければ是非チェックしてみて下さい。

さて、今回私がお勧めしたい作品は、個人的にも敬愛するベルリンを拠点に活動するピアニスト/プロデューサーNils Frahm(ニルス・フラーム)の新作『All Encores』です。





前作『All Melody』の未収録曲をシリーズ3部作のEPとしてリリースしていた楽曲を一つにまとめたもので、今回もNils Frahmの魅力がたっぷりと詰まった内容です。

私の見解ではありますが、Nils Frahmの魅力について説明させていただくと、

『繊細で叙情的なピアノプレイ』

『エレクトロニックミュージックとクラシカル、現代音楽を横断したスタイル』

『ストーリー性を感じさせる壮大でシネマティックな世界観』

の3つがまず上げられます。しかし、私が特に強調したいのがもう1点、

『自分の理想の音への強い探究心』

です。

これまでにも、アップライト・ピアノの中を開け、ハンマー部分にマイクを当てることで、ピアノのメロディと同時にパーカッションが鳴っているような響きを出したり(プリペアド・ピアノのような、現代音楽的な発想ですね)、ピアノの音色をグリッチ・ノイズのようにあえて汚して鳴らしたりなど、いくつもの逸話が彼にはありますが、本作(および『All Melody』)でも、古い井戸の中から自分の音源を鳴らして天然の残響音を作り出したり、制作に当たってスタジオから自らで作ってしまったりと驚くようなこだわりを見せています。

そんな飽くなき創意工夫により、静寂なムードが漂うピアノ・ソロでは、より感傷的な空気を醸していますし、ストイックなダブ・トラックでは、他では聴いたことのないような、独特の太いエコー&リヴァーブによって深淵で神々しい雰囲気を生んでいたりと、息を飲むような美しい曲が並んでいます。是非レコードで聴いて(体感して)みて下さい!!