ご機嫌いかがでしょうか、銀座店の新井です。

ビームスドレスレーベルで毎年10〜11月にやたら売れるシューズブランドがあります。

日本の秋、パラブーツの秋ってな位お馴染みでしょうか。
今期は残念ながら銀座店でのトランクショーはお休み。都心だと二子玉川、六本木ヒルズ、原宿で予定してます。

私のこのブランドとの出会いは90年代中盤に差し掛かる中学生の頃に今はなきチェックメイトという雑誌でした。その頃は渋カジのバイカースタイルとかキレカジやらデルカジが下火になり、我がオリオン通りのセレクトショップでもアウトドアブランドの取扱いが増えてきてましたね。L.L.ビーンは勿論マウンテンスミスとかペンフィールドとかダナーとか。確かそのチェックメイトでも若かりしモデル時代のカズマがガリビエールのブーツを履いてまして。
兄の指南を頂いて同世代では1番乗りでレッドウイングのエンジニアブーツやトニーラマのウエスタンブーツを履いていて仲間内のパイオニアを気取ってましたので、流石に仲間達もお揃いになり出してきたので真っ先に飛びつきましたね。そう、余り知らずに手を出したガリビエールこそがこれが実はパラブーツだったんですよね。その名もヨセミテ。
お金持ちの坊っちゃまの友人達はダナーのマウンテンブーツやゴアテックスライトを履いてましたので、被りを避けるとこのフランスブランドに。この細身のフォルムが素敵なのとその当時好きな女の子が履いてたパラディウムのブーツに寄せてお揃いっぽく見せようという下心で。あの当時の素敵な女の子は大体あのキャンバスブーツ履いてアニエスと無印を上手く着こなしてた印象でした。
流石にその後の高校生になるとモードトレンド真っ盛り。靴はグッチのビットモカシンやらジャンニバルバートやらグラネロやらブランキーニ、ロッコP等のドレスシューズの沼に行ってしまったので、10年以上はパラブーツさんとは疎遠でしたね。その後はトレンド最前線からは鳴りを潜めて、記憶では2010年前後にディストリクトで栗野さん達が履き始めたのをきっかけに再注目されウチも追随してセレクトショップで欠かせないブランドに。大ブレイクと言っても過言では無いかと。
2011年にはヨセミテもウチで展開したので18年ぶりくらい再会しちゃいました。まだ一緒に働いてたミスター高田に買われたので機会を逃しちゃいましたが。でも諦めるにしても気持ちに収まりが付かず代わりに違うマウンテンモデルのアヴォリアーズ買っちゃいました。
2012年の銀座店リニューアルのタイミングで初めてトランクショーをした時は凄かったですね。1週間位の期間中で銀座店だけで100足以上売れたのはレコードだと記憶してます。私はお客様にアプローチして引きつけたら、フィッティングはパラブーツさんのヘルプのお二人に任せて最後のお会計をまたキャッチするというかなり効率的なやり方で相当数売りました。やっぱり我ながらセコイ笑 でもその時にしこたまパラブーツの接客をしたので気が付いたらすごい売り慣れたのは事実だと思います。

まず日本人だと大体ヒールカップが緩い笑 トランクショーの時も説得して厚いソックスを無理くり買ってもらってました。それか半年後まで我慢する前提でハーフサイズ小さくするか。この2択ゴリ押しですね、究極は。
トランクショーでの名物みたいな敏腕営業マンの方の接客トークは面白かったですね。雨の日に強いって話の際には、水陸両用ですってドヤ顔で言ってました。どれくらいアッパーは伸びますかって聞かれたら、伸ばそうとすれば何処までも伸びますってまたドヤ顔で。挙句にはこっちがパラブーツの靴の接客してる間に彼はラルディーニのジャケット接客して売ってるってオチも有りました。トランクショーの時に売場に彼がいたら当たりです。手ぶらでは帰れないですね。
本当に足が疲れないレザーシューズってこのパラブーツのアクティブソールとオールデンのフットバランスソールが群を抜いてると思います。何ならスニーカーよりも長時間の時には疲労に強い。雨の日に電車の中でオイルドジャケット着てパラブーツ履いてお洒落なメガネかけてお洒落ヒゲの若い子見かけたら大体セレクトショップの店員ですけどね。それくらい雨の日イコール、パラブーツって公式はもう永遠に続く様な気がします。
そしてこのブランドの魅力って毎回名作から迷作までバリエーションが豊富で、しかももう出会えないかもって思わせる程モデルの回転が早い笑 毎年なんだこれっ!ってビックリする新作が出ちゃうんですもん。プラモデル感覚で毎年1足は買っちゃうんですよね。
買い足しやすいプライスもその魅力のひとつ。この10数年で靴の値上がりはスゴイですよね。クロケット&ジョーンズもエンツォボナフェもオールデンも倍近くになってしまいました。パラブーツさんは6〜7万円で相当値上がりを抑えてます。やっぱり自社でのソールとかアッパー素材とか部材の調達がカギを握ってそうですね。
靴を作る時にソールの部材手配が本当に企画を左右するんです。ロットしかり、コストしかり。その部分を自社の内製でしっかり固めてるのは今後も凄く強みだと思います。
師匠と思っている先輩が言ってたのは、このブランドの緑のビスネームがすごくこの靴に意味があると。わざわざ目立つ位置にネームタグを付けてるのがダサい気もするし、その緩い感じがスタイリングで大事な意味を持つのではないかと。禅問答みたいな話なんですが、感覚で直ぐに胸にグッときましたね。私がビームスで憧れる先輩方はみんなそんな発言が多い気がしますね。最近はダサくした方がカッコいいと思うんだよね〜とか、エッジが割れてる年季物のドレスシューズを見てカッコいいね〜とか。
私が1番愛用してるフォトンってモデルはもう8年選手。それでもまだソールの減りが激しく無く交換はまだ大丈夫。かなり煩雑に扱っちゃってましたがゴムが少し伸びた位で修理に出すメンテナンスはまだ必要無さそうです。当時6万円位でしたからこの費用対効果は凄いですね、8年で割り返すと年間費用7500円です。スニーカーよりも安い位。それにソールが3センチ以上になるのでこっそり脚長、身長増し効果も有りますから。

ラストはほとんどのモデルが一緒じゃないかって位の程良いラウンド型。最近思うんですけどパラブーツのモデルはどれを履いてもスタイリングの見え方はほぼ一緒じゃないかって笑 デッキシューズは勿論別物ですけど。ウィリアムとかシャンボードとかアヴィニョンとかどれでもパラブーツの足元って見え方は一緒のバランスだなと。フォトン以外にも7足持ってたんですけど、意外とフォトンだけで事足りてます。それでも欲しくなっちゃう、集めちゃう魔力があるんですよ、このフランス靴は。かぼちゃみたいに丸みがあって可愛くてついつい磨いちゃうし。何回も飽きて履くのをお休みしても、また定期的にハマって履いちゃうんですよね。履きやすいのがまた助かるんです、連日仕事で疲労の溜まった足にはやっぱりパラブーツ。雨の多い日本の気候にもやっぱりパラブーツ。

表題は80年代にアイルランドから生まれ世界に誇るビッグバンドとなったUという名の4人グループの最初の大ヒットバラード。社会問題や宗教観をストレートに表現する情熱的なボーカルとエッジの効いたギターサウンド。本当に彼の歌声は強い意志と憂いを感じてエモーショナル。
この曲もシンプルなラブソングの様で実はイギリスとアイルランドの政治的、宗教的な緊張関係を思わせたりとメッセージ性が強いバラード曲。ラストに向けてのサビの叫びが響く盛り上がりは胸が熱くなります。
あなたがいてもいなくても、僕はこのまま生きていけない。
私にとってもそんな表現がぴったりなのがパラブーツの存在。そんな風にビジュアルの美しさとか機能性とかを吹っ飛ばして感情に訴えてくる靴なんてそうそう無いと思いますね。
それでは銀座でお会いしましょう。
新井
定期投稿は水曜土曜の朝頃です。