転石のように

SHUN 新井 2021.09.04

今晩は、銀座店の新井です。





9月の新シーズンが始まり、所謂洋服屋的には秋の立ち上がり。毎年変わらないっちゃ変わらない感じなんですが、、この今の状況で変わってないのも違和感というか危機感を感じるというか。

徐々にお客様も秋冬服の下見とか予約とか動かれてきましたね。まあ2年前と比べたら忙しさは半分以下って感じですが。

そして平和に飼われてる羊みたいに淡々と商品紹介も10回位書くと似たような内容に飽きてくると思いませんかね?マンネリですよ、マンネリ。なので今回は変化球で。



今日は有名ファッションサイトで小島さんって方が、セレクトチェーンに未来はあるのかって記事を書かれてて、まあまんま今の置かれてる状況をズバリですよ。まず内容の前にセレクトチェーンってカテゴライズの言葉が刺さりましたね。もう最早セレクトショップは洋服屋というよりチェーンなんですよ。私が身を置いてる場所はチェーン店なんだと。

8年ぶり店舗勤務に戻って気が付いたのは、10数年前ならお客様もドレスの3階フロアに来る際にはすごくお洒落されてて、なんか大人の社交場みたいな雰囲気でスタッフと馴染様が談笑する風景が日常でしたね。流石にカットソーに半ズボン、スリッパではなかなか入れない雰囲気でした。実際3階に上がる階段で遠慮して降りていってしまいました。



今は本当に皆さん、リラックスされた服装でご来店頂けるように。その光景には時代は変わったんだなぁとしみじみ。ビスポークスーツの先輩方も今は随分カジュアルな格好に。私も自分の企画デザインした服を楽しんで着てますが。それだけ間口が広く皆様に認知され、愛顧頂いているんだと。先のセレクトチェーンって言葉になるのもなんか分かる気がします。有名タレントさんがテレビで全国何処行ってもビームスってあるよねーって言ってましたし。



先の記事ではセレクトチェーンがこの状況下ではかなり苦しいって話でしたね。もう共感しまくりでした。お客様は半分以下の来店でオンラインの充実で店舗はほぼショールーム化に。もはやお店は広過ぎて、何層ものフロアも手に余る有り様。それでも広いから人手はそんなに減らせない。他社セレクトさんは切り替えて小粒の多店舗を一気に全ブランド集約の郊外大型店舗にして無駄を省いた方向に動いてるのもすごく納得ですよね。



肝心のモノは似た感じのオリジナルが大量に並んでほぼ量産型みたい、どのセレクトショップでも。。それが売れるのもわかるんですがね。

EC販売で実店舗の補填も流石に限界がきて、アウトレットもすでに飽和状態で今後は縮小傾向。更には衣料消費率はこのコロナショックで更に下がる始末。アパレル消費の形態も如実に変化し、コロナが収束すればまた元に戻るとは流石に皆思ってないですね、少なくとも現場の店舗スタッフは。



リアル店舗は他社さんみたいに集約、無駄な支出を省くより効率的な店作りにせざるを得ないですよね。上場したセレクトみたいに低コストのオリジナル商品で利益穴埋めは最早限界ですし。消費者の皆様は正価の信頼感は感じてませんよ、去年あれだけ何処も値引き合戦しちゃったんだから。自分も思いっきりそうです笑

その上セレクトのセンスを武器に先取りしたコンサルティング業もセレクト以外のアパレル他社が直ぐに追随して既にレッドオーシャン化は時間の問題。


オーベルジュやツルタ先輩シャツの時にも力説しちゃいましたが、やはり他では真似できないオリジナリティ溢れる値引きしない定番品やら打ち出し品を作っていくのは急務ですよね、コストが上がっても。値引きをせずに買い続けて頂くのはアパレルが生き延びる生命線じゃないですかね。

安い工賃等をメリットにたくさん投資をして開拓をしてきたASEAN諸国での大量生産もこのウイルス戦争でボロボロ。機会ロスを減らす為に近隣中国さんや日本国内にアパレルオーダーは戻ってきてるみたいです。売上が減るとしても適量をちゃんと関わる人達全てが潤える様に経済が流れていくのは本当に大事だと思います。




高くもなく安くもない中価格帯のセレクトショップ業態としては、あとは低価格帯のチェーン展開を拡げるのと、逆に高価格専門の完全予約制サロンや外商部隊にウチが誇るサービスのプロ達が戦場を拡げていくと。どうせもうチェーンなんで何でもありかと。

苦境の時こそ基本に立ち返るって凄く大事だなって今も痛感しますね。

リアルでもECでもご来店頂くお客様とちゃんと向き合って信頼関係を築く事。
本当に良いと思える商品を作り買って頂く事。

当たり前ですが売上規模に沿った、身の丈に合った形態に速やかに変わっていかないとヤバいですよね。そして無駄にしている部分を出来る限り切り詰める様に改善していかないと。この苦境は何年も続くんですから。


表題は60年代のアメリカに現れた生ける伝説のフォークの巨人の大名曲。この曲がロックの産声なのか。今やこの人ノーベル文学賞までもらっちゃうんですから。大学の講義の時に教授が授業そっちのけでどれだけ彼の詩が文学的、哲学的で素晴らしいか2時間以上力説してたのも納得ですよ。6分以上にも及ぶこの曲では複数の章構成でストーリーが紡がれ、社会的孤立や富裕層への皮肉、かたや人生における栄枯必衰への問い掛けが語られる訳で。

転がる石のようにひとりぼっちで帰る家もない気分はどうだい?と。

でも終盤のフレーズは希望とロックの精神が見えるんですよね。

何にも無くなったって事はもう失う物は何も無いんだから。と

私は勝手な解釈でこの曲は皮肉を交えながらも希望と励ましを感じてしまうんですよね。
どん底に落ちてからのが人生充実するかも知れませんよ。後は這い上がって行くだけですから。

そんな訳で私は明日もリアル店舗でお客様を歓迎し、お買上げの有無関係なくご来店を楽しんでもらえる様に全力でご案内をさせて頂きます。

転がる石みたいになっても、もがいて行くしか無いんですよ、セレクトチェーンも私も。






それでは銀座でお会いしましょう。


新井


ブログ火曜金曜20時辺りに定期投稿です。