貴方だけってこと<SAINT JAMES>長めのブログ

SHUN 新井 2024.03.23

ご機嫌いかがでしょうか、新井です。




JACKET: IG

VEST: IG

PANTS: INSCRIRE

SHOES: simon fournier

NECKLACE: MASATO INOUE

最近は不真面目にオーバーサイズ気味で袖をズルズルのジャケットスタイリングばかり。アンバランスをファッションにするって案外楽しいもんなんです。



昨年から今年は皆様もご存知の様に値上げラッシュに次ぐラッシュで、なんだかご来店されるお客様もなかなか今までの様に買い物が出来ないってお声もチラホラ。


分かります、物によっては10年前の倍近くになってる名作ブランドも増えました。単純に原材料とか物流費の高騰が原因ってのも有れば、それに便乗した経営的判断でのブランディングによる値上げってのも会社によっては有るでしょう。


そう考えるとみんな大好きなブルトンシャツがフランス製のままで一万円前半台で頑張ってるのは嬉しい限り。



なんだか結局春夏の暑い時期になると休みの日も仕事のジャケットのインナーもお世話になりっぱなしです。




やっぱりメタルボタンのブレザーとの相性がサイコー。前世はフランス海軍が何かでマリンミリタリースタイルをずっと着てたからです、きっと。

ボートネックのカットソーなんて世の中にごまんとあるけど僕にとってはこのブランドが別格。

なにせ高校生だった14歳の頃からずっと着てるんだからもうお付き合いは30年を超えました。

商品企画時代に大人が着れるオリジナル商品のバスクボーダーを沢山作ってきましたが、結局は糸に拘って作り込むと価格が一万円前後になってしまう事がよくありました。

フランスでの人件費なんて今や日本の倍近くなんで、それだけでもこの価格が凄いかが分かるでしょう。

縫製工場をどれだけ効率良く稼働させて縫製工賃を低く維持させるかがプライスの要なのかは日本の最大手ファストファッションが一目瞭然。


SAINT JAMES/OUESSANTボーダーボートネック
カラー:ホワイト、エクリュ、ブラック
サイズ:4〜6
価格:¥13,200(税込)
商品番号:21-14-0009-015

ブルトンシャツの長袖や半袖の数型のみを色だけでバリエーションを増やして永遠に同じモノを縫製するって事がどれだけ効率が良いか。

値下げもする必要がなくずっと同じ形で作り続けられてリピート購入も日常茶飯事で流行り廃り関係なく販売する事が出来るって販売する側からすれば安定して数字を想定しやすい夢の様な商品だと言う訳なんですよね。

そして毎年毎年形が変わんないのに毎日の様に着てしまう、毎年新色を買いたくなってしまう麻薬的な程に日常に溶け込むという、考えてみればとんでもない名作カットソーシャツってな訳なんです。

そう言えば90年代の終わり位にもオイルドジャケットにこのボーダーシャツ着てスキニーカラーデニムにレースアップカントリーブーツ女子が大発生してたなー

でもそんなサブカル系っぽい女の子の友達は少なかったので憧れてたのを思い出します。そんな憧れの思い出もあるから余計にこのブランドが好きなんでしょうね。



僕だって30年以上お世話になって、たまに浮気して数年離れてもまた回帰してしまう中毒性はなんなんですかね。

数年前に買った時もガンガン洗濯してクタクタに着古した感じにしたかったんですが、毎日の様に洗っても洗ってもなかなかに丈夫で全然くたれてくれないからやっぱりこの生地が半端なくミリタリースペックなんだと痛感した次第で。末永く着込んでいくもんなんだと再認識しましたもの。


こんな大名作を自分のオリジナルブランドで作れたら死ぬまでコンスタントに売上で食っていけて最高だよなーと夢見ちゃいます。毎年買い足したくなっちゃうカラバリとか丁度良いプライス設定とかがキモですよね。そういえば高校生の時も毎年買い足してたもんなー。

今考えればこれだけのフレンチブーム再燃の昨今で代表的なトラディショナルマスターピースと呼べる<SAINT JAMES>と<repetto>が何故に今までドレスフロアで展開していなかったか。絶対に置き続けて欲しいし、トラッドセレクトショップスタッフとしては着続けて売り続けていきたいですよね。












表題は95年に公開された香港映画のエンディング曲。




その当時は香港ノワールとしてこの映画監督の作品達がメチャクチャオシャレな映像美とか香港返還直前の時代感とかも相まって一世を風靡してインディーズシアターが注目されてたんですよね。ビデオが発売された時は即購入して何をするときにもBGM代わりに常にこの映画を流してたのを思い出します。



分かってたのはただひとつ

あなただけだという事




曲自体は83年に発表されてた英国アカペラグループのカバー曲なんですが、出だしのロマンチックな歌い出しとか優しく包み込む感じとかとその天使の映画のエンディングシーンの光景とのリンク具合が神がかってて今でもそのシーンを観るととんでもないエモーショナルな感情が湧き起こされちゃうんです。



大切な人を失ってしまった男女が最後に出逢い二人乗りのバイクで疾走するシーンでこの曲がかかり出す時の言葉はその当時の17歳の多感な少年には最高の慰めだったんです。

そして大学になんとか潜り込んで東京で一人暮らしをして、孤独を紛らわす為に色んな場所で色んな人と交わる事に必死だった二十歳の頃。なんならこの映画のワンシーンをなぞって深夜のハンバーガーチェーン店に家に帰らず入り浸ってた位でした。

一人暮らしの部屋で深夜から明け方頃まで何度も何度も繰り返しこの映画のラストシーンに浸ってた僕はやっぱりその言葉に救われてた気がするんです。





送ってよとお願いしたわ


初めてこんなに他人と近づいた気がする


直ぐに降りるのは分かっていたけど


今触れているこの温もりは永遠だった










結構長尺でダラダラもして、なげーなーとかも思うけど全てはこのラストにこの表現をする為だけに作られたんじゃないかって位。

その瞬間に涙がブワッと湧き出る程に喜怒哀楽全ての感情が入り混じる様なエモーショナルな感情の揺らぎ。


僕にとってはその監督の香港ノワール4作がフランス映画の様に感じて、でもアジアの中でも突出した世界観で永遠の青春の宝物みたいな作品。

そしてフランス製のブルトンシャツもバレエシューズもそれと同じ位に宝物なのかも知れません。





それでは銀座でお会いできる日を



新井