何度も聴きたくなる

レコードにせよ、カセットにせよ、CDにせよ、それらを通して音楽を聴くときには、ストリーミング配信にはない手間が掛かることもあってか選曲が慎重になることはありませんか。その手間こそ自分が選んで聴いているという実感を保証してくれるものであり、大袈裟かもしれませんが作品に参加しているような気分にもさせて貰っているようにも思います。ただその中で、何度聴いていても取り換える気にならない一枚というのは、それが確実に名作であることを示しているように思います。私としては最近はMaya Deliahによるデビューアルバム『The Long Way Round』がその一枚です。

Maya Deliahは北ロンドン出身のギタリスト/SSW。幼少期からギターに魅了され、同国のコンペティションであるThe Mayor of London’s Gigs Big Buskでは、15歳の時に500組以上の中からファイナリストとして選出。SNSでもギターの演奏動画を投稿し、フォロワーが100万人を超えるなど、早くから頭角を現した逸材。そして、AdelやKing Krule、Puma Blueらを輩出したブリットスクールにて学んだ後、2022年に、ジャズの名門〈Blue Note〉のカタログを再構築したコンピ『Blue Note Re:imagined II』に参加したことをきっかけに、同レーベルとの契約が始まったようです。


そんな華々しい経歴に圧倒されますが、彼女が投稿していた動画を見てみるとそれも納得。Tom Mischを想わせるジャジーで甘い、ローファイヒップホップな曲調の中で、彼女らしい可憐さが光っています。そして、そんな雰囲気の中で見せる卓越したスキルにも驚かされます。

Shawn Mendesらとのコラボも経て完成された本作では、R&Bやソウル/ファンク、ジャズをスローなポップスに落とし込んだスタイルを全編に渡って披露しています。〈Blue Note〉でジャジーなポップスといえば、やはりNorah Jonesを思い出しますが、Mayaの場合はギターをメインにしていることもあってか、よりブルージーな雰囲気が漂っているように思います。彼女らに共通する、歌詞も含めた楽曲の親しみやすさと優しい世界観。そして程良い洗練さは、何度も聴いても癒されます。来月のフジロックにも出演予定ですし、今後の動向が楽しみです!

【限定オレンジ・ヴァイナル仕様LP】Maya Deliah / The Long Way Round <Blue Note>
価格:¥5,170(税込)
商品番号:29-67-1378-494

※CDは店頭のみで販売中

シュールで不気味な美しさ

こんにちは。Thom Yorke Timesの柳です。昨年の11月、彼のソロライブ(東京ガーデンシアター)に行ってきました。2ndソロアルバム『Tommoro's Modern Boxies』ツアーからの演出と同様に、VJとオケを流しながら、シンセやキーボード、ギターを弾いて歌うスタイルで披露。RadioheadからAtoms For Peace、The Smile、ソロと彼のキャリアを総括した選曲に対して、新たなアレンジで臨んでおり、VJも相まって大きく刺激を受けました。あと毎度思うのですが、彼のライブは音質が本当に良いですよね。常に探求しているのだろうなと思います。

そこから僅か半年、新作アルバムをリリースしました。今回は、以前にもコラボしたことのあるMark Pritchardとの共作アルバム。それにしてもThe Smileでのワールドツアーからすぐにソロでのツアー。そして、アルバムリリースと彼の音楽活動は絶えませんよね。

Mark Pritchardは、Reload、Global Communication、Harmonic33、Harmonic313、Africa Hitechなどあらゆる名義を通して、エレクトロニック・ミュージックを90年代から牽引し続けてきたイングランドのプロデューサー。2013年から自身の名前を使って作品を発表し始め、2016年『Under The Sun』ではボーカリストを複数のトラックでフィーチャー。その一人がThom Yorkeでした。

ロックダウン期にThomの方からアプローチがあったようで、Markのアーカイブを使って双方でのやり取りの末に完成。テクノ、アンビエント、フットワーク/ジャングル、ベースなど、名義の数に比例してというべきかMarkのスタイルは様々であるものの、どれにも独特のサイケデリックな気持ち良さがあるように思います。今作ではそれらをバックボーンにしながらもオリジナリティに溢れるエレクトロニックミュージックを構築。さらに、Thomの要素も加わり毒々しさと美しさが絶妙に混ざり合っています。揺れるシンセの音色やチープなリズムマシン。モジュラー、ヴィンテージのエフェクターなど、機材にフォーカスして聴いていても楽しいですね。

そしてもう一つ大事な要素はアートワーク。シドニーを拠点に活動するアーティスト/ グラフィックデザイナー、Jonnathan Zawadaが手掛けています。ファッションブランドのKsubi、モジュラー・レコード、雑誌「Nylon」、コカ・コーラなどを担当した人物で、Markの前作アルバムも彼によるデザインでした。今作でも、特に『Back in the Game』と『Gangsters』のMVが強烈です。氏の得意とするアナログとデジタルの両技法を織り込んだスタイルで描かれる、不気味なアニメーションは、更に本作の世界観を強固にさせていますね。


【LP】Mark Pritchard & Thom Yorke / Tall Tales〈Warp Records〉
価格:¥5,390(税込)
商品番号:29-67-1456-813

Mark Pritchard & Thom Yorke / Tall Tales〈Warp Records〉
価格:¥2,530(税込)
商品番号:29-68-0542-813

静かな癒し

『どこであれ美しさを見いだすということだね。もちろん、大切な人を失った時の悲しみは否定できない。でも、その悲しみの中にも美しさを見つけなければいけない。それが、生きることだと思うんだ。』-Jacob Allen

Rolling StoneでのインタビューにてPuma BlueことJacob Allenは、自分自身の音楽がダークであることを繰り返し述べた上で、このように語っていました。なんて素晴らしい言葉だろうと感動しつつ、彼の音楽性の核となる部分を表現しているようにも感じました。

Jacob Allenはサウス・ロンドン生まれで、Amy WinehouseやKing Kruleなど多くのアーティストを輩出した名門ブリットスクール出身。2014年Soundcloudにアップした『Only Trying 2 Tell U』をきっかけに、一気に知名度を上げました。

Jeff BuckelyやElliot Smithを軸に、ジャズ~ソウル~ロック等あらゆる影響を独自の静謐な世界観の中に収めた彼の作品は、それぞれのジャンルの所謂落としどころから敢えて外れているという印象が個人的にあります。常に発展途上にあるような、創意工夫に溢れたポストパンク的な作風に魅力があるように思うのです。それが2023年にリリースした『Holy Waters』によって、遂に彼のスタイルの完成形を垣間見たように感じていました。

そして2025年2月、突如配信にて新作アルバムを発表。それが先日フィジカルでも発売されました。Rolling Stoneにて『最近は、もう一度ローファイなサウンドに戻ろうかと思っている。』と宣言していた通りではありますが、アコースティックギターとボーカルの弾き語りを中心にした意外な内容となっています。ミニマリズムを強調することもなく、これまで以上に素直に彼の歌を聴くことが出来ます。また、ピアノの残響が陽炎のように揺れる、直感に身を任せたようなアンビエント曲を収録している点も、これまでにないアプローチです。悲しみ(≒ダーク)の中に漂う繊細な美しさ。映画音楽のようなロマンティックな雰囲気と官能性。最高です。

【LP】Puma Blue / Antichamber〈Blue Flowers〉
価格:¥6,160(税込)
商品番号:29-67-1438-512

Puma Blue / Antichamber〈Blue Flowers〉
価格:¥2,970(税込)
商品番号:29-68-0540-512


静観と諦念の間

「感情をそのままさらけ出すのは自分には合わない。だから今、ただこの瞬間に沈み込んでいるんだ。ただ静かに、感じ取っている。」-Eli Kezler

ニューヨーク出身のドラマーであり、作曲家、ヴィジュアル・アーティストでもあるEli Keszler(イーライ・ケズラー)による新作アルバムが入荷しました。個人的には好きなドラマーの中で上位3位に入る人物です(並ぶのはChris DaveとMakaya Mccraven)。確かなスキルに裏打ちされた上で、自由な発想で叩くそのセンスと、錘のような金属をスネアにいくつも置いて、カチカチっと響かせる独特の音色が特に堪りません。

活動初期の作品は現代アートといった印象で、現にインスタレーション作品をいくつも発表しています。

後にOneohtrix Point Never(OPN)やLaurel Halo、Skrillex等のサポートを務めたことで、さらに知名度を上げた印象です。実験的なエレクトロニック・ミュージックを生演奏で見事に再解釈させています。

さて今作についてですが、前作同様古いノワール映画のような世界観を踏襲しています。LAジャズを代表するサクソフォ二ストSam Gendel。また、人気レーベル<Stones Throw>からのリリースでも知られるボーカリストSofie Royerという意外な客演の支えもあり、前作以上にどろっと蕩けるような耽美な雰囲気が全体に漂っていますね。そして、ダウンテンポからドラムンベースまで、緩急の利いたドラムがアルバム全体に輪郭を与えています。冒頭に載せた彼の言葉通り、沈み込んだ心の深い部分から世界を静観しているようなクールさがかっこ良いのです…。RadioheadからThe Velvet Underground、The Doors、Nine Inch Nails、Nicolas Jaar等々。退廃的な美しさと実験性が掛け合わさったこれらのアーティストがお好きな方は是非!

【LP】Eli Keszler / Eli Keszler〈LuckyMe〉
価格:¥4,620(税込)
商品番号:29-67-1425-813



ものをつくること

みなさんこんにちは。BEAMS RECORDSスタッフの和田です。 相変わらず音楽ばかり聴いている自分ですが、趣味で音楽制作も行っていて、これまで聴いてきた音楽を自分なりにアウトプットしています。思い通りにいかないことも多いですが、自分らしい曲が作れた時には本当にやっててよかったなあと思います。 最初のころはなぜ自分の好きなアーティストのように素晴らしい曲が作れないのだろうと悩んでしまうこともありましたが、坂口恭平さんというアーティスト/作家の『継続するコツ』という本を読んで考え方が変わり、自分の作ったものに肯定的になることができました。同じように自分の作ったものに自信が持てない、制作が継続できないという方に是非おすすめの本です。

ということで、今回のブログでは、音楽制作を始めたい方におすすめの機材について書いてみます。

まずはストックホルムの電子楽器ブランドである〈Teenage Engineering〉から待望のニュープロダクトが到着しましたのでそちらをご紹介します。



Teenage Engineering / OP-XY ¥428,000 (税込)

こちらが新しく発売が開始したポータブル・シーケンサー/シンセサイザー/サンプラーのOP-XYです。簡潔に説明すると、これ一台で音楽制作ができる、持ち運び可能なマシンです。


この本体の中に沢山のシンセサイザーやサンプラーが入っているので、自由な音作りと演奏が可能になっており、重ねて録音することで楽曲を作ることが出来ます。


下段のボタンがキーボードになっておりそちらで演奏することもできますが、鍵盤が弾けない方でも自動演奏機能やコード進行支援機能を使うことで直感的に演奏することが可能です!

またドラムをステップ入力することも可能なのがOP-XYの従来のOP-1シリーズとの違いになっております。例えば、直接演奏せずとも、キックを一拍目に、スネアを三拍目に、ハイハットを四拍目に配置する、といったことができるようになりました。そのため、テクノなどのダンスミュージック系の音楽を作る方にはもってこいの機材です。


またフィルターやエフェクト、マスターEQ/サチュレーター/コンプレッサー/リミッターも全て内蔵されているので音楽制作をこれ一台で完結させることもできます。パフォーマンス用のエフェクトも24種類入っているので、ライブ演奏にも良いかと思います。


機材を何も持っていないけど音楽を作ってみたい、楽器は演奏できないけど楽曲を作りたいという方にぴったりの一台となっております!また、外部のシンセサイザーに接続し、OP-XYからコントロールすることもできるので、既にシンセサイザーなどをお持ちの方にもお勧めします。


これだけの機能がこの小さな本体に入っており、ポータブルで使用することができるという点がすごいですね…。自然の中でも、移動中でも、場所を問わずにパソコンやシンセサイザー要らずでこれ一台あれば音楽を作ることができると思うと本当に素晴らしいです。


文章だけだと分からない、イメージしづらい部分も多いかと思うので、気になる方は是非YouTubeで動画などをご覧いただくと理解しやすいかもしれません。また、店頭には実機もあり、触っていただくことも可能ですので、是非ご来店ください!



OP-XYに限らずポータブルな機材を使うときに迷うのがモニターヘッドホン。外に持っていくのに嵩張るのも嫌ですし、かといって音質は妥協したくないところです。


そんな条件にもぴったりのヘッドホンがデンマークのヘッドホンブランド〈aiaiai〉から発売されましたので、そちらもご紹介させていただきます。



AIAIAI / TMA-2 DJ Wireless  ¥39,800 (税込)

こちらはワイヤレスDJモニターヘッドホン。〈aiaiai〉の独自技術「W Link+テクノロジー」を用いることで、ケーブルなしでも音の遅延をほとんど感じさせないので、優れたパフォーマンスを実現します。付属のトランスミッターをミキサーやパソコンなどのアウトプットに接続することで、ワイヤレスでヘッドホンを使うことが出来ます。一般的なBluetooth接続に比べて音質の劣化と遅延を防げるこの機能は、DJだけでなく音楽制作にも最適です!


また、一般的なBluetooth接続に加え、有線接続も可能なので、普段使いからDJ/制作まで幅広い用途で使えるのも魅力の一つです。専用のアプリ内のイコライザー機能で自分好みの音にカスタマイズすることもできるのも、このモデルの特徴です。


迫力のある低音とクリアな音質はテクノなどのダンスミュージックの制作にもぴったりです。レゲエやヒップホップなどもベースやキックが気持ちよく響いてれて気持ち良いです。主観にはなってしまいますが、低音はTMA-2 DJより控えめになっており、ハイハットなどの高音域が強めな印象です。個人的には、これまでのaiaiaiのヘッドフォンの中でも一際パワフルなサウンドのモデルかなと思いました!



以上、新しく発売が開始されたオーディオ類から二点ご紹介させていただきました。
皆さんも是非これを機に音楽制作を始めてみてはいかがでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

どちらの商品も店頭のサンプルでお試ししていただけるので、是非ご来店お待ちしております。


高品質でクラシカルなデザイン


Ashidavox / HA-SX12/HD
カラー:グレー、ブラック
価格:¥14,850(税込)
商品番号:29-75-0060-478

80年以上の歴史を持つ日本の老舗音響ブランドAshidavoxより、ヘッドホンの新機種が登場しました。ひさご電材株式会社の高品質無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)コードを使用している点は、人気モデルST-90-07と同様。ですが、オーバー・イヤー型であることや、ケーブルが着脱可能であること。ミツマタを混抄した振動板とフリーエッジドライバーを搭載したことによって音質面で違いがあります。具体的には、より臨場感のある音像と低域の表現の豊かさにあると思います。例えば、バンドサウンドを聴いているときには、バスドラやベースの音階がよりはっきりと聴こえる印象でした。ブーストさせているような存在感ではないので、アンサンブルとしての気持ち良さをより感じられるように思います。モニター用にも使いやすそうですし、普段使いとしてもお気に入りの楽曲をより楽しく聴くことができそうですね。

また、見た目もヘッドホン選びには重要な点。ST-90-05ST-90-07と比べるとオーバー・イヤーである分一見ヘビーな印象はあります。が、丸みのある形状と高級感も漂うデザインなので、意外にも馴染みやすいと思います。

色はブラックとグレー。写真ではグレーを選んでいます。丁度ブラックのトップスでしたので、同色で揃えてもミニマルでかっこ良いですが、グレーで浮かせて見せてもよりレトロなデザインが映えて良いかなと。ヘッドバンドにもクッションが付いているので長時間聴いていても疲れにくいですし、首に引っ掛けた時も気持ち良いですね。


Everything Is Recorded

【限定レッド・ヴァイナル仕様LP】Everything Is Recorded / Temporary〈XL Recordings〉
価格:¥4,950(税込)
商品番号:29-67-1325-813

Everything Is Recorded / Temporary〈XL Recordings〉
価格:¥2,750(税込)
商品番号:29-68-0501-813


<XL Recordings>

Radiohead、Sigur Ros、Adele、近年ではKing Krule、Fontains D.C.など、インディレーベルでありながら多くの大物アーティストを抱え、常にヒット作品を生み出し続けている、音楽好きには不可欠なロンドン発のレーベルです。

イギリスの最王手インディレーベル、<Beggers Banquet Records>によるグループ<Beggers Group>からのバックアップを経て、1989年に創業。1993年リリースのProdigyによる3rdアルバム『The Fat Of The Land』で大きく売上を伸ばしたことを皮切りに、ダンスミュージックで躍進を始めますが、00年代に入ると今度はフォークやロック、ヒップホップなどにも手を伸ばし、White Stripesにより今度はインディ・ムーブメントの中心的存在となりました。上述の若手アーティストらの他にも、古くはBasement Jaxxなど、彼らの才能にいち早く気付きバックアップする姿勢も素晴らしい限りです。

そんな同レーベルの創業者Richard Russell(リチャード・ラッセル)がスタートさせたプロジェクト"Everything Is Reorded"。彼の人望の厚さによって成立する豪華ゲスト達の集いと、Gil Scott-Herron、Damon Albernらのプロデュースを手掛ける彼自身のセンスから生まれる、このスペシャルな企画の最新作がリリースされています。

今回は自身の友人や家族、同僚の喪失や悲しみを中核のテーマにしながら完成。ダブステップなど、クラブミュージックの側面が強かったこれまでに対して、今回はメロディアスで柔らかな楽曲を多く揃えています。ただし、一筋縄ではいかないのがまさに彼の手腕。フォークを80年代のレゲエのようにデジタル化させる(!?)という実験的な試みも同時に行っています。フォークの代表的人物、Nick Drakeの母であるMolly Drakeの楽曲など、トラックの中にサンプルのループやミュージック・コンクレートのような仕掛けを施しています。まるで回想に耽っているような甘さと、未知な展開による刺激との交錯。さらに耳に残るメロディラインや、リズムの気持ち良さも重なった非常に興味深い内容になっています。

Richard Russellのセンスに改めて驚かされますが、そんな彼のアーティスト性によって、同レーベルが素晴らしくあり続けているということも再認識出来ますね。これからもよろしくお願い致します!

walking on the "left"side



【2LP】Nicolas Jaar / Piedras 1 & 2〈Other People〉
価格:¥6,820(税込)
商品番号:29-67-1317-526

2011年にフランスの<Circus Company>よりリリースされたデビューアルバム『Space Is Only Noise』で世界中から高い評価を受け、さらにバンドDarksideのリーダーとして、またミックスエンジニアとしても活躍するNicolas Jaar(ニコラス・ジャー)による最新アルバムがリリースされました。近年ではFKA TwigsやAli Sethiらとのコラボを続けてきた上に、自身の作品ではエクスペリメンタルに接近したものが続いていました。今回もやはり実験的ではありつつ、『Sirens』以来のポップさも光る一枚となっております。

そもそも本作は、自身の出身であるチリはサンディエゴにある、記憶と人権の博物館でのライブの為に2020年に制作したものと、Telegramで展開されたラジオ劇『Archivos de Radio Piedras』でのサウンドトラック用にも書き下ろしたものをまとめた2枚組LPとなっています。ともに同国の現代史を描いた政治的な内容となっていますが、彼の表現の上で重要なテーマとなっていることは過去作からも伺えます。

アンビエント~レゲトン~エレクトロポップ~ドラムンベース/テクノ~チリの舞踏音楽クエカなど今回もジャンルの幅広い混交が素晴らしいのですが、やはり"沈黙"を巧みに使って、音の立体感と幽玄さを演出する技術には脱帽です。無音のようでいて可聴域ギリギリの低音が薄く出ていたりするんですよね。だからといってと言うべきか、だからこそと言うべきか、キックがメインになるラウドなダンストラックもやはり秀逸なのです。また、瓶の栓を抜いた時のような音や雷のようなノイズなど、独特の音色が沢山聴こえてくるのですが、そのどれもが気持ち良いのです。さらに各パートの録音の仕方も明らかに普通ではないことが窺い知れるのですが、今回は割愛します。人間の聴覚を通して快感を得るポイントをとにかく研究し続けているのでしょう。

両親からレフトフィールドなものを目指すようにと言われていたそうですが(彼の父親は、写真家、建築家など多彩な活動を行うアーティストAlfredo Jaar)、ここまで拘り切った上にかっこ良い楽曲を作れるというのは驚異的です。憧れるー。

アイコン



【LP】Butterfly (Vincent Gallo & Harper Simon) / The Music of Butterfly〈Family Friend Records〉
価格:¥9,020(税込)
商品番号:29-67-1344-813

Vincent Gallo(ヴィンセント・ギャロ)。アイコンが遂に姿を現してくれましたね。

シングル・ライダースにスキニー、発色の良い赤いブーツ。何度もかき上げるオールバックヘア。フィルムの粗い映像と特異な画面構成。自身の楽曲からYes、King Crimsonの引用など、細部の細部にまで美学の詰まった映画『Buffalo'66』。John Fruscianteの楽曲を中心に哀愁を漂わせながら、過去の罪悪感に苛まれていく主人公を描いたロードムービー『Blown Bunny』。共にどこまで同情出来ているのか良くわからなくなる、ナルシシズムたっぷりの内容はさておき、唯一無二の世界観と美しさにどれだけ多くの男性が夢中になったことでしょう。結局映画監督は廃業してしまい、俳優としての活動が中心になりますが、最近では映画『トジコメ』以降どうしているのか多くの方も気になっていたところだと思います。

音楽活動の面では、周知の通りバスキアも在籍していたカルトバンドGreyに同じく在籍した経歴を持ち、<Warp>から2001年にリリースしたアルバム『When』も話題になりました。

そんな彼が遂に新作アルバムをリリースしました。Simon & GarfunkelのPaul Simonのご子息であり、自身でもSSWとして活躍するHarper Simonと組んだButterfly名義での作品です。M5をVincent、M3とM8をHarperが単身で手掛けた以外は両者によって全て作られたものとなっています。上述の『When』に通じる、ギター、ドラム、ベース、キーボード等を入れ替えながら極限までシンプルに演奏し、どちらかが柔らかに歌うスタイルが特徴的です。終始静寂を貫いてはいても、緊張感は感じさせず、寧ろ温もりが漏れ出てくるかのようで、つい身を任せていたくなります。テクニックとしての難しさは余り感じさせないのですが、絶対に真似の出来ない洗練さがあるんですよね。

M5はまさに『when』の収録曲"Laura"に大きく類似していますが、果たしてこれは敢えてなのか偶然なのか。どちらにせよファンとしてはテンションが上がりますね。

そして、音質を極限まで追求したプレス工程を採用し、装丁も全て手作業という拘りの詰まっています(手触りが気持ち良いです)。限定3000枚プレスですのでお早めに!




スラッカー

お正月からの連休が一旦落ち着きましたね。精神的に少し辛めですが、どうかご安心下さい。この世には音楽があります。

無気力のときには無気力を肯定してくれる音楽を聴くと、特に何も変わらず無気力でいられるのでおススメです。そして無気力といえばスラッカー・ロックです。

元々スラッカーというワードは、大戦時に徴兵制を拒んだ人々を指していましたが、90年代に働く意欲のない若者を指すものとして欧米で使われ始めました。近年でも中国で寝そべり族が流行したように、経済の発展と共に現れる社会現象の一つとして、研究している方が多くいらっしゃるようです。また社会活動のアクティヴィズムと混ぜて、スラックティヴィズムというワードも生まれたりしています。

PavementやSparklehorseらはまるで彼らの代弁者かのように、粗削りな楽曲構成から脱力したヴォーカル、ローファイな録音。チューニングがずらされていたりと、あえてのルーズな姿勢を見せ、商業的な音楽への反発も示しましたニューウェイブも段々と熟練さを見せ、シンセ等機材の進化もあり、どのジャンルも洗練された印象のあった80年代後半への揺り戻しもあったのでしょう。個人的にはOasisやNirvanaが隆盛を極めたのもこの流れに起因していると思いますし、世代、音楽性としても重なりますね。反対に、英ガーディアン紙にスラッカー・ロックの代表曲の一つに『creep』を挙げられていたRadioheadは、アルバムの度にロックの枠を飛び出し高度な音楽性へと進化していきました。

スラッカー達がIT革命と共に、インターネットと迎合したことで自分たちのユートピアを作り出すことに成功しますが、それも束の間の出来事。すぐさま新たなビジネスの開拓地となり今日のYouTubeやSNSへと繋がっていきました。

音楽の面でもPCが大きな負荷に耐え得る規格へと進化したことでDTMが世界中に普及。マルチトラックにオーバーダビングすることで楽曲を作っていたことがデビュー前のミュージシャンにとって一般的だったのが、録音をクリックで簡単に繋ぎ合せられるなど、果てしない可能性を手に入れました。この間にヒップホップが音楽産業の頂点に上り詰め、ロックンロールもリバイバルが起こりました。とはいえ、その中心となったThe Strokesはデビュー時からテクノと60年代のThe Velvet Undergroundを結びつけるなど、それまでにはなかったミックスのさせ方をしていたようでしたし、Arctic Monkeysはitunesのダウンロードによって大きく売り上げを伸ばし名声を手にしたので、ネット以前の土台とは異なることがわかります。さらに2010年代からは、インターネット社会が作る情報過多のカオスを体現したようなヴェイパー・ウェイブや、OPN、ARCAらが現れますが、アナログな流れもまた同時に起こるものです。Mac DemarcoやAlex Gらを中心にスラッカーが再び脚光を浴びました。シティポップの再燃とも混ざって独自のスタイルへと進化しており、より牧歌的で温かい雰囲気が彼らの特徴のように思います。

【CASSETTE】Bloody Death / Some More Poison〈Smoking Room〉
価格:¥2,750(税込)
商品番号:29-69-0222-526

さて本作は、如何にもエモいアーティスト名とタイトル、そしてジャケットデザインです。しかしながら、意外にも穏やかでまさに初期スラッカーのような懐かしい雰囲気と、ソングライティングのセンスの良さが際立っています。特にギターのリフやソロが醸し出すイナたい感じが堪りませんね。インディロック好きや郷愁の甘いコタツに入って疲れを取りたい方など幅広くおススメです。

倍加していく


【2LP】Les Rallizes Denudes(裸のラリーズ) ‎/ The Oz Tapes〈Temporal Drift〉
価格:¥6,600(税込)
商品番号:29-67-1335-526

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

さて、昨年末にロック好きを唸らせるリプレスを入荷しておりました。日本のロック創成期を代表するバンドの一つであり、シューゲイズの元祖とも噂される、Les Rallizes Denudes(裸のラリーズ)によるライブ音源です。1972年から僅か1年ほど吉祥寺駅にあった、知る人ぞ知るライブハウスOZでのパフォーマンスを収録したもので、久保田真琴によるリマスタリングによって完成したものです。

彼らの公式のリリース音源はごく僅かしかなくプレス数も僅か。その為に00年代のネット社会の始まりとともに世界中にブートレグが出回り、こちらのみを聴いてきた方も多いかと思います。近年公式でのリリースが続き、本作もその一つとなっています。

同バンドは水谷孝を中心に存在しており、ファンの間ではもはや水谷孝そのものと良く言われています。インタビューなどメディア露出は殆どせず、沈黙を守り続けたことで、謎に包まれた存在としてさらにカルト的な人気を得たことも興味深いお話です。ブートレグが出回ったと書いた通り、海外での評価も高く、MBVのKevins SheildsからLady Gagaなど彼の影響を示しているミュージシャンも多数います。


また黒を好み、詩を纏ったような雰囲気と、華奢で中性的なルックスは、元CELINEのデザイナー、Hedi Slimaneのコレクションにいかにも出てきそうなカッコ良さなんですよね。

肝心の音楽のスタイルはというと、爆音で鳴るギターのフィードバックノイズと極端にエコーの利いたヴォーカルが特徴的です。しかし、そんな過激さに同居するのは、彼自身の繊細さと優美さ。強烈なはずなのに、うっとりと聴けてしまうんですよね。また、個人的には当時の日本にしかなかった血生臭さのようなものを追体験しているような気分にもなれます。このスタイルになったのも、偶然の要素もありますが、根底には海外アーティストには持っていないオリジナリティを目指したが故にだったそうです。江戸時代に生まれた出目金しかり、歌舞伎、北斎の浮世絵しかり。アニメキャラクターの目の大きさしかり。特定部分を誇張もしくは倍加させることが日本人らしさの一つなのだろうといつも思うのですが、彼らのスタイルもまさにそれですよね。後に生まれたハーシュノイズという音楽ジャンルも象徴的です。

しかし本作は、まだ彼らのキャリアの中でも初期の方でもあるからか、エコーはかかっておらず彼の歌声を直に聴くことが出来ます。ギターソロもノイズが少ないので素直に聴けるものが多く、Jim Hendrixの影響等も分かり易く感じられます。ファンにとっては新たな発見の出来る貴重な音源として、未聴の方にも入り口として最適かと思います。

陽気なシティポップも勿論素晴らしいですが、同時代の陰気なサイケデリック・ロックも、もっと多くの方に聴いていただきたいですね。

strictly dubwiseなサウンド。



【2LP】Dennis Bovell / Sufferer Sounds〈Disciples〉
価格:¥5.170(税込)
商品番号:29-67-1298-813



UKレゲエを代表するアーティスト。

Dennis Bovell〈デニス ボーヴェル〉

先ずはその多彩なキャリアについて。

UKレゲエの祖Matumbi〈マトゥンビ〉や

女性シンガーを擁したラヴァーズロックで

ビタースィートなスタイルを確立。

その一方で、詩人Linton Kwesi Johnson

〈リントン クゥエシ ジョンソン〉とも

数々の傑作をリリース。そして自身では

複数名義のダブアルバムもクリエイト。

更にそのノウハウをポストパンク系の

アーティスト達の為に惜しみなく...という

洗練・甘口からミリタント・激辛まで

レゲエをも超えUKのレフトフィールドな

音楽をクリエイトした偉人。演奏〜歌〜

エンジニアリングをこなす才能の持主です。


そしてもう一つ驚くべき事実があります。

実はAdrian Sherwood〈エイドリアン

シャーウッド〉の師匠でもあり、彼の

初期作ではエンジニアを担当しながら

エイドリアンにダブミックスのやり方を

手解きしていました!!この交流によって

ダブの可能性が拡張されたと言っても

過言ではありません!!


(個人的には...坂本龍一の永遠の問題作

“B-2 Unit”に参加した事があまりにも

重大なエピソードですが、長くなるので

割愛します...店頭でお話ししましょう!!)


歴代のB-2 Unitたち...

もちろんアナログも持っています!!



エンジニアのクレジットには

筆頭にデニスの名前が...



さて、そんなデニスは音楽家の顔の他に

自らのサウンドシステムも運営していて

現場仕様の音も独自に追求していました。

当初UKに於いてはレゲエはジャマイカ産

しか認めない原理主義的風潮が根強く

それを打破する為に、故意に紛らわしい

アーティスト名、スリーブデザイン等

様々な工夫を凝らし、どうにか自分が

クリエイトした音楽を偏狭なリスナーの

耳に本当にコツコツと届けていました...

そして徐々にUK産のレゲエが評価される

様に流れを変え、ジャマイカ産とは異なる

魅力で認知されて現在に至ります。

多重人格の如く複数の名義が...


このコンピレーションはそんなデニスの

クリエイションの軌跡を辿る事が出来る

必聴作。聴き覚えのあるdrums&bassが

魔法の様に変化する...不思議な音響体験...

デニスが全ての楽器を演奏して完成させた

トラックも多数あり聴きどころ満載です。

ダブの醍醐味を是非!!



ブログにお付き合い頂いている皆様!!

本年も誠にありがとうございました。

来年もどうか宜しくお願い申し上げます。


素敵な音楽時間を!!


ビームス プラス 丸の内

丹羽 望


即興

こんにちは。BEAMS RECORDSスタッフの和田です。
あと数日で2024年が終わってしまうと思うと恐ろしいです。自分は今年が厄年だったので若干嬉しい気持ちもありますが…。

ところで、今年よく聴いたアーティストの一人にSam Wilkesというベーシストがいます。LAを拠点に、Sam GendelやLouis Cole、Teebsなど、様々な気鋭ミュージシャンと活動を共にする彼。今年は、Sam Gendelとのデュオ、ギタリストとドラマーを迎えたトリオ、そのトリオに更に二人のミュージシャンが加わったクインテットでのライブ音源の、3作品をリリースしました。


どれも素晴らしかったのですが、3つの作品に共通するのは即興性ではないかと個人的には思います。楽曲を制作し録音して作品にするというよりは、即興でプレーしたものからセレクトしてアルバムにしているような印象を受けました。クリエイティブな発想を持ちながら高い演奏能力を持つ彼とバンドメンバーならではの方法ですね。

また、彼やSam Gendelは、以前からレコーディングスタジオに限らずツアー先やレストラン、ライブ会場など様々な場所でのセッションを録音し、作品として発表しています。


ジャズやアンビエント、エレクトロニックなど多様な音楽的バックグラウンドを持ちながら、その上でどのジャンルにも縛られない、自由で即興性が高いプレーをするのが彼の最大の持ち味ではないかと思います。Grateful DeadやPhishを音楽のルーツと語っているのも一見意外ではありますが、納得できる部分もあります。


ライブも何度か見たことがありますが、その度に違うメンバーと違う音楽を奏でていて毎回楽しませてくれるので、これからもどんな音楽を作ってくれるのか楽しみなアーティストです。


というわけで、まずは最近入荷したSam Wilkesの作品をご紹介します。




【CASSETTE】Sam Wilkes / iiyo iiyo iiyo〈Wilkes Records〉
¥3,080 (税込)

こちらは2022年来日公演時のライブ音源です。Pat Methenyのトリオのメンバーでもあるキーボード奏者のChris Fishman、Blue Note作品にも参加するジャズドラマーのCraig Weinribのトリオに加え、ギタリストのDylan Day、Thom Gillをバンドメンバーに迎えたクインテットが、静岡県掛川市の〈FESTIVAL de FRUE〉と東京・渋谷の〈WWWX〉で行ったライブが収録されています。


個性豊かな演奏者同士の親密なやり取りによって生まれた、幻想的なアンビエントジャズ。実は自分も当時〈FESTIVAL de FRUE〉の会場でこのライブを観ており、素晴らしかったのを覚えています。


では、次も即興性を感じさせるジャズ作品をご紹介します。


【国内盤CD】Jeff Parker, ETA IVtet / The Way Out of Easy〈rings / International Anthem〉

¥3,300 (税込)

ポストロックバンドTortoiseのメンバーであり、ジャズ・ギタリストであるJeff Parkerを筆頭に、Meshell Ndegeocelloのアルバムのプロデュースも手掛けるサックス奏者のJosh Johnson、LAで数々のミュージシャンからその実力を認められているAnna Butterssなど、精鋭ミュージシャンたちによるセッションから生まれた音源。 


本作は、LAの伝説的ライブハウスであった ETAで、たった4本のマイクとカスタム・ミキサーで録音された長尺の演奏を厳選したもの。実験的でありながらリズミカルに心地よく展開されていく感じが素晴らしかったです。近年のUK JAZZなどがお好きな方にもおすすめしたいです。

最後にご紹介するのも、ジャズとはまた違った即興演奏を聴かせてくれるバンドです。



【LP】カフカ鼾 (ジム・オルーク・石橋英子・山本達久) / 嗜眠会〈Newhere Music〉

¥4,400 (税込)

Jim O’Rourke、石橋英子、山本達久による即興バンド 、カフカ鼾による8年ぶりとなるニューアルバム。2023年に下北沢ADRIFTで開催された『レコーディングライブ』での音源をジム・オルークが再編集、ミックス、マスタリングを行ったものになります。


三者の卓越したセンスが混じり合い、ジャンルに括ることの出来ない唯一無二の音楽を奏でていきます。また、即興ならではのスリリングさもありながら、単なるライブ音源にはとどまらない作品としての強度を感じるのは、ジム・オルークの編集によるものなのかもしれません。

2/24には渋谷のWWWで発売記念ライブもあるようなので、気になる方は是非そちらもチェックしてみてください!


ということで、今回は「即興」をテーマに3作品ご紹介させていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
店頭ではCDやレコードのご視聴もできますので、是非お立ち寄りいただけますと幸いです!

本年も大変お世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。
良いお年を!


<Blue Note>の魅力


Nala Sinephro / Endlessness〈Warp Records〉
価格:¥2,640(税込)
商品番号:29-68-0451-813

【国内盤CD】Sam Wilkes / Sam Wilkes, Craig Weinrib, and Dylan Day〈Leaving Records〉
価格:¥2,999(税込)
商品番号:29-68-0475-526

【CASSETTE】Sam Wilkes / iiyo iiyo iiyo〈Wilkes Records〉
価格:¥3,080(税込)
商品番号:29-69-0243-981

【LP】Kokoroko / Could We Be More Remixes〈Brownswood〉
価格:¥4,180(税込)
商品番号:29-67-1308-526

【LP】Robert Glasper / In December〈Concord〉
価格:¥5,280(税込)
商品番号:29-67-1254-494

Robert Glasper / In December〈Concord〉
価格:¥2,860(税込)
商品番号:29-68-0477-494

Sam GendelやSam Wilkes、Nala Sinephroらを筆頭に、近年人気を上げ続けているアンビエント・ジャズや、Robert Glasperらのブラックミュージックを網羅したようなジャズ、Ezra Collectiveらのようなアフロを軸にしたUKジャズなどなど。どれもかっこ良いですが、同時に所謂渋いものも聴きたくなりますよね。そこで真っ先の思い浮かぶのは、老舗レーベル<Blue Note>。

同レーベルが支えてきたジャズ史を守りながらも、70年代にはMarlena ShawらR&Bを全面に出したリリースや、90年代初頭にはヒップホップ・ジャズを打ち出したり。00年代にはポップスを多く取り入れたNorah Johnesによる大ヒット、Madlibによる同レーベルの音源を再解釈させた名作『Shades Of Blue』など、柔軟さも忘れず新たな地平を切り開いていく姿勢は、今でも多くの音楽ファンに愛される所以となっていることでしょう。そんな彼らも創立から今年で85年。

当店でも度々ご案内しているJoel Ross(vib,marimba)から、新作アルバムをリリースしたばかりのImmanuel Wilkins(as)。そして、Gerald Clayton(p)、Matt Brewer(b)、Kendrick Scott(ds)という、レーベルの"今"を代表する奏者で構成される、Blue Note Quintetが結成されました。そして、彼らがツアーの最中に名前をOut Of / Intoと改め、レコーディングを行い完成させたのがこちらです。

【LP】Out Of/Into / Motion 1〈Blue Note〉
価格:¥4,950(税込)
商品番号:29-67-1300-494

異なるジャンルを混ぜるわけでなく、ストレート・アヘッドな表現に徹しています。しかしながら、ロックにも通じるシャープな疾走感やドラマティックな展開など、細部に現代的な要素を入れている点が憎いですね。そして終始貫かれるクールな雰囲気も含めて、思わず唸りたくなるかっこよさです。

このような素晴らしいリリースを続けているのも、やはりトップの人物による手腕が大きいでしょう。その人物とはDon Was(ドン・ウォズ)。

自身で率いたロックバンドWas(Not Was)のベーシストとしてだけなく、プロデューサーとしてもThe Rolling StonesやBob Dylan、Al Greenなど名だたるアーティスト達を支えてきた、音楽界全体を語る上でも重要な存在です。

「音楽の真実を見つけるだけの知性とセンスとオープンマインドさがリスナーにはある」

アーティストは他人になろうとせず、自分そのものを表現すればそれでいい

等々、彼のインタビュー記事も読むと必ずと言っても良いほど、愛に溢れた言葉を目にします。沁みますよね。

因みに、Herbie Hancockによる60年代の名盤の一つとして名高いこちらもリプレスされています。年末年始のお休みに新旧のアーティスト達をじっくりと比べて聴いてみてはいかがでしょうか。


【限定ブルー・ヴァイナル仕様LP】Herbie Hancock / Maiden Voyage〈Blue Note〉
価格:¥5,500(税込)
商品番号:29-67-1238-500


韓国のジャム・バンド CADEJOとのスペシャル・コラボ



こんにちは、藤本です。


少し前ですが、Netflixで配信されている韓国の料理サバイバル番組『白と黒のスプーン』にハマり、一気見してしまいました。韓国の料理界ですでに成功を収めたレジェンドやトップクラスのシェフ20人(通称:白さじ)と、新進気鋭のシェフ80人(黒さじ)から更に番組内の対決で選抜された20人が賞金獲得を目指して対決していくのですが、Netflixならではの大規模な演出と多岐に渡る対決が際立っていて見応えたっぷり。


無名の黒さじシェフの中には学校給食で働いている女性や、漫画『美味しんぼ』などから影響を受け、独学で中華料理人になった男性といった様々な背景を持つ料理人がいて、彼らのストーリーが覗けるのも興味深く、ストーリーテリング部分が大きくウェイトを占めていたので、ある種のヒューマンドラマ、ドキュメンタリーを見ている気分になります。

背景や人柄も知った上で生み出される独創的な料理にはラストまで圧巻でした。私のイチオシシェフは「料理する変人」です…!


さて、こういった番組を筆頭にファッション、映画・ドラマ、音楽、小説など様々な分野で世界的に注目を集めている韓国

私もひっそりと音楽や映画などの動向を追っているのですが、2年前にyoutubeでたまたま見つけたパフォーマンス映像で魅了され、今年3月に行われた来日ツアーでも敏腕PA 内田直之さんをエンジニアに迎えて素晴らしいライブパフォーマンスを披露していた、韓国はソウルを拠点に活動するジャム・バンド CADEJO(カデホ)とのコラボレーションが実現しました。


ジャズ〜ネオ・ソウル、ファンクやブルース等のブラックミュージックを経由し、Azymuth辺りのブラジル音楽にダブ/レゲエ、時にはロックやラテンの気配も感じられるジャンルを横断したスタイルが魅力的なCADEJO。昨年発表された韓国のラッパー Nucksalとのコラボレーション・アルバム『Sincerely Yours』は、NewJeans、チャン・ギハ(キャリアの長い70~80年代の音楽スタイルが人気を集めるシンガー)、250(NewJeansの楽曲等をプロデュース)と並んで、『2023年・韓国大衆音楽賞』で“今年のアーティスト”“今年のアルバム”の2部門にノミネートされたりとその音楽性が高く評価されています。


今回は、CADEJOが2024年に連続リリースしたデジタルシングル4作品をコンパイルしたスぺシャル・アルバム『Tuple』のCD、そして発売を記念したコラボレーション・グッズを展開中。




CADEJO / Tuple〈CADEJO〉
価格:¥2,750(税込)
商品番号:29-68-0495-526

CADEJOは、『FREESUMMER(2019)』『FREEBODY(2020)』『FREEVERSE(2023)』と続けて発表していた“FREE”三部作が完結し、そこからまた更なるフェーズへと突入するべく、2024年は、“シングルという制限された空間の中で作られる音はどのようなものになるのか?”という探究心のもと4作品、全8曲のシングルをデジタルでリリースしていました。今作『Tuple』はそれら全ての楽曲をコンパイルしたアルバム。このアルバム構成で聴くことが出来るのはこちらのCDのみですので、是非ともチェックしてみてください!


またこの発売を記念してアルバムタイトルのロゴを配したデザインが目を惹くコラボレーションTシャツとキャップを展開中です。








【COLLABORATION】CADEJO / Tuple T-Shirts
価格:¥5,940(税込)
商品番号:29-58-0066-445

まさにCADEJOのポジティブなエネルギーが反映されたデザインで、フェスやライブにも打って付けな一枚です。




【COLLABORATION】CADEJO / Tuple Cap
価格:¥5,280(税込)
商品番号:29-58-0067-445



最後に今回発売したアルバム『Tuple』を引っ提げて行われた来日公演「東京遊歩」にあわせて、BEAMS RECORDS店内で行ったライブ動画が韓国の音楽配信ブランド〈Poclanos(ポクラノス)〉に公開されました。アルバム『Tuple』から3曲披露しています。CADEJOの豊かな音楽性、溢れ出るパッションをぜひご堪能ください!


また店頭ではアルバム『Tuple』のご視聴や、グッズ実物をご覧いただけますので、お気軽にお問い合わせください。

ご来店お待ちしております。




大きい音と小さい音


「沈黙は口論よりも雄弁である」ーカーライル『英雄崇拝』

「ことばが役に立たないときは、純粋に真摯な沈黙がしばしば人を説得する」ーシェイクスピア『冬の夜話』


【CASSETTE】Duster / In Dreams〈Numero〉
価格:¥2,530(税込)
商品番号:29-69-0216-526

90sのUSインディーを代表し、サッドコア/スロウコアのスタイルでも知られるDusterが活動を再開。そして、新作アルバムを発売しました。時にドラムマシンやシンセを用いるなど意外な展開も魅力ですが、一貫したメランコリックで繊細な各楽曲にはやはり心を慰められます。

サッドコア/スロウコアは、グランジの反発として出てきたシーンとして知られています。ギターの歪みは抑えられ、言葉通りテンポはスロウ。音数は最小限。ボーカルはウィスパーに歌い上げる等、正にグランジとは反対のアプローチを特徴としています。しかし興味深いのは、それにも関わらずグランジと同じ威力を感じさせるところにあると思います。憂鬱さ、無気力さが音の隙間から洩れてくるかのようです。かつてNirvanaのKurt CobeinがJonny Cashのようなフォークをやりたいと語り、また伝説となったMTVのライブ企画Unplueggedでの彼らの演奏を考慮すると、既にこの時点で確立されていたと言っても過言ではないかもしれません。

Nirvana / All Apologies (Live On MTV Unplugged, 1993 / Unedited)

ところで、小さい音、若しくは少ない音数の音楽というのは、聴いていくと段々と耳が慣れてきて、次第に無音の塊が姿を現してくるように感じませんか。さらに、その塊が少なく鳴らされた音の周りを囲んで、重みを持たせて来るようにも感じますよね。文学で言えば行間、絵画で言えば余白と表現出来ます。Neil Youngが大きい音を出したければ小さい音を出せるようにすることだと言っていたと、My Bloody ValentineのKevin Sheildsがインタビューで語っていました(紛らわしいエピソード)。確かに音量の振れ幅が大きくなるほど、そう感じるものですよね。しかし、そもそも小さい音も無音を纏っている分、大きい音と同じだけの力を持っているのではないか、とも思ったのです。


(続きは こちらに載せています)