レコードにせよ、カセットにせよ、CDにせよ、それらを通して音楽を聴くときには、ストリーミング配信にはない手間が掛かることもあってか選曲が慎重になることはありませんか。その手間こそ自分が選んで聴いているという実感を保証してくれるものであり、大袈裟かもしれませんが作品に参加しているような気分にもさせて貰っているようにも思います。ただその中で、何度聴いていても取り換える気にならない一枚というのは、それが確実に名作であることを示しているように思います。私としては最近はMaya Deliahによるデビューアルバム『The Long Way Round』がその一枚です。
Maya Deliahは北ロンドン出身のギタリスト/SSW。幼少期からギターに魅了され、同国のコンペティションであるThe Mayor of London’s Gigs Big Buskでは、15歳の時に500組以上の中からファイナリストとして選出。SNSでもギターの演奏動画を投稿し、フォロワーが100万人を超えるなど、早くから頭角を現した逸材。そして、AdelやKing Krule、Puma Blueらを輩出したブリットスクールにて学んだ後、2022年に、ジャズの名門〈Blue Note〉のカタログを再構築したコンピ『Blue Note Re:imagined II』に参加したことをきっかけに、同レーベルとの契約が始まったようです。
そんな華々しい経歴に圧倒されますが、彼女が投稿していた動画を見てみるとそれも納得。Tom Mischを想わせるジャジーで甘い、ローファイヒップホップな曲調の中で、彼女らしい可憐さが光っています。そして、そんな雰囲気の中で見せる卓越したスキルにも驚かされます。
Shawn Mendesらとのコラボも経て完成された本作では、R&Bやソウル/ファンク、ジャズをスローなポップスに落とし込んだスタイルを全編に渡って披露しています。〈Blue Note〉でジャジーなポップスといえば、やはりNorah Jonesを思い出しますが、Mayaの場合はギターをメインにしていることもあってか、よりブルージーな雰囲気が漂っているように思います。彼女らに共通する、歌詞も含めた楽曲の親しみやすさと優しい世界観。そして程良い洗練さは、何度も聴いても癒されます。来月のフジロックにも出演予定ですし、今後の動向が楽しみです!
【限定オレンジ・ヴァイナル仕様LP】Maya Deliah / The Long Way Round <Blue Note>
価格:¥5,170(税込)
商品番号:29-67-1378-494
※CDは店頭のみで販売中