ベストディスク2025

2025年も残りわずか。この時期にベストディスクについて考えることは今年を振り返ることにもなる良い機会ですよね。好きだった一枚ずつを調べる度に、ハマっていた時期の出来事や感情が蘇って来る。ゆらゆら帝国の『ボタンが一つ』の歌詞に出てくる”感情発火装置”というワードが脳裏に浮かびます。関係ないですが。ただ、音楽にはそのような側面がありますよね。

とはいえベストディスクと言いつつ、一枚に絞るのも勿体ないので、今年特に聴いていて楽しかったジャンルを書いてみようと思います。そのジャンルとは即ちロック。そのなかでもシューゲイズでした。

まずは、フィラデルフィア出身で、現行のシューゲイズ・シーンを牽引するThey Are Gutting A Body Of Waterによるニューアルバム。ドラムンベースやグリッジ、NINTENDO 64のサウンドトラックのような音をライブで合わせる等、エクスペリメンタルの要素が重なっていくのが彼らの持ち味。しかし、以前のブログでも書いた通り、そもそも何層にも重なった爆音ギターのフィードバックノイズにウィスパーなボーカルの組み合わせを成立させてしまったり、別の楽曲のドラム音源を無理矢理繋ぎ合せたりと、シューゲイズというジャンル自体、当時は画期的だったので寧ろ本流を進んでいるように個人的には思ってしまいます。とはいえ今作では、上述のようなデジタルな要素との組み合わせを排し、直球のギターリフを炸裂させています。それが気持ち良いんです。


続いて同郷のバンド、Her New Knifeもオススメです。シューゲイズからポストパンク、スロウコアも繋ぎ合せたサウンドを披露。こちらはもう少し退廃的な美しさに魅了されますね。彼らを聴いていると、シューゲイズのシーンもまた一歩変化を見せているように思います。ノイジーなギターとウィスパーなボーカルは従来と変わりないのですが、フワッとしたドリーミーな残響よりも、かっこ良いリフで引っ張っていくような印象があります。ノイズの出し方も様々で、まさに上述のHer New Knifeは曲によってインダストリアルな音を出しています。

もう一つ当店でも販売しているWednesdayも必聴です。カントリーやスラッカーを想わせる穏やかな演奏(しかも超上手い)から、一気に激しいギターノイズで曲調が切り替わるのですが、1曲まるごとシューゲイズのスタイルをやるわけではないところが今っぽいなと思ってしまいます。

そもそも彼らは好きなものを好きなように表現しているのに過ぎないでしょうから、シューゲイズと一括りにしてしまうこと自体に意味はないかもしれません。とはいえ、先人のスタイルを吸収し、自分達のセンスや時代感を通して再解釈させていく歴史的な繋がりというのは尊いものですね。


〈Teenage Engineering〉のオススメ品

只今ストックホルムの電子楽器ブランド〈Teenage Engineering〉によるモアバリエーションを開催中です! 

子ども心を擽るようなデザインセンスにリンクするかのように、また同時に反するかのように考え抜かれた性能の高さが、このブランドの魅力であると思いますが、個人的なお薦めアイテムはOB-4。元々当店で販売していたモデルではあるのですが、ホワイト、グレー、ネイビーも今だけ展開しています。写真にあるものはグレーとブラック。程良く愛嬌のある洗練されたデザインとも相まって高級感があって良いですね。

Teenage Engineering / OB-4
カラー:ホワイト、グレー、ネイビー
価格:¥121,000(税込)
商品番号:29-74-7031-539

有線、Bluetooth対応スピーカー、ラジオとしてだけでなく、diskというモードに切り替えるとドローンなどのプリセット音源のループや音色を変えられるメトロノームを流すことが出来ます。

また、さらに楽しい点はループとエフェクト機能。流している音源の一部分をピックアップしてループさせることが出来ますし、右側の回転している部分を逆行させると巻き戻しもされます。所謂スクリューですね。アンビエントのような残響などエフェクトをかけることも出来ます。


アイデアが続々と膨らんでいきますよね…。高音質であることは勿論、自宅でのインテリアとしても映えますし、外に持ち込んでライブパフォーマンスの為の楽器としても使える利便性にも遊び心にも富んだ一台です。

その他にも豊富なラインナップを取り揃えております。実機でお試し出来るチャンスはなかなかないと思いますので、是非店頭でお試し下さい!

Record of the day! 新入荷ハウスミュージックをご紹介!

皆さん、こんにちはBEAMS RECORDSの竹中です。


普段は、隣のBEAMS HARAJUKU LIMITED STOREに居ることがおおいのですが、今季から兼任となり週2日でこちらにも在店しております!


ちなみに、BEAMS RECORDSでのブログ更新は初となるので、まずは自己紹介から。


竹中千満(タケナカセンマ)

趣味はDJ。ディスコ、ハウスをメインにプレイします。


不慣れな点もございますが、是非みなさんと楽しく音楽のお話ができたらなと思っておりますのでどうぞ宜しくお願いします^_^


それでは、早速お題に入って行きましょう!


今回は、個人的にHotなダンスミュージックが続々と入荷しているので、そのご紹介をしていきたいと思います!


まずは!

デトロイト・ハウスを語る上で欠かせない人物Moodymannこと、Kenny Dixon Jr.!




言わずもがな、彼はソウルやジャズ、ディスコといったブラックミュージックをハウスという形に再構築した人物であり、いまやカルチャーそのものを象徴するような存在ですね笑


そんな彼の重要作リイシュー盤から一緒に見ていきましょう!



①Moodymann『Silence In THE Secret Garden』〈Peacefrog〉



【2LP】Moodymann Silence In The Secret Garden
カラー:Smoky Colour Vinyl
価格:¥7,590(税込)
商品番号:29-67-1516-526

2003年リリースの本作は、彼のキャリアの中でも特に人気の高い作品ですね。


DJでプレイするのはもちろん、部屋でゆっくりと針を落とす時間にもぴったりの内容かなと。


個人的には、「Backagain」「Illumination (The Angular Vision)」あたりの流れが特におすすめ!


ジャズとソウルの間を漂うようなグルーヴが、何度聴いても心地良くなります。


デトロイトハウスのクラシックに触れるきっかけとしても、このタイミングで手に取ってみる価値がある作品です!




今回のリイシューでは、スモーキー・カラー・ヴァイナル仕様、さらに日本語帯付き仕様というスペシャルな仕上がりに!


続いては、

②MoodymannForneverevermore』〈Peacefrog〉



【2LP】Moodymann Forevernevermore
カラー:Smoky Colour Vinyl
価格:¥7,590(税込)
商品番号:29-67-1517-526

こちらは、彼と言えば!の霞んだディープサウンドに、薄らと重なるソウル・ジャズの要素が特徴の人気なタイトル。


Moodymannらしいローファイな質感と、メランコリックなサンプルの切り取り。

まさにデジタルにはない、アナログならではの魅力を感じさせてくれます!


個人的には、C2に収録された「The Thief That Stole My Sad Days (Ya Blessin Me)」の展開が特にお気に入り


クラブのピークを過ぎたあとの、少し照明が落ち着いた時間に流れてくると、その柔らかさに思わず肩の力が抜けてしまうような1曲。


フロアでもリスニングタイムでも、ゆったりと身体を揺らせる絶妙なグルーヴがこの作品には詰まっています。






こちらも、スモーキーカラー・ヴァイナル、そして日本語帯付き仕様です。


③MoodymannBlack Mahogani』〈Peacefrog〉


【3LP】Moodymann Black Mahogani
カラー:Smoky Colour Vinyl
価格:¥9,240(税込)
商品番号:29-67-1533-526

こちらは、ジャズやソウル、ゴスペルのニュアンスをブレンドしながら、デトロイトの空気感と日常会話や人の温もりを閉じ込めたような柔らかい作品。


中でも、4曲目の「Runaway」が個人的には1番好きかも。


女性ヴォーカルの歌声に重なるMoodymann自身の愛の手が、なんだか友人と談笑を楽しんでいるような、そんな感覚にさせてくれるんです、、。


音と音の間に"会話"がある。ただ踊るだけの音楽ではない意味をここに感じます。






もちろん、こちらもスモーキーカラー・ヴァイナル仕様+日本語帯付きの特別仕様で!

と、ここまで Moodymannリイシュー盤の3作をご紹介してきましたが!


他にもお勧めしたいサウンドが幾つかございます!そちらも合わせて見ていきましょう!


まずは、

④ Daniele Baldelli『Cosmic Sound』〈ELSI〉

イタリアの伝説的DJ、Daniele Baldelli(ダニエレ・バルデリ)による2009年作。



【LP】Daniele Baldelli Cosmic Sound
カラー:Black
価格:¥5,280(税込)
商品番号:29-67-1591-526

タイトルの通り、聴けばまさにコズミック・ディスコの深淵。。スペースシンセと生音の質感が絶妙に混ざり合い、まるで宇宙に吸い込まれてれしまうような感覚に。


アシッドでもなくテクノでもない、中間の揺らぎを感じさせるサウンドデザインが彼らしい、、


今では“コズミック”という言葉自体がひとつのジャンルとして確立していますが、その源流をもう一度確かめられるような、まさにルーツ・オブ・コズミック・サウンドとも言える再発盤です!


最後は、こちら!

僕が愛してやまない東京のアングラクラブシーンを牽引するMONKEY TIMERSとKeita Sanoによるユニット、GǼG(ギャグ)の12インチ!


⑤ GǼG『Shake & Shout EP』


【LP】Gaeg Shake & Shout
カラー:Black
価格:¥4,620(税込)
商品番号:29-67-1590-526

サウンドはまさにタイトル通り。ハウス〜ディスコを行き来するエネルギッシュさがピーク帯のフロアに持ってこいな1枚です!


特に、ボーカルループがふんだんに使用され、攻撃的なグルーヴ感をもつ「Yamarchy」はフロア向けの直球ナンバー。


B2ではRon Trentによるremixも収録されており、原曲の持つ遊び心をさらに引き出したディープな展開が楽しめます!


個人的には、レコードバッグには常に忍ばせておきたい1枚です。


と、ここまでヅラヅラと書いてしまいましたが、

皆さんいかがだったでしょうか?


どの作品もそれぞれの魅力が詰まった最高な作品ですよね、是非お気に入りの一枚を見つけて、自分の時間でゆったり楽しんでみて頂きたいものです。


店頭では、ダンスミュージックにまつわるお話なども皆さんとできたらな、なんて思いますので、是非気軽にお声がけ下さい!


では、お待ちしております!


最後まで読んで頂きありがとうございました。

凄味のある美しさ

アンビエントのパイオニアであり、音楽のあり方を世界に問いかけ続けるレジェンド、ブライアン・イーノのドキュメンタリー映画『ENO』が絶賛公開中ですが、米メディアPitchfork誌にてブライアン・イーノの再来と評された日本人アーティスト、横田進の復刻盤もお見逃しなく!


1998年に自主レーベル第一弾として500枚限定でCDのみでリリースし、2000年に英の〈Leaf〉からヴァイナル化されるも長らく再発はなく、ストリーミング配信もなし。知る人ぞ知るカルト作品として知られていました。

同じ年に国内の〈Submalime Records〉からリリースされていたアルバム『1998』が彼の”陽”の側面とするならば、本作はまさに”陰”の側面が現れた対極的な一枚といえそうです。よりパーソナルな部分が表出されたとでも表現すればよいでしょうか。彼の音楽的ルーツであるJoy Divisionを想起させる、ダークで耽美な世界観。静けさを感じさせるミニマルな音像と、時計の針のような音など詩的な環境音は、2019年にリリースされたオムニバスアルバム『Kankyo Ongaku』をきっかけに世界中で再評価された、日本のアンビエント創成期の方々とも一致を見せているようにも感じます。と、同時に90年代当時のグリッジノイズにも通じていたり。圧倒的なオリジナリティを持っていますが、今の先鋭的なエレクトロミュージック・シーンを踏まえて聴いてみても、特に違和感なく聴けてしまいます。むしろ時代の方がやっと追いついてきたのかもしれませんね。

因みに、RadioheadのThom Yorkeによる2015年発売のソロアルバム『Tomorrow's Modern Boxies』の中にも本作と似た要素が複数あり、彼が横田氏を敬愛していたことを実感出来るかもしれません。是非合わせて聴いてみてください!


cadejo

9/9(火)青山の月見ル君想フにて行われた、韓国のバンドCadejo(カデホ)による来日公演にお邪魔しました。さすがライブ・バンドと思わせる、メンバーそれぞれの高い演奏技術と息の合った動きに一気に惹き込まれていきました。また、日本を代表するダブ・エンジニアの内田直之氏によるリアルタイムでのダブ・ミックスも絶妙な味わい。ファンキーでいて3ピースバンドならではのタイトなグルーヴに、エコー&リバーブのウェットな要素が加わり、極上の気持ち良さへと昇華させていました。セットリストは勿論、両者によるコラボアルバムが中心。

同バンドのベースになっているブラックミュージックの枠を超えて、The Smileのようなポスト・ロックやサイケデリック・ロックを思わせるなど、新境地を見せている本作。ライブではオーディエンスも含めた熱気溢れる音が魅力ですが、スタジオでの作り込まれた環境下での録音と緻密な編集で作る、よりスぺイシーな世界観を感じさせるCD音源も違う魅力を放っています。

ベースのキム・ジェホ氏が当店とのコラボキャップを被ってくださっていたのも嬉しかったですね(彼らのInstagramの公式アカウントからもご覧いただけます)。こちらも合わせて是非!


2000年代の薫り

ファッションだけでなく音楽でも2000年代の空気感がすっかり浸透してきていることを感じる今日この頃。当店で販売している商品の中でも、Haimの最新アルバムは同時代の全米チャートを想い起させるノスタルジックな雰囲気が魅力的で、クラブミュージックやUKジャズ/ブラックの界隈で登場頻度の増えた、ドラムンベースも取り入れています。ジャケットも当時のセレブのパパラッチ写真を意識したものだそう。


先日フジロックに出演したLittle Simzの最新アルバムを聴いても、ブラックミュージックの枠に収まらず、ロックを感じる要素が散見され、かつてのラップ・ロックやオルタナティブ・ロックを思わせます。

これらのジャンルに大きな刺激を受けてきた私としては、これを機に人気再燃してほしいなと切に願うばかりですが、そんな”願い”を”予感”に変えてくれそうな一枚が入荷されました。

ロンドンを拠点に、オンラインを通じて出会った5人のメンバーで結成された若手バンドbby(ベイビー)。自身のリハーサルスタジオを所有し、そこで同時にライブを定期的に行うことで地道に人気を集めていったというDIY精神に満ちた彼ら。2023年に『hotline』でアメリカのオルタナティブ・チャートでベスト20入りを果たし、NMEやRolling Stone UK等のメディアも彼らを掲載したことで人気急上昇。そして、遂にデビューアルバムがリリースされました。ロック、ヒップホップ、R&Bを混在させたスタイルの彼らですが、本作ではスクリューが突如入ってくるなど、予測不能な展開が高揚感を更に引き上げていきます。しかし、同時にボーカルのBenjyの繊細で優しい歌声とキャッチーなメロディによって、身を委ねて聴くことができるのも魅力です。また、冒頭のM1のメロディラインは、Linkin Parkを彷彿とさせ、M2はPheonixやRazorlight。M4はBlock Partyなど、とにかく00年代の要素がザクザクと脳を刺激してきます(お陰様で世界が眩しく見える)。

さらに、元CelineのHedi Slimaneが起用しそうな彼らのルックス(特にギタリストのお2人)も良いですね。ロックミュージシャンをアイコンにし続けてきた自分としては超重要な要素です。こちらを是非ご覧ください。


何度も聴きたくなる

レコードにせよ、カセットにせよ、CDにせよ、それらを通して音楽を聴くときには、ストリーミング配信にはない手間が掛かることもあってか選曲が慎重になることはありませんか。その手間こそ自分が選んで聴いているという実感を保証してくれるものであり、大袈裟かもしれませんが作品に参加しているような気分にもさせて貰っているようにも思います。ただその中で、何度聴いていても取り換える気にならない一枚というのは、それが確実に名作であることを示しているように思います。私としては最近はMaya Deliahによるデビューアルバム『The Long Way Round』がその一枚です。

Maya Deliahは北ロンドン出身のギタリスト/SSW。幼少期からギターに魅了され、同国のコンペティションであるThe Mayor of London’s Gigs Big Buskでは、15歳の時に500組以上の中からファイナリストとして選出。SNSでもギターの演奏動画を投稿し、フォロワーが100万人を超えるなど、早くから頭角を現した逸材。そして、AdelやKing Krule、Puma Blueらを輩出したブリットスクールにて学んだ後、2022年に、ジャズの名門〈Blue Note〉のカタログを再構築したコンピ『Blue Note Re:imagined II』に参加したことをきっかけに、同レーベルとの契約が始まったようです。


そんな華々しい経歴に圧倒されますが、彼女が投稿していた動画を見てみるとそれも納得。Tom Mischを想わせるジャジーで甘い、ローファイヒップホップな曲調の中で、彼女らしい可憐さが光っています。そして、そんな雰囲気の中で見せる卓越したスキルにも驚かされます。

Shawn Mendesらとのコラボも経て完成された本作では、R&Bやソウル/ファンク、ジャズをスローなポップスに落とし込んだスタイルを全編に渡って披露しています。〈Blue Note〉でジャジーなポップスといえば、やはりNorah Jonesを思い出しますが、Mayaの場合はギターをメインにしていることもあってか、よりブルージーな雰囲気が漂っているように思います。彼女らに共通する、歌詞も含めた楽曲の親しみやすさと優しい世界観。そして程良い洗練さは、何度も聴いても癒されます。来月のフジロックにも出演予定ですし、今後の動向が楽しみです!

【限定オレンジ・ヴァイナル仕様LP】Maya Deliah / The Long Way Round <Blue Note>
価格:¥5,170(税込)
商品番号:29-67-1378-494

※CDは店頭のみで販売中

シュールで不気味な美しさ

こんにちは。Thom Yorke Timesの柳です。昨年の11月、彼のソロライブ(東京ガーデンシアター)に行ってきました。2ndソロアルバム『Tommoro's Modern Boxies』ツアーからの演出と同様に、VJとオケを流しながら、シンセやキーボード、ギターを弾いて歌うスタイルで披露。RadioheadからAtoms For Peace、The Smile、ソロと彼のキャリアを総括した選曲に対して、新たなアレンジで臨んでおり、VJも相まって大きく刺激を受けました。あと毎度思うのですが、彼のライブは音質が本当に良いですよね。常に探求しているのだろうなと思います。

そこから僅か半年、新作アルバムをリリースしました。今回は、以前にもコラボしたことのあるMark Pritchardとの共作アルバム。それにしてもThe Smileでのワールドツアーからすぐにソロでのツアー。そして、アルバムリリースと彼の音楽活動は絶えませんよね。

Mark Pritchardは、Reload、Global Communication、Harmonic33、Harmonic313、Africa Hitechなどあらゆる名義を通して、エレクトロニック・ミュージックを90年代から牽引し続けてきたイングランドのプロデューサー。2013年から自身の名前を使って作品を発表し始め、2016年『Under The Sun』ではボーカリストを複数のトラックでフィーチャー。その一人がThom Yorkeでした。

ロックダウン期にThomの方からアプローチがあったようで、Markのアーカイブを使って双方でのやり取りの末に完成。テクノ、アンビエント、フットワーク/ジャングル、ベースなど、名義の数に比例してというべきかMarkのスタイルは様々であるものの、どれにも独特のサイケデリックな気持ち良さがあるように思います。今作ではそれらをバックボーンにしながらもオリジナリティに溢れるエレクトロニックミュージックを構築。さらに、Thomの要素も加わり毒々しさと美しさが絶妙に混ざり合っています。揺れるシンセの音色やチープなリズムマシン。モジュラー、ヴィンテージのエフェクターなど、機材にフォーカスして聴いていても楽しいですね。

そしてもう一つ大事な要素はアートワーク。シドニーを拠点に活動するアーティスト/ グラフィックデザイナー、Jonnathan Zawadaが手掛けています。ファッションブランドのKsubi、モジュラー・レコード、雑誌「Nylon」、コカ・コーラなどを担当した人物で、Markの前作アルバムも彼によるデザインでした。今作でも、特に『Back in the Game』と『Gangsters』のMVが強烈です。氏の得意とするアナログとデジタルの両技法を織り込んだスタイルで描かれる、不気味なアニメーションは、更に本作の世界観を強固にさせていますね。


【LP】Mark Pritchard & Thom Yorke / Tall Tales〈Warp Records〉
価格:¥5,390(税込)
商品番号:29-67-1456-813

Mark Pritchard & Thom Yorke / Tall Tales〈Warp Records〉
価格:¥2,530(税込)
商品番号:29-68-0542-813

静かな癒し

『どこであれ美しさを見いだすということだね。もちろん、大切な人を失った時の悲しみは否定できない。でも、その悲しみの中にも美しさを見つけなければいけない。それが、生きることだと思うんだ。』-Jacob Allen

Rolling StoneでのインタビューにてPuma BlueことJacob Allenは、自分自身の音楽がダークであることを繰り返し述べた上で、このように語っていました。なんて素晴らしい言葉だろうと感動しつつ、彼の音楽性の核となる部分を表現しているようにも感じました。

Jacob Allenはサウス・ロンドン生まれで、Amy WinehouseやKing Kruleなど多くのアーティストを輩出した名門ブリットスクール出身。2014年Soundcloudにアップした『Only Trying 2 Tell U』をきっかけに、一気に知名度を上げました。

Jeff BuckelyやElliot Smithを軸に、ジャズ~ソウル~ロック等あらゆる影響を独自の静謐な世界観の中に収めた彼の作品は、それぞれのジャンルの所謂落としどころから敢えて外れているという印象が個人的にあります。常に発展途上にあるような、創意工夫に溢れたポストパンク的な作風に魅力があるように思うのです。それが2023年にリリースした『Holy Waters』によって、遂に彼のスタイルの完成形を垣間見たように感じていました。

そして2025年2月、突如配信にて新作アルバムを発表。それが先日フィジカルでも発売されました。Rolling Stoneにて『最近は、もう一度ローファイなサウンドに戻ろうかと思っている。』と宣言していた通りではありますが、アコースティックギターとボーカルの弾き語りを中心にした意外な内容となっています。ミニマリズムを強調することもなく、これまで以上に素直に彼の歌を聴くことが出来ます。また、ピアノの残響が陽炎のように揺れる、直感に身を任せたようなアンビエント曲を収録している点も、これまでにないアプローチです。悲しみ(≒ダーク)の中に漂う繊細な美しさ。映画音楽のようなロマンティックな雰囲気と官能性。最高です。

【LP】Puma Blue / Antichamber〈Blue Flowers〉
価格:¥6,160(税込)
商品番号:29-67-1438-512

Puma Blue / Antichamber〈Blue Flowers〉
価格:¥2,970(税込)
商品番号:29-68-0540-512


静観と諦念の間

「感情をそのままさらけ出すのは自分には合わない。だから今、ただこの瞬間に沈み込んでいるんだ。ただ静かに、感じ取っている。」-Eli Kezler

ニューヨーク出身のドラマーであり、作曲家、ヴィジュアル・アーティストでもあるEli Keszler(イーライ・ケズラー)による新作アルバムが入荷しました。個人的には好きなドラマーの中で上位3位に入る人物です(並ぶのはChris DaveとMakaya Mccraven)。確かなスキルに裏打ちされた上で、自由な発想で叩くそのセンスと、錘のような金属をスネアにいくつも置いて、カチカチっと響かせる独特の音色が特に堪りません。

活動初期の作品は現代アートといった印象で、現にインスタレーション作品をいくつも発表しています。

後にOneohtrix Point Never(OPN)やLaurel Halo、Skrillex等のサポートを務めたことで、さらに知名度を上げた印象です。実験的なエレクトロニック・ミュージックを生演奏で見事に再解釈させています。

さて今作についてですが、前作同様古いノワール映画のような世界観を踏襲しています。LAジャズを代表するサクソフォ二ストSam Gendel。また、人気レーベル<Stones Throw>からのリリースでも知られるボーカリストSofie Royerという意外な客演の支えもあり、前作以上にどろっと蕩けるような耽美な雰囲気が全体に漂っていますね。そして、ダウンテンポからドラムンベースまで、緩急の利いたドラムがアルバム全体に輪郭を与えています。冒頭に載せた彼の言葉通り、沈み込んだ心の深い部分から世界を静観しているようなクールさがかっこ良いのです…。RadioheadからThe Velvet Underground、The Doors、Nine Inch Nails、Nicolas Jaar等々。退廃的な美しさと実験性が掛け合わさったこれらのアーティストがお好きな方は是非!

【LP】Eli Keszler / Eli Keszler〈LuckyMe〉
価格:¥4,620(税込)
商品番号:29-67-1425-813



ものをつくること

みなさんこんにちは。BEAMS RECORDSスタッフの和田です。 相変わらず音楽ばかり聴いている自分ですが、趣味で音楽制作も行っていて、これまで聴いてきた音楽を自分なりにアウトプットしています。思い通りにいかないことも多いですが、自分らしい曲が作れた時には本当にやっててよかったなあと思います。 最初のころはなぜ自分の好きなアーティストのように素晴らしい曲が作れないのだろうと悩んでしまうこともありましたが、坂口恭平さんというアーティスト/作家の『継続するコツ』という本を読んで考え方が変わり、自分の作ったものに肯定的になることができました。同じように自分の作ったものに自信が持てない、制作が継続できないという方に是非おすすめの本です。

ということで、今回のブログでは、音楽制作を始めたい方におすすめの機材について書いてみます。

まずはストックホルムの電子楽器ブランドである〈Teenage Engineering〉から待望のニュープロダクトが到着しましたのでそちらをご紹介します。



Teenage Engineering / OP-XY ¥428,000 (税込)

こちらが新しく発売が開始したポータブル・シーケンサー/シンセサイザー/サンプラーのOP-XYです。簡潔に説明すると、これ一台で音楽制作ができる、持ち運び可能なマシンです。


この本体の中に沢山のシンセサイザーやサンプラーが入っているので、自由な音作りと演奏が可能になっており、重ねて録音することで楽曲を作ることが出来ます。


下段のボタンがキーボードになっておりそちらで演奏することもできますが、鍵盤が弾けない方でも自動演奏機能やコード進行支援機能を使うことで直感的に演奏することが可能です!

またドラムをステップ入力することも可能なのがOP-XYの従来のOP-1シリーズとの違いになっております。例えば、直接演奏せずとも、キックを一拍目に、スネアを三拍目に、ハイハットを四拍目に配置する、といったことができるようになりました。そのため、テクノなどのダンスミュージック系の音楽を作る方にはもってこいの機材です。


またフィルターやエフェクト、マスターEQ/サチュレーター/コンプレッサー/リミッターも全て内蔵されているので音楽制作をこれ一台で完結させることもできます。パフォーマンス用のエフェクトも24種類入っているので、ライブ演奏にも良いかと思います。


機材を何も持っていないけど音楽を作ってみたい、楽器は演奏できないけど楽曲を作りたいという方にぴったりの一台となっております!また、外部のシンセサイザーに接続し、OP-XYからコントロールすることもできるので、既にシンセサイザーなどをお持ちの方にもお勧めします。


これだけの機能がこの小さな本体に入っており、ポータブルで使用することができるという点がすごいですね…。自然の中でも、移動中でも、場所を問わずにパソコンやシンセサイザー要らずでこれ一台あれば音楽を作ることができると思うと本当に素晴らしいです。


文章だけだと分からない、イメージしづらい部分も多いかと思うので、気になる方は是非YouTubeで動画などをご覧いただくと理解しやすいかもしれません。また、店頭には実機もあり、触っていただくことも可能ですので、是非ご来店ください!



OP-XYに限らずポータブルな機材を使うときに迷うのがモニターヘッドホン。外に持っていくのに嵩張るのも嫌ですし、かといって音質は妥協したくないところです。


そんな条件にもぴったりのヘッドホンがデンマークのヘッドホンブランド〈aiaiai〉から発売されましたので、そちらもご紹介させていただきます。



AIAIAI / TMA-2 DJ Wireless  ¥39,800 (税込)

こちらはワイヤレスDJモニターヘッドホン。〈aiaiai〉の独自技術「W Link+テクノロジー」を用いることで、ケーブルなしでも音の遅延をほとんど感じさせないので、優れたパフォーマンスを実現します。付属のトランスミッターをミキサーやパソコンなどのアウトプットに接続することで、ワイヤレスでヘッドホンを使うことが出来ます。一般的なBluetooth接続に比べて音質の劣化と遅延を防げるこの機能は、DJだけでなく音楽制作にも最適です!


また、一般的なBluetooth接続に加え、有線接続も可能なので、普段使いからDJ/制作まで幅広い用途で使えるのも魅力の一つです。専用のアプリ内のイコライザー機能で自分好みの音にカスタマイズすることもできるのも、このモデルの特徴です。


迫力のある低音とクリアな音質はテクノなどのダンスミュージックの制作にもぴったりです。レゲエやヒップホップなどもベースやキックが気持ちよく響いてれて気持ち良いです。主観にはなってしまいますが、低音はTMA-2 DJより控えめになっており、ハイハットなどの高音域が強めな印象です。個人的には、これまでのaiaiaiのヘッドフォンの中でも一際パワフルなサウンドのモデルかなと思いました!



以上、新しく発売が開始されたオーディオ類から二点ご紹介させていただきました。
皆さんも是非これを機に音楽制作を始めてみてはいかがでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

どちらの商品も店頭のサンプルでお試ししていただけるので、是非ご来店お待ちしております。


高品質でクラシカルなデザイン


Ashidavox / HA-SX12/HD
カラー:グレー、ブラック
価格:¥14,850(税込)
商品番号:29-75-0060-478

80年以上の歴史を持つ日本の老舗音響ブランドAshidavoxより、ヘッドホンの新機種が登場しました。ひさご電材株式会社の高品質無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)コードを使用している点は、人気モデルST-90-07と同様。ですが、オーバー・イヤー型であることや、ケーブルが着脱可能であること。ミツマタを混抄した振動板とフリーエッジドライバーを搭載したことによって音質面で違いがあります。具体的には、より臨場感のある音像と低域の表現の豊かさにあると思います。例えば、バンドサウンドを聴いているときには、バスドラやベースの音階がよりはっきりと聴こえる印象でした。ブーストさせているような存在感ではないので、アンサンブルとしての気持ち良さをより感じられるように思います。モニター用にも使いやすそうですし、普段使いとしてもお気に入りの楽曲をより楽しく聴くことができそうですね。

また、見た目もヘッドホン選びには重要な点。ST-90-05ST-90-07と比べるとオーバー・イヤーである分一見ヘビーな印象はあります。が、丸みのある形状と高級感も漂うデザインなので、意外にも馴染みやすいと思います。

色はブラックとグレー。写真ではグレーを選んでいます。丁度ブラックのトップスでしたので、同色で揃えてもミニマルでかっこ良いですが、グレーで浮かせて見せてもよりレトロなデザインが映えて良いかなと。ヘッドバンドにもクッションが付いているので長時間聴いていても疲れにくいですし、首に引っ掛けた時も気持ち良いですね。


Everything Is Recorded

【限定レッド・ヴァイナル仕様LP】Everything Is Recorded / Temporary〈XL Recordings〉
価格:¥4,950(税込)
商品番号:29-67-1325-813

Everything Is Recorded / Temporary〈XL Recordings〉
価格:¥2,750(税込)
商品番号:29-68-0501-813


<XL Recordings>

Radiohead、Sigur Ros、Adele、近年ではKing Krule、Fontains D.C.など、インディレーベルでありながら多くの大物アーティストを抱え、常にヒット作品を生み出し続けている、音楽好きには不可欠なロンドン発のレーベルです。

イギリスの最王手インディレーベル、<Beggers Banquet Records>によるグループ<Beggers Group>からのバックアップを経て、1989年に創業。1993年リリースのProdigyによる3rdアルバム『The Fat Of The Land』で大きく売上を伸ばしたことを皮切りに、ダンスミュージックで躍進を始めますが、00年代に入ると今度はフォークやロック、ヒップホップなどにも手を伸ばし、White Stripesにより今度はインディ・ムーブメントの中心的存在となりました。上述の若手アーティストらの他にも、古くはBasement Jaxxなど、彼らの才能にいち早く気付きバックアップする姿勢も素晴らしい限りです。

そんな同レーベルの創業者Richard Russell(リチャード・ラッセル)がスタートさせたプロジェクト"Everything Is Reorded"。彼の人望の厚さによって成立する豪華ゲスト達の集いと、Gil Scott-Herron、Damon Albernらのプロデュースを手掛ける彼自身のセンスから生まれる、このスペシャルな企画の最新作がリリースされています。

今回は自身の友人や家族、同僚の喪失や悲しみを中核のテーマにしながら完成。ダブステップなど、クラブミュージックの側面が強かったこれまでに対して、今回はメロディアスで柔らかな楽曲を多く揃えています。ただし、一筋縄ではいかないのがまさに彼の手腕。フォークを80年代のレゲエのようにデジタル化させる(!?)という実験的な試みも同時に行っています。フォークの代表的人物、Nick Drakeの母であるMolly Drakeの楽曲など、トラックの中にサンプルのループやミュージック・コンクレートのような仕掛けを施しています。まるで回想に耽っているような甘さと、未知な展開による刺激との交錯。さらに耳に残るメロディラインや、リズムの気持ち良さも重なった非常に興味深い内容になっています。

Richard Russellのセンスに改めて驚かされますが、そんな彼のアーティスト性によって、同レーベルが素晴らしくあり続けているということも再認識出来ますね。これからもよろしくお願い致します!

walking on the "left"side



【2LP】Nicolas Jaar / Piedras 1 & 2〈Other People〉
価格:¥6,820(税込)
商品番号:29-67-1317-526

2011年にフランスの<Circus Company>よりリリースされたデビューアルバム『Space Is Only Noise』で世界中から高い評価を受け、さらにバンドDarksideのリーダーとして、またミックスエンジニアとしても活躍するNicolas Jaar(ニコラス・ジャー)による最新アルバムがリリースされました。近年ではFKA TwigsやAli Sethiらとのコラボを続けてきた上に、自身の作品ではエクスペリメンタルに接近したものが続いていました。今回もやはり実験的ではありつつ、『Sirens』以来のポップさも光る一枚となっております。

そもそも本作は、自身の出身であるチリはサンディエゴにある、記憶と人権の博物館でのライブの為に2020年に制作したものと、Telegramで展開されたラジオ劇『Archivos de Radio Piedras』でのサウンドトラック用にも書き下ろしたものをまとめた2枚組LPとなっています。ともに同国の現代史を描いた政治的な内容となっていますが、彼の表現の上で重要なテーマとなっていることは過去作からも伺えます。

アンビエント~レゲトン~エレクトロポップ~ドラムンベース/テクノ~チリの舞踏音楽クエカなど今回もジャンルの幅広い混交が素晴らしいのですが、やはり"沈黙"を巧みに使って、音の立体感と幽玄さを演出する技術には脱帽です。無音のようでいて可聴域ギリギリの低音が薄く出ていたりするんですよね。だからといってと言うべきか、だからこそと言うべきか、キックがメインになるラウドなダンストラックもやはり秀逸なのです。また、瓶の栓を抜いた時のような音や雷のようなノイズなど、独特の音色が沢山聴こえてくるのですが、そのどれもが気持ち良いのです。さらに各パートの録音の仕方も明らかに普通ではないことが窺い知れるのですが、今回は割愛します。人間の聴覚を通して快感を得るポイントをとにかく研究し続けているのでしょう。

両親からレフトフィールドなものを目指すようにと言われていたそうですが(彼の父親は、写真家、建築家など多彩な活動を行うアーティストAlfredo Jaar)、ここまで拘り切った上にかっこ良い楽曲を作れるというのは驚異的です。憧れるー。

アイコン



【LP】Butterfly (Vincent Gallo & Harper Simon) / The Music of Butterfly〈Family Friend Records〉
価格:¥9,020(税込)
商品番号:29-67-1344-813

Vincent Gallo(ヴィンセント・ギャロ)。アイコンが遂に姿を現してくれましたね。

シングル・ライダースにスキニー、発色の良い赤いブーツ。何度もかき上げるオールバックヘア。フィルムの粗い映像と特異な画面構成。自身の楽曲からYes、King Crimsonの引用など、細部の細部にまで美学の詰まった映画『Buffalo'66』。John Fruscianteの楽曲を中心に哀愁を漂わせながら、過去の罪悪感に苛まれていく主人公を描いたロードムービー『Blown Bunny』。共にどこまで同情出来ているのか良くわからなくなる、ナルシシズムたっぷりの内容はさておき、唯一無二の世界観と美しさにどれだけ多くの男性が夢中になったことでしょう。結局映画監督は廃業してしまい、俳優としての活動が中心になりますが、最近では映画『トジコメ』以降どうしているのか多くの方も気になっていたところだと思います。

音楽活動の面では、周知の通りバスキアも在籍していたカルトバンドGreyに同じく在籍した経歴を持ち、<Warp>から2001年にリリースしたアルバム『When』も話題になりました。

そんな彼が遂に新作アルバムをリリースしました。Simon & GarfunkelのPaul Simonのご子息であり、自身でもSSWとして活躍するHarper Simonと組んだButterfly名義での作品です。M5をVincent、M3とM8をHarperが単身で手掛けた以外は両者によって全て作られたものとなっています。上述の『When』に通じる、ギター、ドラム、ベース、キーボード等を入れ替えながら極限までシンプルに演奏し、どちらかが柔らかに歌うスタイルが特徴的です。終始静寂を貫いてはいても、緊張感は感じさせず、寧ろ温もりが漏れ出てくるかのようで、つい身を任せていたくなります。テクニックとしての難しさは余り感じさせないのですが、絶対に真似の出来ない洗練さがあるんですよね。

M5はまさに『when』の収録曲"Laura"に大きく類似していますが、果たしてこれは敢えてなのか偶然なのか。どちらにせよファンとしてはテンションが上がりますね。

そして、音質を極限まで追求したプレス工程を採用し、装丁も全て手作業という拘りの詰まっています(手触りが気持ち良いです)。限定3000枚プレスですのでお早めに!




スラッカー

お正月からの連休が一旦落ち着きましたね。精神的に少し辛めですが、どうかご安心下さい。この世には音楽があります。

無気力のときには無気力を肯定してくれる音楽を聴くと、特に何も変わらず無気力でいられるのでおススメです。そして無気力といえばスラッカー・ロックです。

元々スラッカーというワードは、大戦時に徴兵制を拒んだ人々を指していましたが、90年代に働く意欲のない若者を指すものとして欧米で使われ始めました。近年でも中国で寝そべり族が流行したように、経済の発展と共に現れる社会現象の一つとして、研究している方が多くいらっしゃるようです。また社会活動のアクティヴィズムと混ぜて、スラックティヴィズムというワードも生まれたりしています。

PavementやSparklehorseらはまるで彼らの代弁者かのように、粗削りな楽曲構成から脱力したヴォーカル、ローファイな録音。チューニングがずらされていたりと、あえてのルーズな姿勢を見せ、商業的な音楽への反発も示しましたニューウェイブも段々と熟練さを見せ、シンセ等機材の進化もあり、どのジャンルも洗練された印象のあった80年代後半への揺り戻しもあったのでしょう。個人的にはOasisやNirvanaが隆盛を極めたのもこの流れに起因していると思いますし、世代、音楽性としても重なりますね。反対に、英ガーディアン紙にスラッカー・ロックの代表曲の一つに『creep』を挙げられていたRadioheadは、アルバムの度にロックの枠を飛び出し高度な音楽性へと進化していきました。

スラッカー達がIT革命と共に、インターネットと迎合したことで自分たちのユートピアを作り出すことに成功しますが、それも束の間の出来事。すぐさま新たなビジネスの開拓地となり今日のYouTubeやSNSへと繋がっていきました。

音楽の面でもPCが大きな負荷に耐え得る規格へと進化したことでDTMが世界中に普及。マルチトラックにオーバーダビングすることで楽曲を作っていたことがデビュー前のミュージシャンにとって一般的だったのが、録音をクリックで簡単に繋ぎ合せられるなど、果てしない可能性を手に入れました。この間にヒップホップが音楽産業の頂点に上り詰め、ロックンロールもリバイバルが起こりました。とはいえ、その中心となったThe Strokesはデビュー時からテクノと60年代のThe Velvet Undergroundを結びつけるなど、それまでにはなかったミックスのさせ方をしていたようでしたし、Arctic Monkeysはitunesのダウンロードによって大きく売り上げを伸ばし名声を手にしたので、ネット以前の土台とは異なることがわかります。さらに2010年代からは、インターネット社会が作る情報過多のカオスを体現したようなヴェイパー・ウェイブや、OPN、ARCAらが現れますが、アナログな流れもまた同時に起こるものです。Mac DemarcoやAlex Gらを中心にスラッカーが再び脚光を浴びました。シティポップの再燃とも混ざって独自のスタイルへと進化しており、より牧歌的で温かい雰囲気が彼らの特徴のように思います。

【CASSETTE】Bloody Death / Some More Poison〈Smoking Room〉
価格:¥2,750(税込)
商品番号:29-69-0222-526

さて本作は、如何にもエモいアーティスト名とタイトル、そしてジャケットデザインです。しかしながら、意外にも穏やかでまさに初期スラッカーのような懐かしい雰囲気と、ソングライティングのセンスの良さが際立っています。特にギターのリフやソロが醸し出すイナたい感じが堪りませんね。インディロック好きや郷愁の甘いコタツに入って疲れを取りたい方など幅広くおススメです。