少年達は心に茨を持つ

SHUN 新井 2021.08.17

今晩は、銀座店の新井です。


定期投稿は何とか遅れずに続けていけそうですね。

自分としては音楽と洋服って親和性がすごく高いものだと感じています。ただ直接の固有名をこの文では使えないのですご〜く遠回しの表現となってしまいますので、皆さん察して下さい。出来れば調べて聴いて欲しい。

このブログを投稿していく上でどうしても普通の商品紹介だけにはしたくないんですよね。1日に何千件もこの自社サイトでアップされていますから。他のスタッフが良い商品紹介をしてくれていますので自分はなるべく違った表現を画像ではなく文章で楽しんで想像を拡げて頂きたくて。


そして今回はビームススタッフが考え、そしてスタッフ達に愛されるオリジナル商品について。



このインターナショナルギャラリー ビームスオリジナルドレスシャツです。

とにかく何処のビームスクロージングの店でもスタッフが着てますね。

企画者は銀座店にいるツルタパイセン。

余談ですがパイセンが最近執筆されたアンバイの1978年のハイボールには痺れましたね。電車の中で1人なのに笑っちゃいましたし。

「世界の中心でハイ!!と叫ぶ」って・・

昇天モノでしたよ、パイセン。流石です。

そんなパイセンがここ数年企画しているドレスアイテムの袖物やドレスシャツは、洋服屋が自分で買ってお客様にも肝いりでお勧めする稀有のオリジナルマスターピース達。

このご時世で企画数が減ってしまい寂しい限りです。

今月入荷した新作にもしびれました。

これはもう作りやらの蘊蓄ではなく感覚で欲しくなって着たくなるシャツですよね。カッコつけて言えばノンエッセンシャルマスターピース。

必要とされないVゾーン。

でもたまにはオシャレしたくなるシャツ。

適当に着ても只者ではない雰囲気を醸し出すシャツ。

自由に楽しんで着てもらいたいシャツ。

スーツでも短パンでも何でもいいと思います。とにかく楽しんで着てもらいたい。

このご時世ではみんな無難に何処でも売れてるアイテムしかやらないですよ、普通は。テロテロ合繊でオーバーサイズ気味のアースカラー中心のバンドカラーやらレギュラーカラーのシャツとかイージーケアのニットシャツとか。デザイナー物ならまだしもコレをオリジナル企画で作ってるとこは中々お目にかかれないですね。


セレクトショップのオリジナルの位置付けって、いわゆるインポート商品だけでは完成しないスタイリングを補完する役目が昔からのウチのスタッフの認識だったと記憶してます。でもこのシャツ企画はその概念を吹っ飛ばして新人もベテランもスタッフみんな良いよねって。

ここ最近でスタッフ達が自腹で買ってオシャレしてて、しかもたまに着用が被る商品ってなかなか無いと思います。

勿論ディレクター、バイヤー達が先端の情報と共に世界中から集めるインポートやオリジナル商品は我が社の顔となりとっても大事なモノです。

ただ、このコロナ禍という稀有な状況となり色々な制限が設けられる世界で、店舗で販売するスタッフ達の境遇にも大きな変革がもたらされました。


リアル店舗で販売する意義、利点。

洋服を試着して、生地を触って、どんな場所にどんな合わせをして行こうかと仲良くスタッフと談笑して、お買い物を楽しむ至福のショッピングの時間ってお客様が本当に求めているんだなって。

そんな現場のスタッフ達や洋服が好きなカスタマーの方々へのリアルアンサー。

それを具現化されたのがこの企画のシャツではないかと。

特にこの状況下でお客様のニーズも大きく変化を遂げました。それでもビームスドレスは今までのお客様を大切に、ブレずにネクタイを筆頭としてドレス商品をご用意しています。ただ、店頭ではお客様の求める物にお応えが出来ない事も増えたのも事実ではありますね。


私は8年間商品企画をしていましたが、展示会や商談、会議、資料作成等日々業務に追われてしまい現場の情報や状況から離れていってしまうんですよね。それが怖くて毎週意地でも時間を作り1日丸々店頭に立って直接お客様と接して販売をしてました。

チラッとお店に居てスタッフにヒアリングしただけでは駄目なんですよね。1日かけてお客様の動向を定点観測し、実際に接客してお話をして自分の作った商品が満足頂けるか検証をする。

すごく大事です。ただ実践継続するのは至難の業。それで自分は企画寿命を縮めた気もしますし。

だからこそ現場のスタッフ達が自発的に商品化して、思い入れを持ってカスタマーの方々へ熱い販売をする。

広い売場で大量にバリエーションを見せてお客様に好きな物を選んで頂く。今まではそれを望まれてましたし、それが専売特許みたいなモノでしたが。そんな時代はもう違和感を感じちゃいますよ、結局在庫抱えて大変だし。

苦境を乗り切る為に減収増益を念頭にアパレル会社はどんどんリアル店舗を減らしています。その反面、EC販売が全盛となりましたが、リアルの重要性を再認識され実店舗にお越しになる方も確実に増えてます。



このオリジナルシャツには、今現在のお客様と洋服屋を繋ぐ役割を担う重要な要素を持っているのではと。

コロナ以降を考えていくと、今後は更に商品のバリエーションは減らさないといけなくなるかも知れません。値引きをせずともお客様にお買い上げ頂き、大切に何年も着て頂けるオリジナリティ溢れる商品を現場のスタッフが作り上げていく。数ではなく質で勝負をしていく。

その為のラストピースは売り場にしか存在せず、それらを見つける事が出来るのは売り場にいるスタッフだと私は信じてます。


題名は80年代半ばに英国でカルト的人気を博したSさんグループの傑作のひとつ。

ギターの奏でる華やかで軽やかなサウンドの反面、ボーカルの歌う歌詞は非常に内省的で文学的。女性に愛を伝えるのに、好きと言うんじゃなくて君と一緒にトラックに轢かれて死にたいって調子なもんで。当時イギリスではハマり過ぎた女性達の内省的な行き過ぎた行動が社会問題になったって位でしたし。私も高校の多感な時期に聴いちゃったもんだから、そりゃあヤバかったっすよ。


心に苦悩を抱えた少年。茨は苦悩そのもの。


インターナショナルギャラリー ビームスオリジナルシャツに、Sさんボーカルが歌う内省的な歌詞の様に現場のスタッフ達が今現在抱える苦悩と、ギターが奏でる華やかなサウンドの様に純粋無垢な洋服バカ少年たちの未来への希望を、私は銀座の片隅で垣間見た気がします。




それでは銀座でお会いしましょう。


新井


火曜金曜20時定期投稿です。