高品質でクラシカルなデザイン


Ashidavox / HA-SX12/HD
カラー:グレー、ブラック
価格:¥14,850(税込)
商品番号:29-75-0060-478

80年以上の歴史を持つ日本の老舗音響ブランドAshidavoxより、ヘッドホンの新機種が登場しました。ひさご電材株式会社の高品質無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)コードを使用している点は、人気モデルST-90-07と同様。ですが、オーバー・イヤー型であることや、ケーブルが着脱可能であること。ミツマタを混抄した振動板とフリーエッジドライバーを搭載したことによって音質面で違いがあります。具体的には、より臨場感のある音像と低域の表現の豊かさにあると思います。例えば、バンドサウンドを聴いているときには、バスドラやベースの音階がよりはっきりと聴こえる印象でした。ブーストさせているような存在感ではないので、アンサンブルとしての気持ち良さをより感じられるように思います。モニター用にも使いやすそうですし、普段使いとしてもお気に入りの楽曲をより楽しく聴くことができそうですね。

また、見た目もヘッドホン選びには重要な点。ST-90-05ST-90-07と比べるとオーバー・イヤーである分一見ヘビーな印象はあります。が、丸みのある形状と高級感も漂うデザインなので、意外にも馴染みやすいと思います。

色はブラックとグレー。写真ではグレーを選んでいます。丁度ブラックのトップスでしたので、同色で揃えてもミニマルでかっこ良いですが、グレーで浮かせて見せてもよりレトロなデザインが映えて良いかなと。ヘッドバンドにもクッションが付いているので長時間聴いていても疲れにくいですし、首に引っ掛けた時も気持ち良いですね。


Everything Is Recorded

【限定レッド・ヴァイナル仕様LP】Everything Is Recorded / Temporary〈XL Recordings〉
価格:¥4,950(税込)
商品番号:29-67-1325-813

Everything Is Recorded / Temporary〈XL Recordings〉
価格:¥2,750(税込)
商品番号:29-68-0501-813


<XL Recordings>

Radiohead、Sigur Ros、Adele、近年ではKing Krule、Fontains D.C.など、インディレーベルでありながら多くの大物アーティストを抱え、常にヒット作品を生み出し続けている、音楽好きには不可欠なロンドン発のレーベルです。

イギリスの最王手インディレーベル、<Beggers Banquet Records>によるグループ<Beggers Group>からのバックアップを経て、1989年に創業。1993年リリースのProdigyによる3rdアルバム『The Fat Of The Land』で大きく売上を伸ばしたことを皮切りに、ダンスミュージックで躍進を始めますが、00年代に入ると今度はフォークやロック、ヒップホップなどにも手を伸ばし、White Stripesにより今度はインディ・ムーブメントの中心的存在となりました。上述の若手アーティストらの他にも、古くはBasement Jaxxなど、彼らの才能にいち早く気付きバックアップする姿勢も素晴らしい限りです。

そんな同レーベルの創業者Richard Russell(リチャード・ラッセル)がスタートさせたプロジェクト"Everything Is Reorded"。彼の人望の厚さによって成立する豪華ゲスト達の集いと、Gil Scott-Herron、Damon Albernらのプロデュースを手掛ける彼自身のセンスから生まれる、このスペシャルな企画の最新作がリリースされています。

今回は自身の友人や家族、同僚の喪失や悲しみを中核のテーマにしながら完成。ダブステップなど、クラブミュージックの側面が強かったこれまでに対して、今回はメロディアスで柔らかな楽曲を多く揃えています。ただし、一筋縄ではいかないのがまさに彼の手腕。フォークを80年代のレゲエのようにデジタル化させる(!?)という実験的な試みも同時に行っています。フォークの代表的人物、Nick Drakeの母であるMolly Drakeの楽曲など、トラックの中にサンプルのループやミュージック・コンクレートのような仕掛けを施しています。まるで回想に耽っているような甘さと、未知な展開による刺激との交錯。さらに耳に残るメロディラインや、リズムの気持ち良さも重なった非常に興味深い内容になっています。

Richard Russellのセンスに改めて驚かされますが、そんな彼のアーティスト性によって、同レーベルが素晴らしくあり続けているということも再認識出来ますね。これからもよろしくお願い致します!

walking on the "left"side



【2LP】Nicolas Jaar / Piedras 1 & 2〈Other People〉
価格:¥6,820(税込)
商品番号:29-67-1317-526

2011年にフランスの<Circus Company>よりリリースされたデビューアルバム『Space Is Only Noise』で世界中から高い評価を受け、さらにバンドDarksideのリーダーとして、またミックスエンジニアとしても活躍するNicolas Jaar(ニコラス・ジャー)による最新アルバムがリリースされました。近年ではFKA TwigsやAli Sethiらとのコラボを続けてきた上に、自身の作品ではエクスペリメンタルに接近したものが続いていました。今回もやはり実験的ではありつつ、『Sirens』以来のポップさも光る一枚となっております。

そもそも本作は、自身の出身であるチリはサンディエゴにある、記憶と人権の博物館でのライブの為に2020年に制作したものと、Telegramで展開されたラジオ劇『Archivos de Radio Piedras』でのサウンドトラック用にも書き下ろしたものをまとめた2枚組LPとなっています。ともに同国の現代史を描いた政治的な内容となっていますが、彼の表現の上で重要なテーマとなっていることは過去作からも伺えます。

アンビエント~レゲトン~エレクトロポップ~ドラムンベース/テクノ~チリの舞踏音楽クエカなど今回もジャンルの幅広い混交が素晴らしいのですが、やはり"沈黙"を巧みに使って、音の立体感と幽玄さを演出する技術には脱帽です。無音のようでいて可聴域ギリギリの低音が薄く出ていたりするんですよね。だからといってと言うべきか、だからこそと言うべきか、キックがメインになるラウドなダンストラックもやはり秀逸なのです。また、瓶の栓を抜いた時のような音や雷のようなノイズなど、独特の音色が沢山聴こえてくるのですが、そのどれもが気持ち良いのです。さらに各パートの録音の仕方も明らかに普通ではないことが窺い知れるのですが、今回は割愛します。人間の聴覚を通して快感を得るポイントをとにかく研究し続けているのでしょう。

両親からレフトフィールドなものを目指すようにと言われていたそうですが(彼の父親は、写真家、建築家など多彩な活動を行うアーティストAlfredo Jaar)、ここまで拘り切った上にかっこ良い楽曲を作れるというのは驚異的です。憧れるー。

アイコン



【LP】Butterfly (Vincent Gallo & Harper Simon) / The Music of Butterfly〈Family Friend Records〉
価格:¥9,020(税込)
商品番号:29-67-1344-813

Vincent Gallo(ヴィンセント・ギャロ)。アイコンが遂に姿を現してくれましたね。

シングル・ライダースにスキニー、発色の良い赤いブーツ。何度もかき上げるオールバックヘア。フィルムの粗い映像と特異な画面構成。自身の楽曲からYes、King Crimsonの引用など、細部の細部にまで美学の詰まった映画『Buffalo'66』。John Fruscianteの楽曲を中心に哀愁を漂わせながら、過去の罪悪感に苛まれていく主人公を描いたロードムービー『Blown Bunny』。共にどこまで同情出来ているのか良くわからなくなる、ナルシシズムたっぷりの内容はさておき、唯一無二の世界観と美しさにどれだけ多くの男性が夢中になったことでしょう。結局映画監督は廃業してしまい、俳優としての活動が中心になりますが、最近では映画『トジコメ』以降どうしているのか多くの方も気になっていたところだと思います。

音楽活動の面では、周知の通りバスキアも在籍していたカルトバンドGreyに同じく在籍した経歴を持ち、<Warp>から2001年にリリースしたアルバム『When』も話題になりました。

そんな彼が遂に新作アルバムをリリースしました。Simon & GarfunkelのPaul Simonのご子息であり、自身でもSSWとして活躍するHarper Simonと組んだButterfly名義での作品です。M5をVincent、M3とM8をHarperが単身で手掛けた以外は両者によって全て作られたものとなっています。上述の『When』に通じる、ギター、ドラム、ベース、キーボード等を入れ替えながら極限までシンプルに演奏し、どちらかが柔らかに歌うスタイルが特徴的です。終始静寂を貫いてはいても、緊張感は感じさせず、寧ろ温もりが漏れ出てくるかのようで、つい身を任せていたくなります。テクニックとしての難しさは余り感じさせないのですが、絶対に真似の出来ない洗練さがあるんですよね。

M5はまさに『when』の収録曲"Laura"に大きく類似していますが、果たしてこれは敢えてなのか偶然なのか。どちらにせよファンとしてはテンションが上がりますね。

そして、音質を極限まで追求したプレス工程を採用し、装丁も全て手作業という拘りの詰まっています(手触りが気持ち良いです)。限定3000枚プレスですのでお早めに!




スラッカー

お正月からの連休が一旦落ち着きましたね。精神的に少し辛めですが、どうかご安心下さい。この世には音楽があります。

無気力のときには無気力を肯定してくれる音楽を聴くと、特に何も変わらず無気力でいられるのでおススメです。そして無気力といえばスラッカー・ロックです。

元々スラッカーというワードは、大戦時に徴兵制を拒んだ人々を指していましたが、90年代に働く意欲のない若者を指すものとして欧米で使われ始めました。近年でも中国で寝そべり族が流行したように、経済の発展と共に現れる社会現象の一つとして、研究している方が多くいらっしゃるようです。また社会活動のアクティヴィズムと混ぜて、スラックティヴィズムというワードも生まれたりしています。

PavementやSparklehorseらはまるで彼らの代弁者かのように、粗削りな楽曲構成から脱力したヴォーカル、ローファイな録音。チューニングがずらされていたりと、あえてのルーズな姿勢を見せ、商業的な音楽への反発も示しましたニューウェイブも段々と熟練さを見せ、シンセ等機材の進化もあり、どのジャンルも洗練された印象のあった80年代後半への揺り戻しもあったのでしょう。個人的にはOasisやNirvanaが隆盛を極めたのもこの流れに起因していると思いますし、世代、音楽性としても重なりますね。反対に、英ガーディアン紙にスラッカー・ロックの代表曲の一つに『creep』を挙げられていたRadioheadは、アルバムの度にロックの枠を飛び出し高度な音楽性へと進化していきました。

スラッカー達がIT革命と共に、インターネットと迎合したことで自分たちのユートピアを作り出すことに成功しますが、それも束の間の出来事。すぐさま新たなビジネスの開拓地となり今日のYouTubeやSNSへと繋がっていきました。

音楽の面でもPCが大きな負荷に耐え得る規格へと進化したことでDTMが世界中に普及。マルチトラックにオーバーダビングすることで楽曲を作っていたことがデビュー前のミュージシャンにとって一般的だったのが、録音をクリックで簡単に繋ぎ合せられるなど、果てしない可能性を手に入れました。この間にヒップホップが音楽産業の頂点に上り詰め、ロックンロールもリバイバルが起こりました。とはいえ、その中心となったThe Strokesはデビュー時からテクノと60年代のThe Velvet Undergroundを結びつけるなど、それまでにはなかったミックスのさせ方をしていたようでしたし、Arctic Monkeysはitunesのダウンロードによって大きく売り上げを伸ばし名声を手にしたので、ネット以前の土台とは異なることがわかります。さらに2010年代からは、インターネット社会が作る情報過多のカオスを体現したようなヴェイパー・ウェイブや、OPN、ARCAらが現れますが、アナログな流れもまた同時に起こるものです。Mac DemarcoやAlex Gらを中心にスラッカーが再び脚光を浴びました。シティポップの再燃とも混ざって独自のスタイルへと進化しており、より牧歌的で温かい雰囲気が彼らの特徴のように思います。

【CASSETTE】Bloody Death / Some More Poison〈Smoking Room〉
価格:¥2,750(税込)
商品番号:29-69-0222-526

さて本作は、如何にもエモいアーティスト名とタイトル、そしてジャケットデザインです。しかしながら、意外にも穏やかでまさに初期スラッカーのような懐かしい雰囲気と、ソングライティングのセンスの良さが際立っています。特にギターのリフやソロが醸し出すイナたい感じが堪りませんね。インディロック好きや郷愁の甘いコタツに入って疲れを取りたい方など幅広くおススメです。

倍加していく


【2LP】Les Rallizes Denudes(裸のラリーズ) ‎/ The Oz Tapes〈Temporal Drift〉
価格:¥6,600(税込)
商品番号:29-67-1335-526

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

さて、昨年末にロック好きを唸らせるリプレスを入荷しておりました。日本のロック創成期を代表するバンドの一つであり、シューゲイズの元祖とも噂される、Les Rallizes Denudes(裸のラリーズ)によるライブ音源です。1972年から僅か1年ほど吉祥寺駅にあった、知る人ぞ知るライブハウスOZでのパフォーマンスを収録したもので、久保田真琴によるリマスタリングによって完成したものです。

彼らの公式のリリース音源はごく僅かしかなくプレス数も僅か。その為に00年代のネット社会の始まりとともに世界中にブートレグが出回り、こちらのみを聴いてきた方も多いかと思います。近年公式でのリリースが続き、本作もその一つとなっています。

同バンドは水谷孝を中心に存在しており、ファンの間ではもはや水谷孝そのものと良く言われています。インタビューなどメディア露出は殆どせず、沈黙を守り続けたことで、謎に包まれた存在としてさらにカルト的な人気を得たことも興味深いお話です。ブートレグが出回ったと書いた通り、海外での評価も高く、MBVのKevins SheildsからLady Gagaなど彼の影響を示しているミュージシャンも多数います。


また黒を好み、詩を纏ったような雰囲気と、華奢で中性的なルックスは、元CELINEのデザイナー、Hedi Slimaneのコレクションにいかにも出てきそうなカッコ良さなんですよね。

肝心の音楽のスタイルはというと、爆音で鳴るギターのフィードバックノイズと極端にエコーの利いたヴォーカルが特徴的です。しかし、そんな過激さに同居するのは、彼自身の繊細さと優美さ。強烈なはずなのに、うっとりと聴けてしまうんですよね。また、個人的には当時の日本にしかなかった血生臭さのようなものを追体験しているような気分にもなれます。このスタイルになったのも、偶然の要素もありますが、根底には海外アーティストには持っていないオリジナリティを目指したが故にだったそうです。江戸時代に生まれた出目金しかり、歌舞伎、北斎の浮世絵しかり。アニメキャラクターの目の大きさしかり。特定部分を誇張もしくは倍加させることが日本人らしさの一つなのだろうといつも思うのですが、彼らのスタイルもまさにそれですよね。後に生まれたハーシュノイズという音楽ジャンルも象徴的です。

しかし本作は、まだ彼らのキャリアの中でも初期の方でもあるからか、エコーはかかっておらず彼の歌声を直に聴くことが出来ます。ギターソロもノイズが少ないので素直に聴けるものが多く、Jim Hendrixの影響等も分かり易く感じられます。ファンにとっては新たな発見の出来る貴重な音源として、未聴の方にも入り口として最適かと思います。

陽気なシティポップも勿論素晴らしいですが、同時代の陰気なサイケデリック・ロックも、もっと多くの方に聴いていただきたいですね。

strictly dubwiseなサウンド。



【2LP】Dennis Bovell / Sufferer Sounds〈Disciples〉
価格:¥5.170(税込)
商品番号:29-67-1298-813



UKレゲエを代表するアーティスト。

Dennis Bovell〈デニス ボーヴェル〉

先ずはその多彩なキャリアについて。

UKレゲエの祖Matumbi〈マトゥンビ〉や

女性シンガーを擁したラヴァーズロックで

ビタースィートなスタイルを確立。

その一方で、詩人Linton Kwesi Johnson

〈リントン クゥエシ ジョンソン〉とも

数々の傑作をリリース。そして自身では

複数名義のダブアルバムもクリエイト。

更にそのノウハウをポストパンク系の

アーティスト達の為に惜しみなく...という

洗練・甘口からミリタント・激辛まで

レゲエをも超えUKのレフトフィールドな

音楽をクリエイトした偉人。演奏〜歌〜

エンジニアリングをこなす才能の持主です。


そしてもう一つ驚くべき事実があります。

実はAdrian Sherwood〈エイドリアン

シャーウッド〉の師匠でもあり、彼の

初期作ではエンジニアを担当しながら

エイドリアンにダブミックスのやり方を

手解きしていました!!この交流によって

ダブの可能性が拡張されたと言っても

過言ではありません!!


(個人的には...坂本龍一の永遠の問題作

“B-2 Unit”に参加した事があまりにも

重大なエピソードですが、長くなるので

割愛します...店頭でお話ししましょう!!)


歴代のB-2 Unitたち...

もちろんアナログも持っています!!



エンジニアのクレジットには

筆頭にデニスの名前が...



さて、そんなデニスは音楽家の顔の他に

自らのサウンドシステムも運営していて

現場仕様の音も独自に追求していました。

当初UKに於いてはレゲエはジャマイカ産

しか認めない原理主義的風潮が根強く

それを打破する為に、故意に紛らわしい

アーティスト名、スリーブデザイン等

様々な工夫を凝らし、どうにか自分が

クリエイトした音楽を偏狭なリスナーの

耳に本当にコツコツと届けていました...

そして徐々にUK産のレゲエが評価される

様に流れを変え、ジャマイカ産とは異なる

魅力で認知されて現在に至ります。

多重人格の如く複数の名義が...


このコンピレーションはそんなデニスの

クリエイションの軌跡を辿る事が出来る

必聴作。聴き覚えのあるdrums&bassが

魔法の様に変化する...不思議な音響体験...

デニスが全ての楽器を演奏して完成させた

トラックも多数あり聴きどころ満載です。

ダブの醍醐味を是非!!



ブログにお付き合い頂いている皆様!!

本年も誠にありがとうございました。

来年もどうか宜しくお願い申し上げます。


素敵な音楽時間を!!


ビームス プラス 丸の内

丹羽 望


即興

こんにちは。BEAMS RECORDSスタッフの和田です。
あと数日で2024年が終わってしまうと思うと恐ろしいです。自分は今年が厄年だったので若干嬉しい気持ちもありますが…。

ところで、今年よく聴いたアーティストの一人にSam Wilkesというベーシストがいます。LAを拠点に、Sam GendelやLouis Cole、Teebsなど、様々な気鋭ミュージシャンと活動を共にする彼。今年は、Sam Gendelとのデュオ、ギタリストとドラマーを迎えたトリオ、そのトリオに更に二人のミュージシャンが加わったクインテットでのライブ音源の、3作品をリリースしました。


どれも素晴らしかったのですが、3つの作品に共通するのは即興性ではないかと個人的には思います。楽曲を制作し録音して作品にするというよりは、即興でプレーしたものからセレクトしてアルバムにしているような印象を受けました。クリエイティブな発想を持ちながら高い演奏能力を持つ彼とバンドメンバーならではの方法ですね。

また、彼やSam Gendelは、以前からレコーディングスタジオに限らずツアー先やレストラン、ライブ会場など様々な場所でのセッションを録音し、作品として発表しています。


ジャズやアンビエント、エレクトロニックなど多様な音楽的バックグラウンドを持ちながら、その上でどのジャンルにも縛られない、自由で即興性が高いプレーをするのが彼の最大の持ち味ではないかと思います。Grateful DeadやPhishを音楽のルーツと語っているのも一見意外ではありますが、納得できる部分もあります。


ライブも何度か見たことがありますが、その度に違うメンバーと違う音楽を奏でていて毎回楽しませてくれるので、これからもどんな音楽を作ってくれるのか楽しみなアーティストです。


というわけで、まずは最近入荷したSam Wilkesの作品をご紹介します。




【CASSETTE】Sam Wilkes / iiyo iiyo iiyo〈Wilkes Records〉
¥3,080 (税込)

こちらは2022年来日公演時のライブ音源です。Pat Methenyのトリオのメンバーでもあるキーボード奏者のChris Fishman、Blue Note作品にも参加するジャズドラマーのCraig Weinribのトリオに加え、ギタリストのDylan Day、Thom Gillをバンドメンバーに迎えたクインテットが、静岡県掛川市の〈FESTIVAL de FRUE〉と東京・渋谷の〈WWWX〉で行ったライブが収録されています。


個性豊かな演奏者同士の親密なやり取りによって生まれた、幻想的なアンビエントジャズ。実は自分も当時〈FESTIVAL de FRUE〉の会場でこのライブを観ており、素晴らしかったのを覚えています。


では、次も即興性を感じさせるジャズ作品をご紹介します。


【国内盤CD】Jeff Parker, ETA IVtet / The Way Out of Easy〈rings / International Anthem〉

¥3,300 (税込)

ポストロックバンドTortoiseのメンバーであり、ジャズ・ギタリストであるJeff Parkerを筆頭に、Meshell Ndegeocelloのアルバムのプロデュースも手掛けるサックス奏者のJosh Johnson、LAで数々のミュージシャンからその実力を認められているAnna Butterssなど、精鋭ミュージシャンたちによるセッションから生まれた音源。 


本作は、LAの伝説的ライブハウスであった ETAで、たった4本のマイクとカスタム・ミキサーで録音された長尺の演奏を厳選したもの。実験的でありながらリズミカルに心地よく展開されていく感じが素晴らしかったです。近年のUK JAZZなどがお好きな方にもおすすめしたいです。

最後にご紹介するのも、ジャズとはまた違った即興演奏を聴かせてくれるバンドです。



【LP】カフカ鼾 (ジム・オルーク・石橋英子・山本達久) / 嗜眠会〈Newhere Music〉

¥4,400 (税込)

Jim O’Rourke、石橋英子、山本達久による即興バンド 、カフカ鼾による8年ぶりとなるニューアルバム。2023年に下北沢ADRIFTで開催された『レコーディングライブ』での音源をジム・オルークが再編集、ミックス、マスタリングを行ったものになります。


三者の卓越したセンスが混じり合い、ジャンルに括ることの出来ない唯一無二の音楽を奏でていきます。また、即興ならではのスリリングさもありながら、単なるライブ音源にはとどまらない作品としての強度を感じるのは、ジム・オルークの編集によるものなのかもしれません。

2/24には渋谷のWWWで発売記念ライブもあるようなので、気になる方は是非そちらもチェックしてみてください!


ということで、今回は「即興」をテーマに3作品ご紹介させていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
店頭ではCDやレコードのご視聴もできますので、是非お立ち寄りいただけますと幸いです!

本年も大変お世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。
良いお年を!


<Blue Note>の魅力


Nala Sinephro / Endlessness〈Warp Records〉
価格:¥2,640(税込)
商品番号:29-68-0451-813

【国内盤CD】Sam Wilkes / Sam Wilkes, Craig Weinrib, and Dylan Day〈Leaving Records〉
価格:¥2,999(税込)
商品番号:29-68-0475-526

【CASSETTE】Sam Wilkes / iiyo iiyo iiyo〈Wilkes Records〉
価格:¥3,080(税込)
商品番号:29-69-0243-981

【LP】Kokoroko / Could We Be More Remixes〈Brownswood〉
価格:¥4,180(税込)
商品番号:29-67-1308-526

【LP】Robert Glasper / In December〈Concord〉
価格:¥5,280(税込)
商品番号:29-67-1254-494

Robert Glasper / In December〈Concord〉
価格:¥2,860(税込)
商品番号:29-68-0477-494

Sam GendelやSam Wilkes、Nala Sinephroらを筆頭に、近年人気を上げ続けているアンビエント・ジャズや、Robert Glasperらのブラックミュージックを網羅したようなジャズ、Ezra Collectiveらのようなアフロを軸にしたUKジャズなどなど。どれもかっこ良いですが、同時に所謂渋いものも聴きたくなりますよね。そこで真っ先の思い浮かぶのは、老舗レーベル<Blue Note>。

同レーベルが支えてきたジャズ史を守りながらも、70年代にはMarlena ShawらR&Bを全面に出したリリースや、90年代初頭にはヒップホップ・ジャズを打ち出したり。00年代にはポップスを多く取り入れたNorah Johnesによる大ヒット、Madlibによる同レーベルの音源を再解釈させた名作『Shades Of Blue』など、柔軟さも忘れず新たな地平を切り開いていく姿勢は、今でも多くの音楽ファンに愛される所以となっていることでしょう。そんな彼らも創立から今年で85年。

当店でも度々ご案内しているJoel Ross(vib,marimba)から、新作アルバムをリリースしたばかりのImmanuel Wilkins(as)。そして、Gerald Clayton(p)、Matt Brewer(b)、Kendrick Scott(ds)という、レーベルの"今"を代表する奏者で構成される、Blue Note Quintetが結成されました。そして、彼らがツアーの最中に名前をOut Of / Intoと改め、レコーディングを行い完成させたのがこちらです。

【LP】Out Of/Into / Motion 1〈Blue Note〉
価格:¥4,950(税込)
商品番号:29-67-1300-494

異なるジャンルを混ぜるわけでなく、ストレート・アヘッドな表現に徹しています。しかしながら、ロックにも通じるシャープな疾走感やドラマティックな展開など、細部に現代的な要素を入れている点が憎いですね。そして終始貫かれるクールな雰囲気も含めて、思わず唸りたくなるかっこよさです。

このような素晴らしいリリースを続けているのも、やはりトップの人物による手腕が大きいでしょう。その人物とはDon Was(ドン・ウォズ)。

自身で率いたロックバンドWas(Not Was)のベーシストとしてだけなく、プロデューサーとしてもThe Rolling StonesやBob Dylan、Al Greenなど名だたるアーティスト達を支えてきた、音楽界全体を語る上でも重要な存在です。

「音楽の真実を見つけるだけの知性とセンスとオープンマインドさがリスナーにはある」

アーティストは他人になろうとせず、自分そのものを表現すればそれでいい

等々、彼のインタビュー記事も読むと必ずと言っても良いほど、愛に溢れた言葉を目にします。沁みますよね。

因みに、Herbie Hancockによる60年代の名盤の一つとして名高いこちらもリプレスされています。年末年始のお休みに新旧のアーティスト達をじっくりと比べて聴いてみてはいかがでしょうか。


【限定ブルー・ヴァイナル仕様LP】Herbie Hancock / Maiden Voyage〈Blue Note〉
価格:¥5,500(税込)
商品番号:29-67-1238-500


韓国のジャム・バンド CADEJOとのスペシャル・コラボ



こんにちは、藤本です。


少し前ですが、Netflixで配信されている韓国の料理サバイバル番組『白と黒のスプーン』にハマり、一気見してしまいました。韓国の料理界ですでに成功を収めたレジェンドやトップクラスのシェフ20人(通称:白さじ)と、新進気鋭のシェフ80人(黒さじ)から更に番組内の対決で選抜された20人が賞金獲得を目指して対決していくのですが、Netflixならではの大規模な演出と多岐に渡る対決が際立っていて見応えたっぷり。


無名の黒さじシェフの中には学校給食で働いている女性や、漫画『美味しんぼ』などから影響を受け、独学で中華料理人になった男性といった様々な背景を持つ料理人がいて、彼らのストーリーが覗けるのも興味深く、ストーリーテリング部分が大きくウェイトを占めていたので、ある種のヒューマンドラマ、ドキュメンタリーを見ている気分になります。

背景や人柄も知った上で生み出される独創的な料理にはラストまで圧巻でした。私のイチオシシェフは「料理する変人」です…!


さて、こういった番組を筆頭にファッション、映画・ドラマ、音楽、小説など様々な分野で世界的に注目を集めている韓国

私もひっそりと音楽や映画などの動向を追っているのですが、2年前にyoutubeでたまたま見つけたパフォーマンス映像で魅了され、今年3月に行われた来日ツアーでも敏腕PA 内田直之さんをエンジニアに迎えて素晴らしいライブパフォーマンスを披露していた、韓国はソウルを拠点に活動するジャム・バンド CADEJO(カデホ)とのコラボレーションが実現しました。


ジャズ〜ネオ・ソウル、ファンクやブルース等のブラックミュージックを経由し、Azymuth辺りのブラジル音楽にダブ/レゲエ、時にはロックやラテンの気配も感じられるジャンルを横断したスタイルが魅力的なCADEJO。昨年発表された韓国のラッパー Nucksalとのコラボレーション・アルバム『Sincerely Yours』は、NewJeans、チャン・ギハ(キャリアの長い70~80年代の音楽スタイルが人気を集めるシンガー)、250(NewJeansの楽曲等をプロデュース)と並んで、『2023年・韓国大衆音楽賞』で“今年のアーティスト”“今年のアルバム”の2部門にノミネートされたりとその音楽性が高く評価されています。


今回は、CADEJOが2024年に連続リリースしたデジタルシングル4作品をコンパイルしたスぺシャル・アルバム『Tuple』のCD、そして発売を記念したコラボレーション・グッズを展開中。




CADEJO / Tuple〈CADEJO〉
価格:¥2,750(税込)
商品番号:29-68-0495-526

CADEJOは、『FREESUMMER(2019)』『FREEBODY(2020)』『FREEVERSE(2023)』と続けて発表していた“FREE”三部作が完結し、そこからまた更なるフェーズへと突入するべく、2024年は、“シングルという制限された空間の中で作られる音はどのようなものになるのか?”という探究心のもと4作品、全8曲のシングルをデジタルでリリースしていました。今作『Tuple』はそれら全ての楽曲をコンパイルしたアルバム。このアルバム構成で聴くことが出来るのはこちらのCDのみですので、是非ともチェックしてみてください!


またこの発売を記念してアルバムタイトルのロゴを配したデザインが目を惹くコラボレーションTシャツとキャップを展開中です。








【COLLABORATION】CADEJO / Tuple T-Shirts
価格:¥5,940(税込)
商品番号:29-58-0066-445

まさにCADEJOのポジティブなエネルギーが反映されたデザインで、フェスやライブにも打って付けな一枚です。




【COLLABORATION】CADEJO / Tuple Cap
価格:¥5,280(税込)
商品番号:29-58-0067-445



最後に今回発売したアルバム『Tuple』を引っ提げて行われた来日公演「東京遊歩」にあわせて、BEAMS RECORDS店内で行ったライブ動画が韓国の音楽配信ブランド〈Poclanos(ポクラノス)〉に公開されました。アルバム『Tuple』から3曲披露しています。CADEJOの豊かな音楽性、溢れ出るパッションをぜひご堪能ください!


また店頭ではアルバム『Tuple』のご視聴や、グッズ実物をご覧いただけますので、お気軽にお問い合わせください。

ご来店お待ちしております。




大きい音と小さい音


「沈黙は口論よりも雄弁である」ーカーライル『英雄崇拝』

「ことばが役に立たないときは、純粋に真摯な沈黙がしばしば人を説得する」ーシェイクスピア『冬の夜話』


【CASSETTE】Duster / In Dreams〈Numero〉
価格:¥2,530(税込)
商品番号:29-69-0216-526

90sのUSインディーを代表し、サッドコア/スロウコアのスタイルでも知られるDusterが活動を再開。そして、新作アルバムを発売しました。時にドラムマシンやシンセを用いるなど意外な展開も魅力ですが、一貫したメランコリックで繊細な各楽曲にはやはり心を慰められます。

サッドコア/スロウコアは、グランジの反発として出てきたシーンとして知られています。ギターの歪みは抑えられ、言葉通りテンポはスロウ。音数は最小限。ボーカルはウィスパーに歌い上げる等、正にグランジとは反対のアプローチを特徴としています。しかし興味深いのは、それにも関わらずグランジと同じ威力を感じさせるところにあると思います。憂鬱さ、無気力さが音の隙間から洩れてくるかのようです。かつてNirvanaのKurt CobeinがJonny Cashのようなフォークをやりたいと語り、また伝説となったMTVのライブ企画Unplueggedでの彼らの演奏を考慮すると、既にこの時点で確立されていたと言っても過言ではないかもしれません。

Nirvana / All Apologies (Live On MTV Unplugged, 1993 / Unedited)

ところで、小さい音、若しくは少ない音数の音楽というのは、聴いていくと段々と耳が慣れてきて、次第に無音の塊が姿を現してくるように感じませんか。さらに、その塊が少なく鳴らされた音の周りを囲んで、重みを持たせて来るようにも感じますよね。文学で言えば行間、絵画で言えば余白と表現出来ます。Neil Youngが大きい音を出したければ小さい音を出せるようにすることだと言っていたと、My Bloody ValentineのKevin Sheildsがインタビューで語っていました(紛らわしいエピソード)。確かに音量の振れ幅が大きくなるほど、そう感じるものですよね。しかし、そもそも小さい音も無音を纏っている分、大きい音と同じだけの力を持っているのではないか、とも思ったのです。


(続きは こちらに載せています)



靴を凝視する人たち

【LP】burrrn / blaze down his way like the space show〈Dreamwaves Records〉
価格:¥4,950(税込)
商品番号:29-67-1209-488

BURRN!はメタル雑誌。burrrnは日本のシューゲイズバンドです。日本のシューゲイズ・シーンは創成期から渋谷系やビジュアル系などとも混ざり合いながら発展していたこともあってか、本場UKとは少し違った独自のスタイルへと変化していったと思います。ウィスパーに歌うヴォーカルも、日本人としては耳馴染みが良くポップスとも繋がりやすかったのかもしれませんね。同ジャンルのパイオニアの1人で、My Bloody Valentine(以降MBV)のギタリスト、Kevin Shieldsは1960(〜90)年代の日本の伝説的バンド、裸のラリーズを愛聴していただけでなく、理想のサウンドとして掲げていたほどだったそうです。繊細で影のある雰囲気と轟音ギターが鳴り響くスタイルは、確かに随分と近い要素がありますよね。ということで、裸のラリーズが実は同ジャンルの元祖であるという説もあり、それを思うと日本は尚面白い発展の仕方をしているのかもしれませんね。

【限定盤LP】My Bloody Valentine / Loveless〈Domino〉
価格:¥6,490(税込)
商品番号:29-67-1193-813

個人的には、シューゲイズといえばJesus & The Mary ChainかMBV。この両バンドを永遠に聴いてしまい、同ジャンルの新たなバンドに出会ったときは、彼らに近いかどうかを考えてしまう自分がいます。

しかし、そんな渇望をburrrnはまさに満たしてくれるのです。聴いてまず数秒で本当に日本人でこんな音を出していた人達がいたのかと素直に驚きました。本作は2005年から活動をしている彼らのデビューアルバムで、RIDEのMark Gardenerがマスタリングを施し復刻されたもの。MBVの『Isn't Anything』やEP作品を想起させるトラックが揃っています。MBVの代表作『Loveless』は個人的には来世にも持って行きたいくらい好きなのですが、彼らのライブを見に行った際に、シューゲイズの本当の威力はそれ以外の作品にこそあったのかもしれないと思った記憶があります。ですのでこちら側に似ている音を聴かせてくれると尚興奮してしまいますね。


【LP】They Are Gutting a Body of Water / Lucky Styles〈Smoking Room〉
価格:¥5,060(税込)
商品番号:29-67-1095-526

そのことに関連して、フィラデルフィアのバンドThey Are Gutting a Body of Waterの新作アルバムも紹介させて下さい。これぞと呼べるような、ギターのリフも堪らないのですが、サンプリングを使用したり、ヴォーカルのピッチを極端に上げたりと、実験的なアプローチが多くあります。こう書くと、新たなジャンルへと進化したかのようですが、むしろシューゲイズの神髄へと接近したような興味深い一枚です。というのも、MBVのKevinもドラムのフレーズを過去の関係のない楽曲からサンプリングしたものを繋ぎ合せて作っていたり、ピッチベンド(音を上下させること)を極端に繰り返したり、当時としては実験的なことばかりやった上であの傑作達を生み出していました。そもそもウィスパーヴォイスと爆音ギターの組み合わせ自体が謎な組み合わせですし、それがなぜ気持ち良いのかも謎ですよね。音楽ライターが勝手につけたジャンル名とはいえ、靴を凝視しながら演奏していたところからシューゲイズっていうのもそのまま過ぎますしね。つまり、ナゾナゾ君です。

Out Of "Time"


【重量盤2LP】坂本龍一 / Out Of Noise R〈Commmons〉
価格:¥8,800(税込)
商品番号:29-67-1225-500

世界一美しい(個人の見解です)アンビエント作品の復刻盤が再入荷されました。2009年にリリースされた坂本龍一によるソロ・アルバムで、本人監修のもとリマスタリング。さらに未発表音源も追加されています。静寂な美しさが貫かれた一枚で、これまで何度これに癒され、もっと良い音で聴きたいという動機がオーディオの買い替えに繋がり、リファレンス用にも何度使用してきたことか…。と、書いている通り、聴いた時の気持ち良さは極上ものであることは、是非本作を聴いて確かめて頂きたいところですが、音楽的なアプローチとしても興味深い要素が沢山ある点も魅力です。

坂本龍一の作風として、西洋と東洋、伝統と革新、楽音とノイズなど、アンビバレントな要素を行き来し、または統合しようとするアウフヘーベン的な試みというのが代表的であると思います。当時、本作をリリースする前に手掛けていた映画『SILK』のサウンドトラックでは、日本を舞台にしたものでありながら敢えて西洋の楽器を駆使し、東西の文化の根源に共通項を見出していました。さらにその揺り戻しか、本作では日本の伝統楽器である笙を採用しつつ、まるでAlva Notoらのように音響派的に聴かせています。また、バイオリンを音が鳴るか鳴らないかのギリギリの音量で、ロブ・ムースに演奏してもらったそうですが、これを日本ではかけそき音と呼び、昔から雅な表現として知られているそうです。

そんな西洋と東洋の対抗軸に加えて、時間の要素を加えることも彼にとって大きな関心事でありました。時間の経過と共に音楽が進行していくというのは、一見当たり前の話をしているようですが、厳密には西洋の時間観を基に成り立っています。始まりがあって終わりに向かって行くという終末思想から、過去現在未来という一直線上の不可逆的な観念が生まれたのです。それに対して非西洋の時間観では、輪廻転生のように循環する円のようなものが代表的です。音楽では複雑に反復するジャンベのようなアフリカ音楽や、タブラを筆頭にしたインド音楽がその典型で、独特のトランス感があります。それを現代音楽ではミニマルミュージックとしてSteve Reich達が確立。それをThe Velvet Undergroudがロックの領域に持ち込み、CANやTalking Headsらも発想の出所がそれぞれ違えど反復を執拗に繰り返しました。またJBはそれをファンクとして昇華し、彼のライブ音源のある間奏部分のループは、後にブレイクビーツの代表的な一つとして重宝されました。

閑話休題。本作のA1は、即興で弾いたピアノの1フレーズをループさせているだけの一曲。しかし興味深いのは、その音の長さを変えたコピーとがズレながら繰り返し鳴っていき、最終的に一致していくという構成になっています。B1ではピアノで3つの音のみを、長さなどを変えるなどをした組み合わせだけで作ったと言います。A3では、彼のピアノの音を基に、エレキギターなど各パートが、それぞれ異なるタイミングで自由に演奏。そんなテンポのバラバラな、同期されていない音を、DAW上に自由に配置したそうです。他の楽曲でも、自宅が火災にあってしまった男性の声、犬の鳴き声をループさせるなど、どれもがランダムなようでありながら、白昼夢のような一つの世界が見事に出来上がっており、うっとりと聴けてしまいます。そのような時間のズレへの深い関心は、次作の『Async(非同期)』に引き継がれました。ファンクなどのダンスミュージックを解析し、コンピュータと同期させて演奏していたYMO時代と比較すると真反対ともいえるアプローチですよね。

深い教養と溢れんばかりの実験精神を持ちながら、世界中の人の琴線に触れる美しいメロディも奏で続けた彼の存在がいかに貴重であったかを、作品を聴くと改めて感じますね。同時に音楽の楽しさを伝えて続けてくれていたことへの感謝の念を感じずにはいられません。

便利でユニーク、そしてクールな電子楽器

ストックホルムを拠点に2005年に設立以来、シンセサイザーをはじめとするユニークな電子楽器をリリースしてきた〈Teenage Engineering〉のモアバリエーションを展開中。個人的なオススメはこちらのOP-Zです。


29-74-7032-539
価格:¥77,000(税込)
商品番号:29-74-7032-539

軽く小柄な見た目とは裏腹に機能面の充実ぶりといったら、海鮮丼の上にかき揚げとカルビが乗っているくらいと言えばよいでしょうか。乾燥機付き洗濯機にさらに炊飯器まで付いているくらいと言えばよいでしょうか。シーケンサー/シンセサイザー、VJ、フォトマティックと、聴覚視覚どちらからもクリエーションが出来ます。

シーケンサー/シンセサイザー

シーケンサーでは独自の機能を有しています。一曲の中で重ねられた各トラックは、違うスピードでの再生など個別でリアルタイムでの編集が可能で、さらにミキサーも有しているので、多彩なバリエーションを持たせたパフォーマンスを実現します。サンプリング機能もあれば、内蔵音源もアップデートされるので常に新しいものを作れそうですね。側面にはピッチベンドを操作出来るボタン、背面にはマイクも付いているので、マルチな楽器として捉えてみても良さそうです。

VJ

専用のアプリを使えばディスプレイが立ち上がり、パラメーターなど視覚から捉えつつ操作が出来ます。そして、アプリに内蔵されたアニメーションからは勿論、プラットフォームUnityⓇから細かにビジュアルを作り出すことも出来るので、自由度の高いVJが出来ます。

フォトマティック

写真を繋いで動画を作り出すことが出来ます。10個まで制作出来、それぞれ編集も可能。制作した楽曲にもリンク出来ます。

専用のケースも2種類あり、どちらもかっこ良いですね。

Teenage Engineering / field bag (OP-Z) medium white
価格:¥13,200(税込)
商品番号:29-58-7020-539


Teenage Engineering / duty medium OP-Z bag
価格:¥6,600(税込)
商品番号:29-58-7015-539

店頭では試奏も出来ますので、この機会に是非お立ち寄りください!店頭で同ブランドの商品5,000円以上お買い上げのお客様には、ブランドのワッペンをお渡ししています!


こんにちは。BEAMS RECORDSスタッフの和田です。

気が付いたら夏が終わって一気に肌寒くなりましたね。秋のほどよく冷たい空気の匂いがふわっと感じられた時、自分は本当に幸せな気持ちになります。それだけで色々な曲のことやライブのことまで思い出して、なんだかいつもより音楽が自分に染み渡る感覚になります。

そんな気分の最近は、先日当店にも入荷したSam Wilkes, Craig Weinrib, and Dylan Dayのトリオ作品などをよく聴いてしまいます。入荷はしていませんが、このトリオに加えてChris FishmanとThom Gillの二人が参加したライブの音源をまとめたアルバム「iiyo iiyo iiyo」も素晴らしかったです!

Sam Wilkesは現在来日中でSam Gendelとの全国ツアーもやっていますので、気になる方は是非調べてみてください!自分も静岡で行われるフェスfrueで見に行く予定です♬

また、Sam Wilkesと並んでついついよく聴いてしまう作品がこちらです。

【LP】Jonah Yano / Jonah Yano & The Heavy Loopo〈Innovative Leisure〉

¥4,730 (税込)
【CD】Jonah Yano / Jonah Yano & The Heavy Loopo〈Innovative Leisure〉
¥2,860 (税込)


広島県出身でモントリオールを拠点に活動するシンガー・ソングライター Jonah Yano(ジョナ・ヤノ)が、彼のアンサンブル・バンドとともに収録した最新アルバム。


前作に引き続き、今作も素晴らしいですね..!ジャズのような雰囲気もありつつ、独特のローファイさを追求したようなサウンドが心地よいです。フォークやR&Bを想わせる独特のヴォーカルもまた心に染み入るような優しさを感じます。


今作のタイトルでもある「The Heavy Loop」も30分のインプロヴィゼーション・トラックになっており、ノイズやエクスペリメンタルなどの影響も感じ取れる、これまで以上に自由な演奏を披露しています。

次にご紹介するのはまた違ったフィーリングを感じることができるニューエイジ作品。

【CASSETTE】織川一 Hajime Orikawa / 穂遊 Suiyu〈造園計画〉

¥1,999 (税込)



メンバーが入れ替わる不定形のセッション集団、野流の創設メンバーでもあり、千葉県鎌取出身の音楽家、織川一による第一音源集。


ニューエイジの伝説的人物であるLaraajiのライブに衝撃を受け、オートハープを始めたという彼。今作では、オートハープ、エレピ、ムーグシンセ、オルガン、テナーサックスなどの楽器と環境音を宅録で重ね合わせています。


郊外都市のためのニューエイジとも評される独特の空気感が心地よい一枚。やはり日本から生まれた音楽は、どこか日本の土地から感じられるフィーリングの音になっているような気がします。

次にご紹介するのも日本の音楽にフォーカスしたコンピレーションです。


【LP】V.A. / Virtual Dreams II - Ambient Explorations In The House & Techno Age, Japan 1993-1999〈Music From Memory〉

¥6,160 (税込)

【CD】V.A. / Virtual Dreams II - Ambient Explorations In The House & Techno Age, Japan 1993-1999〈Music From Memory〉

¥3,740 (税込)


アンビエント/ニューエイジ最重要レーベル〈Music From Memory〉が手掛けたアンビエントテクノのコンピレーションとして話題となった『Virtual Dreams』の続編。90年代前半のIDM、ベッドルームテクノの影響を受けながらも、独自の発展を続けていた日本国内のシーンから生まれたアンビエント・テクノに焦点を当てて選曲されています。


同レーベルの名コンピ「HEISEI NO OTO」でも選曲を行っていた大阪のレコードショップ REVELATION TIMEの店主、Eiji Taniguchiと、〈Music From Memory〉の創始者であり、2023年末に急逝した稀代の音楽探求家であるJamie Tiller がセレクト。


ほとんどの楽曲がCDでしか聴けなかった希少な音源。個人的には各トラックのサウンドから日本の電子音楽らしさを感じることができて興味深かったです。また当時を知らない自分からすると、このコンピレーションを通じてこういったシーンやアーティストがいたことを知れたということもあり、そういう意味でもおすすめしたい一枚です。

最後にご紹介するのは秋の夜長にぴったりの作品です。


【CASSETTE】Diana Chiaki / Under Control〈Nocturnal Technology〉

¥2,860 (税込)

東京を代表するDJ/プロデューサーのMars89によるレーベル〈Nocturnal Technology〉からのニューリリース。BOLER ROOM、FUJI ROCK等への出演から、CMの楽曲制作まで活躍の幅を広げる、DJ/プロデューサーのDiana Chiakiによるアルバム。


ミニマルでありながら、パワフルなベースラインとビートが効いたスローテクノ。1曲目の「0:00」から最後の「6:00」までで夜明けを表現しているとのことで、どこか夜中から明け方の非現実的な雰囲気も感じます。カセットで聴くのもよさそうです。


ということで、新入荷の商品から4点ご紹介させていただきました!

オンラインショップに載らない店頭のみの商品もありますので、是非ご来店お待ちしております!店頭でレコードなどの試聴もしていただけます。


また、店頭のみの商品もinstagramのDMやお電話でお問い合わせいただければ、通販可能ですので是非お気軽にご連絡くださいませ。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

人柄は音楽に反映されますよね

Jonah Yano / Jonah Yano & The Heavy Loopo〈Innovative Leisure〉
価格:¥2,860(税込)
商品番号:29-68-0486-189

【LP】Jonah Yano / Jonah Yano & The Heavy Loopo〈Innovative Leisure〉
価格:¥4,730(税込)
商品番号:29-67-1283-189

モントリオールを拠点に活動するSSW、Jonah Yanoによる最新アルバムは既にお持ちでしょうか。まだの方は是非! 

Jonah Yanoは広島生まれの日系カナダ人。2016年に作曲&録音をスタートするとともに、トロントに移住。オンライン上で楽曲をアップロードすると、すぐにローカルの音楽シーンに注目され、BADBADNOTGOODらとのコラボを経て2020年にフルアルバムをリリースしました。Giles Petersonから故Virgil Ablohなど著名人からも支持を受けています。

本作のリリース日に早速聴いてみた私はすぐに夢中になってしまい、丁度来日中ということで、その数日後に行われたフリーライブへもお邪魔してきました。アコースティック・ギターでのシンプルな弾き語りのスタイルでしたが、想像以上のパフォーマンスで深く感動しました。また、開始15分前くらいに到着した時には、着席していたお客さんに「もっと前へお願いします」とご本人が誘導されていたり。本番が始まり、小さな子が大きな声を出してしまった時にも、優しく笑いながら演奏を続けていたり。そんな姿を見て彼の音楽そのものだなということも感じた、愛の詰まったライブでした。

さて本作は、前作までとは少し趣きが異なっています。全体的にソウルフルというよりもウィスパーに歌い上げており、ジャズ~フォーク~ネオソウルを独自に混ぜ合わせたサウンドも浮遊感を持たせつつ、ミニマルに鳴らされています。RhyeやPuma Blueを想起させますが、彼らが官能的な世界観とすれば、Jonahの方はより身近な、家族愛的な温かさを表現しているように思います(実際に彼のご家族について綴った曲はいくつもあります)本作にゲスト参加している、人気SSWのClairoの歌声とも見事にハマっていますね。さらに、ラストに収録された、およそ30分に及ぶインプロヴィゼーションのトラックもユニークでおススメです。

自身のYouTubeチャンネルでは24時間かけて行われたものもアップロードされています。ハードボイルドですね。さすがです。私は体力が不足しており最後まで見れませんでしたが、皆様も見てみてください。