Mar. 17. 2017 / #STREET #MODE #MUSTARD
20 MISTER MORT /MORDECHAI RUBINSTEIN Garmentologist
& Atsuhito Tani(BEAMS Buyer)
Photography : Kohei Kawashima / Interview & Text : BEAMS
世界のファッショニスタから絶大な支持を集めているファッションスナップブログ「MISTER MORT」。ニューヨークを中心に “リアル” なファッションを世界中に発信するのは、Mordechai Rubinstein(モデカイ・ルビンスタイン)氏。表面的なオシャレではなく、被写体の本質を的確にとらえた彼ならではの審美眼は、まさに唯一無二。そんな彼がBEAMSエクスクルーシブにてブランド<MISTER MORT>をスタートさせました。今回はそんなモデカイ氏とBEAMS屈指のインフルエンサーであるバイヤー谷篤人とのスペシャルトーク。モデカイ氏の考えるファッションとは?そして、ファッションスナップとは?
サイトもウエアも常に “リアル” を提供したい
- Atsuhito Tani (以下、A.T) :
- 初めて会ったのは、あの大雪の日でしたよね?
- Mordechai Rubinstein(以下、M.R):
- 3年くらい前かな。大雪の日に、ノリータの交差点で君たちBEAMSチームと偶然出会ったんだよね。
- A.T:
- いえいえ、ちゃんとアポイントを入れてましたよ(笑)。
- M.R:
- あれ、そうだっけ(笑)。君は上下ターコイズカラーのフリースに、ダウンジャケットを着て、足元は<L.L.Bean(エル・エル・ビーン)>のビーンブーツ、そして髪型はポニーテール。まさにTANY(谷)スタイルだった。そのことは、はっきりと覚えているよ(笑)。で、みんなのスナップを撮らせてもらったんだ。とにかくみんなスタイリッシュなだけでなく、オリジナリティのコーディネートでかっこよかったよ。
- A.T:
- 以前から僕は、MORTのやっているブログやインスタグラムが大好きだったので、BEAMSのバイヤーを通して、アポイントを入れてもらいました。そしたら会った時に撮影もしてもらえて。インスタグラムに登場した時は嬉しかったなぁ。
- M.R:
- 君のファッションは、とにかくカラフルなイメージ。そして、何より普通のシャツを着ていてもそれをオシャレに見せるのが上手で。それは、コーディネートの足し引きがちゃんとできるているから。ハイブランドをわかりやすく着ている人とは違い、普通のウエアを着ているのにハイファッションに見える、それがTANYのスタイルだよね。
- A.T:
- 怖いくらいに、良いことばかり言ってくれますね(笑)。前にも一度言いましたが、会うまではMORTのことを、とても気難しい人だと思っていました。ブログを見れば、誰もがそう感じるはず(笑)。でも直接会って色々と話すうちにそのイメージが間違っていたことに気づき、そして一緒に仕事がしたいと思うようになりました。ちなみにファッションスナップのサイトって数限りなくあると思うんですけど、MORTがスナップ撮影をする上でこだわっていることは何ですか?
- M.R:
- “Beauty in Everyday(日々の美しさ)”。簡単に説明すると、どこにでもあるようなごく普通のトレンチコートを着ているんだけど、ほんのちょっとコーディネートがユニークだったり、どこかオリジナリティのあるスタイルが好きなんだ。全体のカラーリングだったり、組み合わせだったり、色々な要素で、どこかユーモアのあるコーディネートというか。よくファッションにはルールがあるっていうでしょ。この洋服にこの洋服は合わせちゃダメとか、赤とバーガンディーを組み合わせたらダメとか。僕はそんなルールには一切興味がないんだよね。理由は簡単。かっこよければルールなんていらないし、何よりその組み合わせがその人にとっては “リアル” だから。ルールなんて気にせず、好きなモノを好きなようにコーディネートする。そんなことをブログやSNSを通して、サポートできればいいなぁって思ってるよ。
- A.T:
- 明らかにMORTのブログは他のファッションスナップサイトとは一線を画していますから(笑)。ところで、MORTの肩書きって何になるんですか?一度も聞いたことがなかったかもしれません。
- M.R:
- 以前はDocumentalian(ドキュメンタリアン)とか言ってたけど、最近はGarmentologist(ガーメントロジスト)かな。
- A.T:
- ガーメントロジスト?聞き慣れない言葉ですね。
- M.R:
- これは僕が造った造語なんだ。簡単に言うと、ガーメント(洋服)の人って感じになるね。
BEAMSとの最初の出会いは、見知らぬ日本人から譲ってもらったデニムパンツ(笑)
- A.T:
- なるほど。色々な仕事をしてるし、MORTにはピッタリな言葉ですね。フォトグラファーとしての顔だけでなく、<aNYthing(エニシング)>のエーロンが始めたインターネットラジオの「KNOW WAVE」で番組をやっていたりもするし。今回は僕も飛び入りで出演させられて良い思い出になりました(笑)。こうやって色々と交流していくことで、ブランドをやりたいと思うようになっていったんです。その思いはニューヨークへ来て、MORTと会うごとに増していきました。今回は僕らからブランドのオファーをさせてもらったんですけど、それを聞いた時の感想は?
- M.R:
- とにかく嬉しくかったよ。ニューヨークのブランドや百貨店などとコラボレーションしているブランドは僕の周りにたくさんあるんだけど、国内ではなく、日本の、それもBEAMSとコラボレーションできるなんて、夢のような話だから。それは僕だけでなく、僕の周りでブランドをやっている友達もきっとそう思っているはず。こんな機会をもらえた僕は、本当にラッキーだよね。
- A.T:
- ちなみにMORTが初めてBEAMSの存在を知ったのはいつ頃ですか?
- M.R:
- 僕が初めてBEAMSのプロダクトを生で見たのは、もう15~20年くらい前かな。当時ソーホーのショップで働いていたんだけど、日本人のお客さんが入ってきて、その人がクレイジーパターンのデニムパンツを穿いてたんだ。パッチワークではなく、ブラウンやカーキ、そしてグリーンなどをパネルで使用したクレイジーパターンを。それがとにかくかっこよくて、話を聞いたら、BEAMSのオリジナル商品だった。すぐさま、穿いていた本人にそれを売ってくれってお願いをしたら、快諾してくれて(笑)。翌日100ドルと引き換えに、そのパンツを手に入れることができた(笑)。今でこそ、アメリカ国内でもBEAMSのウエアを扱っているショップもあるけど、もちろん当時はそんなショップは一軒もなくて。そのパンツは僕にとってスペシャルなプロダクト。今、ファッションが好きで、ニューヨークに住んでいて、そして長年洋服屋に働いている人なら、みんなBEAMSのことを知ってるんじゃないかな。「ポパイ」や「メンズノンノ」といった日本のファッションマガジンを見ると、必ずBEAMSの商品が出ているし、東京へバイイングや旅行で行った友達が帰国すると必ずと言っていいほどBEAMSの話をするから。
ウエアもマスタードもクラシックなものが好き
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- A.T:
- 日本人観光客が穿いていたパンツを100ドルで譲ってもらったっていう話は今初めて聞きました(笑)。そんなことがあったんですね。今回BEAMSと一緒に展開するオリジナルブランドは、基本的にMORTがやりたいことを形にするというのが前提でしたけど、ブランドの特徴って何だと思いますか?
- M.R:
- 一言でいうなら、ユーモア。今回製作したのは、コーチジャケットとボタンダウンシャツ、そして長袖、半袖それぞれのTシャツにショーツ、あとはキャップの6アイテムなんだけど、誰が着ても似合うレギュラーでクラシックなデザイン。元々そういったレギュラーでクラシックなアイテムが好きなんだけど、そこにマスタードの要素をプラスしたんだ。
- A.T:
- MORTといえば、マスタード好きとしても一部の間では有名ですよね(笑)。
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- M.R:
- とにかくマスタードが大好きなんだ。幼い頃なんて、好きな食べ物はもちろんだけど、あまり好きではない食べ物には料理が見えなくなるくらいにマスタードをたっぷりかけて食べてたし(笑)。今でも自宅の冷蔵庫にも色々な種類のマスタードを常備しているし、外出するときも常に小分けのマスタードを携帯してるよ(笑)。特に好きなのはクラシックマスタード。どこにでもある一番ベーシックなタイプだね。さっきも言ったように、洋服もマスタードと一緒でクラシックなものが好きなんだ。そういった意味でもウエアとマスタードには繋がりがあるよね。……あ、でもね、ここだけの話、今は<HEINZ>から出ている新しいレシピのマスタードがお気に入りなんだ(笑)。
- A.T:
- (笑)。そんなマスタードを普通にロゴとして使用するだけでなく、洋服に垂らしたようにデザインしているのがMORTらしいアイデアですよね。
- M.R:
- “ハッピーアクシデント” を表現したかったんだ。例えば、バーベキューや野球観戦、そしてバースデーパーティーなどで、あまりに楽しくて、うっかりソースを洋服にこぼしたりすること。これは楽しい時間であることを意味し、ポジティブな汚れだということ。他にも、鳥の糞が頭に落ちてきたりすることも “ハッピーアクシデント” のひとつ。つまり僕らがこのウエアからハッピーになってもらいたいんだよね。
- A.T:
- 今回の企画は、デザインも生産背景もすべてMORTのやりたいようにというのがオファーの条件でした。正直な話をすると、やっぱり不安要素もありましたよ(笑)。デザインだけでなく、納期なども含めて。でも、やりとりしていくうちに、不安よりも期待の方が大きくなりました。だからこそサンプルを見るのが凄い楽しみでした。実際にサンプルを見たら色々なブランドとコラボレーションしたり、ボディを使用したりと、そのセンスひとつひとつに感心しました。そして、オファーをして本当に良かったなと。今は無事にリリースされてホッとしています(笑)。最後に、このブランドについて何か今後のプランはありますか?
- M.R:
- 今後はどのような展開になるかはまだわからないけど、大前提として “リアルプロダクト” であることは忘れないようにしたいね。それは僕がやっているサイトにも同じことが言えるんだけど、常に偽りのない“真”の洋服を作っていきたい。そして、その洋服によって、みんなが幸せになってくれたら、これ以上嬉しいことはないからね。

MISTER MORT
/Mordechai Rubinstein (Garmentologist)
/Mordechai Rubinstein (Garmentologist)
モデカイ・ルビンスタイン/ショップスタッフや編集者、さらにはマーケターなどを経て、2008年にファッションスナップサイト「MISTER MORT」をスタート。他のファッションスナップサイトとは一線を画し、彼ならではの視点で切り取られたリアルなファッションは、アメリカのみならず世界中のファッショニスタから支持を集める。またプロのフォトグラファーという肩書きだけでなく、インターネットラジオ「KNOW WAVE」ではパーソナリティをするなど、その活動は多岐にわたる。ちなみに普段使用しているカメラは<YASHICA>とiPhone。
OFFICIAL SITE : mistermort.com
INSTAGRAM : www.instagram.com/mistermort

Atsuhito Tani
(BEAMS Buyer)
(BEAMS Buyer)
谷篤人/1978年生まれ。大阪府堺市出身。2005年にBEAMS入社。関西地区のショップスタッフ、プレスを担当した後、2013年よりメンズカジュアルのバイヤーに。同時に東京勤務となり、現在は海外を飛び回り多忙な日々を送る。また誰にも真似のできないオリジナリティ溢れる “TANY STYLE” は国内のみならず海外からも高い支持を得ており、インスタグラムのフォロワーは1万を越える。
INSTAGRAM : www.instagram.com/taniatsuhito