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19
Noriyuki Makihara
Singer-songwriter
#槇原敬之 #TOUR
Mar. 01. 2017
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Mar. 01. 2017 / #槇原敬之 #TOUR

19 Noriyuki Makihara Singer-songwriter

& Hiroshi Kubo (BEAMS Creative Director) Photography : Shin Hamada / Interview & Text : BEAMS どんなジャンルにもカテゴライズされない唯一無二のメロディと心に残るリリックで老若男女から愛されるシンガーソングライターの槇原敬之さん。幾多の名曲をこの世に送り続けるヒットメーカーは、音楽だけにとどまらず、ファッションについても一家言を持つ大の洋服好きとしても有名です。今回は、槇原さんのツアー衣装を手がけるビジネスパートナーであり、互いを認め合う親友であり、そして夜な夜な情報交換をし合うLINE仲間というBEAMSのクリエイティブディレクター、窪浩志とのスペシャルトーク。2人の出会いから、アイデアの出し方、そして明け方に行くお気に入りスポットまで、色々な槇原さんにきっと出会えます。

窪さんが作る衣装には見えないスイッチが付いてるんです

Noriyuki Makihara (以下、N.M) :
初めてお会いしたのは、僕のライブに来ていただいた時ですよね?
Hiroshi Kubo (以下、H.K) :
はい。確か2008年だったと思いますが、昔から仲良くさせていただいている<OVER THE STRiPES(オーバー ザ ストライプス)>の大嶺(保)さんに連れていってもらったのが最初ですよね。昔から音楽は大好きなんですが、邦楽はほとんど聴いてこなかったんです。ただ槇原さんの作品を聴いて、邦楽のイメージが変わりました。槇原さんと出会うよりも前に、ヨーロッパ出張でユーロスターに乗ったことがありました。その時、隣りに座った同僚が何か音楽を聴いていたので、どんな洒落た音楽を聴いているのかと思い聞いてみたら、槇原さんの『素直』だったんです。それを聴かせてもらったらとても感動して、帰国後すぐにアルバムを買わせてもらいました(笑)。
N.M:
BEAMSで窪さん以外の方も聴いてくださった方がいたんですね。嬉しいです!
H.K:
はい。彼も槇原さんのファンなんですが、元々は彼女の影響だったそうです(笑)。
N.M:
男性で聴いていただいている方は、だいたいそのパターンです(笑)。彼女が僕の曲を聴いてくれて、それを彼氏が一緒に聴いているうちにファンになり…。で、その彼女と別れた後も聴いてくださっているという感じで(笑)。
H.K:
音楽に関しては、ビートルズから始まって欧米の色々な音楽を聴いてきたんですが、やはり言葉の問題もあるので、詞が全く入ってこなかったんです。でも槇原さんの作品を聴かせていただいてから、詞を意識するようになりました。これは槇原さんご本人に何度も言ってますよね(笑)。
N.M:
はい、打ち明けていただいている度に、何度も喜んでいます(笑)。窪さんと初めてお会いした時の印象は、とにかくお洒落な人だなーって思いました。もちろん今でもお会いする度に「お洒落だなー」って思いますし、なんなら帰られた後もうちのスタッフに「今日もお洒落だったね」って言ってますから(笑)。昔からファッションは大好きだったんですけど、音楽しかやってこなかったので、いわゆるアパレルの方とほとんど接点がなかったんです。だから「やっとアパレルの方に出会えたー」って思いましたもん(笑)。
H.K:
いえいえ、こちらこそです。それから2年後くらいですよね、ツアーの衣装を担当させていただいたのは?
N.M:
2010年の『cELEBRATION(セレブレーション)』からですよね。うちの社長が「ダメ元でBEAMSさんに頼んでみよっか?」って(笑)。元々“いかにも”なステージ衣装というのが僕はちょっと苦手だったんです。リアルな服でなおかつステージに立てるようなデザインがいいなぁとは思っていたんですが、なかなかそういう服を作ってくださる方も僕の周りにはいなくて。で、頼んでみなければ何も始まらないと思い、恐る恐る相談させていただきました(笑)。そしたらお受けしてくれて。あの時は本当に嬉しかったなぁ。
H.K:
いえいえ、ダメ元だなんてとんでもないです。僕らもオファーをいただいた時は本当にビックリしました。最初のツアーは槇原さんを紹介してくれた大嶺さんと一緒にデザインさせていただいたんですが、槇原さんの衣装を担当させていただいたことはもちろんのこと、大嶺さんと2人で何かやるっていうことがこれまでなかったのでそれも嬉しかったです。
N.M:
僕は大嶺さんが手がけている<OVER THE STRiPES>が元々大好きでしたし、さらに窪さんにもご協力いただけることになって、とにかく嬉しくて。
H.K:
『cELEBRATION』の時は大嶺さんと「花をテーマにしましょう」って決めて、その後槇原さんに好きな花を聞いたんですよね。そしたら青いガーベラって言われて…。正直それまで青いガーベラを見たことがなかったので調べることから始めました(笑)。
N.M:
以前ニューヨークへ行った時にデリで青いガーベラが売ってたんです。部屋に飾るととても気分が良くなるので、青いガーベラを選ばせていただきました。
H.K:
で、その青いガーベラをモーニングの衣装に刺繍で入れたんですよね。その青を基調にしてラインを入れたりして、どんどんアイデアを広げていきました。あの衣装にゴシック体で“CELEBRATION”って入れちゃう大嶺さんのアイデアも新鮮でしたよね。さすがだなぁって思いました。
N.M:
あの衣装を初めて見た時、僕の想像を遥かに越えるデザインがあがってきて、テンションが上がりました(笑)。さっき衣装が好きじゃなかったって言ったじゃないですか。でも窪さんたちが作ってくださった衣装を着たら「お客さんのところへ行かなくちゃ!」っていうスイッチが入るようになったんです。もちろんそれは今までにない感覚で。お二人のおかげで衣装の重要さを知った気がします。
H.K:
今の話をうちの衣装チームが聞いたら、きっと喜びます。僕らもツアー衣装を作らせていただくというのは初めての経験だったので、最初はとにかく緊張の連続でした。初めてレコーディングスタジオへ衣装を持って行った時は、本当にドキドキしましたから(笑)。でも、槇原さんに衣装を着ていただいた時に初めて衣装に魂が宿ったような気がしたんです。それを感じて、僕らもちょっと安堵しました。
N.M:
そういうのってありますよね。例えば、ハンガーにかかった状態だと何も感じないのに、着ることで「うわ!」ってなることが結構あるんです。
H.K:
確かにありますよね。でも、あの時の衣装に関しては、槇原さんじゃないと命は宿らないと思います。あの衣装、普通の人は着こなせないと思いますし(笑)。それ以降はずっとツアーの衣装を担当させていただいていますよね。
N.M:
はい。社長には「もう窪さんの作る衣装じゃないと無理」って言ってますから(笑)。もう全幅の信頼を寄せています。
H.K:
そう言っていただけて、本当に嬉しいです。
槇原さんの会報誌『SDP』にて好評連載中である“窪浩志の辛口ファッションチェック”。「毎回、槇原さんのコーディネートについてコメントしています。タイトルには“辛口”と書かれていますが、かなり“甘口”です(笑)」とは窪の弁。

自分の曲がめっちゃ好きなんです

N.M:
窪さんとお仕事がしやすいのは、仕事の時だけでなくプライベートでも色々な話をさせていただいてることが大きいと思うんですよね。お互いどんな洋服が好きで、どんな音楽を聴くのかっていうのをわかっているので、本当に仕事がしやすいんです。よくLINEで連絡を取り合ってますもんね(笑)。
H.K:
夜中に1時間近くやりとりしてますよね。気づいたら朝の4時になってることもありますし(笑)。あの時間は僕にとって本当に楽しい時間なんです。あとデモを聴かせてもらったりもしてますよね。聴くとだいたい泣いてます(笑)。本当に。決して情緒不安定ではないですよ(笑)。そのくらい、いつも感動をいただいています。失礼かもしれないですけど、槇原さんとは好みが似てると思っていますし。
N.M:
全然失礼ではなくて、本当に似てますよね。そしてお互いの好みを知ってるから、窪さん以外の人には衣装を頼めないんです。窪さんは僕よりもちょっと年上ですし、何よりアパレルの方なんで、色々なことを教えてもらっています。それもまた楽しくて、しょっちゅう連絡させてもらって(笑)。ファッションだけじゃなく音楽にも詳しいんですよね。こないだもエミリー・クレア・バーロウというシンガーをオススメされて、今めっちゃハマってます。
H.K:
カナダの歌姫ですよね。僕が槇原さんにオススメするのもおこがましいんですが、気に入っていただいているようなので嬉しいです(笑)。
N.M:
ちなみに窪さんはどんな時にアイデアが浮かんできますか?
H.K:
僕の場合、考えなきゃって思っていると、意外と出てこないかもしれません。なので、そんな時はすぐに諦めて何も考えないようにしています(笑)。アイデアが浮かぶ時って、ふとした瞬間に出てくるんですが、そうすると一気にメモをとらないといけないので大変なんです。よくアイデアが浮かぶのは、お風呂に入っている時やジムで走ってる時ですかね。
N.M:
僕はトイレに入っている時が多くて…。やっぱり心も身体も開放的になっている時の方がアイデアって出てきやすいのかもしれませんね。無防備な時というか(笑)。
H.K:
そうかもしれませんね(笑)。以前コインランドリーが好きって言われてましたけど、あの空間でもアイデアが浮かんだりしますか?
N.M:
あ、そうなんです、コインランドリーが大好きなんです。ただアイデアを得るためというよりはリセットするためですかね。曲を作っていると、だいたい明け方くらいまでかかるんですけど、大量の洗濯物をIKEAの大きなバッグに詰めてコインランドリーへ行くんです。とある場所にあるお気に入りのコインランドリーがあって、そこへ足繁く(笑)。
H.K:
やっぱり明け方の時間帯がお好きなんですか?
N.M:
はい。仕事柄、人に囲まれていることが多いので、ほとんど誰もいない空間に1人でいるのが好きなんです。夜が明けて朝になるあの時間帯っていいですよね。夜が明けるの“明ける”って言葉は“始まる”っていう意味もあるので、リセットできる感じがして。……あ、あとはその時間帯って人がいないので、マシンを何機も同時に使えることも好きな理由です(笑)。しかも洗濯から乾燥、そして畳みまでの時間を計算しながら洗濯機を回しているのが好きなんです(笑)。このマシンの洗濯が終わる前にこっちの洗濯物を乾燥機に移して、みたいなあの同時進行の作業が、なんか指揮者と同じ感覚だなぁって(笑)。
H.K:
なるほど(笑)。待っている間は何してるんですか?
N.M:
音楽を聴いてます。僕、家でほとんど音楽って聴かないんです。僕がやらせてもらってるラジオ番組で使用する曲を選ぶ時くらいしか最近は聴かないかもしれません。
H.K:
だからご自身のアルバムが完成した時は、家ではなく車で聴かれるって以前言ってたんですね。
N.M:
そうなんです。しかも大音量で(笑)。聞いた話なんですが、マイルス・デイヴィスはデモができたら、それを車の窓を開けて街の音と一緒に大音量で聴いたそうなんです。それが彼のルーティーンだったらしいんですけど、その気持ちがすごいわかるんです。さっき話していただいた着用したことで命が宿るのと一緒で、街の音と一緒に聴くことで完成するというか。ただ大音量で聴いているせいか、信号待ちとかで並行した車のドライバーさんが「槇原だ」って(笑)。口の動きでわかるんです(笑)。でもね、こんなこと言うのはちょっと恥ずかしいんですけど、僕、自分の曲がメッチャ好きなんです。好きじゃない曲を世の出す方が失礼ですから。

今回の衣装も僕の想像より5割増しでした(笑)

H.K:
3月にスタートする今回のツアーは、パンクがキーワードになっていましたが、それはツアーと同名のアルバムが理由ですか?
N.M:
はい。前回のアルバムまでが僕の中で第2章だと思っているんですね。で、これからは構築したものを一度壊して、やり方も自分なりにちょっと変えてみようと。アルバムが完成ではなくて、メンバーさん達に演奏してもらったものを最終型にしようと思ったんです。つまりアルバムがスタートで、そこからメンバーさんたちと、リコンストラクション(再構築)しようと。それでパンクというキーワードにして、衣装もそのテーマで窪さんに作っていただきました。
H.K:
今回は、スカートやヒップバックなど槇原さんが取り入れてみたいというアイテムを融合させて、槇原さんならではのパンクを表現しようと思いました。
N.M:
今回も最高ですよね!しかもパンクというキーワードにアフリカンバティックの生地を取り入れるあたりがやっぱり窪さんですよね。さすがだなぁって思いました。おかげさまで今回も僕の想像する2割、3割……いや、5割増しで衣装にしていただきました(笑)。今回も無理難題を素晴らしい形にしていただいてありがとうございます。
H.K:
いえいえ、とんでもないです。僕はアイデアを出したり、デザイン画を描いたりするだけだからまだいいんですけど、それを請け負う生産チームにはいつも頑張ってもらってますね(笑)。特に今回は先程お話したアフリカンバティックは移染しやすいので、どうやったら移染を防げるかということをみんなで考えたりもしました。
N.M:
そうだったんですね。そういえば、窪さんがデザインされる衣装はどれも素晴らしいんですけど、特に印象的だったのは、2015年に行った『Lovable People(ラバブル ピープル)』のツアー衣装ですね。音符をジャケットにデザインしていただいたんですが、実は僕、それまで音符ってなんか好きじゃなかったんです。音符って見ためがファンシーだし、何より音符を読むのが好きじゃないし(笑)。でもこの衣装を見て好きになりました。音符ならではのファンシーな印象は一切なく「コレはカッコイイ!」って。もちろんその時も僕が想像した衣装の5割増しでした(笑)。
H.K:
その時は演出にも使っていただいたんですよね。それも嬉しかったです。
N.M:
窪さんの作る衣装は演出にも影響を及ぼすんです(笑)。それくらい重要な役割なんですよね。あと何より嬉しいのが、ツアーに参加してくれているメンバーさんの衣装も一人ひとりデザインしていただいていることです。僕はソロアーティストなので彼らが演奏してくれないと何もできないんですね。単なる伴奏者ではなくて、このメンバーだからこそっていうのを観ている方に伝えたいんです。そうなると彼らの衣装も重要になるんですけど、窪さんは毎回一人ひとりの衣装を作ってくださるんです。それが嬉しいし、メンバーさんたちも喜んでくれるので本当に感謝しています。窪さんには無理難題を言うかもしれませんが、どうぞこれからもよろしくお願いします(笑)。
H.K:
こちらこそ、これからもよろしくお願いします(笑)。
Noriyuki Makihara
Noriyuki Makihara
(Singer-songwriter)

槇原敬之/1969年、大阪府高槻市出身。1990年に開催された『AXIA MUSIC AUDITION’89』でグランプリを獲得し、同年1stシングル『NG』、1stアルバム『君が笑うとき君の胸が痛まないように』でデビュー。1991 年の3rdシングル『どんなときも』が大ヒットし、日本中にその名を轟かせる。他のアーティストへの楽曲提供も多数あり、代表作は『世界に一つだけの花』。動物好きとしても有名で、現在は5匹の犬と1匹の猫と同居中。

OFFICIAL SITE : www.makiharanoriyuki.com
Hiroshi Kubo
Hiroshi Kubo
(BEAMS Creative Director)

窪浩志/1962年、神奈川県横浜市出身。大学時代よりBEAMSでアルバイトを始め、卒業と同時に入社。ショップマネージャーなどを経験した後、オリジナルレーベル<BEAMS BOY>の初代ディレクターに。その後、ビームス創造研究所のクリエイティブディレクターとして様々なコラボーレション企画や新規ブランドの立ち上げに参画。現在は社長室室長としても様々な事業に携わりつつ、神戸芸術工科大学客員教授やJAFCA日本ファッションカラー選考委員など業務は多岐に渡る。プライベートでは生粋の横浜DeNAベイスターズファン。

「Makihara Noriyuki Concert Tour 2017 “Believer”」

「Makihara Noriyuki Concert Tour 2017 “Believer”」 全国34ヶ所、2017年3月10日よりスタート。詳細はこちら

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BEAMSにまつわるモノ・ヒト・コトをあらゆる目線から切り取り、
ヒトとヒトとのお話から”今気になるアレやコレ”を
紐解いていく連載企画 【TALK】。

洋服のデザイナーからバイヤー、フォトグラファーやモデルなどなど。
様々な職種のプロフェッショナルから
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