Apr. 22. 2016 / #Oriental #和
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Daisuke Yokoyama
Sasquatchfabrix. Designer
&Motoki Yoshikawa (BEAMS Buyer), Tadayuki Kato (BEAMS SURF&SK8 Buyer)
Photography / Interview&Text: BEAMS
連載企画【TALK】。今回は、どの系統にも当てはまらない唯一無二のクリエイティビティを具現化するブランド<Sasquatchfabrix.>のデザイナー、横山大介氏。今シーズン初めて手がけた<BEAMS>とのカプセルコレクションと、4月28日(木)にリリースアウトとなる<VANS>とのコラボレーションについて、バイヤー吉川と加藤とともに語っていただきました。ウェアをデザインする上で横山氏がこだわるポイントとは?確固たる信念がそこにはあります。
「サブカルチャーではなく、カルチャーを落とし込む」

- Motoki Yoshikawa (以下M.Y) :
- 昔からの友達なので、ちょっと照れくさいですが、横山さん、今回は宜しくお願いします(笑)。まずは<Sasquatchfabrix.(サスクワッチファブリックス)>についてお聞きしたいのですが、ブランドをスタートさせたのは、いつ頃ですか?
- Daisuke Yokoyama (以下D.Y) :
- 宜しくお願いします(笑)。<Sasquatchfabrix.>をスタートさせたのは2003年です。同じ大学に通っていた荒木克記と”WONDER WORKER GUERRILLA BAND”というデザインユニットをやっていたんですが、その一環としてブランドを始めました。その後、2011年に荒木が福岡へ移住することになり、以降は僕1人で手がけています。BEAMSさんで扱っていただけるようになったのは、確か2013年の秋冬からですよね。
- M.Y :
- そうですね。ちょうど今回が6シーズン目になります。僕がバイヤーアシスタントをしている頃から、<Sasquatchfabrix.>を取り扱いたいと思っていたんですが、他店とのバッティングなどの問題で実現できなかったんです。2人でやっていたブランドを1人でやることになって、何か心境の変化などはありましたか?

- D.Y :
- はい、ちょうどそのタイミングで色々なことが起きたので、デザインだけでなく生きていく上で、色々考えさせられるきっかけになりました。<Sasquatchfabrix.>に関しては、簡単に言うと、サブカルチャーを意識して作っていたものを、カルチャーを意識するようになりましたね。それまでは勢いというかノリでデザインしていることの方が多かったんですけど、日本人として何ができるかということに重きを置いてデザインするようになりました。勢いでデザインするようなことは若い子達に任せて、僕は上辺だけでなく目に見えないデザインをしっかりやらないとダメだと思っています。ただ、1人でやるようになってから、それまでの<Sasquatchfabrix.>とは若干イメージが変わったので、“あいつ狂ったんじゃないか”って思われていたかもしれませんね(笑)。
- M.Y :
- “日本人として”というのは、具体的にどういうことですか?
- D.Y :
- 簡単に言えば、日本の文化を洋服に落とし込むということですね。"文明開化以降" 色々なモノが日本に入ってきて、服も和服より洋服を好むようになったじゃないですか。なぜか和より洋の方がカッコイイっていうイメージが植え付けられて。もちろん新しくて格好良かったってことに間違いはないんですが、今僕がやるべきことは、日本人が戦後、和というものを捨て洋に変換していった。その捨てられた和というのものを現在の洋に混ぜて過去と現在を繋ぐことだと思っています。元々僕自身、日本人でありながら、日本のことを全く知らなかったんです。でも日本には素晴らしい伝統や文化がありますよね。そこで自分の国を知ることから始めました。昔から掘り下げるという作業は好きなんですよね。ほら、僕らって“掘り下げ世代”じゃないですか(笑)。

- M.Y :
- そうですね(笑)。確かに<Sasquatchfabrix.>の服は、表面的なものではなく、裏打ちされたディテールやグラフィックがデザインされています。しかもそれが他のブランドにはないような唯一無二のアイデアで。横山さんが1人でやるようになってから、それはより顕著になった気がします(笑)。そういうブランドだからこそ、今回カプセルコレクションをお願いしました。それが『オリエンタル スケート コレクション』です。
「“日本のストリート=不良”だと思っています」

- D.Y :
- 提案をいただいたのは、結構前でしたよね?
- M.Y :
- はい。このコレクションで、<Sasquatchfabrix.>と初めての別注モデルを作ってもらいました。実は、1年くらい前に社内で“どのブランドとどんな別注を作るか”ということをミーティングした際に、今日一緒に来ているうちの加藤が「Sasquatchfabrix.で“ビーバップ・コレクション”をやったら面白いんじゃない?」って発言されたんです。もちろん“ビーバップ”っていうのは、漫画『ビーバップハイスクール』のことです(笑)。その斬新な組み合わせがかなり衝撃でした。僕も面白いと思ったので、賛同したんですが、即座に却下されました(笑)。でも、そのヒントがあったからこそ、今回のコレクションが生まれたんです。

Sasquatchfabrix. × BEAMS
2016 Spring&Summer “Oriental Skate Colection”

- Tadayuki Kato (以下T.K) :
- <Sasquatchfabrix.>ってやっぱり他のブランドとは似ても似つかないオリジナルを持っているブランドだし、個人的なイメージですけど『ビーバップハイスクール』の匂いと近い気がしたんですよね。ま、すぐに却下されましたけど(笑)。昔から見させていただいていますが、毎シーズン、良い意味で期待を裏切ってくれるブランドですし、しかも過去の要素がミックスされているにもかかわらず新しさも感じさせてくれます。今回のコレクションも素晴らしいウェアばかりなので、ただただ凄いなぁって感動してます。
「VANSのTシャツはお土産屋さんにありそうなデザインで」

- 4月28日(木)にオープンする「ビームス ジャパン」にて先行発売します。詳しくはこちら。
- M.Y :
- 元々今回のオリエンタルスケートコレクションは、トータルコーディネートができるコレクションにしようって話になっていて、“じゃぁ足元はどうする?”ってなった時、真っ先に挙ったのが<VANS>だったんです。今シーズンの<BEAMS>は’90年代をモチーフのひとつにしているので、<Sasquatchfabrix.>とのコラボレーションも’90年代のスケートカルチャーを意識してデザインしてもらいました。となると、足元はやっぱり<VANS>ですよね。
- T.K :
- このタイミングでSK-8 HIを選ぶあたりは、さすがですよね。しかも、このシューレース部分のゴムが、今までにないデザインで面白いです。

- D.Y :
- SK-8 HIをスリッポンのように履けたら面白いなぁって思ったんです。ほんとはアッパーを覆うようにゴムを配置したかったんですが、NGが出ちゃって(笑)。
- M.Y :
- 本国の<VANS>への確認が必要なんで、アプルーバルがおりるまでかなり大変だったみたいですね。SK-8 HI以外も提案はあったんですか?
- D.Y :
- とにかく色々なアイデアを出しました。今回のSK-8 HIには、あえて長短2種類のシューレースを付属させているんですが、短い方を通せば、チャッカのようにも見えるし、面白いかなと。ま、ミーティング中にその場のノリで採用されたアイデアなんですけどね(笑)。

- T.K :
- あと今回のオリエンタル スケートコレクションは<VANS>のコラボレーションアイテムを含めて、ネイビーで統一しているのも特徴ですよね。
- D.Y :
- 本当はインディゴでやろうという話もあったんですが、<Sasquatchfabrix.>のインラインでインディゴのアイテムがあったので、“じゃぁ、あえてネイビーで”って話になりました。デザイン的なこだわりとしては、日本というよりも東洋をイメージしたデザインにしています。コレクション名が“オリエンタル”になっているのは、それが理由です。もちろん日本の文化も素晴らしいんですが、個人的には日本も含めた東洋の文化に興味があって。あとは、子供っぽさも残しつつ、大人でも着ることができるようなデザインしました。あまり堅苦しくなく、力の抜いた雰囲気を心がけました。<VANS>のTシャツもお相撲さんのグラフィックを使用したり、あえて既成のボディを使用して、お土産物のようなイメージで。例えるなら、マーク・ゴンザレスが、チャイナタウンのお土産屋で買ったチャイナシャツを着ているような感じですね。
「日本人として、東洋人として」
- M.Y :
- 最後にこれからの展望を教えてもらえますか。
- D.Y :
- さっきも言いましたが、1人で<Sasquatchfabrix.>をやるようになってから、服を作る上でのこだわりが変わりました。その時の時代感もあったと思うんですが、2人でやっていた時は、完全にノリで作っていたんです。でも、1人になってからは、服から服を作ることはやめて、しっかりとストーリーのある服を作ることにこだわっています。日本人だからこそ、そして東洋人だからこそ作ることのできる服があるんじゃなかって思っています。
- M.Y :
- それができるのも<Sasquatchfabrix.>だからですよね。そういったアイデアを別のアーティストと絡めて、来シーズンあたりにできたら面白いですね。
- D.Y :
- そうですね。もしかしたら、きうちかずひろ先生と組んで“ビーバップ・コレクション”になるかもしれませんよ(笑)。
Daisuke Yokoyama
(Sasquatchfabrix. Designer)
横山大介/1977年、新潟県出身。大学の同級生である荒木克記氏とのデザインユニットWONDER WORKER GUERRILLA BAND名義で、2003年に<Sasquatchfabrix.>をスタート。2013年の秋冬コレクションより横山氏1人での活動に。ウェアデザインだけでなく、舞台衣装やプロダクトデザインなども手がけ、その才能をいかんなく発揮する。
Motoki Yoshikawa
(BEAMS Buyer)
吉川基希/1979年、新潟県出身。高校時代、地元新潟の古着屋にアルバイトで勤務。その後、某セレクトショップ勤務を経て、2001年BEAMSに入社。2012年よりメンズカジュアルのバイヤーとなり、2015年よりチーフバイヤーに。バイイングのため国内外を駆け回る中、先日待望の長男が誕生。
Tadayuki Kato
(BEAMS SURF&SK8 Buyer)
加藤忠幸/1973年、神奈川県出身。大学卒業後、BEAMSに入社。販売スタッフ兼アシスタントバイヤーを経て、2012年よりSURF&SK8の担当バイヤーに。また今シーズンより一部 BEAMSのオリジナルウェアデザインも兼務。スケートとサーフィン、そして鎌倉野菜をこよなく愛す42歳。