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08
Kenichi Kusano
KENNETH FIELD™ Designer
#AMERICAN TRADITIONAL #BEAMS PLUS
Apr. 15. 2016
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Apr. 15. 2016 / #AMERICAN TRADITIONAL #BEAMS PLUS

08 Kenichi Kusano KENNETH FIELD™ Designer

&Hideki Mizobata (BEAMS PLUS Director) Photography / Interview&Text: BEAMS 連載企画【TALK】。第8回目は、人気ブランド<KENNETH FIELD™>のデザイナーであり、元<BEAMS PLUS>のディレクターである草野健一氏。日本のみならず、欧米やアジアからも注目される<KENNETH FIELD™>はどのようにして誕生したのか?そして、今後の展望は?今回は草野氏の古巣である<BEAMS PLUS>の現ディレクターを務める溝端との対談です。

正直、BEAMSに入るまでアメリカの服を馬鹿にしてました。

Hideki Mizobata :
草野さん、本日は宜しくお願い致します。今回は対談をさせていただくということで、大変緊張しています(笑)。まずは、BEAMS在籍時についてお聞きしたいのですが、ご退職されたのは2012年でしたよね?BEAMSを退職される前に各店舗へご挨拶に回られたのを覚えてます。
Kenichi Kusano :
そうですね、2012年です。お世話になったところへ挨拶にまわったんですけど、みんな心の中でガッツポーズしていたと思いますよ(笑)。「これでバイヤーの枠があく!」って若いスタッフは思ってたんじゃないですかね(笑)。
H.M :
そんなことありませんから(笑)。元々BEAMSへはどのようにして入られたんですか?
K.K :
BEAMSに入ったのは1997年だったと思います。当時のバイヤーがアシスタントを探しているということで、知り合いに紹介してもらったのがきっかけです。それまではずっとプラプラしてました(笑)。当時はまだ<BEAMS PLUS>は存在せず、<bPr>というセクションに属していました。“BEAMS PLANNING ROOM”の略なんですけど、なんでも手がけるレーベルで、モーターショーのユニフォームを手がけている方もいたり、とてもユニークな部署でした。そこで色々勉強させていただきました。正直なところ、それまではアメリカの服を馬鹿にしてたんです。でも、色々教わるうちに、アメリカの底力を思い知らされ、逆にのめり込んで行きました。時代ごとにスタイルが異なり、しかもそれぞれのファッションに魅力があり…。間違いなく自分の中でファッションのベースになっていると思います。

古本が好きだから、事務所をこの街に。

H.M :
その後、<BEAMS PLUS>ができて移られたんですね。ディレクターになられたのはいつ頃ですか?
K.K :
はい。1999年に<BEAMS PLUS>が立ち上がったんですが、それと同時に移りました。僕は2代目で、ディレクターになったのは2004年頃だったかな。それから7、8年ディレクターとして仕事をさせてもらいました。
H.M :
BEAMSを退職後、すぐにブランドをスタートされたと思うんですが、元々<BEAMS PLUS>でもオリジナルウエアのデザインをされていましたよね。なぜご自身のブランドを始めようと思われたんですか?変な話、会社にいた方が安定もしていたと思うのですが(笑)。
K.K :
もちろん残っていた方が安定していたと思いますよ(笑)。ただ単純に自分だけで洋服を作ってみたくなったんです。作るフィールド、売るフィールドを変えてみたかったというか、すべて一人でやってみたくなったんです。今は、洋服の企画はもちろんのこと、商品の出荷まですべて一人でやってます。お金の管理とか大変なこともありますが、楽しく毎日を過ごしてますよ。1人でやってるから気楽だし、すべて自分次第なので。もし会社勤めをされている方で、モヤモヤしている人がいたら、是非会社を飛び出して新しい世界を見てほしいです(笑)。
H.M :
(笑)。ちなみに事務所をこの神保町(東京都千代田区)にされたのは、なぜですか?アパレルのオフィスとしては珍しいですよね。
K.K :
一言でいえば、古本屋と美味しいご飯屋さんが沢山あるからです(笑)。溝端くんも知っていると思うんですけど、僕、昔から古本が好きなんです。特に写真集が。で、この神保町といえば、本の街じゃないですか。BEAMSにいた頃から、よくこの街に来ては、よく古本を買ってばかりいたんです。ふと“もしこの街に事務所があれば本を買わずにすむのでは”って思ったんです。で、神保町に決めました。……ま、結果的には、今でも本をたくさん買ってますが(笑)。

ネットで情報収集することは、ほとんどありません。

H.M :
神保町に事務所を構えたことで、むしろ買われる頻度が増えているんじゃないですかね(笑)。写真集がお好きと言っていましたが、ウエアをデザインする上で参考にしていたりしますか?
K.K :
元々旅行が好きなので、色々な国の風景が写っているような写真集をよく購入しています。で、写真集の中の風景を見て、様々なイメージを膨らませてウエアのアイデアを練っています。この壁のタイルの柄をパッチワークにしたら面白いとか、もしこの場所にいたらどんなウエアが似合うだとか。そういったイメージを膨らませて洋服をデザインすることがほとんどですね。今の人たちってネットで色々な情報収集をしてデザインしている人って多いじゃないですか。僕の場合、ネットってほとんど見ないんですよね。するとしても時代考証くらい。間違いなくネットで調べた方が便利だし、情報量も多いと思うんですけど、イメージが湧かないんですよね。
H.M :
そうなんですね。僕ももちろんネットにはお世話になるし、ファッション誌も色々見ますし、昔の雑誌などからリサーチすることもよくあります。あとは写真集で気になる俳優さんとかいたら、その人自身をネットで調べて、どんな映画に出ているのかチェックしたりして、その映画を観たりしています。
K.K :
僕の場合、本が好きなので、映画は勿論観ますが、原作やパンフレットを見ることも多いです。あとファッション雑誌って、ほとんど見ないんですよね。取材していただいて送られてくる見本誌を見ることはありますが、買うことはないですね。もちろんBEAMSにいた頃は、なんでも見ていましたよ。特に<BEAMS PLUS>のディレクターをしている頃は、メンズ、レディスを問わず、いろんな雑誌をチェックしていました。<BEAMS PLUS>って「どうせアメリカなんでしょ?古着っぽいモノが多いんでしょ?」って思われるのが嫌だったので、すべてのファッションを知った上で服作りをしたかったんです。よく取材とかで「憧れの有名人はいますか?」とかよく聞かれるんですが、特にいないんですよね。……あ、でもBEAMSの南雲さん(ビームス 創造研究所 クリエイティブ ディレクター)は、カッコイイですよね。何を着ていても南雲さんだし、服に着られて無い、素敵だなぁって昔から思っていました。インターナショナルな感じがしますよね。日本だけではなくどこの国にいてもかっこよく感じる方だと思います。
H.M :
アシスタントの頃はいかがでした?
K.K :
もちろん初代ディレクターもかっこよかったですね。あの方の場合は、LAにいる趣味人って感じですかね(笑)。アメリカンカルチャーとモノにとにかく詳しくて、しかもカッコイイ。色々勉強させてもらいました。僕と溝端さんが出会ったのは、いつ頃でしたっけ?
H.M :
僕がまだ大阪にいる時で、2008年頃だったと思います。ちょうど「ビームス 梅田」で<BEAMS PLUS>を展開するとなった時に、僕が担当をやらせてもらったんです。で、半年に1度、ミーティングがあったので、ちゃんとお話しさせて頂いたのは、その時が初めてです。恐れ多くて、大先輩というのもおこがましいくらいなんですが、僕の中で、草野さんは今も昔も“物静かな先生”ってイメージです。今ディレクターをやらせていただいているので、草野さんがやっていた頃のことを色々聞いてみたいんですよね。あのオリジナルのウエアのディテールはどうやって作っていたのか、とか。
K.K :
ま、聞かれても答えませんけどね(笑)。過去は振り返られないので(笑)。

1人だからこそ、色々チャレンジしたい。

H.M :
そんなこと言わないでください(笑)。そういえば<KENNETH FIELD™>は、シーズンによってテーマがないこともありますが、あれは何か理由があるんですか?
K.K :
特に理由はないんですが、相応しいコピーが見つからなかった時はテーマを設けていませんね。うちのブランドは、すべて僕自身が着たいと思ったモノだけを作っています。テーマを設けることで、作りたくても作れないモノが出てきたり、逆に着たくないモノを無理して作るといったことはしたくないんです。ま、これも一人でやってるからの特権ですよね。こんなこと企業じゃできないと思うし(笑)。あと、うちのブランドは、継続の商品も多いです。4回目の展開となるこのジャケットは、’50年代のスポーツジャケットをモチーフにしていて、ゆったりとしたシルエットと低めのコージラインが特徴です。背抜き仕様なので、これからの季節に最適なジャケットです。
H.M :
このシャンブレーシャツも<KENNETH FIELD™>の定番アイテムですよね。
K.K :
はい。またシャンブレーシャツはワークのイメージが強いので、あえてタイを巻くことを想定したデザインにしています。洗うとシボができる独特な生地を使用したり、ワークシャツの代表的なディテールでもあるトリプルステッチは採用しなかったりと、上品さを感じさせるシャツに仕上げています。このシャンブレーシャツもブランド立ち上げと同時に継続して展開している商品です。
H.M :
うちでも人気アイテムとして大変好評です。<BEAMS PLUS>に来られるお客様にも<KENNETH FIELD™>のファンが沢山いらっしゃるので、4月22日から「ビームス 神戸」でスタートするトランクショーが、とても楽しみです。今回はうちの白川(スタイリング ディレクター)とトークショーを開催するんですよね(笑)。
K.K :
そうなんですよ。せっかくトランクショーをやっていただけるのだから、どうせなら面白いことをしようってことで、白川さんとトークショーをやることになりました(笑)。実際白川さんとちゃんとお話ししたことがなくて、情報としてはお洒落で、ハンティングジャケットと巻き物が大好きで、そして関西の重鎮っていうくらいしかないんです(笑)。だからこそ、とても楽しみにしてます。
H.M :
僕もとても楽しみにしています。では最後に、今後についてお聞きしたいのですが。
K.K :
そうですね、色々なことにチャレンジしたいですね。今まで経験したことのないことにも積極的に。これって1人でやっているからこその、強みですよね。1人でやってれば、今ひらめいたアイデアをすぐに行動できるじゃないですか。例えば、神保町のレストランのユニフォームを作りたいって思ったら、そのまま外出して営業にいけるし(笑)。せっかくだし楽しく仕事をしたいと思っています。今シーズンからレディースを始めたんですが、徐々に自分のペースで増やして行きたいですね。そういえば、通りすがりの見知らぬ人のバックスタイルをこっそり撮影して、インスタグラムでアップしているんですが、あれもまだまだ続けていきたいですね。
H.M :
知っています。いつも楽しく見させていただいてます。僕の周りの人間もみんな見てるようですが、あれはバッグを製作するためのリサーチか何かですか?
K.K :
いいえ、バッグは今後も作る予定は一切ありません(笑)。
Kenichi Kusano
Kenichi Kusano
(KENNETH FIELD™ Designer)

草野健一/1969年、熊本生まれ。1997年BEAMS入社。<BEAMS PLUS>の立ち上げに参画。2004年より<BEAMS PLUS>ディレクター就任。2012年退社と同時に自身のブランド<KENNETH FIELD™>をスタート。2014年には『L’Uomo Vogue』と『GQ ITALIA』が主催する新人デザイナー“THE LATEST FASHION BUZZ”に選出される。

Hideki Mizobata
Hideki Mizobata
(BEAMS PLUS Director)

溝端秀基/2006年BEAMSに入社し、2013年より<BEAMS PLUS>のバイヤーに。その後、2016年春夏シーズンより<BEAMS PLUS>のディレクターに就任。レーベルの舵取りはもちろんのこと、バイイングにも携わっており、国内外を駆けずり回る多忙な日々を送る。休日は、家族サービスと趣味の古着屋巡りにいそしむ33歳。

関連情報
<KENNETH FIELD™>TRUNK SHOW 開催

デザイナー草野健一氏が体験した80年代以降のアメリカントラディショナルクロージングを中心に、各年代の様々な国や地域のカルチャーに着目する事をデザインソースとしている<KENNETH FIELD™>。今シーズンから展開スタートとなる「ビームス 神戸」にて、TRUNK SHOWを開催します。

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BEAMSにまつわるモノ・ヒト・コトをあらゆる目線から切り取り、
ヒトとヒトとのお話から”今気になるアレやコレ”を
紐解いていく連載企画 【TALK】。

洋服のデザイナーからバイヤー、フォトグラファーやモデルなどなど。
様々な職種のプロフェッショナルから
”今気になるアレやコレ”を伺います。

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