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23
Naoko Okusa
Stylist
#FASHION #SIMPLECHIC
Nov. 16. 2017
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Nov. 16. 2017 / #FASHION #SIMPLECHIC

23 Naoko Okusa
Stylist

& Harumi Sugimoto(Women's Dress Chief Director) Photography : Keisuke Nakamura / Interview & Text : Ayako Suzuki “スタイリスト” “編集者” “著者” “ブランドディレクター” ――シーンによって肩書きが変わる、大草直子さん。現在はWEBマガジン『mi-mollet(ミモレ)』の編集長としても活躍しています。さらにプライベートでは3児の母。いくつもの顔を持ち、さまざまなシーンを行き来する彼女が提案するスタイリングは、リアルでいて洗練されています。また、彼女が紡ぎ出す、ロジカルで情緒的な言葉には類を見ない説得力も。今回は、そんな大草さんと同世代であり、9月から<デミルクス ビームス><エッフェ ビームス><インターナショナルギャラリー ビームス>の3つのブランドの統括ディレクターに就任した杉本とのスペシャルトークをお届け。バイタリティあふれる大草さんの素顔に迫りました。

ファッションを媒介して「伝える」ことが楽しくて仕方ない

Harumi Sugimoto (以下、H.S):
立場は違いますが「ファッション」という共通のキーワードが仕事の根幹にある大草さんと私。まずは、大草さんがファッションを仕事にすることになったきっかけをお聞きしたいのですが、その前に、自己紹介がてら、私のことを簡単にお話しさせていただきますね。私は、大学生のときに、名古屋の栄にあったビームスの路面店で販売員としてアルバイトを始めたのが、のちにファッションを仕事にするきっかけになりました。当時の私からすると、販売員のお兄さんやお姉さんは、とってもカッコ良くって、キラキラした存在。そんな憧れの方々に、みっちり3年間、洋服のことを一から教えてもらえて、とっても楽しかったのを覚えています。
Naoko Okusa (以下、N.O) :
大学を卒業した後は、そのままビームスに入社したの?
H.S:
それが…。実は違うんです。大学生のときは、ビームスでしかアルバイトをしていなかったので、まったく違う世界を見てみたいと思って、IT系の会社にプログラマーとして就職したんです。でも、今までのビームスでのアルバイトのように、お客様と会話したり、スタッフみんなでお店を盛り上げていく感じとは違い、自分の世界にこもって作業をする感じが性に合わなくて…。やっぱり、もう一度、大好きなファッションの世界に戻りたいと思って、ビームスの中途採用の試験を受けました。新卒で就職した会社はその年の12月には辞めて、翌月の1月からビームスで働き始めたので、今の私の人生の半分以上がビームスにあります(笑)
N.O:
きっと、杉本さんは、ビジョンがクリアだったんだね。やりたいことや興味のあることの見極めが早い!
H.S:
大草さんは、どうしてファッションを仕事にしようと思ったんですか?
N.O:
私の場合、洋服からではなく、メディアから入った感じかな。雑誌が好きで好きで仕方なかったの。あとは、自分が洋服を着たり触ったりするのはもちろん、それ以上にとにかく伝えることが楽しかった。例えば、「聞いて、聞いて。この服すっごく可愛くない? 日曜日に原宿のお店で買ったんだけどね。」みたいな感じで、週明け早々に友達に話したりとか(笑)。だから、突き詰めて考えたとき、もちろんファッションには興味があるけれど、何より、ファッションを媒介にして“伝える”ことが好きなんだってことに気がついたの。そういう思いから、出版社に絞って就職活動をしたのね。
H.S:
出版社に入るのってなかなか難しそうですが、就職活動は順調だったんですか?
N.O:
私は、出版社の中でも、私の人生を変えた『ヴァンテーヌ』という雑誌を出している婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)に、どうしても入りたかったの。ものすごく勉強をして挑んだけれど、最終面接で落ちてしまって…。それでも、どうしても入りたかったから、父親を説得して、就職浪人をする準備をしていたの。そうしたら、なんと! 年末に「新しい雑誌を立ち上げるから追加採用したい」という連絡が来て。二つ返事で「ぜひ!」と答えたものの、問題は就職浪人=留年をするために残しておいた会計学…。必死に教授室に通いつめて、なんとか単位をとって無事に卒業したな(笑)
H.S:
婦人画報社に入ってからはどんな仕事をしていたんですか?
N.O:
4月に入社して、半年経ったところで、憧れの雑誌『ヴァンテーヌ』に配属されてね。当時は、企画から、スタイリング、原稿書きまで、ページ作りのすべてを一人で担当するスタイルだったので、かなり修行させてもらったな。周りにも、スタイリスト、エディター、ライターなど、いろいろな肩書きでフリーランスになる人が多くてね。私は、フリーになって初めてやらせてもらったのが『CLASSY.(クラッシィ)』。一般的に、ファッションページを作るときは、スタイリングはスタイリストが担当して、文章はライターが書いて、編集者が編集をするという分業制なんだけれど、私は初めてクラッシィですべてをやらせてもらった。フリーになって10年くらいは、チラシのコピーを書いたり、リリースをリライトしたり、ありとあらゆる仕事をやらせてもらいました。自分の肩書きは自分で決めるのではなく、仕事をくれた人が決めるものだと思っていたから、自分の名刺には名前しか刷っていなかったの。そのうち、スタイリングの仕事で呼ばれることが多くなり。そして、ちょうどスタイリストブームがやって来たので、自然と肩書が「スタイリスト」になった感じです。
H.S:
スタイリストもエディターもライターもやるとなると、アンテナを張りめぐらせておかないといけなそうですが、大草さんは、どんなところからファッションに関するインスピレーションを受けているんですか?
N.O:
意外かもしれませんが、ファッションではないところからインスピレーションを受けることが多いかも。例えば、フリーダカーロ! 彼女の映画と写真集は、何度も見ています。私の2ndホームタウンだと思っているメキシコで、ラテンな人生を貫いた彼女は、とても魅力的で、どこか自分にも繋がるところがあるんです。彼女が今生きていたら何を着て、どんな風に過ごすのだろうと想像したりしています。そう、私の場合、流行よりも、昔や今を生きている人のバックグランドに興味があって、そこからファッションを連想する感じ。もう一冊の写真集は、海の近くにある家のインテリアブック。こんな風に着色していない無垢な木の上を素足で歩く人は、恐らく夏もスエードを着るんだろうなとかレギンスをはいたりするのかなとか考えるんです。さまざまな生活環境の中に住んでいる人を想像して、それをファッションに結びつけるイメージ。だから旅もいっぱいするし、色々な人に会いたいと思うんです。
H.S:
なるほど。国内外の展示会や街ゆく人など、自分の目で見たモノ・コト・ヒトからインスピレーションを受けている私にとっては、とっても新鮮な視点です。インスパイアの源としてお持ちいただいた中には、SIMPLE CHICシリーズの『WOMEN’S WARDROBE』や『プリティウーマン』もありますよね。これらには、どんな思い入れがあるんですか?
N.O:
『WOMEN’S WARDROBE』は私のアイデンティティのようなもの。小学校の6年間と中学校の3年間は、ネイビーと白の制服で育ったのね。靴とランドセルは黒。当時、女の子のランドセルは赤が主流だったから、とても地味だった。だから、一度先生にどうして黒なのか尋ねたら、「ネイビーに黒ってすごくシックで素敵なのよ」と教えてくれたの。それを聞いたら、なんだか、すっと腑に落ちたんです。 少し話が逸れちゃったかな(笑)。言いたかったのは、ベーシック育ちということなんです。『WOMEN’S WARDROBE』は本当に正しいベーシックがきちんと載っている。今見ても全然古さを感じない。プリティウーマンが好きなのも同じ理由。おとぎ話のようなストーリーも、もちろん素敵だけれど、ジュリアロバーツが演じる主人公、ビビアンが競馬場に着ていったドットのワンピースは今見ても可愛いし、夜のドレスコードもきちんと描かれている。そんな正しいベーシックがとにかく好きなんです。
H.S:
幼いころに教えられた“ベーシック”が大草さんのおしゃれのベースになっているんですね。
N.O:
そうね、ベーシックがベースになっていて、そこに、人生の岐路で出会った“ラテン”という着色が入っている感じ。これは自分だけの個性だと思ってる。
H.S:
ベーシック×ラテン! 面白い組み合わせですね。でも大草さんらしい。

シーンや肩書きが自分の服を決めている。それはそれで楽しい!

H.S:
私は身長が高いこともあり、自分の買い物をするときは、身体のバランスに合うことが第一なのですが、大草さんは、自分のものを買うときは、どんなところを見ていますか?
N.O:
今の自分の生活シーンに合うかどうかを見ているかな。というのも、自宅が都心から離れているんです。その上、朝、自宅で原稿を書いてから、都心で打ち合わせを何本かした後、こうしてヘアメイクをしていただいて取材を受けて、夜は会食といった具合に、さまざまな予定が詰まっているんです。だから、きちんと電車に乗って通勤ができて、それぞれの予定をクリアできるかが重要。
H.S:
今日は銀座シックスの「ビームス ハウス ウィメン 銀座」で、大草さんが気になるアイテムも選んでいただきました。それぞれの気になったポイントを教えてもらえますか?
H.S:
洋服だけでなく、大草さんの小物使いも含めたトータルのスタイリングが好きなので、小物の選び方やシーンによる使い分けなど、勉強になりました。ところで、私は、40代になって、20代や30代前半とは着たいものや似合うものが変わってきたことを実感しています。大草さんは、年齢を重ねたことによるファッションの変化ってありましたか?
N.O:
私は、以前、フリーランスのスタイリスト業がメインだったときは、ロケバスに乗って、顔見知りのプレスの方々に会って、リース商品をピックアップして、とにかくたくさんコーディネートを組むという感じだったので、ビーチサンダルでもOKでした。今でもビーチサンダルは大好きですが、さすがに、編集長として前に出ることもあるので、なかなか履けなくなっています。だから、シーンや肩書きが自分の着る服を決めているという感じはあるかな。でも、それはそれで楽しいですよ!
H.S:
そうなんですね。私は、素材にもこだわるようになりました。やっぱりリッチな素材の方が、肌映りが良いですし着心地も良い。デザインも、メリハリをつけてくれるものや、腕や脚を含めた身体のラインをキレイに見せてくれるものを吟味しています。
N.O:
確かに素材は大事! 私はもともと素材フェチですが、冬はカシミヤニットを週4で着るくらい、カシミヤはなくてはならない存在だな。
H.S:
あとは、色の取り入れ方も変わってきました。20代の頃は、カラーブームも手伝って、原色を大胆に着たりしていましたが、今は、ベーシックカラーをベースに、顔まわりにブルー系やイエロー系などの明るい色を取り入れたり、今日の大草さんのように足もとに色を差し込んだりしています。

WEBと紙を融合させた、新しいかたちのメディアを模索中

H.S:
私は、今まで、「インターナショナルギャラリー ビームス」という、国内外のブランドの仕入れだけで構成されているお店を含めて販売を10年以上、買付を5年担当していたのですが、この9月から、<デミルクス ビームス>と<エッフェ ビームス>のディレクションも統括することになったんです。今まで関わったことのないディビジョンですし、オリジナルアイテムがあるためアイディア出しから生地選びまで、すべてが初体験。洋服を一着作り上げるのに、すごくたくさんの工程、色々な人の力が関わっていることを知りました。自分にとっては、かなりチャレンジングなことですが、今までの経験を生かして頑張っていきたいと思っています。大草さんは、今までも様々なキャリアを積んでいらっしゃると思いますが、今後チャレンジしたいことってありますか?
N.O:
杉本さんがディレクションする新しいビームス、とっても楽しみ! 私は、雑誌のスタイリスト、編集者を20年以上やってきて、ここ3年くらいはWEBメディアを中心にやっているんですが、今はまた、新しいかたちのメディアを模索中です。紙とWEBは役割がまったく違うから、それをうまく融合させるようなイメージ。私の世代は、紙で育ってきたので、紙の手触りやインクのにおいを今でも覚えているんです。WEBのような利便性がありながら、インクのにおいがする、そんな媒体のかたちが必ずあると思うので、それを見つけたいなって。私、足だけは速いから、とにかく速く走って一番に見つけます(笑)!
H.S:
私も同世代なので、紙がなくなってしまうのは寂しいです。
N.O:
ファッションや生き方を伝える、今の女性誌のようなものがなくなることはないと思いますが、紙は淘汰はされていくと思います。そこは、もしかしたらWEBで補完できるものかもしれないし、何か新しいかたちがあるのかもしれない。それを早く見つけるね!

赤リップ、オイル、フエギアの香水が美容の三種の神器

H.S:
私、美容に関しては本当に最低限のことしかしていないんです。が、どんなに遅く帰っても、毎日パックだけは欠かさずにしています。大草さんは、いつお会いしても元気でヘルシーな印象があるのですが、どんなことに気を使っていらっしゃるのですか?
N.O:
今日お持ちしたものが、今の私の中での三種の神器。赤リップは気持ちのスイッチを入れるもの。家にいると、子どもがいたりもするから、わさわさっとしていますが、出かけるときは赤リップをひいて、気持ちのスイッチを入れ替えます。 それからオイル。無人島に一つだけ持っていくとしたら?の私の答えにもなっています(笑)。40を過ぎたら、とにかくオイルを多用することを真剣にオススメします! 特にこの<Jurlique(ジュリーク)>のオイルを使うようになってからは、ヘアメイクさんに肌質が変わったと褒められることが多いの。肌だけでなく、毛先につけたり、マッサージをするときに使ったりもします。
H.S:
確かに、私もオイルは、たくさん使うようになったかも。髪にもつけますし、メイクをするときもオイルの艶がベースにあると、仕上がりが全然違う!
N.O:
香水は<FUEGUIA(フエギア)>のハカランダという香り。<FUEGUIA>には、ロールオンタイプのフレグランスオイルもあって、そちらは30cm近づいた人にしか香らないというコンセプトで作られているの。so closeな人にしか香らない、そんなコンセプトが気に入って使い始めました。<FUEGUIA>の創始者であり、ディレクターであり、調香師でもあるジュリアン・ベデルが、すべての原料を自分でとってきていて、香料が一切入っていないフエギアの香水は、私の香りの概念を変えてくれました。五感の奥深いところに効いてくる香りなんです。ハカランダは、ギターを弾いているときに木が温まってくると立ちのぼる香りをイメージしていて、サルサを踊りにいくと、必ず良い香りだと褒められるんですよ(笑)
H.S:
そう、大草さんはサルサを踊られるんですよね! 私も、運動不足を感じて、ジムに行ったり、ヨガに通ったり、ジョギングをしてみたりと色々試したんですが、最終的に水泳に落ち着きました。全身運動になるだけでなく、水の中で無になれる感じが好きで。まとまった休みがとれると、宮古島に行って、朝から夕方まで海に浮かんでいるほど、水が好きなんです。大草さんは休みが取れたらどんな風に過ごしたいですか?
N.O:
しばらく、まとまったお休みはとれなさそうなんだけれど(涙)。次の日、丸一日何も予定がないときは、サルサを踊りに行くかな! カラオケとか、アウトドアとか、海で泳ぐとか、人それぞれの、気持ちのリリース方法があると思うけれど、私は踊ること。ライフワークと言ってもいいくらい。踊るときにしか着ない服に、赤い口紅とハカランダをつけて、とことん踊り尽くします!
Okusa Naoko
Naoko Okusa
(Stylist)

大草直子/1972年生まれ。東京都出身。大学卒業後、現・ハースト婦人画報社へ入社。雑誌の編集に携わった後、独立。ファッション誌、新聞、カタログを中心にスタイリングをこなすかたわら、イベント出演や執筆業にも精力的に取り組む。
近著『大草直子の「これいいっ!」』ほか、インスタグラム(@naokookusa)も人気。
現在はWEB マガジン「mi-mollet(ミモレ)」http://mi-mollet.com/の編集長。

Okusa Naoko
Harumi Sugimoto
(Women's Dress Chief Director)

杉本春美/1975年生まれ。愛知県出身。大学在学中3年間、ビームス名古屋店にてアルバイト。1999年都内直営店の販売スタッフとして入社し上京。ビームスジャパン、ビームスタイム、そしてオープニングから7年間インターナショナルギャラリー ビームス ウィメンズにて販売スタッフとしてキャリアを積む。2012 年 より インターナショナルギャ ラリー ビームスのウィメンズ バイヤー兼ディレクターに 着任し、現在は ウィメンズドレス部門を統括するディレクター。

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BEAMSにまつわるモノ・ヒト・コトをあらゆる目線から切り取り、
ヒトとヒトとのお話から”今気になるアレやコレ”を
紐解いていく連載企画 【TALK】。

洋服のデザイナーからバイヤー、フォトグラファーやモデルなどなど。
様々な職種のプロフェッショナルから
”今気になるアレやコレ”を伺います。

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