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24
Daiki Suzuki
ENGINEERED GARMENTS Designer
#BIKE #AMERICA
Oct. 4. 2018
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Oct. 4. 2018 / #BIKE #AMERICA

24 Daiki Suzuki
ENGINEERED GARMENTS Designer

& &Takashi Izumi(Pilgrim Surf+Supply Director) Photography:BEAMS Interview&Text : Yumiko Sakuma 日本の「Pilgrim Surf+Supply」でも2015年の立ち上げ当初より取り扱いがあるニューヨークのブランド<ENGINEERED GARMENTS(エンジニアド ガーメンツ)>。毎シーズンテーマを設けたカプセルコレクションを展開しており、<Pilgrim Surf+Supply>の日本のディレクターを務める泉貴之が尊敬するデザイナー 鈴木大器さんのブランドだ。今回はニューヨークオフィスを移転したばかりの鈴木さんと、今お互いが気になっているバイクカルチャーについて。10月1日にローンチした<Manhattan Portage(マンハッタン ポーテージ)>との別注バッグについてなどを伺いました。


流行っていた時代

Takashi Izumi(以下、T.I):
本国の「Pilgrim Surf+Supply」では取り扱っていない<ENGINEERED GARMENTS>ですけど、昔からファンで、どうしてもやりたくて今、日本では色々やらせてもらっています。僕は22歳で単身でアメリカに渡って、古着買って、学校行って勉強して、作ったTシャツをBEAMSに買ってもらえるようになって今があるんです。その頃、行くところ行くところで必ず大器さんの名前を聞いていて。サンフランシスコでも聞きました。
Daiki Suzuki(以下、D.S) :
ああ、住んでいたからね。
T.I:
その時って自転車乗っていました?
D.S:
すごい昔は乗っていたね。中学生の頃。今のことは、どれくらい進化しているのかまったく知らないけど、ツールドフランスでエディ・メルクスが一番活躍していた時期だね。今に比べるて自転車好きな人が少なかった時代。ドーピングで結局だめになったランス・アームストロングが登場するまではエディさんが素晴らしかった。

当時、メインはサイクリングなんだよね、当時はどちらかと言うと、バッグいっぱい付けて日本一周とかするタイプのスタイルが流行っていた時代。俺も高校入ってから北海道半分だけまわったりしたことあるんだよ。全部はまわれなかった。半分も行ってないかもね。道東だけ行った感じかな。
T.I:
ランドナーですか?
D.S:
ランドナーだけど、一応荷物に寝袋とか詰めて持ってどっちかと言うとツーリング状態。ハンドルはランドナーバーで、フレームもストレート・ドロップエンドというやつ。タイヤはワイヤーがかなり太いやつだった。もう名前も出てこないけど、本当に好きだったからね。一時期は自転車屋でバイトするくらい。安い自転車しか持ってなかったけれどバイトしながら、ちょっとずつ良い部品を買って、でも何年かすると全部変わっていたりして。フレームまで変えたね。最初はフレームも良いの買えなくて、普通の鉄みたいなやつだったけど、だんだんなんかパーツが揃ってくると、合わなくなってくるからさ。最終的にクロモリっていう、当時の良いやつ。
T.I:
クロモリ・フレームですね。
D.S:
クロモリフレームの一番安いものね。それも全部通販だったからな。当時は地元の自転車屋でもクロモリ素材のフレームだけは売ってなかった、当時は。今はたぶんあると思うけれどね。ちょうどかぶれかけの頃で、ジーパンとかTシャツとか、アメリカ製のものとか、はまり始めていた。でも自転車はヨーロッパなんだよね。イタリア、フランスだよね。舶来だったら何でもいいと思ってた。アメリカメインだったけど、基本的にヨーロッパのものも全然オッケー。そういう時代だったから。自転車やりながら、洋服もすごい買っていて。東京出て来たときにも、自転車持って来たからね。最初ランドナーに行って、ツーリングスタイルにはまっていたんだけど、途中でころっと変わるんだよ。急にロードレーサーになっちゃう。自転車がもう一台増えて、どっちかと言うとメインになって。当時はチューブラーっていうタイヤをリムに接着剤で付けるタイプだったの。パンクすると、基本的になおしている時間がないから、違うタイヤをまたはりつけるんだよね。だから自転車に予備のタイヤをたたんで、サドルの後ろにくっつけていた。変な時代だよね。今はもうないでしょ?
T.I:
あんまり聞かないですね。
D.S:
そうだよね。当時はそれが主流だったよね、ロードレーサー。すごい細い幅のタイヤ。
T.I:
自転車乗らなくなったのはいつですか?
D.S:
東京に出て来て、21か22くらいのときかな。で、うちの弟(鈴木卓爾<ts(s)>デザイナー)が出て来て、一緒に住み始めて。俺は原チャリ乗ってて、自転車はあまり乗っていなかった。そしたらタクジが使い始めて引っ越したときに持ってかれちゃったんだよね(笑)。「大事にしろよ」とか言ったんだけど、盗まれちゃった。すごい一生懸命作って大切していた自転車なんだけど、その時は盗まれたって聞いても、たいして感傷はなかったな。思い入れが薄れていたんだろうね。洋服ばっかりだったからね、仕事も含めて。それが終わりだったよね。

バイク・コレクションをやるなら大器さんにお願いしたい

<ENGINEERED GARMENTS for Pilgrim Surf+Supply>”NY BIKE COLLECTION”のプロトタイプ
T.I:
僕も最近自転車にはまっていて、スタイルが違うんですけど。大器さんが自転車にはまっていた時と、僕が今やっているものと…。
D.S:
どんなタイプのものに乗っているの?
T.I:
嫁の親父さんでが70前なんですけど、ダウンヒルをする人で。
D.S:
へえ、すごいね。
T.I:
結婚前に挨拶した時に、連れて行かれたんですよ。ちょっとダウンヒル行こうって。でもやったらはまっちゃったんです。山道を担いで行くんですけど、それで自転車がおもしろくなった。クラシックなマウンテンバイク、BMXとマウンテンバイクのミックスみたいなやつとか…。でも結局通勤に使うことを考えると、どうしても長続きしないなとおもって、マウンテンっぽいのは残しつつ、ロードも入っていて、毎日乗れるようなタイプに乗っています。ニットウのパーツも使っていますし、フィルウッドっていうアメリカのパーツがあるんですが、それを組んだりとか。
D.S:
ピルグリムでも自転車って売っているの?
T.I:
売ってないんですけど、「BLUE LUG(ブルーラグ)」という幡ヶ谷にある自転車屋とポップアップショップをやって、ワインコイン・メンテナンスをしてもらったり。自転車でいらっしゃるお客様も結構多いんですよ。
D.S:
へえ。
T.I:
なので、自分が自転車に乗っていることもあるんですけど、バイク・コレクションをやりたいな、と。だったら大器さんに頼みたいと思ってお願いしたんですよね。
D.S:
一時期、ピストバイクみたいにエクストリームで、僕には絶対無理ってものばっかりだったから、そういうのじゃなくて安心したよ。こっちの方が親近感が持てるよね。マウンテンバイクとか、シティバイクとか。
T.I:
大器さんの知識すごいですよね。
D.S:
ベースは昔のバイクだったと思うんだよね。それを今風にアレンジして作りたいなと思って。僕が自転車にはまっていたことはあんまり知られてないから、意外だった。最近自転車で乗っていたのはマウンテンバイクでしょ。あとは折りたたみの自転車とか、そんなのだから。アルミのフレームとかは気になっているけど。

だから自分で作るしかないなって。それが一番のきっかけ

T.I:
話が変わるんですけど、大器さんって卸しとか買い付けとか、早くからやってますよね?
D.S:
当時、洋服の世界では自分たちから誰かアメリカに駐在にだしてビジネスをやろうっていうところは少なかった。自分たちから先兵隊としてきて。とりあえずできることから始めて、アウトレットの買い付けだとか、古着屋行ったり、そういうのでたまにいいもの見つかったりして。やっているうちにだんだん欲が出てくるんだよね。本当に今と違って、近くなかったから遠い感じだったし、冒険だったんだよね、僕にとって。だから、毎日が面白くて。いま良いところだけ言ったけど、落ち込んだこともあったんだよね。何もできずに帰って来て、飯も食いたくなくて。一人だし、向かいのピザ屋に行って、おいしそうなのを食べたいんだけど、英語ができないから勝手にプレーンのまま焼かれて出されたり。そういうちょっと悲しい思いもしたんだけど(笑)。
T.I:
ある、なんか分かります(笑)。
D.S:
分かるでしょ?こんなはずじゃなかったんだけどなって感じ。一日中寝ているときもあった。家の中に引き込もって。でも黙って寝てられなかったんだよね。どっかで奮起して、やんなきゃ、って。でもわりと簡単なきっかけで、またやる気が出る。単純にコインランドリーに行って、近くのやつと話が盛り上がっただけで、ものすごく自信がついて、明日も頑張ろう!みたいな。そういう単純なことの積み重ねで、やってきた。あれで、メーカーと直接取引したいっていう意識ができたし、それと同時に英語が少しずつできるようになったから。英語も面白いんだよね。半年くらいでスキルが上がって・・・でもそこからずっと変わらない(笑)。
T.I:
僕らもたとえばインディアン・ジュエリーは、昔は質屋で買っていて「このままだ広がりもないし、伝えられないよね」って。実際にアーティストと会って、俺らのやりたいものを伝えてやっていこうよ、ってショーに顔を出すようになって。当時はインディアン・マーケットもまだ誰も行っていなかったから。会って話して、盛り上がって「じゃあうち来いよ」みたいな感じになって、飯出されて、どんどんつながって行って。それがやっぱ、すごい面白いですよね。つながるとタイミングってこういうことなんだなあ、って。そこはすごい共感できます。ちなみにアメリカで服を作るっていうのは、もう何年目なんですか?
D.S:
ブランドを始めるちょっと前から、ジーパンだけとかやっていたんだけど。ブランドにしたのは99年くらいからだね。当時は、アメリカのクラシックスタイルみたいなものをやっている人が異常に少なくて、アメリカの若い人たちもみんなヨーロッパを向いていて、モードか、パンクか。俺らが好きなアメリカン・スタイルは、ほとんどいなくて。ちょっと近いなと思ったら、みんなだいたい道路工事の人たちだったりするんだよね。ネルシャツに短パン着ていたり。何しろ90年代、マンハッタンに<FILSON>を売っている店が一軒もなかったんだよ。それが、2000年代にアップランド・トレーディングっていう店がイーストビレッジにできた。それくらい、ああいうアメリカの昔からあるものが認められていなかったっていうか。普通に流通していなかったの。
D.S:
僕らは日本から来ているから、そういうの好きだし、よく分かっていたから、そういうのをやったらいいなって思ったんだけど、本当のところは、腹が立っていたんだよね。当時の流行っている洋服が、あまりにも細くて黒くて、靴がとんがっていて、襟が光っていたから。俺は着れないし、着れる洋服がないし、売りたいものがなくて。

だから自分で作るしかないなって。それが一番のきっかけだね。ジョン・バートレットってやつと当時仲良くしていて、しょっちゅう暇で、時間あればアトリエに行ってたから、ニューヨークの服の作り方が面白いのは知っていたんだよ。ちょうど展示会とかで、いろんなメーカーが出ていて、だから工場ももちろん知っていて、いろんなことが広がって行った。やろうと思ったときに、結構できるソースは全部あったんだよね。

”自転車”という共通点をカタチに

Manhattan Portage × ENGINEERED GARMENTS for Pilgrim Surf+Supply
「Transit Tote Backpack」のプロトタイプ
T.I:
今回、僕らと大器さんの共通点だったら自転車かなーと思って、じゃあバック、なら<Manhattan Portage>でっていう流れでやらせていただくことになったんですけど。
D.S:
90年代に、<Manhattan Portage>にうちのオリジナルブランドでディスパッチャーっていうレーベルを作ってもらったことがあるんだよね。昔はシックスアベニューにバックの工場街があって、そこで作ってたはずだけど、今は台湾製。でも今回、お題をもらって、改めて<Manhattan Portage>を勉強した。いろいろ調べて、サンプルもいっぱい買ったんだよね。で、見てみたんだよ、台湾製のもの。すばらしいよね。作りも、デザインもすばらしい!付属もすばらしい!だからちょっとびっくりした。やっぱりああいうのは専門でやっていると、全然違うのね。やっぱり洋服屋が考えるアイディア。だから今回、わりとざっくりモックアップを作ったつもりなんだよ。なんでかと言うと、ここから踏み込んで行くと、分からないことがある。逆に餅屋に作ってもらった方が、絶対に良いものができると思う。だから大枠だけやって、あとは全部あっちにやってもらったほうがいいな、って。いや、本当にびっくりした。<Manhattan Portage>がこんなに進化していたって思わなかったから。他のも見て来たんだけど、みんなそうだった(笑)。俺がね、やっぱバックとか買ったり作っていたりしていたのって、90年代のほとんど頭、真ん中くらいだよ。あの頃と全然変わってた(笑)。良い勉強になりましたよ。
T.I:
そういっていただいてありがたいです。
Manhattan Portage × ENGINEERED GARMENTS for Pilgrim Surf+Supply
「Transit Tote Backpack」


<ENGINEERED GARMENTS>と共同でスペシャルアイテムを提案する「NY BIKE COLLECTION」。今回<ENGINEERED GARMENTS>としても初となる<Manhattan Portage>とのチームアップにより、今のNYのバイカーをイメージしたバッグ、"Transit Tote Backpack" が実現 ¥27,000(+tax)

アイテムの詳細はこちら
https://pilgrimsurfsupply.jp/news/2018/09/26180000.php



BUY ONLINE

Okusa Naoko
Daiki Suzuki
(ENGINEERED GARMENTS Designer)

鈴木大器/1989年にネペンテスのバイヤーとして渡米。1999年にエンジニアード・ガーメンツを立ち上げ、2004年にはピッティ・ウォモに出展して海外への販路を広げる。2008年にはGQ誌と米国ファッション協議会による「ベスト・ニューメンズウェアデザイナー・イン・アメリカ」に選ばれた。
ENGINEERED GARMENTS OFFICIAL SITE:http://www.engineeredgarments.com/

Okusa Naoko
Takashi Izumi
(Pilgrim Surf+Supply Director)

泉貴之/1977年生まれ。茨城県出身。22歳の時に単身渡米。大学卒業後、商社勤務を経て2008年帰国。翌年にBEAMSに入社し、海外ブランド担当に。2015年よりのディレクターに就任。http://pilgrimsurfsupply.jp/
Pilgrim Surf+Supply OFFICIAL SITE:
INSTAGRAM:https://www.instagram.com/tks77izm/

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BEAMSにまつわるモノ・ヒト・コトをあらゆる目線から切り取り、
ヒトとヒトとのお話から”今気になるアレやコレ”を
紐解いていく連載企画 【TALK】。

洋服のデザイナーからバイヤー、フォトグラファーやモデルなどなど。
様々な職種のプロフェッショナルから
”今気になるアレやコレ”を伺います。

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