Sep. 4. 2019 / #FOOTBALL #STVV
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DANIEL SCHMIDT
Sint-Truidense V.V. GK
& Hiroshi Doiji(BEAMS Communication Director)
Photography & Text:BEAMS
シント=トロイデンVVをご存知ですか? ベルギーのサッカー1部リーグである「ジュピラー・プロ・リーグ」に属するチームのことで、複数の日本人選手も所属しているため、サッカー好きでなくともこの名前を耳にしたことがある人は少なくないでしょう。今回は、そんなシント=トロイデンVVに新加入した日本代表GKのシュミット・ダニエル氏と、今季シント=トロイデンVVのセカンドユニフォームをデザインしたBEAMSを代表しコミュニケーションディレクターである土井地博によるスペシャルトークです。海外移籍への思いから、BEAMSがデザインしたユニフォームの印象、そして大学時代にハマっていたことまで、シュミット氏の様々な本音をお聞きしました。
※この対談は2019年6月に行われたものです。
※この対談は2019年6月に行われたものです。
海外を意識し始めたのは、試合に出始めたプロ2年目から
- Hiroshi Doiji(以下、H.D):
- まずシント=トロイデンVVへの移籍されるわけですが、元々海外への憧れなどはあったんですか?
- DANIEL SCHMIDT(以下、S.D)
- そうですね。キーパーとして成長するためには海外でプレーするのが良いと以前から思っていました。
- H.D:
- 本格的に海外移籍を考えるようになったのはいつ頃ですか?
- S.D:
- プロ2年目ですね。1年目はプロの選手として周りについていくのが背一杯だったので、海外の「か」の字も出てきませんでした。で、2年目になって、ようやく試合に出られるようになり、ちょっとずつですがプロとして自信がつき始めたというのが、最初のきっかけです。当時はレンタル移籍でロアッソ熊本に所属していたんですが、ロアッソのキーパーコーチと意見交換をしていくうちに「せっかく恵まれた体格をしているんだから、海外を目指さないわけにはいかないでしょ」と言われ、徐々に海外への憧れが強くなっていきました。
- H.D:
- シュミットさんは大学時代から川崎フロンターレの特別指定選手だったと思うんですが、それでもやはりプロ1年目というのは大学時代とは比べものにならないほどの違いだったんですか?
- S.D:
- プロはプレースピードがとにかく早いです。特に、判断の速さ、シュートの速さが全く違いましたね。
- H.D:
- 海外移籍を気にし始めた頃、意中のチームやリーグはあったんですか?
- S.D:
- ドイツのサッカーリーグであるブンデスリーガですね。昔から色々なゴールキーパーの動画を観るのが好きなんですが、その中でもよく観ていたのが、マヌエル・ノイアー選手(バイエルン・ミュンヘン所属)でした。彼以外にもドイツのキーパーの動画はチェックしていたんですが、なぜかみんなタイプが似ていたんです。それがきっかけで、ドイツのキーパーの育成の理論が気になり始めたんです。みんなスタイルが似てるから。各国のサッカー協会には、キーパーだけでなく各ポジションによって、練習方法って決まっているらしいんです。そこで、僕もドイツでキーパー理論を学んでみたいと思うようになりました。
初めての海外移籍にはベストのチームだと思っています
- H.D:
- 移籍先であるシント=トロイデンVVにはどんな印象をお持ちでしたか?
- S.D:
- 良い印象を持っていたので、オファーをいただいた時はとても嬉しかったです。日本人選手も多いですし、日本人選手を受け入れる体制もしっかりしていますし、最初のヨーロッパ移籍チームとしてはベストだと思っています。
- H.D:
- 海外で活躍されている日本人選手などに、シント=トロイデンVVへの移籍の相談などはされたんですか?
- S.D:
- 昨シーズンまでシント=トロイデンVVに在籍していたトミ(冨安健洋)とは日本代表で一緒だったということもあり、色々聞きました。ただ、真面目な相談という感じではなく「どんな感じなの?」という軽い感じでしたが。実はまだベルギーに行ったことがないんです。ベルギーのイメージを聞かれても小便小僧くらいしかなくて(笑)。
- H.D:
- ブリュッセルにある放尿する少年を模した彫像のことですね(笑)。 ベルギーはFIFAランキングが1位ですし、レベルは高いでしょうね。
- S.D:
- レアル・マドリードに所属しているティボ・クルトゥワ選手はベルギー代表だし、体型も自分と結構似ていると思っているので、いいモデルが何人もいるんだろうなぁと思っています。そういえばシント=トロイデンVVのセカンドユニフォームをBEAMSさんがデザインされるんですよね?
BEAMSには中学の頃から通ってました (笑)
- H.D:
- はい。9月から始まる新シーズンのセカンドユニフォームをうちのデザイン部署である<Uniform Circus BEAMS(ユニフォーム サーカス ビームス)>が、担当させていただきました。プレーヤーはブラックにゴールドのライン、シュミットさんも着られる予定のゴールキーパー用はレッドにゴールドのラインになっています。まだサンプルなんですが今回ご用意しました。このデザインは、いかがですか?
- S.D:
- このユニフォームを見たのは今日が初めてなんですが、とてもいいですね。ユニフォームにスポンサー企業名の漢字やBEAMSさんの名前が入っていたりとベルギーの他のチームとは違ったデザインですし、日本という国をアピールするチャンスだと思っています。もちろん、自分自身のアピールとしても。BEAMSさんって洋服屋さんのイメージが強いですが、スポーツに関わるプロジェクトも色々されているんですね。
- H.D:
- はい。BEAMSでは、以前からいろんなスポーツ支援をさせていただいてて、サッカーでいえば、なでしこジャパンの移動用ウエアもうちがデザインしていたり、他にもJリーグや JFLのグッズも作らせていただいたりしています。またサッカー以外ですと、eスポーツ(エレクトリック・スポーツの略)の日本代表のユニフォームもBEAMSで手がけています。過去には東京ヤクルトスワローズのユニフォームもデザインしていたりと、洋服以外のウエアデザインも積極的に取り組んでいるのはBEAMSならではの特徴かもしれませんね。なので、今回お話をいただいた時は、非常に光栄でしたし、何より縁深いなぁと思いました。シュミットさんは、BEAMSのことはご存知でしたか?
- S.D:
- もちろんです。中学校の頃から通わせていただいていて、昔ニットを買ったこともあります。ただ、ご覧の通り身長が高いのでサイズが限られてしまい、徐々に足が遠のいてしまいました(笑)。ただ、今日着させていただいているシャツはBEAMSさんのオリジナルですけど「着られるサイズがあるじゃん」とわかったので、ベルギーへ行く前にお店に伺わせていただこうと思ってます(笑)。
- H.D:
- 最近は大きいサイズも展開しているので、シュミットさんのような大きな方も多数ご来店いただいています。最近は日本国内だけでなく、海外での卸なども積極的にさせていただいていて、先日もパリでイベントに参加させていただき、徐々にではありますがBEAMSという名前が認知されていますね。
不安よりも、今は楽しみしかない
- S.D:
- ヨーロッパに出店される予定はないんですか?
- H.D:
- 出店の予定は今のところ…ない、ですかね(笑)。オフィスはパリやロンドンにありますし、ポップアップストアなどのイベントは、いろいろな都市でさせてただくことはあるんですが、将来の展望として実店舗の実現もできたらと思っています。もちろんヨーロッパはファッションの中心になりますが、ベルギーでいうとやはりアントワープですよね。アントワープ王立芸術アカデミー出身のダーク・ビッケンバーグやドリス・ヴァン・ノッテンなど6人による「アントワープ・シックス」やマルタン・マルジェラといった、世界に名だたるデザイナーを輩出しており、洋服の聖地としても有名な都市ですよね。そんなベルギーとファッションとはまた違った形で、ベルギーという国とつながりができてとても嬉しいです。
あとベルギーといえば、「トゥモローランド」というEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)のイベントも有名ですよね。ボームという小さな町で毎年7月に開催されているイベントで、毎年20万人もの人が世界中から集まっていて、すごい盛り上がっています。そういったカルチャー的な一面でもベルギーは注目を集めていますね。
- S.D:
- 「トゥモローランド」は僕も知ってます! 音楽が好きなので、大学時代はDJのコントローラーを買って、寮でずっとやっていました(笑)。その頃は「トゥモローランド」のオフィシャルムービーをずっと観てましたね。僕自身は、まだベルギーへ行ったことがないんですが、土井地さんは行かれたことがありますか?
- H.D:
- はい、先日のヨーロッパ出張の時に、シント=トロイデンを訪れました。人口4万人という小さな町なんですが、サッカーがとても根づいているという印象がありました。歴史ある古い街ですが、街自体がサッカーを中心に生活圏ができているような感じもしましたね。至る所に1部に上がった時のポスターが貼ってあったり、とにかく熱狂的なファンが多いんだろうなぁと思いました。訪れた時はシーズンオフだったんですが、グッズショップは大盛況でした。あとは僕らのようなアジア人が珍しかったのか、色々な人に「サッカーのことで来てるのか?」って聞かれたりもしましたし、とてもフレンドリーな印象でした。間違いなくシュミットさんもみんなから歓迎されると思います。まだチームと合流する前ですが、不安と楽しみ、どちらの方が強いですか?
- S.D:
- 今は楽しみでしかないですね。シント=トロイデンVVで自分自身を成長させ、シュミット・ダニエルという名前を世界の人々に知ってもらえるように頑張ります。オランダ語もフランス語もまったく話せないけど、まぁどうにかなるでしょって思っています(笑)。
Daniel Schmidt
(STVV GK)シュミット・ダニエル/1992年生まれ。アメリカ合衆国イリノイ州出身。東北学院高校卒業後、中央大学に入学し、在学時より川崎フロンターレに特別指定選手として登録される。2014年にベガルタ仙台へ入団。その後、ロアッソ熊本、松本山雅、ベガルタ仙台を経て、2019年の7月、ベルギーのトップリーグであるジュピラー・プロ・リーグのシント=トロイデンVVへ完全移籍。日本代表にも召集され、次世代のGKとして今最も注目を集めている。
INSTAGRAM:@danstagram_01Hiroshi Doiji
(BEAMS Communication Director)土井地 博/1977年生まれ。大阪のショップスタッフを経て、メンズPR担当として上京。PR業務を行いつつBEAMSが実施する各コラボレーション事業やイベントの窓口として担当。洋服だけではなく周年事業やFUJI ROCK FESTIVALをはじめとした音楽やアートイベント等を手掛ける中心人物として長年業務を行っている。現在はBEAMS グループ全体の宣伝・販促を統括するディレクターでもあり、社内外における「BEAMSの何でも屋さん」というネーミングを持つ仕掛人。
INSTAGRAM:@hiroshi_doiji