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Manabu Shintani
『週刊文春』Publisher
#FASHION #SCANDAL
Nov. 14. 2019
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Nov. 14. 2019 / #FASHION #SCANDAL

31 Manabu Shintani
『週刊文春』Publisher

& Toshihiro Yasutake (BEAMS Press) Photography & Text:BEAMS 発売されるやいなや、ファッション界のみならず、芸能界、スポーツ界、さらには政界(?)などあらゆる方面で話題となったムック「週刊文春が迫る、BEAMSの世界。」。既存のファッション雑誌にはない、唯一無二のアプローチによってBEAMSの魅力に迫ったこの一冊を舵取りしたのは『週刊文春』の編集局長、新谷学氏。学生時代にはアパレルブランドでバイトをしていたという大のファッション好きである氏が、この1冊に込めた思いとは?ムック発刊の経緯から、誌面を賑やかせた人々へのモデルオファー、そしてファッションへの思いなど、『週刊文春』の誌面では知ることのできない新谷学という男の本音を、BEAMSプレスの安武俊宏がスクープしました。

BEAMSとなら、最高の化学反応が起きると確信しました。

Toshihiro Yasutake(以下、T.Y):
今回のムックは、BEAMSとのコラボレーションで生まれた1冊ですが、そもそもどのような経緯で作ることになったのでしょうか?
Manabu Shintani(以下、M.S)
うちの会社(株式会社文藝春秋)にはメディア事業局というクライアントさんから広告をいただく部署があるんですけど、そこの小川(直美さん)という女性が以前から「ファッションクライアントと組んで、丸ごと一冊作ってみたい!」と言っていたんです。で、そういうことを1番面白がってくれるアパレルはBEAMSしかないと。で、いろんなルートを辿り(笑)、今年の1月、設楽社長にプレゼンテーションをさせていただきました。
T.Y:
その企画書に書かれていた “FASHION IS SCANDAL” という言葉を設楽がとても気に入ったんですよね。
M.S:
そうですね。「ファッションってもっとエキサイティングなものだと思うし、本来は単なる日常着ではなく、非日常のギラギラした刺激的なものなんだよ」とおっしゃっていました。それってまさに僕らが作っているものと相通ずるものがあるなぁと思ったんです。なので、ご一緒させていただけたら、今までにないものが作れると思ったし、最高の化学反応が起こるとその時に確信しました。
T.Y:
確かにそうですよね。この企画自体はいつ頃から考えられていたんですか?
M.S:
このムックのアイデアを出した小川はかなり以前から考えていたようです。ただ、現実味を帯びてきたのは、昨年末くらいですかね。僕自身、昨年の夏に編集長から編集局長になり、以前より動ける立場になったんです。間違いなく編集長のままだったら、このムックは作れていなかったと思うので、神の采配だったかもしれません(笑)。

なぜ『週刊文春』を賑やかした方々へモデルオファーを?

T.Y:
今回新谷さんにはほとんどの撮影に立ち会っていただきましたが、そもそも編集長自らがほぼ全ての撮影に立ち会うことってファッション誌ではないので、ちょっと驚きました(笑)。今回のムックではファッションページにモデルを起用せず、『週刊文春』ならではの方々にご登場いただきましたが、これには何か理由があったのでしょうか?
M.S:
我々がファッション誌と同じことをやっても面白くないっていうこともあったんですが、何よりも人と服との関係性にこだわりたかったんです。服って着る人によって見え方が違ってくると思うので、よりリアルなスタイルを表現したかったんです。
T.Y:
そこで、これまで『週刊文春』を賑やかせてきた方々に撮影のオファーをされたんですね?
M.S:
はい。『週刊文春』の方針として、スクープやスキャンダルで取り上げた人に対して、決してやっつけてやろうとか人生をめちゃくちゃにしてやろうとは一切思っていないんですね。敵や味方で考えたことはありません。人には色々な一面があって、美しい一面もありつつ、醜かったり、愚かだったり、浅ましい顔もあるんです。そんななかなか報じられない部分に光をあてるのが我々の役目だと思っています。そういった考えもあり、今回色々な方々にモデルのオファーをさせていただきました。今回初めて川谷絵音さんとお会いし名刺交換をさせてもらったんですが、僕の名刺をしみじみと見て「まさかこの名刺をもらう日が来るとか思ってもいなかった」と(笑)。

僕らが単なる活字媒体ではないということをアピールしたかった。

T.Y:
むしろご登場されることでみなさんプラスになりましたよね。他の媒体ではできない『週刊文春』さんならではのファッションページに仕上げていただき、とても嬉しかったです。モデルさんだけでなく、スタッフの方々も豪華でしたよね。
M.S:
そうですね。『週刊文春』って活字媒体というイメージが強いからこそ、ビジュアルもいけるんだよっていうことをアピールしたかったんです。もうなくなってしまったんですが、以前『マルコポーロ』っていう雑誌を作っていて、僕はファッションと表紙の担当をしていました。今回お仕事させていただいた山本康一郎さんとはその時に「レニングラード・カウボーイズ」というフィンランドのバンドのスタイリングをお願いしたんですが、全員<COMME des GARCONS(コム・デ・ギャルソン)>を着せたりして、とても貴重な経験をさせてもらいました。その頃に出会った人たちと今回仕事できたことは本当に嬉しかったですね。
T.Y:
山本康一郎さんがやられている<スタイリスト私物>で発売された文藝春秋のスウェットシャツも新谷さんと一緒に作られたんですか?
M.S:
あれはですね、以前から康一郎さんが文藝春秋の「文」というフォントを気に入ってくださってたんです。「あの文ってフォントいいよね」って。で、今回打ち合わせで康一郎さんが編集部へいらっしゃった時に「新谷、ファッションの世界におかえり!」と言いながら袋を渡してくれたんです。その中に入っていたのが、あの文と書かれたスウェットシャツでした。わざわざ作られたんですか?って聞いたら「これを<スタイスト私物>で作りたいんだよ!」と。もちろん作りましょう!となり、コラボレーションが実現しました。文というフォントを気に入ってくれてたことも嬉しいんですが、ファッション界の住人でもない僕のことを暖かく迎え入れてくれたことが、何よりも嬉しかったです。いつか康一郎さんと一緒に<編集長私物>を作れたら、と密かに思っています(笑)。

タレント集団のBEAMS。その筆頭は間違いなく設楽社長ですね(笑)。

T.Y:
確かにファッション界の住人ではないかもしれませんが、ファッション界の住人よりも間違いなくお洒落ですよね(笑)。新谷さんと初めてお会いした時「この人、本当に『週刊文春』の編集長なの?」って思いましたから(笑)そんな新谷さんにとってBEAMSってどんなイメージですか?
M.S:
僕の中では、ファッションの原点の一つですね。学生時代にバイトをしていた<BROOKS BROTHERS(ブルックスブラザーズ)>もかなり重要な先生でしたが、BEAMSも間違いなく色々な勉強を教えてくれている先生です。学生時代からコレクションしているフレラコ(フランス製<LACOSTE(ラコステ)>)のポロシャツや<NEW BALANCE(ニューバランス)>のスニーカーを初めて買ったのはBEAMSでした。アメリカの良さを教えてくれたことは間違いないんですが、他社との違いはセレクトのセンスですよね。コスプレのようなアメリカンカジュアルではなく、しっかりとBEAMSのフィルターを通したスタイルをいつの時代も提案されていて、唯一無二のセンスがありますよね。今日着ている<LARDINI(ラルディーニ)>のスーツもBEAMSで買わせてもらいましたが、BEAMSならではの今日的フィルターを通ってますよね。気に入ってかなりの頻度で着ています(笑)。あとファッションとしてではなく、会社的にも素晴らしいと思いました。
M.S:
みなさんお洒落ですが、間違いないのはやはり中村(達也・ビームス クリエティブディレクター)さんですよね。実際にお会いして思ったのは、ここまでストイックにはできないなぁと(笑)。例えるなら、小津安二郎の映画のような方でした(笑)。僕の場合、あえて予定調和を壊すことも好きなので、そういう意味では、西口(修平・ビームスF ディレクター)さんとは趣味的に一番合う気がしました。紺ブレや軍パンといった僕が昔から好きなアイテムを今日的に着こなしているところが好きですね。僕とは年代は違いますが、あの方とはセンスが似ているかもしれません。なんて、偉そうなことを言ってすみません(笑)。安武さんは普段ファッション誌の方々とお仕事をされていますが、今回のムックに携わられてどう思いましたか?
T.Y:
とにかく初めてのことが多く、色々とインプットさせていただきました。ファッション誌におけるファッション撮影の場合、BEAMSの洋服が正しく見えているのかが最も重要なポイントだと思うんですが、今回は正直なところ正解が見えずにやっていました。前例のないことでしたので。結果的にはとても素晴らしい誌面にしていただいて、とても感動しました。また、先ほど新谷さんがおっしゃられた通り、第一線で活躍されている大御所といわれるスタッフの方々とお仕事ができたことも自分の中ではとても勉強になりました。山本康一郎さんとも初めて特集を作らせていただきましたが、勉強になることが多く、もっとページがあればよかったのにと思いましたね(笑)。

仕事で1番大事なのは、楽しいか楽しくないか。

M.S:
そうですね、今回は第一線の方々にも多数協力していただいたおかげで『週刊文春』の新たな一面をお見せできたと思います。「ファッションもできますよ」っていう。あと嬉しかったのが、そういった第一線の方々がとても楽しそうに仕事をしてくれたことですね。みんなが口を揃えて「楽しかった」と。それはうちの会社の人間も同じでした。今回のムックは、専属の編集部が作ったわけではなく、いろいろな部署にいるBEAMS好きやファッション好きの人間に声をかけて進行したプロジェクトなんです。要は、寄せ集めの精鋭部隊(笑)。なので、それぞれが通常の業務をやりつつ、ムックの仕事をしていたんです。単純に業務が増えただけなんですが、みんなが楽しんで作ってくれました。やっぱり、仕事って労働時間じゃないんですよね。労働時間が長いからブラックというわけでなく、大事なのは楽しいか楽しくないか。それを今回改めて実感することができました。
T.Y:
その通りですね。楽しいといえば、誌面にも様々なさり気ないこだわりが詰まっていて、面白いですよね。
M.S:
はい。ほとんどの人が気づいてないんですけど、画伯(綿谷寛さん)に描いていただいた表紙のイラストって実は設楽社長と橋本マナミさんのコーディネートなんです。そういうさり気ないこだわりは他にも結構あって、設楽社長が登場しているグラビアページにパパラッチがちょっと写ってるんですが、それは『週刊文春』の本物の張り部隊です(笑)。しかもその人間には<BARBOUR(バブアー)>を着せてます。他にも『週刊文春』の主催で、1973年度から87年度まで行われた棋戦の「名将戦」を「文春杯」という名前で復活させたんですが、その「文春杯」の文字もフォントマニアのアートディレクターがわざわざ当時のフォントに似せて作ったり。…あ、あと小林信彦さんにお願いしたコラムの挿絵を小林泰彦さんが描いていただいた、小林兄弟の共演も個人的にはかなり気に入ってます(笑)。
T.Y:
そういう面白さもこのムックならではですよね。そもそもなんですが、これまでファッション誌を作りたいと思ったことはないんですか?
M.S:
もちろんファッションは昔から大好きですけど、残念ながらうちの会社にファッション誌がなかったんで(笑)。なので、今回BEAMSと一緒にこのムックを作れたことで、夢がひとつ叶いました。僕の編集人生の中でも、とても思い入れのある一冊になったので、僕の桶の中には間違いなくこのムックが入ってると思います(笑)。
Manabu Shintani
Manabu Shintani
(『週刊文春』Publisher)

新谷学/1964年生まれ、東京都出身。1989年3月早稲田大学政治経済学部卒、同年4月㈱文藝春秋入社。「ナンバー」編集部、「週刊文春」編集部、月刊「文藝春秋」編集部などを経て、2011年ノンフィクション局第一部部長、2012年4月「週刊文春」編集長。6年間にわたり編集長を務めた後、2018年7月「週刊文春」編集局長に就任した。著書に『「週刊文春」編集長の仕事術』(ダイヤモンド社)、『文春砲』週刊文春編集部編(角川新書)
http://shukan.bunshun.jp/

Toshihiro Yasutake
Toshihiro Yasutake
(BEAMS Press)

安武俊宏/1985年生まれ、福岡生まれ札幌育ち。 文化服装学院卒業後、2005年にBEAMS入社。 銀座店や新宿店でのメンズドレスの販売を経て、2012年よりプレスに。 現在はメンズドレスやデザイナーズ、雑貨のPRを中心に、「BEAMS AT HOME」シリーズのディレクション、服飾専門学校での講師などマルチに活躍中。 3度の飯よりおしゃれな洋服や雑貨、インテリアが大好き。
INSTAGRAM: @toshihiro_yasutake

Information.

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BEAMSにまつわるモノ・ヒト・コトをあらゆる目線から切り取り、
ヒトとヒトとのお話から”今気になるアレやコレ”を
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洋服のデザイナーからバイヤー、フォトグラファーやモデルなどなど。
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