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16
Nicholas Daley
NICHOLAS DALEY Designer
#FASHION #LONDON
Nov. 22. 2016
about
Nov. 22. 2016 / #FASHION #LONDON

16 Nicholas Daley NICHOLAS DALEY Designer

&Yuji Yamazaki (International Gallery BEAMS Director) Photography & Interview : BEAMS
Text : Ryosuke Numano
ジャマイカとスコットランドにルーツを持つデザイナーNicholas Daley(ニコラス・デイリー)氏が手がけるブランド<NICHOLAS DALEY>。セントラル・セント・マーチンズの卒業コレクションを見た<インターナショナルギャラリー ビームス>ディレクターの山崎勇次が気に入り、バイイングしたことから両者の関係はスタート。現在も特別なパートナーとして認め合う二人のスペシャルトークをお届け。イギリスのサブカルチャーを体現するニコラス・デイリー氏、そしてそのコレクションを見続けてきた山崎勇次の声に迫る。

<NICHOLAS DALEY>というブランドをオンリーワンのものにするのかを日々考えています

Yuji Yamazakii (以下、Y.Y) :
ニコラスとBEAMSの付き合いはファーストシーズンから始まりましたよね?
Nicholas Daley (以下、N.D) :
はい。2013年に、セントラル・セント・マーチンズの卒業制作でショーを披露して、それを山崎さんが観てくれたんですよね。それからイーストロンドンのショールームに来てくれたんです。とても昔のように感じますけど、実際にはまだそんなに時間は経ってないんですよね(笑)。
Y.Y
でも2016 Autumn & Winterコレクションでは4シーズン、そして2017 Spring & Summerコレクションでは5シーズン目に突入してブランドも成熟してきていますね。
N.D
ありがとうございます。今はもうその次に動き出しているので、常に止まることなく次へ次へと進んで行っています。
Y.Y
ドン・レッツが参加したのはファーストシーズンとセカンドシーズンですよね?
N.D
はい。セカンドシーズンではより大々的に協力してもらいました。というのも、雑誌『EYESCREAM』のバックカバーを<NICHOLAS DALEY>を着たドン・レッツが登場し、BEAMSの店頭でもそのイメージを使ってインスタレーションしてもらいました。あれはBEAMSのサポートがなかったら実現しなかったことなのでとても感謝しています。
Y.Y
ドン・レッツという人はどういう存在ですか?
N.D
今回一緒に来日しようかという話もしていたのですが、残念ながら実現はしませんでした。彼は何度も日本に来ているのでファンが多いと思います。ドン・レッツもモデルに選ばれた、"ルードボーイ"スタイルを紹介する写真展『Return of the Rudeboy』がイギリスでも日本でも開催され、多くの人から注目されていたタイミングだったので一緒に仕事できたのは嬉しかったですね。あの展示に参加していた人たちとは参考にしている文献が一緒だったりするので、ある種同じ流れの中で台頭してこれたと思います。これは例えですが、同じ木の幹から成長してはいるものの、その先からは枝分かれしていると言いますか、あくまで私は自分のブランドらしさを追求しています。そこからどう一線を画して<NICHOLAS DALEY>というブランドをオンリーワンのものにするのかを日々考えています。
Y.Y
なるほど。そのブランドらしさみたいなものを昨日の勉強会でBEAMSスタッフに色々とレクチャーしてくれましたよね。どういう生地を使っているのか、自身のルーツはどこにあるのか、そういったブランドの背景みたいな話はとても貴重でした。
N.D
こちらこそ貴重な機会を設けていただきありがとうございます。今までEメールなどでやり取りをしてきていますが、実際に対面して顔を合わせてお話するのは大事だなと改めて思いました。私のコレクションを販売してくださっているスタッフや、お客様の意見を聴けたのはとても勉強になりました。BEAMSには長年勤めている方が多くいると聞いています。ロンドンではすぐに転職してしまうことが普通です。長いあいだ一つの企業で働いていたいと思えるのはBEAMSもスタッフをリスペクトしているからこそで、とても素敵な会社なんだなと感じています。今までのコレクションを作ってもらっている工場なども、長く関係を築いていきたいと思っているので、そういう繋がりは大事にしています。今のイギリスは経済的にも難しい状況にあって、新しいブランドに投資するというのは中々ありません。だけどBEAMSは最初のコレクションから今に至るまでずっとサポートしてくれているので、尊敬と感謝の気持ちでいっぱいです。
Y.Y
2016 Autumn & Winterコレクションのコンセプトについて教えてください。
N.D
このコレクションはモーターサイクルカルチャーにフォーカスしています。1970年代の写真でドン・レッツがハーレーに乗っているものがあります。その写真をインスピレーションにしています。チョーズン・フューと呼ばれるアメリカのモーターサイクルグループがありました。彼らはギャングとして活動していたのですが、メンバーが白人、黒人、アジア人、カリビアンなど、様々な人種が混ざっていました。肌の色に関わらず同じ意識を持っていれば仲間になれたんです。レザージャケットを纏うといったモーターサイクルのステレオタイプも無視していて、色々な生地や素材の服を自分たちでアレンジしてユニフォームにしていました。それにとても共感し、自分のコレクションのイメージソースにしました。そしてコレクションのテーマは『KINDREAD』というもので、"KIN"というのは"ファミリー"という意味を持ちます。なのでモデルをすべて友人たちにお願いしました。もちろん"KIN"のファミリーにはBEAMSも含まれます(笑)。
Y.Y
その次のコレクションとなる2017 Spring & Summerはどういうものになりますか?
N.D
生地にフォーカスを当てたコレクションになります。曾祖母がスコットランド人なのですが、コーヒー豆を入れる麻袋をジュートで編んでいました。ダンディーというスコットランドの地域にある工場がコットンワックスの事業を始める前に麻袋を編んでいました。ジュート自体は原料としてインドなどからスコットランドに入ってきていたのですが、そこに着目しました。南アジアとスコットランドの文化が融合した形としての生地をコレクションに取り入れました。アイリッシュリネンや竹といったオーガニックな素材を用い、環境にも配慮しています。もちろんオーセンティックであることに変わりありません。以前のコレクションアイテムと新しいコレクションアイテムをスタイリングで合わせることも出来るようにしていきたいですね。

BEAMSがルックブックの制作をサポートしてくれたことに感謝しています

Y.Y
ルックも、前回まではBEAMSと一緒に作っていましたよね。
N.D
ルックブックの制作をサポートしてくれたことは本当に感謝しています。BEAMSがそういった形でブランドをサポートするのはあまり例がないと聞いて驚いています。私自身、今回が初来日なのですが、それ以前からショップでインスタレーションを行ってくれたことも有難く思っています。日本に住む友達からメッセージが届いたり、反響もすごく大きかったです。それ以降、色々な雑誌から取材が来るようになり、自分としての分岐点だったような気がしています。
Y.Y
やった甲斐がありましたね(笑)。ニコラスにとってロンドンはどういう街ですか?
N.D
私はイギリスの中部にあるレスターと呼ばれる街が出身なのですが、19歳の頃にセント・マーティンズに通うためロンドンへ引っ越しました。これまでに多くの偉大なデザイナーを輩出してきた世界でも有数のファッションスクールで勉強できたことは誇りに思います。なので自身のデザイナーとしてのキャリアを築くためにロンドンはとても重要な場所です。現在も自分が暮らす街ですし、友人もいて、クリエイティブの源です。また様々な人種や文化が入り混じることで新しいサブカルチャーが生まれてきました。スキンヘッズ、パンクス、テディーボーイ、ニューロマンティックといったムーブメントがこの一つの都市ロンドンで巻き起こってきました。だからこそカルチャーとファッションが密接にリンクし、新しい洋服が生まれてくる刺激的な都市だと思います。ただ、家賃はちょっと高いです(笑)。なのでどのデザイナーも中心から離れた場所にスタジオを構えるようになっていきます。私のスタジオのすぐ近くに<CASLEY HAYFORD>のスタジオもあります。今後自分としてもブランドを拡大していきたいとは思っているので、BEAMSが40年やってきた軌跡みたいなものを半分でもいいから見習って頑張りたいと思います。
Y.Y
日本のデザイナーで尊敬している人はいますか?
N.D
日本のデザイナーでは特に山本耀司さんを若い頃から尊敬していました。好きなデザイナーが日本人だったこと、自分のコレクションを日本のバイヤーが買い付けてくれたこと、それを日本人の方が着てくれていること、この偶然に感動しました。2017 Spring & SummerからDOVER STREET MARKET LONDONがコレクションを買い付けてくれたのですが、その時にBEAMSとの取り組みがこれまで続いてきていることが決定打になったと思っています。日本以外のデザイナーだとナイジェル・ケーボンも自分に影響を与えてくれましたが、デザイナーからインスピレーションを受けることはそう多くなく、音楽やアートがインスピレーションを与えてくれますね。イギリスには<KIKO KOSTADINOV>という、私と同世代で仲も良いブランドがあるのですが、彼もファッショントレンドに迎合することなく、自分のアイデンティティをブランドに落とし込んでいます。彼のコレクションも私のコレクションもスティーブン・マンというスタイリストが手がけてくれています。彼は私たちが何をルーツにしているのか、何を目指しているのかをしっかりと理解した上で新しいものを提案してくれるのでとても信頼しています。まずとにかくすぐにチケットを取って日本に行ってこい、と言ってくれたのも彼でしたね(笑)。

自身のデザイナーとしてのキャリアを築くためにロンドンはとても重要な場所

Y.Y
私がニコラスと出会った当時はポンドがとても高く、日本人観光客がロンドンで気軽に洋服を買えるような状況ではありませんでした。また、ロンドン五輪を控えていたこともあり、経済が上向きでしたよね。そんな中で<E.TAUTZ>のパトリック・グラントなどがキーマンとしてテーラリングを中心とした流行を作っていましたが、ニコラスはそことは対極の位置にいるように見えました。勢いに任せてブランドを作っているのかと一瞬思ってしまったのですが、コレクションを見てみるとしっかりとした技術や知識をもとに制作されていることがわかったんです。これは感動と驚きがありましたね。日本だと特にトレンドに迎合するデザイナーが見受けられますけど、イギリス人はそういう風潮はありますか?
N.D
イギリスには昔からのサヴィルロウがあり、今のトレンドがなぜ同居しているのかを考えると、様々な人種が住むことが背景にあると思います。他者を受け入れる土壌があるというか、その人のルーツを尊重します。自分としてもルーツに根ざした服を作りたいと考えていたので、当時テーラリングが流行っていても自分のブランドはこれなんだ!っていうアイデンティティをしっかりと持ってやっていました。デザイナーとしてイギリス人であるということも大事にしたいと思っています。コレクションもこれまで関係を維持してきた工場とこれからも取り組んでいきたいですし、素材にもこだわっていきたい。ファストファッションは中国製で大量生産という方針を取っていますが、私は自身のルーツと環境に適したものづくりをこれからも続けていきたいと思っています。
Nicholas Daley
Nicholas Daley
(NICHOLAS DALEY Designer)

1990年生まれ。2013年にセントラル・セント・マーチンズを卒業し、自身の名を冠したブランド<NICHOLAS DALEY>をスタート。ジャマイカ系イギリス人という出自、幼い頃から様々な文化や音楽に触れサヴィルロウでの職務経験のある彼のコレクションには音楽の匂いやテーラードのディテール、民族的な感覚など様々な要素が漂っている。今や世界が注目する新進気鋭のデザイナー。

OFFCIAL SITE : www.nicholasdaley.net
Yuji Yamazaki
Yuji Yamazaki
(International Gallery BEAMS Director)

1966年生まれ。BEAMS入社後、販売を経験後「International Gallery BEAMS」のメインバイヤーへ就任。2014年春夏シーズンからは総合ディレクターとしてバインングのみならず、ショップのディレクションも手がけている。

About

BEAMSにまつわるモノ・ヒト・コトをあらゆる目線から切り取り、
ヒトとヒトとのお話から”今気になるアレやコレ”を
紐解いていく連載企画 【TALK】。

洋服のデザイナーからバイヤー、フォトグラファーやモデルなどなど。
様々な職種のプロフェッショナルから
”今気になるアレやコレ”を伺います。

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