皆様こんばんは。
ビームス プラス 有楽町の鈴木です。
久しぶりの更新になりますが、今回は担当をさせて頂いております「BEAMS PLUS TAILOR LINE」のお話しです。少々長くなりますが最後までお付き合い下さい。
「BEAMS PLUS TAILOR LINE」に新型の4ボタンのダブルブレステッドのブレザーモデルが加わりました。店頭でも抜群の存在感を発揮しています。構想から1年半以上をかけて、やっと店頭に入荷してきた渾身のモデルです。IVY好きの方には「ニューポートブレザー」の方が聞き馴染みのあるモデル。この言葉はアイビーブーム真っ只中の60年代の日本で生まれた和製英語です。アメリカ東海岸のロードアイランド州ニューポートと言えば、日本史の黒船来航で有名なアメリカ海軍の代将マシュー•ペリーの生まれ故郷や、映画にもなった1958年のジャズフェスティバルを連想してしまいますが、この伝説的なイベントに出演していた有名なジャズマンが着ていた4ボタンモデルをイメージして命名されたのは有名な話しです。素晴らしいワードセンスです。(何度も何度も見直しましたが実は4ボタンでは無いようです…汗。)BEAMS PLUSでは「4ボタンダブルブレステッドモデル」と捻りもなくストレートに呼んでおりますが、いつか「ニューポートブレザー」を越えるセンスの良いモデル名を思い付いたら命名したいと思っています。(笑)
4ボタンのダブルブレステッドモデルは50年代後半〜60年代のアメリカで流行し、替え上衣のカジュアルスタイルの定着と共に市民権を得て普及したモデルです。この時代の衣料ブランドカタログにはシングルブレザーと並び多く見ることができます。通常ダブルブレステッドモデルは6ボタンが一般的ですが、なぜ60年代に4ボタンが普及したのか?そんな疑問が浮かび、様々な資料を読み漁りましたが残念ながら正確な答えは見つけられませんでした。合理的な発想から生まれた仕様なのか…? 2日間考えた末の見解は、60年代の替え上衣スタイル(現在のジャケパンスタイル)の普及に伴い6ボタンではフォーマル過ぎる為、よりカジュアルな視点から4ボタンが好まれたと思います、その理由として当時は週末着と思えるチェック柄やホップサック等のカジュアルな素材の4ボタンスタイルが多く見られ、カジュアル志向と合理的思考が生み出した至高のディテールが4ボタンスタイルなのだと思います。
ここで少し「Blazer」の歴史のおさらいを。
「Blazer」のシングルとダブルでは出自が違います。シングルはご存じのとおり19世紀後半に英国のボートクラブが採用したクラブジャケット(スポーツコート)に端を発します。英国のケンブリッジ大学とオックスフォード大学の対抗レガッタ競技で、ケンブリッジ大学のセント•ジョンズ•カレッジのボート部「レディ•マーガレット•ボート•クラブ」が母校のカレッジカラーである真紅(燃えるような赤=Blazing Red)スポーツコートを着用していた事から広まり、一般用語化されて「Blazer」と呼ぶようになったとされています。
ダブルの原型は更に古く、19世紀中頃に船乗りや水兵達の防寒用として着られていた厚手の上衣「Reefer Jacket」(リーファージャケット)がルーツとされています。デザインの特徴として風向により左右どちらでも上前を変える事が出来る両前仕様とし、両前3つボタン又は4つボタンのゆったりした短上衣で、背に縫い目のない一枚仕立てと浅いサイドスリットが特徴だったようです。「リーファー」とは"帆を巻き取る人"の意味で、甲板で働く水兵が着用した上衣がのちに士官用の制服に発展していきます。「Blazer」語源は英国海軍の軍艦ブレザー号(HMS Blazer)が由来とされており、1837年にJ.W.ワシントン艦長がヴィクトリア女王の観閲を受けた際、乗組員にネイビーブルーの揃いの制服を着用させた事が発端とされています。
改めて振り返るとシングルはアスレチックウェア、ダブルは海軍の防寒着で、出自の違いは明白です。やはり気になるのは「Blazer」というネーミングの偶然の一致。どちらが正しいのか?それとも両方正しいのか?どの資料にも注釈に「諸説あり。」と書かれていますが、シングルとダブルのそれぞれの出自が「Blazer」の語源となっている事に、不思議な感覚を覚えるのは私だけでは無いはずです。
前置きがいつもどおり長くなってしまいました…汗。ここからが本題です。新型モデルのご紹介をさせて頂きます。
構想から1年半…。やっと店頭に入荷してきました。「BEAMS PLUS TAILOR LINE」の製造元である、神戸のテーラー「Jizi」様にご協力を頂きサンプルを重ねてやっと形になったモデルです。

※画像は昨年2月の打ち合わせの一コマ。様々な資料を基に全体のイメージとディテールを擦り合わせているシーンです。左の方はテーラー「Jizi」を主宰されておりモデリストでもある井地様。アメリカ物だけでなくヨーロッパ物も造詣が深く、この業界では重鎮の方です。隣りの方は新人の水田様。英語が堪能で古い海外の資料を読み解く際に、翻訳ソフトでは伝わらないニュアンスを助けて頂きました。右側の方は職人の山根様。無理難題にいつも真摯に応えて頂き、BEAMS PLUS TAILOR LINEのキーパーソンとも言える方です。いつもご迷惑をお掛けしてばかりでスミマセン…汗。
早速、新型の「4ボタンダブルブレステッドブレザー」のディテールを見ていきましょう。拘りのポイントは7つです。
1.ラペル
60年代の特徴でもあるナローラペルを意識しながら、胸元は控えめな印象になるようにセミピークドラペルを採用しております。低めのゴージラインと、首元から胸にかけて自然に沿う造形美とも言える美しいシルエットが魅力です。
2.ナチュラルショルダー
ボールドルックの反動から、50年代以降は身体に沿ったバランスに徐々に変化していきますが、その流れから60年代のアメリカンスタイルはナチュラルショルダーが基本です。BEAMS PLUS TAILOR LINEはパットを廃した芯地のみの仕様ですが、柔らかく自然に肩に沿うショルダーラインが特徴です。
3.ボタンスタンス
4ボタンのスタンスは60年代の時代の変化と共に、正方形のスタンスから徐々に長方形に変化していくのですが、60年代前半頃に多く見られる正方形に違いスタンスを意識しながらクセのない黄金比を導き出し決めています。前身頃の打ち合わせの長さにも影響する為、ミリ単位で最も苦労した箇所です。この4ボタンモデルは、4ボタン2掛けの仕様です。
4.ウェルトシーム
IVY好きには必須ディテールですね。定番の3パッチポケットの1型モデルはステッチが7mm幅ですが、ウェルトポケット&フラップ付きの両玉縁仕様のII型モデルと同じ5mm幅を採用しております。数ミリの違いですが、全体的に精悍な印象になり軍服出自のダブルブレステッドモデルのイメージにピッタリです。
5.サイドベンツ
元々は軍人が帯刀する際に、上衣に干渉せず腰に刀が綺麗に収まるように考案されたディテールです。もちろん帯刀はしませんが、ジャケットを着用する上で動き易さを考慮するととても大切なディテールです。4ボタンのダブルブレステッドモデルにはサイドベンツが基本です。シングルモデルに比べ着丈が短い為、ベンツの長さも若干短く設定しています。
6.メタルボタン
「Blazer」の顔とも言えるメタルボタン。BEAMS PLUSの製品ではお馴染みのウォーターバリー社製の金ボタンを採用しております。ウォーターバリー社は創業200年以上の歴史を誇るアメリカのコネチカット州に本社を構える釦専業メーカーです。アンカーデザインは、海軍出自のダブルブレステッドモデルに相応しいデザインです。
7.生地
使用している生地は、品良い光沢感が魅力のダークネイビーのスーパー120sのウール生地です。この生地は260gmsの綾織りで、シワの回復力と軽いナチュラルストレッチが特徴です。着用期間が長く3シーズンの着用が可能です。
まだまだお伝えしたい事が沢山ありますが、百聞は一見にしかずです。是非、店頭でお試しください!
◾️BEAMS PLUS TAILOR LINE
4Button Double Brested Blazer
品番:38-16-0250-564
色:NAVY
サイズ:34、36、38、40、42、44
価格:¥74,800-(税込み)
取扱店舗
・ビームス プラス 原宿
・ビームス プラス 有楽町
・ビームス 神戸
お問い合わせは各店舗までお願い致します。
※BEAMS Online Shopでのお取り扱いはございません。
如何でしたでしょうか?
久しぶりのブログでしたが、ついつい筆が乗ってしまい長々と乱文を失礼しました。もっと簡潔に!とお叱りを受けそうな内容ですが、私の新型モデルに対する情熱の結晶だと大目に見ていただければ幸いです。(笑)
最後に着用のイメージカットを…。
気分はマディソン・アベニューを颯爽と闊歩するビジネスマン!(笑)
それではまた。
ビームス プラス 有楽町
鈴木